参入コスト「ゼロ円」時代のEC戦略とは?中小企業が大手企業とECで戦っていくためには

ファーストリテイリングにてEC部門のマーケティングマネージャーを歴任した、EC事業・新規事業のプロフェッショナルである吉野隆行 氏にECの立ち上げやオンラインビジネスへの業態転換についてお伺いしました。

  • 吉野隆行 氏のプロフィール
  • EC導入コストの劇的な変化
  • システムよりもクリエイティブにお金を
  • 「インターネット×○○」はどんな業種でも当てはまる
  • 中小企業が大手企業とECで戦っていくためには

吉野隆行 氏のプロフィール

PlayNode Consulting 株式会社 代表取締役社長
同志社大学大学院卒業。新潟県長岡市出身。広告代理店からキャリアをスタートし、インデックスにてゲオとの合弁会社を設立し事業責任者、ファーストリテイリングにてEC部門のマーケティングマネージャー、バロックジャパンリミテッドにてEC事業部長を経て、PlayNode Consulting 株式会社設立。

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EC導入コストの劇的な変化

――旧来のECサイト構築と、現在のECサイト構築の違いはありますか?

まず決定的に違うのは、昔と違ってECの導入コストがすごく安くなっています。今は会社や売上の規模感にもよりますが、初期費用が0円に近い形で良い物が出来上がります。日本のいろんなスタートアップが良いシステムを提供しているので。昔なら長い時間とお金を掛けて構築していたのが、一気にジャンプアップして商売を始められるようになりました。

次に、昨今のコロナで加速していますが、消費者がネットビジネスの便利さを知っている事やSNSなどの普及により、最初のプロモーションコストや認知コストのハードルがグッと下がってきています。

昔なら代理店任せだったものが、今ならいろんな無料のプラットフォームがあるので、それを使いこなして人を集められる企業の方がクールな時代になっています。とは言え、EC構築導入コストや認知コストが下がっている分、競争は激しくはなっていると思います。売り場づくり、集客だけを構築するだけでなく、CRM、物流、在庫管理など、その他の戦略が重要になっていますし、それらを高いレベルで運用していく事が求められていると思います。

かつては中小企業は、まずは楽天といった形で、モール出店がファーストステップとしてありました。その次に自社サイトの構築という感じです。それが今は初期から自社サイトの構築がトレンドになっています。今後、モールから自社サイトへの経営資源のシフトは加速していくと思っています。ただ、モール運営も止めるのではなく、バックエンドのオペレーションを効率化して販路を広げるのが良いと思っています。

システムにも、BtoCに強い、BtoCでもアパレルに強い仕組み、食品に強い仕組み、定期購買に強いなどさまざまなものがあるので、業種や業態、ビジネスモデルに応じて適宜システムを選んでいくことが最初の肝になります。

また通販システムを補完するマーケティングツールが無数にあり、それらをまとめたカオスマップ(業界内のカテゴリ別サービス地図)が毎年発表されているのですが、国内外を含めていろんな領域でツールがあふれているんですよね。どのサービスをパズルのようにどう組み合わせて活用するかという時代に突入しています。

昔はスクラッチといって、ゼロから要件定義をして、構築して、オープンするまで2年かかります、というのが主流でした。

今は2年で世の中が変わってしまうので、ステージごとにいかにクイックに立ち上げて、検証して、戦略的に変更していくか。変えていくことを前提に実行していくことが、大切なことだと思っています。

システムよりもクリエイティブにお金を

むしろお金をかけるべきところは、分析やクリエイティブだと思います。「写真撮影」「採寸」「原稿」の頭文字を取って「ささげ」と言いますが、これらが顧客の購入率を決める大きな要素となります。ベースとなる商品撮影は、理想としては社内スタジオを構築し内製化したい所です。さらにクリエイティブを高める為に、ハウススタジオを借りて外部のクリエイターと連携したコンテンツ作りも大切なので、ここもPlayNode Consulting では支援をしておいます。

ZOZOという素晴らしいプラットフォームがありますが、一言でいうと彼らにものを送ったら全部やってくれるんです。でもそれだと差別化・ブランディングが出来ない訳です。更にいうと、社内で知識が蓄積されない。自分たちで自力で、やっぱりここは撮影スタジオを構えようか、外部のカメラマンに頼むか、と考えていく事になりますが、この経験値こそ重要で内部に蓄積させる事が長期的な成長につながっていきます。

そして分析が出来るチーム体制の構築も重要です。代理店に任せレポートをもらうのもありですが、それではチームの実力は蓄積させてきません。基本はGoogle Analyticsで良いと思いますが、会議ではモニターに投影して自分たちの売り場の状態を数値ベースで会話出来る体制は早期に整えます。この体制がない状態で、マーケティングツールだけを導入しても宝の持ち腐れになります。

「インターネット×○○」はどんな業種でも当てはまる

――色々な企業が業態転換やECサイトを導入しやすい時代になっていると思うのですが、業態転換を行うときのポイントを教えていただけますか?

基本的に「インターネット×〇〇」はどんな業種でも基本的に当てはまると思っています。通販に関しても、必ずしも物販だけではないと思っています。例えば情報。いわゆるノウハウや映像配信なども大きな意味で物販だと思うんです。

僕が1年以上前からご支援しているビジネスに、お墓があります。墓じまいといって、お墓を壊さざるを得ないことがあるんですね。息子さんや娘さんが自分たちのお墓が遠く離れていて守れないことがあるのです。そこで「墓じまい」という文化があって、それをネットでやろうと四日市の会社様とやらせてもらっています。壊したお墓をブレスレットにしたり、プレートにしたり別の形へ変化させるんですよ。

これまでは「チラシを配って」「一部の商圏内で口コミ」という古くさい営業だったものを、インターネットを使うことによって商圏を広げていくことが可能になっています。

お墓のホームページを作って、例えばLINEを使って供養に関するコンサルティングをして、そこからお客様と対面でも話をしながら最適な墓じまいを提案させていただくんですね。

やっぱり最初にビジネスモデルを立ち上げるときに、イオンさんにはない自分たちにできることって何だろうねとなったときに「パッケージ化されていない丁寧なコンサルティングを入れた墓じまいや供養をコンセプトにしましょう」と提案しました。

中小企業が大手企業とECで戦っていくためには

冒頭にお話した動物病院もそうです。ここはドッグランやトリミング、物販もあってすごくおしゃれなところなんです。ただ、置いてある商品に関してはホームセンターやドンキホーテで手に入る商品も中にはあったりします。

じゃあ彼らがECをやる意義って何かを考えたときに、それはやはり動物病院の院長先生や看護師の方が予防医学の観点や動物の種類に応じて最適な商品を提供できるというバックボーンだとご提案しました。

確かにドンキホーテなどの商品よりは高くなってしまうのですが、付加価値を感じてくださるお客様を抱え込むことができれば成功できるんじゃないかと。

何が言いたいかというと、システムの導入コストは安くなったのですが、そこで勝つための戦略はより難しくなっているかもしれません。いまだに大量生産、大量消費みたいな企業があったりするので、そういう企業はガンガンWebプロモーションを回して大量に売っていくことができます。

でも、中小企業やこれからECをやろうと思われている企業はそうではない戦い方を求められていますので、よりビジネスモデルの立案やプロジェクトマネジメントなど、作って終わりではない「その先」を求められているのではないでしょうか。

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