【コロナ後の業態転換】外部人材の「身内」化で経営と現場に橋を渡せ

 コロナ禍で店舗運営が滞り、ECサイトへのシフトを考える小売やメーカーの経営者も多いのではないでしょうか。今回、EC事業・新規事業のプロフェッショナルである吉野隆行プロにECで勝つためのステップや業態転換の方法についてインタビューを行いました。

吉野 隆行 氏
PlayNode Consulting 株式会社 代表取締役社長
同志社大学大学院卒業。新潟県長岡市出身。広告代理店からキャリアをスタートし、インデックスにてゲオとの合弁会社を設立し事業責任者、ファーストリテイリングにてEC部門のマーケティングマネージャー、バロックジャパンリミテッドにてEC事業部長を経て、PlayNode Consulting 株式会社設立。
※PlayNode Consulting 株式会社のHPはこちら

ECサイトを構築するための6つのステップ

ーECで勝つためのステップを教えていただけますか?

 年商30億円ぐらいを目指そうという会社で、自社公式サイトの開設、さらに主要なモールであるYahoo!、楽天、Amazonの3つを押さえて、これを同時に立ち上げる場合、4~5カ月の準備期間を目標とします。

 このとき、考えるポイントが6つあります。

 まず1つ目は、最適な「システム選び」です。ここはビジネスモデルの選定や規模感に応じて選んでいきます。

 2つ目に重要なのが「決済」をどうするかですね。決済に関しては、基本的には広げれば広げるほど売り上げが伸びます。昔は代引きとクレジットカード、銀行振込を押さえとけばよかったのですが、今はキャリア決済やLINE、PayPayなど豊富にあるのでどれだけ広げるかが最初の肝ですね。

 今は、ECシステムの中に最初から優秀な決済機能が盛り込まれている時代ですので難しく考える必要はありません。

 おすすめは、AmazonPay。自社の公式サイトにAmazonのアカウントで購入が出来るようにする決済機能です。お客様はいつものAmazonのアカウントで購入出来るので購入率が向上します。

 3つ目が、同時並行で「在庫管理」と「物流」をどうするか。これまで対消費者に直接商品を送ったことがないクライアント様もいらっしゃいます。この場合、在庫管理の仕方や物流の仕組みが全然違うんですね。

 通販は基本的に、単品管理をしなくてはいけませんので、そこをどうするかを決める必要があります。これは2通り方針があって、「自分たちでやる」パターンと「外注する」パターンがあります。外注化する場合には、そのご支援もしております。

 一方で、自社で在庫管理をやる際はシステム構築に時間がかかります。それをどうするか。在庫管理の仕組みで「倉庫内管理システム」というのがあるのですが、この導入方法なども決めていきます。やはり内製でやろうと思うと3~4カ月ぐらいかかります。

 ですので、システム構築と物流構築は同時並行で同じくらい工数がかかると思っています。ただ、昔と違って倉庫内管理システムも月額数万円ぐらいで提供されているので、導入コストはグンと下がっています。スマートフォンアプリだけで完結する場合もありますから、本当に良い時代だと思います。

 4つ目が、「商品の見せ方」です。写真撮影や採寸、原稿ですね。ここもやはり構築に時間がかかります。短縮するのであればこれも外注することができます。専門とする業者があるので。

 ただ、ここも前回お話しました通り、撮影部分は自分たちで将来的な強みにしていくべきだと思うので、小さくてもいいので社内に撮影スタジオを構えて、自分たちで撮影することをお勧めしています。出来れば、動画も撮影したいですよね。これも構築に3~4カ月ぐらいかかります。

 5つ目は「Webマーケティング」です。これに関してはサイトを立ち上げた後でも良いのですが、立ち上げる前からバズらせることも重要ですので仕掛けが必要になってきます。

 そして、6つ目に、それをやりきる「チーム」ですよね。やりきるチーム作りを0から立ち上げると結構時間がかかります。これも3~4カ月ぐらいは最低でも必要ですね。

企業やブランドに合わせたシステムとは

ー具体的な事例をお伺いできますか?

 最適なシステムを選ぶという側面からお話しますね。企業によって、ビジネスモデル、販売商材、投資金額などが違ってきますので。

 低価格でブランド力もある化粧品のベンチャー企業のご支援をさせて頂いていました。女性の方はよくご存知なブランドです。卸し中心のビジネスモデルなのですが、ECを拡充させたいとのことでご相談いただきました。

 先駆企業ゆえの悩みですが、成長してくるとやはり模倣商品も増えていくんですね。先駆者としてのブランドを活かし「お客様のリピート」をさせていくECシステムへの変革が求められました。ですので、定期購買に最適なECシステムを選定し、さらにCRM導入・運用をご支援させていただきました。

 また、岐阜にある林業の会社も支援しました。2代目の社長がチャレンジャーな方で、林業が盛んなヨーロッパから、林業アパレルブランドのライセンスを取得し、日本展開を図りたいという相談をいただきました。投資予算も非常に限られていましたので、このときは最初からでかいシステムではなくて、「Base」という初期費用0円から始められるもので作って支援させていただきました。

オンラインとオフライン両方での体験を設計する

 オムニチャネルのご支援も多いです。コロナ以降はお店を持ってる会社さんは、基本的にはインターネットで商売を組み立てていく戦略が加速していくと思います。

 具体的には、リアル店舗に関してはショールーム化していくと思います。僕もですが、お店に行ってもその場でAmazonで検索することがあるじゃないですか。そういう時代にどうやって戦っていくか。お店に来てくれたお客様を、どうやって自分たちのECサイトに誘導していくかは、本当に業種業態問わず考えていく必要があります。

ーオンラインとオフラインの両方での体験を設計する必要があるということですね?

 アフターコロナ時代には、あらゆる業種がどんどんネット化していくでしょう。その中でじゃあ次の一手として何をやっていくのか。リアル店舗をどうしていくのか。多くの店舗ビジネスが本当にどんどん変わっていく時代ですよね。

卸売企業のEC進出

 製造卸会社の支援も多くやらせてもらっています。

 良い商品を作ったとしても、卸し先の小売店の環境に左右されたり、売り場・価格のコントロールも出来ないですからね。そういう背景もあり、EC事業を始めたいというご相談が多く、自分たちで「お店」をやりたいんです。

 ただ、卸商品を自社ECサイトで販売するには商売上ハードルがありますので、EC販路用の商品を作っていきましょう、みたいな流れになり、商品開発から関わらせて頂くケースが多くあります。

 例えば、スポーツウェアの製造卸しをしている会社を支援しています。企画力もあり、海外の生産ネットワークもある。であれば、自分たちでブランドを作って自分たちのECサイトでやっていきましょうという提案をさせてもらっています。

 やはり物作りができる会社は強いですよ。物作りはできるんだけど、インターネットを使った売り方が分からない、ということが多くあるので、僕みたいな人間が今の時代は橋渡し役として機能するのだと思います。

事業転換のハードルを下げる

ー今、コロナの影響もあって多くの企業がインターネットビジネスへの業態転換のチャンスと捉えていると思うのですが、一方で未知の世界なので、そんなときに必要なマインドセットやステップとしてはどんなものがあるでしょうか?

 経営者自身は危機感と情熱を持っていますので、業態転換は可能だと思います。ただ、現場が追いついてこない。社員は自分たちの商売や仕事があるのでできない。そこがハードルかもしれません。

 組織が大きくなりセクショナリズムに陥ってしまっている会社は、今回のコロナのような大きなトリガーがないと、業態転換は通常時にはなかなかできないと思います。逆にチャンスですよね。

 一方で、優秀な人はスピンアウトして、自分たちで小さいながらもブランドを作っています。最近だとD2C企業もありますね。自分たちの工場は持たずに製造を行い、インターネットを活用してマーケティングを仕掛け、急速に成長させています。

 業態転換には、いろんなハードルがあると思います。業態転換を考える経営者には、おそらくエッセンスさんと僕みたいな立場が機能して、外部の人材を活用できるかがポイントではないかと思います。

ー業態転換のハードルをプロと一緒に下げていきましょうということですかね?

 そうですね。やっぱり経営者って孤独だと思うんですよね。僕も独立して思いました(笑)。なかなか腹を割って話せる人間が社内に少ないんですね。そんなときに、外部の人間の意見はすごく重要かなと思いますし、腹を割って話がずっとできる相手でありたいと思っています。

事業会社出身だからこその強み

 私の経営するPlayNode Consultingでは経営者のビジョンやパッションを具現化し、現場と共に動かしていく事を強みとしています。支援している過程で当たり前ですが、現場から経営承認を得ていくプロセスが発生します。

 その際、現場からの承認ではなく、私も入って承認のお願いに伺う事で、業務が上手く回るケースも多いです。一方で経営者の方からは、ご自身から伝えるよりも僕が現場の方々に伝えた方が上手くまわるのでお願いします、というケースもあります。この両方を僕の方で調整しながら進めていくことがあります。

 この能力は事業会社出身の人間はプロジェクトマネジメントの管理職としての経験があるので、すごく得意なんですよね。ちなみに、PlayNode Consultingでは今後、プロジェクトマネジメントやコンサルタントとして独立や複業をしたい方の支援をしていきたいなと思っています。優秀な方が多いので。

 プロジェクトを回していくことは全てがキレイにロジカルに計画的に回っていくわけではありません。現場のやる気を持ち上げるみたいな、割と泥臭いこともあったりするじゃないですか。

 感覚で言うとプロジェクト全体の2割ぐらいは、組織構築やコーチングのようなものが占めていると思っています。そこで意識しているのは、どうやって楽しく回していくかです。まさしく「遊びながら」「幸せになるためには」を意識しています。

業態転換は1日にしてならず

ー最後に世の経営者の皆様へメッセージをお願いします。

 エッセンスさんみたいな、新しい働き方をする僕らみたいな人間と企業様とをマッチングさせるビジネスは、これからますます主流になっていくと思うし、そういった方をうまく使える企業様が生き残っていくと思います。

 そのときに「外注」という考え方ではなくて、従業員の一員や事業パートナーという位置づけで、個人や外部の人材を捉えていくと、ビジネスが上手くいくのではないかと思っています。そして、遠慮せずに色々と話してほしいなと。

 先ほども触れたのですが業態転換は基本的には可能だと思うんですね。あとはもう「やるか、やらないか」。今、世の中で伸びている会社はどこかのタイミングで業態転換やピボットをして、勇気を振り絞ってやってきたのだと思っています。

 ローマは1日にしてならずじゃないですが、いきなりは成功はしないので、小さくても良いので新規事業などを動かしていくことが重要になると思ってます。

 昔だったらインターネットビジネスで何かやろうと思ったときには大きなお金がかかったのですが、今はそういう時代ではないので、まずはその前提に立ってほしいなと思います。
 
 最後に僕は池井戸潤さんの作品が好きなのですが、「下町ロケット」という作品があります。

 その中で、主人公である佃社長が

「会社だってひとと同じでさ。損得以前に、道義的に正しいかが重要なんじゃないのか。相手のことを思いやる気持ちや、尊敬の念がなくなっちまったら、そもそもビジネスなんて成立しない」

と語る場面があります。いいセリフですよね。

 PlayNode Consulting も、そういう姿勢で全国の中小企業・スタートアップを支援していきたいと思っています。



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