勤怠管理は?生産性は?「リモートワークあるある」と総務の使命とは

前回に引き続き、元WeWorkのワークプレイスストラテジストの本田優様と元アマゾンジャパンのデータサイエンティストの須崎博紀様に、テレワーク下で求められる勤怠管理や生産性の可視化、そしてこれから必要な総務としての使命について伺いました。

会社にいることが「働いていること」なのか

――リモートワークにおいて勤怠管理が難しいとよく言われますが、どのように生産性を測れば良いでしょうか。

本田:そもそも「リモートワークしていないときのマネジメントと、リモートワークをしたときのマネジメントはそんなに変わるのか?」という疑問を持っています。

「アブセンティーズム(欠勤や早退などで職場に出勤せず、業務につけないことを指す)」という言葉がありますが、出社している、席にいるということで仕事が完結していると考えられがちです。しかし、実は「出席しているだけで仕事をしていない人」が持っているリスクの方が高いと言われています。

「仕事をしているか・していないか」を本質的に見ようとしたときに、勤怠管理というのは「会社にいる・いない」で判断してしまっています。しかし、特にホワイトカラーで働いている人達は生産性に大きな差は出ないのではないかと思っています。

私はWeWork時代にニューヨークのチームと遠隔でアジャイル型のサービス開発をしていました。毎日15分間は絶対にスタンドアップの電話会議をして、「昨日やったこと」や「今日やること」「間に合ってないタスク」をそれぞれチームで共有していました。

それは「していないこと」を責め合うのではなくて、「なぜできてないのか」を客観的に話すことと、サポートが必要かどうかを話して、「じゃあ今日は、これやっておこうね」と毎日くり返しながらやっていました。

プロジェクトワークの場合は、コンサルタントとして調査・分析してレポート化する際にニューヨーク側のパートナーと3時間くらい電話会議つなげたままでGoogleスライドを使えばクラウド上で同時編集できるので「ここ、こうした方がいいよね」とお互いにレビューをしあいながら資料を作っていました。それはすごく生産性が高いな、と思いましたね。ビデオ会議でつないでれば、相手が目の前にいるかのように仕事ができます。

本田 優(Tokyo Creators’ Project / Co-founder)
元WeWork Japan ワークプレイスストラテジスト 大学在学中より、ワークプレイスが経営にもたらす影響について研究。卒業後、国内設計事務所やGenslerにて、国内外大小様々なワークプレイス案件にコンサルタントとして携わる。WeWorkではデザイン・運営・チェンジマネジメント・テクノロジーの4軸から包括的なワークプレイス戦略とソリューションを提案。

社員に「2時間の集中」を与えよ

須崎:生産性を測るために「労働時間に対してどれだけ売上を上げたか」を測定している会社が増えています。Salesforceなどのツールのおかげですね。

今はテレワークが進んだことで、何が良くなったか、何が悪くなったか、を考える必要があります。面白いのが、テレワークに関係なく生産性を測定していくと、いかに社内のドキュメントの準備や社内ミーティングが多いかということに、多くの会社さんが気づくことです。

従業員の人達が集中する時間を取ることが必要です。「集中する」とは、1日に必ず2時間は他の人に誰も邪魔されずに仕事ができたか、ということですね。これは、テレワーク関係無しに測定する際の指標として良いと思っています。

実際に、ある論文でも集中できている感覚を持つ社員が多い会社では、お客様を驚かせるプロダクトや商品開発に繋がっていると示されています。

したがって、結果的には売上に繋がるような場合が多いです。「ABM(=Activity Based Management 、Account Based Management)」と呼ばれる手法を導入する場合、まず時間管理を行います。時間管理でいかに無駄を減らしていくかにフォーカスするのですが、それが進むと、その次は「集中」をいかにつくって生産的な時間を増やしていくかにシフトしていきます。

須崎 博紀(Tokyo Creators' Project / Data Scientist)
アマゾンジャパンで14年間オペレーション・サプライチェーン・小売予測・物流不動産戦略策定業務に従事。数多くのデータマイニング経験と機械学習モデル開発経験をオフィス不動産・ワークプレイス業務へ適用中。

在宅ワークの「気まずさ」の扱い方

――在宅勤務が推奨される一方で在宅組からするとオフィス出社組に対して気まずさがあるという声を聞きます。どう解決するのが良いと思いますか?

須崎:無言の同調圧力ってやつですね。

本田::私個人でいくと「気にしない」です(笑)

小学生のころから「みんながお前と一緒だと思うな」みたいなことを言われていた子どもだったので、みんながみんな気にしないわけにはいかず、気まずさを感じる方は多くいるのだと思います。

気まずさを解決するには、在宅ワークが会社の決定なら決定権を持たれている方が「そうすべきだ」と思って決められたと思うので、その人を探して「自分は試してみたい」「試すことで、どういう良かったことがあるかを発信したい」と話してみるのも一つの手かもしれません。

自分で実践して、それを外に発信してみないと他の人には「テレワークが良かったどうか」は分からないですよね。「こういうことが良かった」、逆に「これはデメリットだった」ということを、意思決定された方に伝えてみるとか、他のチームの方に伝えてみることで「この人はリモートワークを挑戦したくてやってるんだな」という理解が社内でも進むと思います。

リモートワークはともすれば「サボっている」ような印象をつけられがちなので、「周りに発信する」というタスクを一つ背負うことで、「怠惰」から「挑戦」へイメージを変えていくことができるかもしれません。

須崎:面白いデータがあります。世田谷区在住で子どもを保育園に預けている女性の通勤時間が、新宿に通うだけで「平均109分かかっている」というデータです。世田谷区から新宿は電車で20分で着きますが、109分かかっているというのは、保育園に一旦行き、駅まで戻って、そこから会社に行っているからです。

これを在宅勤務が推奨されている今こそ、在宅勤務することでどうなったのかをご自分で実証れると良いと思います。酷な良い方ですが「世田谷区に住むママは往復218分を会社の営業時間から無駄遣いをしている」という風にも捉えられます。

一方で、先ほどの気まずさ自体はマネジメントの視点からすると、あまり取るに足らない感情ともいえます。あまり感情的なやりとりが起こっていることを気にするよりも、制度が変わることによって起こる、メリットとデメリットを整理する方が重要だからです。制度をプロダクトと考えた時に、新しい製品のポリシーを導入したことによる利益と不利益を整理することかな、という風に思います。

本田:科学的ですね。

須崎:そうですかね(笑)

まず、自分をユーザーとして捉える

――最後に、お二人のワークプレイスづくりの根幹となる、大切にしたい考え方をお伺いしたいです。

須崎:総務で働いてたとしても、その方も個人ですから、まず個人として自分の当たり前だと思っていることをそのまま(自社の取り組みにも)踏襲できるようにしていくことが良いと思います。

今回、テレワークを急に導入されている企業で働いている方でしたら、総務の仕事の前に、個人として自分でテレワークを活用して生産性が高くなるのかを、しっかりと自分の感覚として認識することが必要だと思います。

例えば、「積極的休養」という言葉がありますが、朝起きてジョギングをしてみるなど、そういう時間を敢えてしっかりとってみる。しっかり自分のパターンを仕事をするときの生産性と併せて考えてみることが重要ではないかと思います。

――まず自分がよく働いてみる、というか、よく生きてみる、ということですね。自分をユーザと捉えて色々実験してみる。

須崎:そうです。一番仕事のことがわかるのは自分だと思うので。

社員のボイスを集め、ワークプレイスを開発する

本田:私はやはり、ワークプレイスをプロダクト開発やサービス開発という視点で捉えて頂きたいです。総務の方々はすごく大変なお仕事だと思うんですよ。社員の方々からも日々文句がいっぱいきやすいですし。

アプリやソフトウェアの開発でもユーザーからのボイスオブカスタマーという形でフィードバックやコメントが絶対的にあるじゃないですか。

そういった開発会社であればその声に対する対応を「これは対応する」「これはちょっと置いとく」「これは目的と違うからやらない」ときちんと優先順位付けして、自分達がやっていきたい方向にプロダクトを成長させていくと思うんですよね。そんな開発をしている中でも、必ずクレームや改善の要望は来てしまいます。

やはり、事業として顧客に晒されている方々はそういった環境下で、自分達の商品を売ったり、サービスを売ったりしています。

ぜひ総務の方も、「文句を聞きたくない」というマインドセットではなく「こういう働き方を会社としたくて、こういう風にオフィスを作っていきたい、使って頂きたい」というビジョンがあるなかで、じゃあ、そういった社員の方々のボイスをどう集めて、どう優先順位付けして、どういう風に対策を取っていくのかという観点を持つことで、より建設的な議論や従業員の方への説明もしやすくなるのではないかと思っています。

――社員さんをユーザーと捉えて、ユーザエクスペリエンスをあげていきましょうという取り組みができるようになると、より社員の方も積極的に使ってくれるようになりますね。一方で、それを総務の方が取り組むインセンティブというのはどこにあるんでしょうか。

本田:月刊総務という雑誌で、総務が抱える課題の上位に「総務の地位が会社内で低い」というのがあります。先ほどの取り組みによって、その地位は絶対的に上がってくるのではないかと思います。地位が上がれば、自分としてのモチベーションになってきます。

もう1つ、先ほど(前回記事を参照)のインサイドセールスのような拠点を作って、事業の生産性向上や社員のスキル向上に貢献できることも大きいです。

私もワークプレイスは面白いなとずっと思いながらこのお仕事をしてきたので、より興味を持って仕事をしていただけると嬉しいです。

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