【テレワークにもダイバーシティを】社員=メッシと考えよ

 連載中の「在宅&テレワークのポイント」記事へ多くのご反響を頂きありがとうございます。テレワークが新日常(ニューノーマル)となりつつありますが、今回の新型コロナが来る随分前からもテレワークの達人達はすでに多くの方々がそれぞれ独自の生活習慣にあったテレワーク方法を実践されています。

 一方で今回新型コロナの影響で待った無しのテレワーク(主に在宅業務)をいきなり遂行されている方々は、自分の業務に合ったテレワークのやり方を試行錯誤で探されていると思われます。

 今回の記事では「テレワーク初心者」の方々向けにそのコツを整理してお伝えしております。私個人の経験と周辺にいるテレワーカー玄人達の働き方から学んだものを、一例・参考としてまとめていますので、皆様のお役に立てることを祈ります!

 前回の記事までに、下記のポイント①~③までを詳細に紹介しました。今回はいよいよ最終回「④変化の受容」についてです。

▼在宅&テレワーキングの4つのポイント
①体調管理
②ツール
③ルール
④変化の受容

「ダイバーシティ&インクルージョン」の本質とは

 働く上で働き方と成果の出し方は、皆さん多様であるということをまずは認識し、受け入れることが最初の難関です。

 違っていいんです!と、理屈ではわかっていながらも、中々自分の中へ「落とし込む」までには、人それぞれかかる時間が違います(これも違っていいんです!)

 テレワークを円滑に行う(上司の場合はチームをマネージする)上で、まずはダイバーシティ&インクルージョン、特に「インクルージョン」(Inclusion)とは何かを理解する必要があります。

 つまり、ダイバーシティ(多様性)は皆が違うということを理解すること。それ自体はなんてことないのですが、難しいのはそれをインクルージョン(自分の中に浸透させる)することです。意外とDiversity & Inclusionを一つの単語として理解されがちですが、この2つはまったく別物です。

 Diversity(皆違うこと)を理解するのは簡単ですが、それをInclusionするには長い道のりと努力(時には苦痛)が必要です。ここが難しいのです。

 図1は一般的な理解でいう、Inclusionを私なりの経験で表現しています。

(図1:インクルージョンとは)

 知識(知っている)から、理解(納得している)へは割と簡単に進みますが、その違いを自分なりに「解釈する」ところが一番の難関です。解釈とは英語ではInterpretation、つまり「自分なりに訳すことができる」ということ。そのためには「経験」が必要です。その経験の中には、人によりますが時には苦痛を伴います。

 「なんでそうなの?」「おかしいでしょ、それは」「あり得ない」という段階です。日常の中でのダイバーシティでいうと国籍の違う人同士、男女、年齢差だけでなく内面的な違い(価値観)まで多様な中で、自分の理解に苦しむときに「あり得ない」で処理してしまっては、「解釈」はできません。

 同意するしないに関わらず、まずは「解釈」すなわち、「そういう見方もありかな」、「その利点はこういう面もあるかな」と多面的に見てみることで、初めて円滑なコミュニケーションが取れます。

 これは同意してなくても「理解」ー「解釈」だけでOKなのです。かならず合意(同意)しないといけないわけではなく、「違う」ということを自分なりに解釈できたら、Inclusion(受け入れる・腹落ち)できていることになります。

1億総「メッシ」化でテレワークはうまくいく

 会社の中では、ダイバーシティ経営とは言いながらも、会社の中の論理(ある意味ひとつの宗教みたいな教えやプロセス)が優先し、一律・均一的なルールが全体の効率を上げることも時にはあります。

 ただ、生活により密着しているテレワークではそうはいきません。皆が自律した時間、プロセス、制御にて会社のために成果をそれぞれのやり方で出していく必要があります。それはつまり「プロ」になるということです。

 プロは自分の中で成果を出すやり方と急所を知っていて、息を抜くタイミングも知っているので、実際に結果を出すことができます。サッカーでいうとアルゼンチン代表のメッシでしょうか。

 試合中はよく観たら結構さぼっています(笑)が、ここぞというタイミングで超スーパーな動きを見せて結果(ゴール)を演出します。練習も結構サボっているように見えますが、実際には本人の力の出せるやり方を選択して、綿密に行なっているので外部の意見などまったく関係ないのです。

 この場合、コーチはそれを「尊重」する、受け入れる(Inclusionする)だけでよく、支援が必要な際にサポートをするのが役割です。

「先生と生徒」では社員はサボる

 対照的なのは上司と部下が「先生と生徒」的な関係で普段の仕事が成り立ってしまっているケースであり、これはもうテレワークはまず無理。やめたほうが良いです。

 つまり生徒は受け身の状態であり、その結果として本当に「サボる」からです。もちろん全員がサボるわけではなく、生徒でもメッシのように自立して成果が出せる「プロ生徒」も中にはいますが、大多数のマジョリティは受け身で外部(先生)からのプレッシャーがあって動く、つまり放っておいたらサボってしまい、目標設定もなく成果が出ない…という悲劇になってしまいます。

 教育の場ではある程度(子どもはまだ未熟という前提で)「一律」が必要であり、そのほうが効果(全体の平均点)は上がります。ただし、ビジネスは皆違う(成果の出し方は違う)ということが前提です。(最近は、教育も子ども一人ひとりに合った内容へとシフトしてきています)

 社員の95%以上が日本人で平均年齢も高齢化している組織の場合は特に要注意です。教育現場のような職場(役員=先生、社員=生徒)となり、20人の会議で役員(先生)が部門のチーム(生徒)へガミガミ意見(偏った意見)を述べている場面、ちょっと違うんだけどな…と思いながらも反対意見を言えず、役員の指示に従った報告書をせっせと残業して作成する…。

 よくある光景かもしれませんが、その状況を想像してみてください。そのような働き方で日常を送っている会社にはテレワーク推進はまず無理、ということです。

多様性を受け入れれば「全員生き残れる」

 図2に、私の尊敬する総務プロの一人であります、豊田健一さん(月刊総務編集長)のスライドを紹介します。豊田さんご自身も総務部としての経験を長年積まれ、本日に至るまで変化(進化)し続けてきた人の一人です。進化することをずばり「多様性」と表現されています。

(図2:進化すること=多様性を受け入れること(月刊総務編集長 豊田健一))

 ダーウィンの進化論だと「変化し続ける種が生き残る」でしたが、ビジネスの世界(人類の進化からしたら比較的短期)では、生き残らない種がいるのではなくて、多様性を受け入れるということにより「全員生き残る」ということも、私個人的には可能だと思っています。

 つまりはダイバーシティ&インクルージョンをどこまで「自分ごと」として真剣に解釈しようとしているかが重要なのです。

「みんな違って、みんないい」を社長から管理職まで浸透させる

 これは役員の方へのメッセージですが、今回の未曾有のコロナ世界でテレワークを推進することができて(できそうと思えるようになって)、しかも本社スペースやコストが削減され、オフィスコストが一人辺り年間30万円以上も削減できる現実を発見しているかも知れません。(むむ、これはP/L的には利益率、B/S的にはROA%をあげるチャンス?) 

 このままテレワークをやんわり継続していけば、実際にそれはできることのように見えますが、上記のような基本的な働き方(働かせ方)、先生と生徒の関係の延長のような働き方をしているなら、まず無理だと思ったほうが良いでしょう。

 理由としては変化する種にも入れず、ただ便乗しているだけに過ぎないからです。冒頭の図1にある通り「知る(知識)」→「理解する」→「解釈する」→「インクルージョンする」というプロセスを経ないと社員はバラバラになり、ビジネスは崩壊するリスクを抱え、「全員会社へ戻りなさい!」という日が遅かれ早かれ来るでしょう。

 テレワークを本当に推進したいなら、④変化の受容(インクルージョン)をまずは自分ごととして会社のトップ、役員、事業部長、課長まで浸透させることが重要です。それには適切なトレーニングと経験を積む必要があります。

遠隔でいかに信頼関係をつくれるか

 繰り返しますが、テレワークで成果をあげるには、みな「一律」ではなく「違う」ということを理解し、自分なりに経験し解釈し、それを受け入れる(インクルージョン)ことです。

 違っていいんです。

 特に会社やチームの上司はその言動、行動に要注意です。チーム状況や勤怠を把握する=成果が出る、ではないことを理解する必要があります。テレワークは何よりも信頼関係、安心感をいかにつくるか、これが成果を出す一番の鍵です。

 それぞれの成果の出し方を尊重しつつ、もちろん「結果」はチェックする必要があります。プロセスチェックでなく結果チェック(フィードバック)です。

 その過程において、チームがバラバラにならないようにSlackやTeamsなどプロジェクト管理型のツールを駆使しながら、最低限のルーチンでジョブ進捗管理をしていくイメージが重要です。もうこれはメールでは無理なのです。

 オフィスの延長のようなメール&Web 会議という働き方では、連続性が不明瞭になる、データ・ファイルが散乱する・検索が出てこない・探す時間がかかる…などの被害のほうが大きいですね。

 このコロナの波が去って「やっぱりFace-to-Face(F2F)がいいよね」と言えることは中には当然ありますが、それを「これまでの仕事全部」と捉えるか、F2Fが適している仕事はこれ、テレワーク、在宅が適しているのはこの仕事、みたいに取捨選択できる人(チーム)になっているか。そこに大きな競争力の違いが出て来るでしょう。

 皆様がテレワークと在宅ワークに慣れていかれることを応援しています!

金 英範 氏
オフィス設計事務所での勤務経験を経て、米大学院へFM修士留学。帰国後、外資系証券会社を中心にいくつかの企業の総務、FMをインハウスで20年以上実践。またコンサルティング、アウトソーシング事業などサプライヤーとしての経験も豊富。2012年メリルリンチ日本証券総務部長、2016年日産自動車コーポレートサービス統括部部長を経て、現職Workwell Technologies, Inc.の日本支社長。兼業のHite & Co.にて戦略総務、オフィス移転や自分達らしいワークプレース造り、ファシリティマネジメントの社内側アドバイザリー活動を活発に行っている。


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