コロナ禍のリモート営業組織を組み立てる~One to One マーケティングという新潮流

2009年より日本マイクロソフトでマーケティング本部長、ソリューション営業部長を勤められた 鶴原 鉄兵 氏に、リモートワークで生産性を上げるための営業組織についてお聞きました。

  • 鶴原鉄兵 氏プロフィール
    • キャリアヒストリー
    • マイクロソフトでリモートワークが始まった当時の状況
  • コロナ禍の営業で避けるべきこと
  • One to Oneマーケティングという新潮流
  • One to Oneマーケティングを実現する3つのステップ
    • ①購買プロセスの整理により顧客の興味度を可視化する
    • ②顧客の行動を捉えるIT環境を整える
    • ③コロナ禍でより重要性が増した過去や既存のお客様のフォローアップの仕組化
  • One to Oneマーケティング取り組みの具体事例
  • 組織全体のレベニューを最大化するCROとは
  • クライシスを福と成せるか

鶴原鉄兵 氏プロフィール

1997年、東芝に新卒で入社。ノートPCの商品企画を行った後、一橋大学MBAコースに。修了後、アクセンチュアで通信・ハイテク産業の戦略コンサルタントとして、様々な営業・マーケティング案件に従事。その後、日本マイクロソフトでマーケティング部門の本部長、Office 365 ソリューション営業部長を歴任。

マイクロソフトにおける「マルケト」のグローバル導入PJをきっかけに、2017年にマルケトに入社。日本人第一号のシニアバリューコンサルタントとして、様々なお客様のマーケティング部門のプロセス構築や改善活動に従事。

マルケトがAdobe社に買収された事をきっかけに、2019年、ジャパン・クラウドに入社。コンサルティングディレクターとして、様々なB2B SaaS企業の日本法人のマーケティング組織の立上げ、プロセス構築などを担当している。

キャリアヒストリー

――鶴原プロのキャリアをお伺いできますか?

新卒で東芝に入社し、海外向けのノートPCの商品企画をしていました。8年くらい勤めて退職し大学院でMBA を取得しました。その後、アクセンチュアの戦略グループに入り通信や IT 企業の戦略立案を支援しました。

それから、事業会社に移りたいと思いマイクロソフトでマーケティングと営業を経験しました。マイクロソフトでデジタルマーケティングの推進をしている中で、マルケトというツールの導入プロジェクトがあり、それがきっかけでマルケトに転職しました。

マルケトでは、クライアントがデジタルトランスフォーメーションをマルケトを活用しながら実現する支援を行いました。その後、小さめの会社での経験を積みたいと思い、今はジャパンクラウドで海外のBtoB SaaS 型ソリューションサービスの日本法人の立ち上げを支援をしていまして、具体的にはWalkMeやApptio、BlackLineという会社の立ち上げやマーケティングの支援をしています。

その他にもエッセンスのプロ紹介サービスを通じて数社のベンチャーや中小企業のマーケティングの支援を行わせてもらっています。

――コンサル側や事業会社を行き来されていますが、自分がマーケティングで食っていこうと思われたタイミングはいつでしょうか。

マーケティングだけで食べていこうというよりは、 幅広く営業やマーケティング、カスタマーサクセスチームの立ち上げやプロセス作り、と幅広く仕事をしていまして、その原体験としては東芝時代に商品企画の仕事をやってたいたことが一番根っこにある気がします。

海外向けだったので、商品企画部はアメリカやヨーロッパ、アジアなどいろんな国のマーケティング担当者や営業、開発設計している部隊、調達部門、デザイナー達とやり取りしなければいけないんです。

なので仕事としては楽しかったのですが、何かスペシャリスト的にひとつの領域にすごく詳しくなるというよりは「全部を何となく知っている」ような、そんな経験を社会人の始め頃に積んだことで、自分はスペシャリストとして生きていくよりは、ゼネラリストとして生きていった方が、何か向いているんだなぁと思いました。

――確かにエッセンスで鶴原プロのことを「マーケティングのプロ」や「カスタマーサクセスのプロ」という呼び方をするのですが、何てお呼びするのがいいですかね?(笑)

難しいですね。ただやはり「何でもできます」と言うのは何もできないことと同じなので、自分が一番得意な領域はマーケティング組織の立ち上げと改善ですね。大小問わず色んな会社でこの領域の実務は結構やってきましたので。

マイクロソフトでリモートワークが始まった当時の状況

――マイクロソフト時代に「3.11」をきっかけに働き方改革が進んだとお聞きしたのですが、今のコロナ禍がまさにリモートワークを推進せざるを得ない状況です。マイクロソフトの当時の様子を教えてください。

私は2009年にマイクロソフトに入社したのですが、2年経って2011年の2月に新宿から品川にオフィスを移転しました。それと同時に、今まで固定席だったのがフレキシブルシートに変わったり、週に何日かは在宅など外から仕事しても良い制度に変わりました。

しかし、結局チームは近い席に座ったりとあまり馴染んでいませんでした。固まって座っていたり、皆ちゃんと出社して9時~18時ぐらいの間は大体皆いるみたいな感じでやっていたのですが、2011年の3月、引っ越ししてちょうど1か月経ったときに東日本大震災がありました。その直後から約2週間くらい「出社は危険も伴うのでするな」と会社から命令が出ました。一方で「ビジネスは止めるな」と。

(マイクロソフトは)ITの会社なんだから、自社のソリューションを使うことで、リモート環境下でもビジネスを止めないことはできるだろう、との指示だったんです。ミーティングをすべてSkypeでやったところ、それまではFace to Faceで行っていたのが、Skypeを使っても意外といけるねと全員が気付いて、そこから一気にリモートワークが定着していったという実体験があります。

コロナ禍の営業で避けるべきこと

ちょっと不謹慎かもしれないのですが、コロナ禍をきっかけに家電量販店でWEBカメラが全部売り切れていたり、ヘッドセットが爆発的に売れていたりと皆さんリモートでやりとりをせざるを得ない状況になったので、これを機にリモートワークや働き方改革は大きく進んだと思っています。

ただ、それも単に今まで社内でやってきたことを自宅で行うだけでは、出勤の行き帰りが短縮された一方で、家にいると子どもの邪魔が入ったりして効率が下がるので、あまり意味がない気がします。

そうではなくてこれを機に活動の質を高められると、このネガティブなコロナの状況を将来に向けてうまく活かせるといいのかなと思っています。

ビジネスの状況は厳しいので、そんなときに積極的に電話をかけて売り込みをしたり、訪問アポを取ろうとしたり、相手の状況を考慮しない一括メールをバンバン送るというのは、避けるべきだと思っています。

大前提として、積極的な売り込み営業活動をみなさん自粛されていると思うのですが、じゃあ指をくわえてその状況に甘んじているとどんどんビジネスの状況が厳しくなります。やるべきこととしては、今までマスに対して何でもかんでもアプローチしていたような会社さんの場合には、One to One的なアプローチが必要になります。

自社のソリューションや商品に興味を持っていただいているお客様というのは存在しますので、ちゃんと興味を持っている人たちに、丁寧にコミュニケーションをしていく。興味がある人に連絡しても別に嫌がられないと思いますので。

One to Oneマーケティングという新潮流

――One to Oneの考え方を詳しくお伺いできますか。

「One to Oneマーケティング」というコンセプト自体は10年以上前から、有名な大学の教授にも推奨されていたのですが、実際にそれができる会社は多くありませんでした。それが今、デジタルの力でやりやすくなってきています。

以前はお客様側が広告を見ても、自分では調べずにすぐにいろんな会社の営業マンを呼ぶことが多く、その中から情報収集して契約に至るっていうケースが多かったのですが、最近は自分で営業マンを呼ぶと鬱陶しいので、Webを見て、自ら調査や比較を行い、営業マンを呼んだときにはもう6~7割はどこで何を買おうとしてるかって決まっているケースが結構多くなってきています。

デジタルを活用してお客様が調査しているプロセスをちゃんと捉えて、自社のサービスと比較検討しるような興味を持っている人にピンポイントにアプローチしに行くことが、One to Oneの考え方ですね。

それを実現するには、やらなければいけないことが3つあります。

One to Oneマーケティングを実現する3つのステップ

①購買プロセスの整理により顧客の興味度を可視化する

1つ目は、購買プロセスと役割分担を整理することです。お客様は自社のサービスを知らない状態から始まって、Web広告などを見て「あ、こんなサービスがあるんだ」と認知をし、その後、実際にそのサービスを購入した方の話などを聞いて興味を持ちます。そこから比較や検討をして実際に案件化に進み買ってもらうという、興味度がどんどん上がっていくという一連の流れがあります。これをちゃんと整理をすることが第1ステップです。

これを整理する上で役立つのが、見込客の行動をちゃんと捉えることです。昨今のITツールの活用でスムーズに行うことができます。

例えば、マーケティングオートメーションと呼ばれるツールを利用すると、従来、お客さんの属性データやオフラインセミナーへの参加有無、電話で会話した内容などはExcelで管理していたかもしれませんが、それ以外にも「Webにいつ来ているのか」「どういったコンテンツをダウンロードしたのか」「動画をどのぐらい見ているのか」「送ったメールを開封したか」「クリックをどのぐらいしてくれてるのか」など、かなり可視化できるようになってきていますので、ここをしっかり捉えることが必要です。

最近は、メルマガを登録したり、何か資料のカタログを見ようとしたら、名前とメールアドレスを登録させられることが多いです。そこで名前とメールアドレスを入れてくれる人は、冷やかしではなくて多少は興味があるということになります。

さらに「ホット化」と呼んでいますが、事例や価格情報までHPに見に来てくれている人は、より比較・検討フェーズに入っています。そういったデジタル行動を捉えることでその人の興味度を測ることができます。

このようなフェーズの整理を行い、どのフェーズの人にどういったコンテンツを届けるのかを考える。それは、今まで営業マンの方が、0から100まで全部やられていたのをうまく役割分担しながらやっていくことが重要になってきます。

――優秀な営業マンは「受注まですべてを行える人」という認識がまだ根強いと思うのですが、購買プロセス自体をまず分けることに関して拒否反応を示すことはないですか?

例えば平時のときであれば、お客様からすると営業マンからの営業に対して「みんな売り込み大変だな」ぐらいの余裕があるかもしれませんが、今のコロナの状況では売り込みの電話が来たときに「えっ」てなるじゃないですか。

法人の場合は特に「あの会社こういうことするんだ」と何かネガティブな評判が立ってしまうと、お声も掛からなくなってしまいます。

あとは、やはり一人で始めから最後までを全部やろうとすると、すごく非生産的ですし大変だと思います。

セールスフォース社が「The Model」というモデルを提唱されていて、お客様の購買プロセスに合わせて、自社内の組織の役割分担を明確にしています。見込み顧客を獲得するのはマーケティングチームが行い、そこから電話で本当にお客さんが真剣に検討してくれているかを確認し、訪問アポ化や商談に繫げるのはインサイドセールスチーム(電話営業部隊)が行う。その後、初めて営業にパスされます。

したがって営業は全然見込みのないところに飛び込むよりも、ある程度ニーズがあるところに対してアプローチに行くことができます。

これらに受注後のお客様を定着化をさせていく役割を加えた4~5つくらいの役割分担を明確にして行うモデルが、アメリカ発ですごく増えています。私がよく担当するBtoBのSaaS領域でもこうした役割分担は当たり前になってきています。

――役割を分けることにより生産性が上がるのはなぜですか?

役割により専門性が身につくこと、KPIが明確になりやること自体がスリム化されて集中しやすくなることがあります。あとは短いサイクルでPDCAが回しやすくなります。

各プロセスごとにKPIを設定するとどのプロセスが落ち込んでいるのかが明確になります。「見込み客の数自体がそもそも少ない」や「マーケティングがパスしている見込み顧客の質が悪い」「案件はたくさんあるが営業が全然受注していない」など、どこに改善のポイントがあるかが分かりやすく、改善施策を講じたあとの検証も非常にサイクルを早く回せるので、生産性が上がりやすくなるのです。

②顧客の行動を捉えるIT環境を整える

――2つ目は何でしょうか?

先ほどの「購買プロセスの整理」をその会社のマーケティングや営業の方と会話をしながら行った後は環境を整えていきます。

ほとんどの企業が自社のWEBサイトを持たれているので、お客様に対してどんなコンテンツを提供していくかを整理していきます。例えば、WEBサイト上のコンテンツやメールマガジン、デジタルまたはオフラインでのイベントなどです。

コンテンツの整理の結果、WEBサイトのほかにZoomやBellFaceのようなリモートで商談が行えるIT環境を入れて、リモートでのセミナーが行えるようにする等の取り組みが必要となったりします。

あとは興味を持っている人を、デジタル上で特定するためのマーケティングオートメーションツール(MAツール)を導入することをおすすめしています。

金額感が合わなくて導入が難しい場合も、ホームページから何かコンテンツがダウンロードされたときやセミナーに参加したかどうかなどは、MAツールがなくてもトラッキングはできます。

IT環境を整えて、購買プロセスにおける興味度の変化を定量的に取得するための仕組み化していくことが重要です。

余談ですが、例えばセールスフォースのCRMシステムとマルケトを導入した場合には、見込み顧客がどの程度の頻度でWebサイトを訪問しているのか、どんな資料をダウンロードしたのか、など個人単位で確認することができます。

他にも、最近のMAツールであれば営業担当者向けのソリューションを提供していまして、メールのテンプレートを全社で共有しておけば、あたかも営業社員が個々人から送っているかのように送れたり、送ったメールを誰が開封し、クリックしているのか、といった履歴をすべて各営業メンバーが把握できる仕組みが入っていたりします。

やはり、生産性を上げていこうとすると、こういったツールがあるかないかでは大きく変わってくるのではないでしょうか。

③コロナ禍でより重要性が増した過去や既存のお客様のフォローアップの仕組化

ここまで「購買プロセスの整理」「環境の整備」とお話してきたました。今のご時世だからこそ重要だと思っていることが、3つ目の「過去や既存のお客様のフォローアップの仕組化」です。

今のコロナ禍では新規の見込み顧客の開拓は結構大変です。今は新規を取りに行くよりも既存顧客や過去にアプローチして失注したお客様を対象に、丁寧なアクションを行う方が重要性が高いと思っています。

過去に失注したり、ご購入いただけなかった見込み顧客へのアプローチは、言い方としては良くないですが「リサイクル」とアメリカでは呼ばれています。再発掘をしていくイメージです。先ほどのようなツールを使いながら「最近どうですか」というようなコミュニケーションを取っていきます。

競合商品を購入したお客様であれば「他社さんを買われましたがちゃんと使えてますか?」というメールを送り、自社のWEBサイトを見に来ているようであれば電話でアプローチをします。

既存のお客様であれば契約している会社から連絡が来るのは不自然ではないので、買ってくれた製品やソリューションを満足いくように使っていただけているかを確認し、アップセルやクロスセルできる余地がないかを探っていきます。

購入後のコミュニケーション活動をアメリカではカスタマーサクセスと呼びます。カスタマーサクセスのチームマネージャーは営業とは違った担当が行っている会社が増えていて、書店に行くとカスタマーサクセスの本は最近増え始めています。

One to Oneマーケティング取り組みの具体事例

ーこれまでお話いただいたOne to Oneマーケティング実現に向けた3つの取り組みについて具体的な事例はございますか?

ある月額の有料情報サイトを運営されている企業様を1年以上ご支援しているのですが、その会社様はお客様の解約に悩まれていました。

顧客数がかなり多く、中でも1年契約のお客様が多かったのですが、契約して1年後の更新のタイミングで「今月更新なので、よろしくお願いします」と電話を掛けて「そんな急に言われても、予算取ってないよ」と解約されてしまう状態で、電話する数も多かったので更新のフォローにカスタマーサポート担当(CS)がまさに汲々とされていました。

さらに追加の施策にも追われていて、解約も増えている中、アップセルもクロスセルもそんなにできてないしどうしましょう、というところからのスタートでした。

私が始めに行なったのは、先程お話しした通り、プロセスの整理からです。 お客様を契約更新した後にアップセル・クロスセルするまでの流れや、契約締結後のステージをどう定義するか、そのステージ毎のお客様に対して何をするかをちゃんと決めていきました。

次に、当時お客様がおよそ3,000社いらっしゃったのですが、この3,000社を「重要度が高いお客様」など、月額の契約単価によって「高い」「真ん中」「低い」と分けていきました。あとは解約リスクの可視化です。このサービスを使っている人は解約率が低いけれども、当然あまり使ってない人は解約リスクが高いと分析をしていきました。

こういう層別をして「ここは重要度が高いし解約リスクが高いから最初にフォローしなければいけないよね」とお客様のプライオリティをつけていくことと、契約後の最初の1ヶ月間の初回サポートに注力しました。

サービス概要をユーザーに理解してもらい、使い慣れてもらうオンボード期間を設けて、その後サービス活動中のフェーズがあり、そして更新2ヶ月前から更新のフォローをして更新に繋げる、という3つのステージを決めて、各ステージごとにアクションを決めていきました。

CS 担当者が6名いらっしゃったのですが、ステージごとにどんな活動をしていくのかを整理して、皆でポストイットで貼りだしながらまとめていきました。例えば、「この時期には電話でこんな会話をしましょう」や「ビデオ会議で繋いででこれをやりましょう」、「こんなコンテンツを提供しましょう」というイメージです。これらを整理して、それぞれのタイミングでなるべく自動化して、人の手を煩わせないようにしました。

皆さん日々考えながら活動しているので、私からのアイデアはほとんど無くて、提案のほとんどは現場の皆さんが出されたものでした皆の頭の中には「こんなことやった方がいいんじゃないか」とアイデアは数多くあるんですね。

それは私がマルケト時代に、どこのお客様とやっていてもそうでした。それを引き出して整理をしてあげて、プライオリティ付けをしていく、そしてなるべく手をかけずにまわしていく、そんな仕組みを作っていくことがほとんどです。

――整理をした上で、どんなツールを使われたのですか?

私が入らせて頂いた当時はセールスフォースに活動データや顧客データを投入して見られるようにしようという方針は決まっていたのですが、まだセールスフォースを導入したばかりのタイミングだったんですね。

なので、スタート時は8割はExcelで管理していました。マネージャーが週に1回Excelをチェックしている状態でした。それをセールスフォースに移行しました。

Excelは分かりやすくていいのですが、皆から情報を聞いて転記したり、皆が1個のファイルを置いといたところを皆がそこに書き込むとデータが壊れたりするので、やはり専門のツールを使った方が、楽は楽ですね。

組織全体のレベニューを最大化するCROとは

――中小企業がOne to Oneマーケティングを行うにあたってどんな方が推進役になることが多いのですが?

アメリカでは、これまでお話した購買プロセスの整理や環境整備、そしてしっかりお客様のLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を上げていく活動を一気通貫で管掌するCRO(Chief Revenue Officer:チーフレベニューオフィサー)と呼ばれるポジションを置くことが増えています。

これは、営業のチーフセールスオフィサーではありません。組織全体のレベニュー(利益)を最大化することがミッションだからです。

CROはマーケティングからインサイドセールス、営業、カスタマーサクセスの流れをいかに効率化し、売り上げを最大化させ、スピーディーにできるかをミッションとして持っています。アメリカですごく増えていて、日本でもスタートアップ界隈を中心にCROを置く会社がかなり増えてきています。

――CROになれる人はどんな人なのでしょうか?

やはり営業経験があって営業でマネージャーや営業部長経験者が、マーケティングやインサイドセールスを勉強しながら、全体を見ていけるようにすることが一番成功するパターンではないかと思います。結局、お客様と相対しているのは営業なので。

マーケティング施策に対して、筋がいいか悪いかの良質なフィードバックを与えられるのはやはり営業チームなんですね。「お客様にこのメッセージを出してみたけれども全然響かなかったよ」など、そこはお客様と対峙している方たちがよく分かっています。

クライシスを福と成せるか

――営業パーソンはマーケティングやカスタマーサクセスなどのトレンドを学んでいかないと取り残されてしまいますね。

そうですね。やはり、自分の役割の前工程と後工程の連携みたいなところですかね。そこがやっぱりうまくできる営業の方が、結局成績も上がると思うんです。

「いつまで経ってもマーケが全然ちゃんとやってくれないから困るよ」と言っててもしょうがないので(笑)前に進みません。そういったところを一緒にプロセスを作っていくことがすごく重要になってきます。

――最後に、営業活動やマーケティング活動を行われている方々にメッセージをお願いします。

私自身もコロナ禍で自分が担当しているお客様の商談が止まっり、企画していた大きなイベントが中止になったりしています。皆さんすごい苦しい状況だとは思います。

一方で、不謹慎かもしれませんが、これをきっかけにやり方やプロセスそのものを見直す良い機会になると思っています。

しかも、単に会社でやっていたことを自宅でやるのではなくて、質を上げていくことを熟慮する。こうした行動をみんなで考えていくことで、日本企業全体が更なる飛躍をするきっかけになればと願っています。

私がマイクロソフトで経験したようにクライシスを機に働き方改革やリモートワークが一気に加速しました。「災い転じて福と成す」となるといいなと思ってます。

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