チームビルディングのメリットとは?すぐに実践できる手法やゲームを紹介

 チームのメンバーたちが十分に能力を発揮し、成果を上げられるような組織作り上げるための組織開発の方法として、「チームビルディング」が注目されています。

 本記事では、チームビルディングの意味や目的、導入にあたっての手法や注意点などを解説します。

チームビルディングとは

 「チームビルディング」とは、メンバー個人ごとのスキルや能力を最大限に発揮させ、目標を達成できるチームを作るための取り組みのことを指します。

 さまざまな能力や経験を持つ多様なメンバーが、目的達成に向けた取り組みを通じて能力を発揮することで、成果につながるチームの構築を目指すものです。

チームビルディングとチームワークとの違い

 チームビルディングと似た言葉に「チームワーク」があります。チームワークは団体競技のスポーツなどでよく使われ、目標達成に向けたメンバー同士の協力関係に関係する言葉である点は同じですが、チームワークがメンバーの協力意識などの関係性の概念を指すのに対し、チームビルディングはチーム作りの具体的な取り組みを示します。

チームビルディングとチームマネジメントとの違い

 同じく、チームビルディングに似た言葉として「チームマネジメント」があります。「目的達成可能なチーム作りのための行動」という点は共通ですが、「誰が主体になる取り組みか」という点に違いがあります。チームマネジメントは管理者やリーダー、マネージャーが主体となった指示命令など、上からの働きかけを指すのに対し、チームビルディングは各メンバーを含めたチーム全体で行う取り組みをいいます。

チームビルディングの4つのねらい

 チームビルディングを行う目的や狙いには以下のものが挙げられます。

ビジョンの浸透

 企業には経営方針や事業目標、組織ビジョンなど目指すべき目的があり、各社員は目的達成のため、一体感を持って組織的に業務に取り組む必要があります。チームビルディングを行うことで、ビジョンなど目標の共有、浸透を推進できます。
チームとして向かう方向性が明確になり、各メンバーが同じ意識を持つことで、主体的に仕事に取り組めるようになるでしょう。

関係性の強化

 チーム内での良好なコミュニケーションは、チームを機能させる上で重要な要素です。コミュニケーション不全のチームでは、十分な成果を上げることが難しくなりがちですが、チームビルディングによって、メンバー間のコミュニケーションを活性化し、関係性を強化することができます。
チームメンバーが互いの価値観や考え方、能力などを理解し合うことで、良好なコミュニケーションを取りやすくなり、スムーズな業務遂行につながるでしょう。

最適な人員配置、役割分担の実現

 チームビルディングを通じて、それぞれの性格や業務適性、やりたい業務などの志向性、スキルや得意分野などを把握できます。リーダーはこれらの情報をもとに、適切な人員配置や役割分担を行えます。

マインドセットの形成

 チームで仕事を行うにあたっては、一人ひとりのメンバーが目標達成のため意欲的に業務に取り組む必要があります。チームビルディングを通じて、目標達成のために前向きに取り組むマインドセットを形成できます。

チームビルディングの3つのメリット

 チームビルディングを行うメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。

モチベーション向上

各メンバーの仕事に対するモチベーションの高さは、チームの成果に大きくかかわります。チームビルディングによるコミュニケーションの活発化や一体感の醸成を通じて、各メンバーのチームへの帰属意識と貢献意欲が高まる上、お互いへ適度な競争意識と協力意識がバランスよくめばえ、チーム全体のモチベーション向上が期待できます。
具体的な成果が表れることで、さらなるモチベーション向上や、生産性・品質の向上などの好循環につなげることができるでしょう。

新たなアイデアの創出

 チームビルディングを行う中ではメンバー同士で活発に意見交換することも増えます。その中で、一人では考えつかないような新たなアイデアが生まれることも多く、チームにイノベーションの機会がもたらされます。

生産性向上

 チームビルディングを通じたメンバー同士のかかわりによってそれぞれのメンバーの能力向上や成長が期待でき、チーム全体の生産性向上につながります。

 また、チームビルディングによってチームの一体感が高まれば、チームとしての機能性が増して、業務効率や生産性の向上にもさらに良い影響があるでしょう。

チームビルディングにおける5つの段階

 チームビルディングを効果的に行うためには、チームの状態を5段階に分類する「タックマンモデル」がよく用いられます。このモデルを利用することで、現状の課題の把握や効果的な施策の検討がしやすくなります。

 タックマンモデルの5段階は以下のとおりです。

1.形成期

 形成期は、チームが作られ始めたばかりでチームの目標やビジョンがまだ浸透していない段階を表します。メンバーがお互いを十分に理解しておらず緊張しており、目標の共有もまだあいまいな状況です。

 まずはメンバーの相互理解を進め、チームの共通目標を構築・共有していくことが、次の段階に進むために必要です。

2.混乱期

 混乱期は、チーム内に共通目標が浸透し始めた上で、それに対してメンバー間の意見が対立するなど、軋轢や抵抗が発生しやすくなる時期です。
メンバー同士が対立を恐れずに意見を主張しあい、議論を重ねながらお互いへの理解を深めていくことが重要です。

3.統一期

 統一期は、チーム全体の目標が明確になり、メンバー同士がお互いの価値観や考え方を理解しあって、チームが統一された状態に向かう時期です。相互理解が深まっているので、チームとしてまとまりがあります。

 次のフェーズに進むためには、各メンバーの特性を活かした適切な役割分担を行い、チーム目標に向けてメンバー全員が主体性を発揮していくこと必要です。

4.機能期

 機能期は、チームが安定して成果を上げられるようになり、チームとして機能している段階をいいます。メンバー同士がそれぞれ自分の役割をこなしながらもお互いにフォローしあい、主体的に行動できるようになっています。適切な人事配置などによって、チームの一体感も増しています。
チームとして最も脂がのった時期と言えますが、この期間を持続させるには、メンバーへの働きかけやチームの一体感を高める取り組みを継続的に実施する必要があるでしょう。

5.散会期

 散会期は、プロジェクトの終了やメンバーの異動など、チームとしての活動が終わる段階です。最終的な目的達成状況を確認して、チームビルディングの成否を検証します。

 メンバー同士が解散を惜しむなど、チームを肯定する反応があれば、チームビルディングは成功したと考えてよいでしょう。

チームビルディングを成功に導くための3つのポイント

 チームビルディングを成功につなげるには、以下の点に留意して進めることが重要です。

チームのリーダーがしっかり統率すること

 チームビルディングでは、メンバーの主体的な行動が必要である一方、それぞれが秩序なく行動していては、目標を達成することが困難になります。

 ここではリーダーの役割が重要で、メンバーの主体性を引き出しながらも、チームの方向性や目標を提示し、メンバー個人とチームのそれぞれの目標を統合してチームをまとめていかなければなりません。メンバーそれぞれの価値観や考え方を理解しメンバーの意欲を引き出しつつ、チーム目標達成のためにバランスをとりながらチームを統率することが必要です。

メンバーが自発的に目標を決められること

 リーダーによるメンバーへの仕事の強制や、メンバーからの意見を軽視するような状況は、各メンバーのモチベーションを低下させてしまい、十分な成果を生み出すことができなくなってしまいます。そのため、明確にチーム目標を設定した上で、メンバー一人ひとりは主体的に行動できるような環境作りが重要です。

 チームとしての意思決定では、メンバー同士で意見を出し合い、その内容を反映していくことも必要でしょう。

メンバーの適性を考慮してチームを編成すること

 チームを有効に機能させるためには、各メンバーのスキルや能力、人間関係などにも十分に配慮したチーム編成が重要です。

 誤ったチーム編成は、メンバー同士の対立や全体のパフォーマンス低下を招き、十分な成果を得られなくなりかねません。

チームビルディングの主な手法まとめ

チームビルディングを進めるための主な手法を以下に紹介します。

イベント

「イベント」は、仕事から切り離した場面を利用した親睦や懇親を目的としたもので、食事会やレクレーションなどの行事がこれにあたります。

お互いが打ち解けた雰囲気の中でプライベートの一面も知り合うことで、コミュニケーションが促されて相互理解や関係性の強化につながり、チームの結束感や一体感につながっていきます。

昨今は若年層を中心に、仕事とプライベートを切り分けたいという意識から、これらのイベントを避けたがる人が増えていますので、参加を強制せずに実施方法や時間帯、場の雰囲気を工夫するなどの配慮を行った上で実施してみましょう。

チームの形成期ではメンバー同士の親睦が特に重要なため、イベントをうまく活用しましょう。

ゲーム

特にチームを結成したばかりの形成期では、メンバー同士が緊張感を持っていることが多くあります。緊張を解くために、気軽に取り組める「ゲーム」を利用することがあります。

メンバー同士が楽しみながら行えるので親睦を深めることにつながり、またゲームに勝つには戦略を考える必要があるため、戦略的な思考を養うことにもつながります。

以下にチームビルディングに活用されるゲームの例を挙げます。

ペーパータワー

20~30枚の紙を使用してタワーを作成し、その高さをチームで競うゲームです。チームの人数や制限時間を設けるほか、使用不可の道具を設定するなど、所定のルールを設けて実施します。

チームで1つの制作物の作成に取り組むことで、メンバーが協力して目標達成に向かう仕事を疑似体験でき、一人ひとりの主体性や相互理解の重要性を学ぶことができます。

NASAゲーム

「母船から300km離れた月面に不時着した宇宙飛行士」という設定で行われるゲームです。

母船に戻るために、手元にある15個のアイテム(ロープ、マッチ、宇宙食、水など)を必要と思う重要度の順にすべて順位をつけて並び替えます。

まず個人が順位とその理由を考え、その後チームでお互いの意見を出し合い、チームとして統一した順位を決めます。多くの組み合わせがあるため、お互いの考え方を理解しながら調整することが必要です。最後に模範解答と照らし合わせ、もっとも近いチームが勝ちです。

特に混乱期のチームでは意見が対立しやすいため、このゲームを通じ、協調して問題解決にあたることや、対話の重要性に対する理解を深めることができます。

リアル脱出ゲーム

チーム全員で謎解きをしながら、会場から制限時間内に脱出するゲームです。

謎解きには、メンバー同士の情報共有や密度の濃いコミュニケーションが必要であるため、メンバー同士の相互理解の重要性、役割分担によってお互いの不得手をカバーしあう適材適所などを体験することができます。

グループディスカッション

「グループディスカッション」は、チームでの議論を通して共通の結論を見出していくものです。

議論するテーマはさまざまで、理想と現実、二項対立のようなテーマでの議論がよく用いられます。これを通じて、コミュニケーションの重要性や自分の意見の伝え方、他人の意見の受けとめ方を学び、実情に合った解決策を見出すことや、全員が納得できる妥協点を見つけることなど、主に混乱期のチーム作りにつながる体験ができます。

ワークショップ

「ワークショップ」は、参加者による自発的なミーティングや共同作業によって、1つの目標達成を目指すものです。

チーム内で議論や試行錯誤を繰り返すので、各メンバーの主体的な行動が必要ですが、この取り組みで共通の目標を達成する体験が、特に統一期にあたるチームで役立ちます。

アクティビティ

「アクティビティ」とは、スポーツやダンスをはじめとした、体を動かす取り組みを指します。メンバー全員でアクティビティに取り組むことで、チームの一体感の醸成やコミュニケーションの活性化が期待できます。

オフィス内での業務とは違う環境での活動をすることで、メンバー同士の親睦を深めたり、気分転換をさせたりできます。チームに一体感を高めたいときには、有効な取り組みといえるでしょう。

まとめ

昨今は価値観の多様化から、人間同士のかかわり方は変化しており、同様にチームの形も変化してきているため、従来のマネジメント手法ではチームがうまく機能しないケースも見受けられます。

チームビルディングを導入することで、メンバーの相互理解や目標の共有を進められ、コミュニケーションの活性化やモチベーション向上につながり、最終的にはチーム目標の達成や成果に結びつきます。

状況に合わせたチームビルディングを駆使し、最大限に機能するチーム作りを実践してみることをおすすめします。

執筆者プロフィール:
小笠原 隆夫(人事コンサルタント)
IT企業でエンジニア職、人事部門長として関連業務に携わる。2007年より「ユニティ・サポート」代表として人事・組織コンサルティングに従事。著書に『リーダーは空気を作れ!』(アルファポリス)。ほかウェブのコラム執筆多数

エッセンスおすすめWEBセミナー

プロインタビュー記事

タグ - Tag