事例紹介

株式会社ニフコ × hap株式会社の導入事例

「失敗を恐れずチャレンジできる環境で“自分の想いを分かち合うことの大切さ”を学び、協業で商品開発を行うことができた」(職種:研究開発、留学頻度:週1日、留学時:中途入社11年目)
 hap株式会社様
ニフコ×hap
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目的
事業共創を目指す
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背景
自動車業界は100年に一度の大変革の時代を迎えているため、同じ目的に向かう個々や組織の意識を変化させ、自走力を持ったクリエイティブな技術者の育成が必要だった
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効果
失敗を恐れずチャレンジできる環境で、自分の想いを分かち合うことの大切さを学び、自信がついた/共創のプロジェクトを起こし、形にすることができた
他社留学を終えて元の職場に戻った「卒業生」にインタビュー。留学中、留学後の想い、そして「留学後に何が変わったか」について、体験談を語っていただきます。
今回お話を伺ったのは、株式会社ニフコ。他社留学を経験したのは、研究開発に関わる村中 誠さんです。今回の留学では、BtoCビジネスにおける企画から商品化までのビジネススキームを身に付けるという目的で、部品メーカーとは全く異なるアパレル事業を行うhap株式会社に留学しました。留学中は、事業共創プロジェクト「環境配慮×アパレル」の推進に携わりました。
所属 株式会社ニフコ
留学先 hap株式会社
他社留学期間 週1日/半年間(2020年8月~2021年2月)
留学した人 技術本部 技術開発センター 村中 誠さん(留学時:中途入社11年目)
送り出した人 技術開発センター 技術主幹 根津 幹夫さん

初めてのBtoCビジネスにチャレンジ

――まず初めに、留学中の半年間は、どんなことをされていたのですか?
村中さん(以下、村中) 鈴木社長との最初の打ち合わせで、6ヶ月という限られた時間で成果を出さなくてはならず、どのように業務を進めるかも白紙の状態でした。そのため、その場で、マスク需要の高まりを受けてすでに販売を始めていた先方のマスクとニフコのマスクストラップのコラボ製品を提案しました。鈴木社長から即OKをいただき、さらに環境配慮を商品のコアにすることを決め、商品開発が始まりました。そして、早速、社内の関連部署に協力を要請し、マスクに使えそうなニフコの販売している部品や環境配慮素材の調査、アイデア検討、部品の性能試験とチームで協力しながら、スピーディーにPJを進めました。何度も議論しながら進めた結果として、開始から4ヶ月目に、先方のエコマスクとニフコの環境配慮素材を使用した部品をコラボさせてクラウドファンディングで出品しました。そして、約1ヶ月間の出品を経て、その結果の分析を行い、第2段の方向性まで打ち出し、留学期間が終了しました。
サスティナブルな素材にこだわったマスク
-―ご自身が携わった商品が出品されたときのお気持ちはいかがでしたか?
村中 これまでBtoBビジネスかつ品質・コストに厳しい自動車業界ということで数年かけて製品を開発しても世に出せずに埋もれてしまう経験を何度もしているので、こんなに短期間で製品を開発して僅かながらにも売り上げにつながったことに衝撃を受けました。これがBtoCビジネスの醍醐味かと正直とても驚きました。
――今回、他社留学してみた感想はいかがでしたか?
村中 自分の中ではこの半年で脱皮ができたと感じています。これまでは想いを自分の中でため込むというか、我慢する性格だったんですね。でも、この半年間でチームランサー(※下記リンク参照)に毎週レポートを書いて、自分の想いを伝えていくことを繰り返していくうちに、自分の中で楽しくなっていきました。そうすると、周りも自分に対する接し方が変わってきて、自分の正しいと感じる想いを伝えて、みんなが良い方向に変わってきているのを少しずつ実感することができました。そういったことを通して、「これは自分の想いを伝えるべきだな、伝えるべきだったな」とすごく感じたんです。これからも自分の想いを伝えていくことが大事だなと思います。半年間とても楽しかったし、脱皮できたので良い経験になったと思います。

自分の想いを伝えられるようになり、自信がついた

――これまであまり自分の想いを発信してこなかったんですね。
村中 理想論は好きだったのですが、それを語っちゃうと「何、青臭いこと言ってるの?」みたいに周りからどう思われるか不安で、なかなか言わずにきました。でも、この半年間、自分の想いをガンガン伝えてみたら周りも良い反応だったので、自分の想いは伝えるべきだなと実感することができたんだと思います。
これまで発信してこなかったのは、自分の弱さだったのだと思います。今でも発信することに対する恐れはゼロにはなっていませんが、留学中は周りのメンバーが肯定的だったこともあって、発信していくべきだと思えましたし、そうすることで自信がついたというのもあります。「伝えてもいいんじゃないか、いやむしろ伝えた方がいいんじゃないか、悶々とするよりは伝えてしまった方がいいかな、伝えて相手がどう思うか、どう感じるかは関係ないし、今は響かなくても後になって響くこともあるかもしれない」と思えるようになりました。強くなったのかもしれないです。あとはブレーキをかけずに出すことができるようになったので楽にもなりました。今伝えるべきことをそのときに伝えるようにすることで、より今この瞬間を楽しめるようにもなったと思います。
写真 村中さん
(写真 村中さん)
――発信することは今後も継続していきたいとお考えですか?
村中 そうですね、引き続きチームランサーにみんなで気づきや考えを書き込んで、発信していくことを継続したいと思っています。元々私は人前で話すことに苦手意識があって、そう思い込んでいるところがありました。書くのはじっくり時間をかけることもでき、頭の整理にもなるし、自分に合っていることがわかりました。口頭で伝えるよりも、書いて伝える方が自分には合っていることが人生で初めてわかったので、本当にそれがすごく良かったです。また、言葉の力が大きいと感じる半年間だったと思います。
――伴走者から「村中さん、すごく変わったね」と言われたと聞きました。
村中 そうですね、先ほどお話したとおり、自分の考えを伝えるようになったという変化がありましたし、伝えた方が楽だなと思うようになりました。また、自分の考えがより明確になってきたという変化もありました。何回も自分で発信していくうちに、自分の考えが「正しいんだな」と自信を持てるようになって、明確になったというか、ピントが合ってきた感じです。
今回の留学で、伴走者とこのような話をしましたが、本当にこんなに深く、真面目な話をしたことがありませんでした。入社して10年間、伝えることを我慢していた部分がありました。まずは言葉より行動と思った10年でしたが、この半年間でそれが解放されました。10年間我慢していろいろ感じることはありましたが、この10年があったからこそ今があるのかもしれませんし、言葉に重みが出せるようになったのかもしれません。
今回の留学によってこれまでの会社というネットワークを出て、色々な人の想いにふれて、やっぱり自分はこういうことがやりたいんだ、という心の奥底にある想いが明確になってきて、「自分は自分でいいんだ」と信じられるようになったことがとても嬉しいですし、感謝しております。留学前はこんな風になると思っていませんでした。本当に他社留学に手を挙げてよかったと思います。

今後に向けての想い

――今回の留学経験を振り返って、次に留学する人へ何か伝えたいことはありますか?
村中 「まずは迷ったら行動した方がいい、あまり考えずにまずは行動してみよう」と伝えたいです。今回の留学を通して、行動すれば新しい世界が開けることを実感しました。まずはやってみることが大事で、いつまでも迷っていたって答えは出ません。
私自身がこの半年間で行動できたのは、心のどこかで「自分が正しい」と証明したい自分がいたんだと思います。自分が正しいということを行動を通して証明した半年間だったと思います。留学前は正しさを証明できる機会と場がなかったんです。今回の留学がそれを実現する場になりました。留学当初はそれが目的ではなかったのですが、途中からそちらの方が大事だと思うようになりました。今回、初の試みであるBtoCビジネスを進めながら、それ以上に自分の生き方を証明してみたいという想いが強くなったんです。スケールが大きくなった感じです。
私としては、「地球環境に良いことをしたい」という想いがあって、その一つの手段が「SDGs」「サステナビリティ」で、自分の生き方を試すにはすごくいいチャンスでした。他社留学では、人事評価や利害関係などを気にする必要がないので、失敗を恐れずチャレンジできる環境があります。失敗に対しても寛容さを持って対応してもらえるというのが普段の仕事と違うところだったと思います。
写真 村中さん
(写真 村中さん)
――今回の他社留学で学んだことをどのように活かしていきたいですか?
村中 みんな何かしら想いを持って仕事をしていると思うので、想いを共有し合いたいです。どんな大きさのチームであろうと、良い悪いではなく考えの違いを共有することが必要だと思います。共有からスタートして、お互いに理解してそこから始まる、そういう場を持っていきたいと思っています。これまでは淡々と仕事を頑張る感じだったのですが、今回同時期に他社留学した仲間がいたのが本当に心強かったんです。自分のこうありたいという想いを伝えながら、みんなの考えも聞いて、とても良い経験になりました。
私が変わっていく中で刺激を受けた社内メンバーもいたようです。これまで発信していくことにブレーキをかけていた方が一緒にプロジェクトを進めていく中で徐々に変わっていき、最後には自分でPRをするように変わっていました。社内にも強い想いを持った人材はたくさんいますので、そういった人たちと想いを分かち合っていきたいと思います。
――想いを分かち合いながら、周りにも良い影響を与えられるような人材になりたいということでしょうか?
村中 そうですね。会社の中期計画の中に私がやりたいことがそのまま書かれていて、会社と同じ方向を向いていることが確認できました。以前から、他部署との連携で商品ラインナップを増やしていきたいと思っていたので、チームランサー内でも発信していました。まずは自分の半径5mへ影響を与えることも大事ですが、そこから広げてニフコ全体を盛り上げていけるような、つなげる役割を担いたいと思っています。
それから、「エコ素材といえば村中さん」と社内で言われるようになりたいと思っています。また、環境に配慮した商品開発をやりたいという同じ想いを持った仲間を増やしたいと思っています。大学院のときから材料開発を専門にしてきましたので、これからも材料に関わる仕事にずっと携わっていきたいと思っています。日本はまだまだ環境問題では遅れていると感じていますが、だからと言って環境配慮への取り組み活動をする人が消えてしまうのは問題です。自分のような人材が必要とされる日は必ずきますので、そのときにすぐに対応できるよう自分の想いを発信しながら、自分のできることをやっていきたいと思います。
<留学先責任者からのコメント> ~株式会社hap 代表取締役 鈴木 素様より~
今回村中さんの留学をきっかけに、2社の強みを活かした「環境配慮多機能性マスク」の商品開発を行い、クラウドファンディングで販売しました。商品開発から販売まで一貫して一緒に仕事に取り組めたことは、当社にとっても大変勉強になりました。コロナ禍ということでリモートワーク中心となりましたが、コミュニケーションをしっかり取りながら進めることができたと思います。
今回のプロジェクトについては、技術的なことやテーマの各論に入る前に、留学生である村中さんにとって「正しいこと」「やりたいこと」をやりましょうと、プロジェクトの方向性を持っていったことで大きく変化したと思います。村中さんのスピーディーな対応には驚きましたし、村中さんの社内外の巻き込み方は大変勉強になりました。
〇受け入れ企業のメリットについて
当社としては初めて他社からの留学生を受け入れましたが、非常に新鮮でした。会社の事業としての親和性(副資材について検討などの経験)があったことも幸いしたと思います。途中から、半年間しかない時間軸の中で何らかの成果を上げようとチームが一丸となって楽しく進めることができました。当社のメンバーも楽しくやれたことも非常に良かったと思います。また、クラウドファンディングという新たな手法にもトライしたことで、自分たちの課題も見えてきたことも非常に良かったと思っています。村中さんの留学終了後も、次につながる仕事をしよう、という機運も出てきています。
コロナ禍でコミュニケーションが取りにくい中で、かえって皆が自立主体性が出てきたように思います。当社では、若手が会社を1つにまとめていくような動きができてきました。やらされている感もなく、自由に主体性を持って取組む姿勢が生まれたのが当社の中でも大きな効果と言えます。
また、アパレルの同業他社との協業では、今までの固定観念に囚われて、新たな可能性を追求できにくいと思いますが、今回異業種とコラボレーションさせていただき非常に面白いと感じました。ニフコ様は素材に関する研究も進んでいるため、非常に高い可能性があるのではと思い始めています。今後も良い関係性を継続していきたいと思っております。ありがとうございました。
会社名 株式会社ニフコ
業種  工業用プラスチック・ファスナー及びプラスチック精密成形部品の製造・販売
URL https://www.nifco.com/