【コロナ禍を好機に】組織の意識と総務の役割の変革のために大切なこと

 新型コロナウィルスの猛威により、多くの企業がリモートワーク等の対応を迫られています。これを機に働き方改革の推進を一気に進めようと、業務のICT化やワークプレイスの変革に着手する企業も増えてきました。

 今回、ワークプレイス改革プロ・総務プロの2名に今回のクライシスを好機に変えるための方法というテーマで寄稿いただきました。ぜひこの難局を乗り切るヒントにしていただければと思っています。

 まずは元WeWorkでワークプレイスのプロとして活躍されている本田優プロからの寄稿をご紹介します。

本田 優(Tokyo Creators’ Project / Co-founder)
元WeWork Japan ワークプレイスストラテジスト 大学在学中より、ワークプレイスが経営にもたらす影響について研究。卒業後、国内設計事務所やGenslerにて、国内外大小様々なワークプレイス案件にコンサルタントとして携わる。WeWorkではデザイン・運営・チェンジマネジメント・テクノロジーの4軸から包括的なワークプレイス戦略とソリューションを提案。

組織変革のキーは「メンタルモデル」にあり

 新型コロナウイルスの影響による企業経営において例えば以下のようなことに皆様取り組まれているかと思います。

・感染による病欠等や自宅待機による生産性削減の予測
・その対応としてのリモートワーク切替への即断
・切り替えた際のマネジメントルールの策定
・切り替えられない根本原因の追求

 このような議論において「意外とできるな、大丈夫だな」という手応えと、「ここは難しいな、チャレンジだな」というハードルを認識されながら、日々試行錯誤されているのではないでしょうか。

 緊急事態宣言の解除やwithコロナのフェーズが来つつある今日、次なる一手を打ち出していけるかが多くの企業のターニングポイントになると感じています。変革に困難はつきものですが、変革を辞めた瞬間にそれは失敗経験となってしまいます。

 スピードがはやく、不確定要素の多い時代、日頃から変化に柔軟な組織づくりを目指していただきたいのですが、その際に「組織文化」や「意識」といったメンタルモデルに着目するとよいでしょう。

 組織変革のキーはメンタルモデルの変革にあり、多くの場合、古い慣習や経験、マインドセットによって、真の効率性や有用性は無視されがちです。

メンタルモデルの変革のお手本は「クールビズ」?

 メンタルモデルを変革させるために必要なステップは大きく3つあります。

1.トップダウンでのメッセージの発信
2.リーダーシップやインフルエンサーによる模倣
3.有効なマスコミュニケーション

 日本のビジネス界においてメンタルモデルが大きく変換された事象で有名なものは、クールビズの導入が挙げられます。猛暑であってもホワイトカラーの職種は「ネクタイやジャケットを着用して出社しなければならない」というメンタルモデルが、既に過去のものとなったのは皆さん体感しているところだと思います。

 クールビズ導入のそもそもの目的は、夏場の冷房使用による電気の使いすぎや二酸化炭素の排出を削減することでした。つまり、コスト削減や環境への配慮という効率性や有用性に対して、古い慣習として続けられていた長袖シャツ・ネクタイ・背広を着用しなくてもよい、というメンタルモデルを変えていく動きでした。

 変革するために取られた対策がまさに上記の3つです。

 まず、時の環境大臣小池百合子さんがクールビズを導入する目的や手法を広く国民に伝えたこと。(トップダウン)

 官公庁でも先んじてクールビズを模倣したこと。(リーダーシップ)

 さらに、ちょうどこの変革が進んでいる頃、スティーブ・ジョブスが国内でも有名となり、彼のタートルネック・ジーンズ・スニーカーというビジネスファッションにもフォーカスが当たりました。(インフルエンサー)

 このようなビジネスにおける服装の意識の変遷をマスコミュニケーションによって、ポジティブに伝えられたことで、今日では「クールビズ」「スーパークールビズ」は浸透されることとなりました。

 リモートワークの導入を試みる企業でよく聞く話が「制度や環境は整備したが、周りがやっていないから自分もしにくい」という意識によってなかなか推進されないというものがあります。まずは、リーダーから実践する、かっこいい・マネしたいと思うようなインフルエンサーを作り出す、そのような取組みを有効なメディアツールを用いてポジティブに社員に伝えていく、というプロセスを是非導入してみてください。

ニーズの提示こそ総務部の社会に対する役割

次に、外資系企業の総務マネージャーを歴任され総務のプロフェッショナルとして活躍する金英範プロからの寄稿をご紹介します。

金 英範 氏
オフィス設計事務所での勤務経験を経て、米大学院へFM修士留学。帰国後、外資系証券会社を中心にいくつかの企業の総務、FMをインハウスで20年以上実践。またコンサルティング、アウトソーシング事業などサプライヤーとしての経験も豊富。2012年メリルリンチ日本証券総務部長、2016年日産自動車コーポレートサービス統括部部長を経て、現職Workwell Technologies, Inc.の日本支社長。兼業のHite & Co.にて戦略総務、オフィス移転や自分達らしいワークプレース造り、ファシリティマネジメントの社内側アドバイザリー活動を活発に行っている。

 今は目先の問題解決に四苦八苦している最中ですが、この機会に冷静に業者との関係や契約内容を見直す良い機会だと考えます。

 コロナ禍に襲われた直後、会社の備品としてマスクやトイレットペーパーが足りないといった経験をされた企業も少なくないでしょう。

 しかしながら、これらの備品については普段から調整できる部分でもあります。例えば「備品ストックをSLA化し業者契約にしていく」方法があります。これなら、自ら頑張って倉庫に保管する必要もないのです。某外資系企業だと、マスク不足と世間が嘆いていたコロナ感染拡大直後も「全社員×毎日4枚×3ヵ月分」のマスクの用意がなされていた、というのが現実です。

 なぜ準備ができたか?それは普段から備品関係についての環境を整え、業者契約としてストックマネジメントと配給プロセスが機能しているからに他なりません。

 各企業の総務部が有事の際に一斉にあたふた買いに動くのではなく、前もって総務として業者側、つまり「市場」へニーズを提示しておくことにより、供給市場全体がそれを認識し、市場供給量ストックが増えていきます。そのような社会をつくるのは、総務部の社会に対する重要な役割でもあります。

 在庫がなくなってから注文するというのではなく、あらかじめ「常に3ヶ月分のストックを持つ」という意識で全国のそれぞれの企業に属する総務部が行動し、外部へそのニーズを発信する習慣を持つ事により、いざというときに国全体が困らずに済むのです。

 大袈裟なようですが、普段は縁の下の力持ちと言われる総務がいざという時は「総務部が日本を救う!」という気概を持つことで、実際に多くの人を救うことが出来ます。企業コーポレートサービス機能が専門化されプロ化されている国や地域ほど、今回マスクの問題が小さい、という事実があります。これを真摯に受け止める必要があります。総務部を主軸にした「企業の外部へのニーズ出し」は非常に重要なのです。

 各企業ごとに自社の必要個数を確認し、ある程度長期的な視点でいざというときのためのニーズを出しておくことが重要です。

 今回のケースで言うと、交通機関が遮断されているといったことはなかったので、在庫があれば対応できる問題でもありました。この経験を踏まえて普段からやるべきことを話し合い、長期的な視点を持って今、BCPプロセスを見直すことが重要です。



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