第2回『他社留学ラボ』開催リポート

「他社留学、実際に経験してみてどう?」 他社留学経験者、導入企業、導入検討中企業が意見交換

2019年7月3日(水)、第2回『他社留学ラボ』を開催しました。他社留学経験者と他社留学導入企業、また導入を検討中の企業の皆さまが参加。他社留学を体験してみての感想や変化、今後の可能性などについてオープンに語り合いました。その内容の一部をご紹介します。 ※第3回『他社留学ラボ』は11月13日(水)開催予定

今回は他社留学の「卒業生」「現役生」である4名の方が、留学してみて変わったこと、現在の想いを語ってくださいました。

共同印刷に勤務する高橋さんは、2018年10月~12月の3ヵ月間、イトーキへ留学。「あの3ヵ月があって、今の自分がある」と言います。

「留学中の3ヵ月間、自分の経験や提案が通用せず、苦戦続きでした。かなりメンタルが鍛えられたと思います。留学前と後で変わったのは、いろいろなことにアンテナを立てるようになったこと、問題意識が根付いたことです。異なる環境に身を置いて、『なぜこういうことをしているのだろう』『なぜこうしないんだろう』を考えるようになり、その習慣が自社に戻っても続いています。疑問を抱いて投げかけると、やはりそこに問題点がある。そこでソリューションの方法を考える。そうした思考・行動が身に付いたことで、仕事を任せられることが増えました」(高橋さん)

青森県上北郡六ヶ所村に本社を置く日本原燃から、まったく異なるカルチャーを持つ外資系企業・ユニリーバの人事部門に留学したのが中野渡さん。2019年3月から6ヵ月間の予定でフルタイム勤務し、4ヵ月が経過したところです。「最初の1ヵ月は悩み、もがいた」といいますが、その後の3ヵ月で大きな成果を挙げていらっしゃいます。

「1ヵ月目は、コミュニケーションがうまくとれず、戸惑うことが多かった。けれど、『当事者意識』を持ったときから変わりました。留学生=お客さんでいるうちは何も学べないな、と。自分が任されたテーマに関しては、自分がユニリーバ社内で一番くわしい人間、ユニリーバを代表する人間になろうという意識を持ったとき、突破口が開けたんです。『何かを自社に持ち帰って活かそう』ということを前提にするのではなく、任された仕事に当事者意識を持って取り組んだとき、得るものがあると実感しています。大変ですが、今はすごく楽しいです」(中野渡さん)

受け入れ側のユニリーバ・ジャパン・ホールディングスからは、取締役・人事総務本部長の島田由香氏にご参加いただき、中野渡さんと働いてみての感想を語っていただきました。

「ワタリー(中野渡さん)に来ていただいて本当に良かった。私たちは受け入れにあたり、手を緩めることも、作業を簡素化することも一切していません。お任せしたいことを、意図と目的だけ伝え、くわしい説明や指導もなしにいろいろと振るんですが、キャッチアップ力がすごい。普通なら足がすくむようなところへもぶつかっていく。そうして、使いづらかったイントラネットを整え、各部署を巻き込んでの採用イベントも成功させています。現在は新しい働き方を導入する準備を1人で推進してくれています。 最初から彼にお伝えしているのは『持ち帰れるものはすべて持ち帰ってください』ということ。ここでできていることは、青森に帰ってもできるはずですから。彼の取り組みが日本原燃様にプラスをもたらすなら、それは日本を良くすることにもつながるだろうと思っています」(島田氏)

ちなみに、他社留学の導入を決めた日本原燃の沼村課長は、中野渡さんを送り出すにあたり「戻ったら、彼を師匠として私たちが学ぼう」と仰っていました。

そして、中野渡さんに続き、日本原燃から送り出されたのが長坂さん。複数の候補企業から、ご本人の希望でサイボウズを選択し、5月から人事部門でフルタイム勤務しています。サイボウズの人事本部長によると「日本を変えるような課題に取り組んでもらっている」といいます。

「この2ヵ月、毎日が刺激的で、充実していて、楽しくて、あっという間に過ぎていきました。新卒入社して10年、日本原燃の仕事の仕方しか知らずに過ごしてきましたが、サイボウズに来ていきなり『紙を使わない』ことにカルチャーショックを受けましたね(笑)。180度違う考え方に触れ、それを自分のものにできる時間をいただいたのはありがたいこと。自分の意識を変え、成長する絶好の機会だと捉えています。自分の成長が原燃にも影響を与えられることを想像すると、『次はどのメンバーが留学するといいかな』まで考えています。 まだ4ヵ月残っているので、これから壁にぶつかることもあるでしょう。それを乗り越えるためには、知識を増やして自信を付けることが大切だと思います。今、仕事が終わってから1時間~1時間半、会社のラウンジで本を読んで勉強してから帰るのが日課になっています」(長坂さん)

今回参加の他社留学生のうち、最年長者(48歳)が根津幹夫さん。NHKの「クローズアップ現代+」でも紹介されました。自動者部品メーカー・ニフコで企画開発リーダーを務める根津さんは、約30名規模のIT企業・エンファクトリーへ。6ヵ月の留学はまだ始まったばかりです。

「組織作りや人材育成に課題を感じていたとき、オープンイノベーションのコンソーシアムでエッセンスさんに出会い、他社留学の導入を決めました。来年からメンバー何人かを送り出したいと思っていますが、まず自分自身が経験するべきだと考え、留学することにしたんです。留学前は組織作りに対しても自分のキャリアに対しても迷いや葛藤がありましたが、面談で『何をやりたいのか』と問われたことが、自分を振り返るきっかけになりました」(根津さん)

4名の体験スピーチの後は、立食パーティ形式で歓談。 「他社留学の導入を検討中」という大手企業の人事担当の皆さんは、留学経験者に対し、「送り出す人はどういう基準で選ばれたのか」「他社留学の話を受けたとき、どう感じたのか」「つらい、帰りたいと思わないか」「留学先企業にそのままとどまりたいとは思わないか」などの質問を投げかけていました。

締めくくりには、ゲストスピーカーとして「越境的学習」「キャリア形成」「人的資源管理」などを専門とする 法政大学大学院教授・石山恒貴氏が登壇。 「越境――つまり、異なる文化・価値観を持つ『ホーム(=自社)』と『アウェイ(=他社)』を行き来することで、常に『違和感』を持ち続けられる。自分の中にある『暗黙の前提』を見直し、『これがすべてではない』と気付けることが大きな学びになる」と、他社留学生たちにエールを送りました。

第3回『他社留学ラボ』は11月13日(水)に開催を予定しています。 他社留学経験者、送り出した企業、受け入れた企業の生の声をお聞きになりたい方は、ぜひご参加ください。