アフターコロナにおけるファッション、流通、小売り企業の戦略とは ―商品・エリアを超えて実現する「マーチャンダイジング」とはー

株式会社ワールドにてSPA業態のビジネスモデルを構築、ユナイテッドアローズや良品計画、イオンリテールなど、様々な小売業のご支援を行う、西 謙太郎 氏に、アフターコロナにおけるファッション・流通・小売り企業の戦略についてお聞きしました。

  • 西謙太郎 氏 プロフィール
  • SPAのノウハウを活かした小売りのコンサルとは
  • 現在のコロナ禍での小売りの苦しい現状と、今後発生する問題点
  • 顧客の行動変容のスピードアップをチャンスに

西謙太郎 氏 プロフィール

1974年兵庫県生まれ。
株式会社ワールドで卸事業から小売り事業へ業態転向する中、SPA型MDシステムを構築。SPA業態のビジネスモデル構築を行う。

2003年トミーフィルフィガージャパン入社、ウィメンズMD。2006年プライムピース設立。アパレル、小売り、SPA業態に対するコンサルティングを行う。主な実績としてユナイテッドアローズ、良品計画、イオンリテール、他多数のアパレルの支援を行うとともに、現在ではアパレル以外にも幅広い小売り業種の支援を、全国エリアにわたって行う。

SPAのノウハウを活かした小売りのコンサルとは

――西さんは現在どのような小売りの支援をされているのでしょうか?

私の現在の活動ですが、これまではアパレル、小売り企業を中心にMDの仕組化支援をさせて頂くことが多かったのですが、近年ではM&Aに伴う事業活動全般の支援やリブランディングに伴う業態変換のサポート等、MDサポートから経営サポート全般へと活動範囲が広がりつつあります。

またアパレル企業だけでなくファッション雑貨、生活雑貨、スポーツ、家具等へと業種が広がっております。アパレル業界ではSPA企業がメインプレーヤーとなって久しいですがスポーツやコスメ等これまで卸中心だった業種でもECや直営店でエンドユーザーと直接接点を持ちコミュニケーションすることで、ブランドロイヤルティや商品開発力の向上へとつなげる流れが広がりつつあります。

様々な取組を行う中で下記MD項目は小売業界においては共通の仕組みとして活用できると感じています。

  • 温暖化や気温推移のずれに合わせたシーズンを細分化したMD計画の立案
  • 店頭とECの両立と相乗効果によるブランド全体売上の拡大
  • MD仮説を週次や月次のPDCAサイクルで検証修正する仕組み
  • プロパー(高換金)比率の拡大による不良在庫の極小化(無駄なものは作らない仕組み)

またご支援する企業は関東圏だけではなく、地方企業も規模の大小関わらず増えておりますが、特に増えているのが事業承継に係るご相談です。

――地方企業の事業承継の問題はこれからさらに深刻化してきそうですが、その中でどのようなご支援をされているのでしょうか?

例えば、2年前にお手伝いした西日本のドラッグストア様の事例ですが、先代社長から現社長への経営体制の移行に伴い、初めての経営計画の策定を支援致しました。先代社長はカリスマ経営者として事業を大きく発展させてこられましたが経験、勘に基づく判断が多く、意思決定のプロセスも不明確でした。スピードが速くダイナミックな経営が出来る反面経営者の力量に大きく依存するスタイルでもあります。

今回の事業承継を支援するにあたりまずは意思決定のプロセスを可視化する事に重点を置き、経営計画の策定では新社長を中心に新経営メンバー全員で議論して「地域密着型ドラッグストア」という経営理念を明確にしました。また中期経営計画達成の為に何が必要なのかKPIを設定して日々の業務で必要な行動を明確にしていきました。

経営計画策定とKPIを設定した後に月次PDCAで「仮説」「検証」「修正」を行う仕組みを導入して運用の支援を行いました。

地方企業や小規模企業、事業承継支援においては意思決定のプロセスを可視化すること、また週次や月次でしっかりとPDCAしていく仕組み構築が有効な場合が多いように感じています。

現在のコロナ禍での小売りの苦しい現状と、今後発生する問題点

当初コロナの影響は主に納期遅れ等生産面に関わるものが多いとみられていましたが、3月に入り商業施設が相次ぎクローズする中、深刻な売上減少と在庫過多の問題に直面することになりました。

直近は従業員の安全を第一優先にしつつ、以下対応策を行います。

  • EC強化
  • セール前倒し
  • 仕入れコントロールによる在庫の適正化

また店舗が再開したとしてもこれまでと同じように顧客が来店されるとは考えにくく、すでに顕在化している「不要なものはセールでも買わない」傾向は更に強くなり、「ECでも買える商品はECへの購買」傾向が更に強くなっていくと思われます。その中で各企業は自社にあったブランディングやMDオペレーションの進化を行う必要があります。

コロナで店舗閉鎖が始まってからの各社のEC売上の伸びを見てみると自社ECサイトが大幅に伸ばす一方でモール型ECサイト伸びは限定的な伸びにとどまっているように思われます。利益率の高い自社サイトでの販促を強化している面もあると思いますが、店舗が閉まっている間も店舗SNSで新商品の説明やコーディネート提案を顧客に行う事で自社ECサイトへの誘導を行っている会社もあり、新規顧客というよりも既存顧客がECサイトで購入している面も大きいように思います。

もちろんモール型サイトで新規顧客を獲得することも重要ですが店舗を持っているブランドは店舗でもECでも同じように、もしくは好きなように購入出来る仕組みを作る事が必要になってくると思われます。

アフターコロナでEC強化が更に重要になってくると思いますが特に今までと全く新しい事をするという必要はなく、これまでのEC強化の取組を継続し、まずは自店舗で顧客ニーズをしっかりと把握して商品開発につなげる事が重要でありその上で販売チャネルを顧客に選んでもらえる体制を構築することが必要だと思います。

顧客の行動変容のスピードアップをチャンスに

コロナ影響はファッション小売業界に甚大なダメージを与えています。コロナ終息後も顧客の行動が変容しこれまでと同じようなやり方では生き残れなくなっていくと思われます。ただ今回のコロナで今まで全くなかった現象が発生するというよりは、これまでに既に顕在化していた顧客の行動変容がよりスピードアップされると思います。

そういう意味では先にあげたような「作りすぎによる在庫過剰状況」「店頭とEC両立による顧客とのコミュニケーション深化」を以前から進めている企業は、その進化スピードを大幅に上げることで、コロナ後より厳しさを増すであろうファッション小売りで生き残る事が出来るのではないかと思っています。

また生産性が低いとされるファッション小売りにおいて、「何を仕組化しないといけないのか」を明確にし、思い切って仕組化することで一人当たりの生産性を高める事が必要であり、今回の危機をチャンスととらえて大きくパラダイムチェンジすべきだと思います。

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