第14回『他社留学ラボ』開催レポート

「次世代リーダーに求められる資質やスキルと組織作り」上場企業の現役社長をお招きし、越境経験者同士の交流会を開催

2024年10月3日、第14回『他社留学ラボ』をオンラインにて開催し、他社留学の卒業生と関係者が集まり交流を行いました。
今回は、講師として、株式会社ヴィスの代表取締役社長、金谷 智浩様をお迎えしました。
「次世代リーダーに求められる資質やスキルと組織作り」をテーマに、現役リーダーとしての見識を共有していただきました。

参加者の動機は様々で、マネジメントに関する有益な話を聞きたい方や、特に不満はないが何となくモヤっと感がある方など、
多様な背景の方々が集まりました。イベントは盛況に終わり、参加者全員にとって大変有意義な時間となりました。

ゲストスピーカー
金谷 智浩(かなたに ともひろ)様 株式会社ヴィス 代表取締役社長


<ご経歴>
1976年大阪府生まれ。1999年関西学院大学社会学部卒業。東証一部上場企業にて
広告企画および HR 企画営業を経験ののち、2004年デザイナーズオフィス事業立ち上げに際し
株式会社ヴィス入社。
プロジェクトマネージャーとしてベンチャー企業から大企業まで数多くのオフィスを
手掛けるとともに、新卒採用構築や広報・WEBマーケティング責任者として幅広い業務に対応。
2015年より常務取締役。2022年4月に株式会社ワークデザインテクノロジーズ代表取締役社長に
就任、同年6月から株式会社ヴィス代表取締役社長も兼任されています。



今回の金谷様の講演内容は、他社留学ラボの卒業生だけでなく、すべての社会人にとって参考になる大変素晴らしいものでした。
是非多くの皆様に共有したいと思いますので、以下に要約を掲載いたします。


講演の前半では、金谷様より株式会社ヴィスとご自身のキャリアについてお話いただきました。

株式会社ヴィス
株式会社ヴィスは、1998年に設立され、東京、大阪、名古屋に拠点を持つ、スタンダード上場企業です。「はたらく人々を幸せに。」
というパーパスのもと、「ワークデザイン」を通じてお客様の企業価値を高めることを目指しており、オフィスのデザインや
レイアウトの提案、ブランディング、データソリューションなどを提供し、新しい働き方を実現するためのサポートを行っている企業です。

株式会社ヴィス https://vis-produce.com


パーパスの誕生

「はたらく人々を幸せに。」というパーパスは2012年に生まれました。この言葉に共感し、「自分事」としてオフィスを綺麗にして、
働く人々の幸せに貢献することを決意しました。上司と合わずに退職したり、仕事で鬱になったりする人たちを見て、私自身も
人的資本の課題を感じていました。そこで、オフィスを「ものづくり」として行うのではなく「ワークデザイン」という言葉を生み出し、
一人ひとりの自己実現をサポートするコンテンツを多くの顧客に提供してきました。


金谷様のキャリア
株式会社ヴィスは1998年に設立され、私は2004年にプロジェクトマネージャーとして入社しました。現在48歳で、45歳の時に社長に
就任しました。入社の理由は、事業内容と待遇に惹かれたことだけでしたが、そんな私が変わったのは、稲森和夫さんの本から
「利他主義」について学んだことがきっかけでした。私が32歳のときにヴィスでは新卒採用が始まり、会社が成長する中で「利他」の
考えを会社に落とし込み、今なおヴィスでとても大事にしているクレドを作成しました。この過程で、ヴィスという会社や組織への思いも
色濃くなっていき、会社や組織のためにできることを考えていく中で、自分が社長になろうと心の中で決めました。それが35歳のとき
でした。また小さい頃からリーダーシップやキャプテンシーを発揮することが多かった私は、当社においても、リーマンショックや
長年勤めた社員の退職などの会社の危機的状況でも、皆を牽引する想いとアクションは変わりませんでした。この経験を経て、自分の
生きる目的と会社の事業が一致していることを強く感じたことも、社長になることを決意したきっかけとなりました。

社長就任後の経験
2年前に社長になったとき、自分の力不足に気づきました。見える景色が全く違ったのです。常務のときの経験が役立つことは
ありましたが、社長に必要な要素が欠けていました。しかし、「社長1年生だから」と気持ちを切り替え、本を読んだり、他の社長に
会ったりして、とにかく勉強しました。自分のスタイルを見つけるまでに3か月ほどかかったと思います。


生きる目的と事業の一致
自分の生きる目的が明確で、それが事業と一致すると、納得感が生まれます。部下を率いる際の迫力や熱量、目的、ビジョンによって、
人の動きが決まります。目的が明確なら、シンプルに判断することもできます。私の生きる目的は「関わる人の豊かな人生に貢献したい」
ということですが、当社のパーパス「はたらく人々を幸せに。」と一致しています。この納得感と事業への誇りは、社長になる前からの
私の強みです。

生きる目的は、みんな違っていいんです。あなたはあなたのままでいいんです。人間には、健康、家族、仕事、お金、楽しみという
様々な欲求がありますが、人によって何を優先するかが異なります。以前は仕事優先でしたが、今は自分も社員も健康でいることが
大事だと思っています。
バランスを取ることがマネジメントとして重要です。

生きる目的がわからないなら、過去の経験や思考を振り返り、探すことが重要です。コンフォートゾーンにいると居心地が良いですが、
成長はありません。
不安や恐れは消すことができないので、それらを抱えながら外に出る勇気を持ちましょう。それが成長への鍵です。


講演の後半では、次世代に求められるリーダーの資質についてお話いただきました。

組織作りは人づくり
経営にあたっては、親以上にメンバーを育てる責任感を持っています。社長になる前からこの想いで接してきました。メンバーには
どんどんチャレンジしてもらい、責任は私が取ると言っていますが、
実行は彼ら自身に任せ、サポートしています。部下には愛を持って
ハートフルに
接しています。今はわからなくても、数年後に気づくこともあると信じています。私が尊敬する社長は、数千名の社員全員を
知っています。私もそこまでいきたいと考えています。

組織はリーダーの器以上にはなりません。だからこそ、
自分が学び続ける必要があります。行動の9割はメンタルで決まると言われ、
過去の経験や失敗の恐れがパフォーマンスを制限します。リーダーとしてこれを理解し、部下に気づきを与えることが重要です。
そのためには自分自身も勉強を続けなければなりません。松下幸之助の言葉「雨が降っても自分のせい」のように、すべての原因は
内発的です。たとえ全社員が逃げ出しても、私は最後の一秒まで諦めずに取り組む覚悟があります。


自らが法人格に共感する
業社長の場合は、「会社=自分」になりがちですが、私はベンチャーのNo2という立場で仕事をしてきたので、常に会社のためになることを
優先してきました。会社のためにならないのであれば、社長にもNoを伝え、意思決定のサポートをし続け、これまで結果を出してきました。


リーダーとしてクレドを浸透させるには
クレドは作って終わりではなく、継続してクレドを実践する仕組みを作ることが求められます。当社では、強い組織を作るために、
毎日全社員でクレドを唱和する時間を設けたり、新入社員や中途入社の社員との役員対話の機会を作ったりすることで、理念の共有に力を入れ、
人に軸足を置いた経営を行っています。また、業務中にクレドの言葉を意識的に使うようにもしています。入社3年後、5年後、10年後と
在籍年数に応じたクレドを渡す工夫もしています。クレドが定着していない組織は、社長や上司がそのとおりに行動していない場合が多いです。
リーダー自身がしっかりと体現することに対して、覚悟を持つことが大切です


成功循環モデルと人間関係

マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱する「成功循環モデル」というのがあります。結果を重視するのではなく、
組織に所属する
メンバー間の相互の「関係の質」を高めることが成功の好循環に繋がるとされています。心理的安全性が高まることで、
部下は相談しやすくなり、自ら動くようになります。しっかりと人間関係を築くことで、部下はついてきます。最近の若い世代は
怒られることに慣れていませんが、相手のために叱っていることが伝われば、理解してくれます。


組織の拡大に伴う中間マネジメント層の課題
組織の成長とともに、リーダーシップの強化が求められることは、多くの企業にとって共通の課題なので、私自身も皆さんの悩みに
共感します。社長になるまでは、自分自身で幅広く管理していましたが、社長になってからは、会社を変え、組織を作る必要があると
気づきました。この2年間で多くの変更を行ってきましたが、まだ途中です。社長としての課題は、
幹部や事業部責任者に
リーダーシップを発揮させる
ことです。これを推進するために、教育予算をかけて進めているところです。

研修後のモチベーション維持
継続学習とアクティブラーニングが重要です。自分が率先して行動し、学ぶ機会を提供し続けることが大切です。当社では、2か月に1回、
幹部層のオフサイドミーティングを行っています。研修で学んだことを現場で試し、また研修に戻る、というサイクルを繰り返すことで
成長を促しています。仕組みも必要ですが、一番大切なのは
根気です。優秀なリーダーは、海のように心を広くして、同じことを繰り返し
伝え続けます。皆さんにもそういうリーダーを目指してほしいです。


新規事業担当者へのメッセージ
マネジメント職でなくても、プロジェクトチームがあるなら本質は一緒です。自分が中心にいるのだから、自分が強くなければチームは
動かない。自分が中心にいることを認識し、
パーパスやビジョンをメンバーにしっかりと伝えることが重要です。会社の目標はあくまで
会社のものであり、リーダーのものではありません。ビジョンを共有し、違う方向に進んでいる場合は「違うよ」と伝えることが大切です。
リーダーは、メンバーにどうなってほしいかをしっかりと伝え続けることが重要です。

以上が講演内容の要約です。



ご自身のキャリアからリーダーとしての資質まで、リアルな体験談を踏まえて、熱く語っていただきました。
参加者からの質問や悩み相談にも丁寧にご対応いただき、あっという間に終了の時間を迎えました。

ラボ終了後には、
「実例に基づいた解像度の高い話を聞くことができ、直接質問も出来て非常に良かった」
「金谷社長の実体験に基づいたお話を聞くことができ、今後のキャリアの糧となる充実した時間だった」
「他業種の方の参加もあり、考え方の違いについての発見ができた」
など、ご参加された皆さんは有意義な時間を過ごすことができたようです。



次回、第15回他社留学ラボは2025年2月6日(木)18時半より開催予定です。詳細な時間や場所等、確定しましたら改めてご連絡させていただきます。
数年ぶりの方も、まだ参加したことがない方も大歓迎です。毎回同じメンバーが参加しているわけではないので、安心してご参加ください。
ラボに対するご質問・ご要望等もございましたら、気軽にご連絡ください。