事例紹介

宇宙航空研究開発機構(JAXA) × 株式会社Synspectiveの導入事例

「自分に甘くなった途端に成長が止まる。そのプレッシャーがモチベーションにつながった」
(職種:事業推進、留学頻度:週1日、留学時:新卒入社7年目)
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目的
民間企業の事業プロセスを理解し、新たなプロジェクトの共創を目指す
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背景
政府が宇宙関連産業の市場規模拡大を目標に据える中でビジネスをプロデュースする人材が不足していた
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効果
新たなコミュニケーションスタイル、スピード感の獲得、市場の動向に敏感になることを学ぶ
他社留学を終えて元の職場に戻った「卒業生」にインタビュー。留学中、留学後の想い、そして「留学後に何が変わったか」について、体験談を語っていただきます。
今回お話を伺ったのは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の星野 千春さんです。JAXAの共創活動の一つの制度(越境プログラム)の一環として、他社留学を活用いただきました。留学先は、衛星データを利用したソリューションサービス、および小型合成開口レーダ衛星の開発と運用を行うベンチャー企業、株式会社Synspective。留学中は、JAXAとの共創にもつながるビジネスの新規営業および衛星打上げに向けたPR活動のサポートに携わりました。
所属 宇宙航空研究開発機構
留学先 株式会社Synspective
他社留学期間 週1日/半年間(2020年9月~2021年2月)
留学した人 第一宇宙技術部門 事業推進部 星野 千春さん(留学時:新卒入社7年目)
送り出した人 新規事業促進部事業推進課 主任 小谷 勲さん
――今回、他社留学に行くことになった経緯を教えてください。
星野さん(以下、星野) 他社留学は社内の公募に応募して決まりました。応募理由は、ベンチャー企業の事業を創り上げるプロセスや考え方、仕事への姿勢を学びたいと思ったからです。JAXAでは研究開発のプロジェクトの立ち上げに関わっていましたが、その取り組みの中で、JAXAの常識とベンチャー企業の仕事の仕方に大きなギャップがあることを感じたんです。そこで、まずは私がベンチャー企業に飛び込み、ベンチャー企業の仕事への姿勢や内部制度、コスト感覚を理解したいと考えました。また、ベンチャー企業の事業を創り上げるプロセスや考え方を理解することで、将来的なJAXAと民間企業の新たな関係性の構築につなげたいという想いもあり、応募しました。
――留学中は、ソリューション開発と広報に携わったと聞いていますが、具体的にどんなことをされていたのですか?
星野 まず、ソリューション開発については、商談はもちろんのこと、メンバー同士のディスカッションを通してお客様との連携方法を検討したり、JAXAとの共創の可能性も模索していました。また、広報については、タイミングよく越境期間中にSynspectiveの衛星初号機の打上げがあったため、衛星の打上げ広報やプレスリリース、合同記者会見対応などを行いました。
(打ち上げ時オンラインイベント後の写真:テレビ右隣 星野さん)
――この半年間を振り返ってみて、どんな変化がありましたか?
星野 仕事の仕方でいうと、これまで以上に自分自身がスピーディに行動し、タイムマネジメントを行って効率よく仕事を進めるスキルが身に付いたと思っています。また、基本的なことですが、JAXAにいながら民間のビジネスの動向についても意識するようになりました。留学先では、単に宇宙開発の業界の情報だけではなく、その先にいるお客様、土木、インフラ、電力など、そういった幅広い業界の情報を取りに行っていました。JAXAでは、どうしても目先の衛星開発に目が行きがちになり、実際に衛星データを使ってくれるお客様視点が足りていなかったように感じました。今回の留学を機に、全方向にアンテナを張るように考え方が変わりました。
――所属企業と留学先では、どんな違いがあって、どんな気づき・学びがありましたか?
星野 まず、必要とするコミュニケーションスキルがJAXAの業務とは異なっていました。商談に複数回同席したのですが、オンラインの面談という限られた時間の中で相手方のニーズを引き出し、今後に繋がるヒントを見つけるというのは、JAXAのゴールが明確にあるコミュニケーションとは異なり、言葉や態度の一つ一つに対して常に敏感であり続ける必要があり、相手のふとした発言を拾って、ニーズを読み取る能力が必要だということがわかりました。
また、個々の打ち合わせの議事メモや気づき事項を積極的にSlackに投稿することで、すぐに課題や疑問点を共有し、それに対する回答、打ち合わせがセットされる、という業務スピードの速さを感じました。基本的にアクションが設定されたら、その日のうちに対応して、ひとまずやってみるという姿勢はJAXAでも実践したいと思っています。今まではこんなこと頼んでよいのか、忙しいのに申し訳ない、という思いがあり、一旦自分で持ち帰ってしまうところがありましたが、それを気にしているのは自分だけだと実感し、それよりもスピード感を持って業務をしようと思えたことが大きな気づきでした。
それから、人材の流入が多く、すぐに戦力になる点も刺激を受けました。皆さんの立ち上がりがとにかく早く、前職のスキルと人脈を活かして、すぐに営業、社内インフラ整備やマーケティング戦略を行っていました。雇用側もその人材を雇用した理由が明確で、雇用された側も自分が何を求められているかを明確に把握していて、常に「あなたは何で貢献できるか」を求められ、成果を出すことが必要とされていました。様々なバックグラウンドの人が集まることで、多様な意見が集まり、幅広いアイデアが出ていました。
――この半年間で苦労したことや反省点などはありますか?
星野 当たり前かもしれませんが、受け身になったら何も始まらないということを痛感しました。基本的に何でも任せてもらえるのですが、特に急かされることもないですし、課題が設定されることもないので、受け身の姿勢では何の成果もあげられない状況でした。JAXAの本務業務が忙しくなったタイミングから越境先の業務へのコミットが下がり、気後れを感じてしまった時期もありましたが、時間を効率的に使って、積極的に関わっていくことが大切だなと感じました。また、JAXAとSynspectiveの共創事業を検討する際は両社のスピード感が違うことによる調整の難しさを感じました。今後はJAXAとベンチャー企業の両方を経験した私が上手につなげていけたらと思っています。
-―留学先から何かご自身の行動について変化を求められるようなことはありましたか?
星野 特にありません。指摘されたりすることもなく、あなたの裁量に好きに進めていいよ、という社風だったように思います。Synspectiveは、専門分野を活かして中途入社されている方ばかりだったので、マネージャーが指摘・指導をするという文化がそもそもないのかなと思っています。そういった環境で一緒にプロジェクトに参画させていただいて、自分に甘くなった途端に成長しないと思いましたし、そのプレッシャーがやる気、モチベーションに結びつきました。
(写真 星野さん)
――今回の留学で経験したことを、今後どのように活かしていきたいとお考えですか?
星野 この越境で得られた刺激を忘れず、自分の働き方や考え方で周囲に発信することを続けていきます。また、市場の動向に敏感に、積極的にインプット、アウトプットを行っていきたいと思っています。実務面では、限られた時間の中で多くの情報を引き出せるコミュニケーションを心掛けて、戦略的に会話を進めることも意識していきたいと思っています。
――もう一度他の会社に留学するとしたら、どんな会社に留学したいですか?
星野 今回のメイン業務は営業だったので、次は別の職種を経験してみたいです。JAXAとは全く関係ない、JAXAにないような職種でチャレンジしてみてもいいですね。JAXAにない職種で留学したとしても、そのままJAXAでの仕事に活かせないかというと、そうではないと思っています。JAXAに営業職はありませんが、今回の留学で得ることができた営業のモノの考え方、ニーズの取り方などはJAXAでも十分活かせることがわかりました。JAXAでは誰も経験したことないような業務を経験し、それがJAXA内に必要な機能としてわかればそれを作ったりしてみたいです。
――どんな人が他社留学すると所属企業にとって価値があると思いますか?
星野 そうですね、若手の職員にはぜひ経験してもらいたいなと思います。日々の業務をこなしながらキャリアに悩む人もおり、場合によっては最終的な手段、転職を選ぶ人もいます。でも、外に出なくても、自分のやりたいことができる環境は社内にもあると思うんです。今回、自分自身が留学することで、JAXA内部にもまだまだ成長できる環境があることに気づきました。JAXA内での仕事の見つけかた次第でどうにでもなる。「やりたいことができない」と決めつけるのではなく、「自分のやりたいことを実現するには、どうやったらいいだろう、どう実現させていこう?」と視点を変えて創意工夫をすれば色々な可能性があると思っています。自分のやり方次第で自分の望む方向性に持っていくことはできるし、違う部署の仕事をすることもできる。自分のいる場所で自分のできることをやっていくことが大事なんだと思いました。
<留学先からのコメント> ~株式会社Synspective様より~
事業上関わりがあることもあり、JAXA様との関係性を深める機会としてありがたい機会をいただきました。星野さんには、ソリューション開発と広報の2つの面で支援いただきましたが、期待を超える貢献をしていただきました。プレスリリースや共同記者会見など実務面で貢献してくれるなど、特に広報面において大きな成果を残していただきました。JAXAと当社の共同プロジェクトにおいては、JAXA内部の調整、政府の意向や民間の思惑を調整していただき、とても助かりました。
時間的な制約がある中、かつ当社の社員数が急激に増える過渡期な中、当社に対する貢献を考えて、非常に積極的に動いてもらっていたと感じています。時間がもっとあれば、もっと深く関わっていただきたかったです。留学期間は終わりましたが、星野さん個人とはもちろんのこと、それ以外の方においても関係を継続していきたいと思っています。
(合同記者発表の写真)

〇星野さん 留学中インタビュー(1ヶ月経過時) http://nanasan.essence.ne.jp/release/2917.html

会社名 宇宙航空研究開発機構
業種  日本の航空宇宙開発政策を担う研究・開発機関
URL https://www.jaxa.jp/