事例紹介

南海電気鉄道株式会社 × クジラ株式会社の導入事例

「目的」を意識する習慣、スピード感が身に付いた (職種:営業、留学頻度:週1日、留学時:新卒入社6年目)
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目的
大企業では得られない経験をし、新しい視点を得る
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背景
ベンチャー企業への理解を深め、共同事業の可能性も探りたい
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効果
目的を見据えて最適な手段を選べるようになった/考えながら走れるようになった
他社留学を終えて元の職場に戻った「卒業生」と「送り出した人」にインタビュー。「留学前」「留学中」「留学後」のそれぞれの想い、そして「留学後に何が変わったか」「留学先で学んだことがどう活かされているか」について、体験談を語っていただきます。
今回お話を伺ったのは、大阪・難波に本拠を置き、和歌山・高野山方面とつなぐ鉄道を運営する南海電気鉄道株式会社(南海電鉄)。他社留学を経験したのは、新卒入社後、商業施設運営部門を経て、現在はオフィスビルの運営管理部門に所属する小西一輝さんです。リノベーション事業を手がけるベンチャー企業、株式会社クジラへの留学を経験しました。
所属 南海電気鉄道株式会社
留学先 クジラ株式会社
他社留学期間 週1回/3カ月(2019年12月~2020年2月)
留学した人 小西一輝さん(留学時:新卒入社6年目)
送り出した人 人事部(教育・厚生担当)林 秀樹さん
※現在は株式会社南海リサーチ&アクト事業開発部所属
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大企業では得られない経験をし、新しい視点を得る
【他社留学 Before】
――他社留学の導入を決めた背景をお聞かせください。
林さん(以下、林) 教育担当として、いかにして人材を育成するかという課題に常に向き合っています。ベンチャー企業への留学は、通常の研修では得られない、大企業にいては経験できない経験ができ、特別な成長の機会になると思いました。
また、当社では今後、ベンチャー企業を含む他社とアライアンスを組むことで新たな社会的価値を生んでいこう、という大きな流れがあります。その点でも、「ベンチャー企業」への理解を深めることが重要。つまり、「人材育成」と「ベンチャー企業を知る」という一石二鳥の施策だったのです。
――他社留学で何を得てきてほしいと思いましたか?
 特に、ベンチャー企業の経営者のリーダーシップを見てきてほしいと思いました。ビジョンを語ったり、部下をモチベートしたり、エンゲージメントが強いチームを構築するプロセスを体感し、それを持ち帰ってもらうことを期待しました。
留学生を送り出す前、留学先企業の社長にお会いしたんです。当社にはいないタイプの、カリスマ性を感じる若いリーダーの方でした。社長と対話してみて、「この人と働けば必ず多くのことを学べる」と確信しました。
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背景
ベンチャー企業への理解を深め、共同事業の可能性も探りたい
-―他社留学する人を、どのように選びましたか?
金子 当初は指名制も考えましたが、公募制としました。3ヵ月の間、本業と留学先企業の仕事を併行するとなると、かなりの負荷がかかります。その負荷を乗り越えるために必要なのは、第一に「意欲」だと思うので、「行きたい」という人に自ら手を挙げてもらったんです。
また、せっかくの機会なので、当社と留学先企業と共同で新たな事業の起案、実現につなげたいという狙いもありました。経験値として、その実現性がより高いと考えられる1人を選びました。
――小西さんは、なぜ他社留学生の公募に手を挙げたのですか?
小西さん(以下、小西) 僕のチームには中途入社者が3名います。彼らと一緒に仕事をする中で、南海電鉄とは異なる働き方を見聞きし、自分も別の働き方を身をもって体験してみたいと思ったんです。
組織規模も働き方もカルチャーもまったく異なる会社へ飛び込むのは、不安もありましたが期待が大きかったです。
左)小西一輝さん 右)人事部(教育・厚生担当)林 秀樹さん
【他社留学中】
留学先はクジラ株式会社。中古マンション・一軒家・古民家・オフィス・店舗など、幅広い物件のリノベーション事業を軸とし、ホテルの運営、物件の収益改善、街のデザイン・開発事業なども手がける約30名規模のベンチャー企業です。
留学当時、クジラでは、観光業や不動産業の大手企業と商談を進めていました。小西さんからは、大手企業が取引に際して気にするポイント、大手企業の稟議~決裁の流れ、プレゼン方法の工夫などをアドバイス。また、両社でどんな共同事業が可能かを協議し、自社の関連部署へつなぎました。
――留学先で、カルチャーショックを受けたことや新鮮な気付きはありましたか?
小西 まず、経営者と社員の近さ。物理的距離においても心の距離においても、です。経営トップの考えが社員にダイレクトに伝わるので、社員の行動もブレない。同じ方向に向かって進んでいるのがすごい、と思いました。自分の会社では、部門ごとに大切にしていることが少しずつ異なっていますから。
あと、社内コミュニケーションですね。自社ではメールが中心で、「○○課長 お疲れ様です。△△部の××です」といった挨拶から始まりますが、クジラ内のコミュニケーションはLINEやビジネスチャットが中心。役職関係なく、要件を端的に伝える。フラットにスピーディに会話が進んでいました。
――留学を通じて、特に大きな学びとなったのはどんなことでしょうか?
小西 「目的を見据える」というスタンスですね。社長は「何のためにやるのか」「なぜそれをする必要があるのか」「なぜそれをしないのか」、目的をしっかりとメンバーに伝えていました。
自社では、「これをしておいてください」と、具体的な作業内容を指示されることも多いのですが、クジラでは「目的」を明示した上で、それを達成するための手段や進め方をメンバーに任せていました。
それは、個々のメンバーが成長し、強いチームを築くためにとても大切なことだと実感し、自社に戻っても実践しています。
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目的を見据えて最適な手段を選べるようになった/考えながら走れるようになった
【他社留学 After】
小西さんは2020年2月末に留学を終了。もともと所属していた部門に戻りました。
――南海電鉄に戻った後、他社留学経験はどう活かされていますか?
小西 「目的」を明確に意識することを学んだので、それが活きていると思います。何かに取り組むにあたって、「なぜこれをやるのか」に立ち返って物事を考えるようになりました。それにより、選ぶ「手段」の幅も増えたと感じています。例えば、それまでは「Aパターンで進めなさい」と言われたら、何の疑問も抱かずその通りにしていました。けれど、目的を見据えると、「Bパターンのほうがいいのではないか」「Cパターンという手もある」など、別の手段が浮かんでくる。結果、ゴールに最短で到達できるプランを選択できるようになりました。
後輩に対しても、「目的」を提示して、手段は自分で考えてもらっています。すると、僕の中ではA・B・Cのプランを想定していたところ、後輩からDのプランが上がってきて、それがベストだったことも何度かあります。
このようにスタンスを変えたことで、チームのレベルアップにつながっているんじゃないでしょうか。
あと、「コミュニケーションの効率化」を推進しています。もともとチャットツールは導入されていたのですが、あまり使われていませんでした。留学から戻ってからは、僕が率先して使っています。チーム内のちょっとしたやりとりは、チャットで投げかけるようになりました。「この資料の確認をお願いします」など。メールで文章を作成するよりも、時間と手間が短縮できます。1回あたりはほんの1~2分の削減でも、積み重なればかなりの効率化ができているように思います。
――他社を経験してみて、南海電鉄という会社の魅力を再発見した、ということはありますか?
小西 一歩外に出て自社を眺めてみると、事業規模の大きさを改めて実感しました。「難波」という街を支えていることへの誇りとやりがいを新たに感じましたね。
――他社留学の前と後で、ご自身が「変わった」と思うことはありますか?
小西 「いろんなことをやってみよう」という精神が芽生えたように思います。当社内には新規事業プログラムがあるんですが、そこで立ち上がった新規事業のお手伝いも自主的にしています。
そして、「考えながら走る」こともするようになりました。当社は鉄道という社会インフラ事業を手がけているだけに、安全・安心を重視し、しっかりと考えた上で行動に移す体質の会社です。けれど、仕事の種類によっては、プランが固まっていなくても、走りながら考えればいいじゃないか、と。ベンチャー企業の風土に身を置いたことで、自分自身にそんな変化もありました。
留学を終えてから約1ヵ月後、新型コロナウイルス感染拡大防止のため緊急事態宣言が発令されました。当然、緊急対応しなければならない案件が多く出てきました。その際、以前のように「関係者全員に確認をとってから動く」ではなく、「自分で判断して関係者には事後承諾を得る」というやり方で進め、結果、お客様への対応も柔軟にできました。
上司も柔軟な考え方をする人なのでやりやすかったということもありますが、他社留学で「考えながら走る」トレーニングができていたことで、スピード感を持って対応できたかな、と思います。
 「当社の慣例は必ずしも正解ではない」――そういう感覚を、小西君が身に付けて帰ってきてくれたことをうれしく思います。彼が経験し、持ち帰ってきたものを社内に伝播させていきたいですね。当社には、チャレンジングな若手がまだまだ大勢いると思います。彼らが小西君のように遠慮なくどんどん挑戦し、成長する。そのような挑戦する風土づくりを進めていきたいと思います。
会社名 南海電気鉄道株式会社
業種  鉄道事業、開発事業、流通事業、土地建物賃貸事業
URL http://www.nankai.co.jp/