CFOのなり方は?最高財務責任者としての仕事内容やキャリアパスを解説

企業の活動における資金とは、人間の体で例えると血液です。必要とされる量の資金が存在し、必要とされる形で運用されることで、正常な企業活動を行うことができるのです。

これに関する実行責任を担うのがCFOであり、本記事では、CFOの定義や役割、求められるスキル、キャリアパスについて解説します。

CFOとは

CFOは「Chief Financial Officer」の略で、日本語に訳すると「最高財務責任者」です。CFOは、経営陣(取締役)が決定した経営の方針や計画に基づいて社内の事業を遂行していくための予算を明らかにした上で、必要な資金を調達して、運用コストを適正化する業務を執り行います。

法的なポジションは?

CFOというのは、日本国内の法律において権限や責任などが定義づけられている役職ではありません。

資金の調達や運用をはじめとした企業の財務管理業務を最適化することへの最終的な責任を担うポジションに対する呼称のひとつとして、CFOがあります。

CEOとの違いは?

CEOとは(Chief Executive Officerの略、最高経営責任者の意味)、経営に関する全責任を負い最終的な経営判断を行う職務を執り行う人のことですが、CEOとCFOの違いは、組織における立場にあります。

CFOが責任を担う財務管理業務は経営の方針や計画に基づいて執行され、その大元となる方針や計画を決定するのがCEOです。

すなわち、CEOが指示を行い、その指示に基づいてCFOが業務を執行するという関係性があります。

財務部長・経理部長との違いは?

財務部長・経理部長とCFOの違いは、職務範囲の広さにあります。

財務部長・経理部長は、社内の財務・経理部門の業務を統括する立場の人です。

財務・経理部門には経理関連の事務処理や入出金・金融機関口座の管理、決算などの業務がありますが、それらが的確に行われるように組織全体を管理監督するのが財務部長・経理部長なのです。

一方、CFOは、財務・経理部門の業務を統括することだけにとどまらず、社内の全部門における財務管理のマネジメントを行います。

どの部門に対して、どの程度の、あるいはどのような内容で資金を運用し、どのような成果を見出すかについての計画を立てて、計画の実行管理を行います。

CFOに求められる役割とは

CFOには、企業の財務管理業務の適正化に加えて、財務環境の整備や財務に関する戦略の実行マネジメントを執行する役割があります。

資金調達

企業がビジネスチャンスを逸することなく事業を遂行し収益という形での成果を得るためには、必要なタイミングで、必要なところに、必要な量の資金を投下する必要があります。

それに関して、資金を確実かつ最適な形で調達するのがCFOの重要な役割の一つです。

そのために、CFOは、資金の調達先を明らかにした上で、調達相手に対して自社の財務状態や調達することによる効果、返済計画などを説明するための資料を作成し、交渉を行います。

さらに、資金調達に関する合意が形成された後の契約内容の確認なども行います。

財務戦略の立案と実施

企業の活動目的は「適正な利潤(利益)を獲得すること」です。利潤とは、事業の遂行により得られる売上からコスト(費用)を除いた金額であるため、コストの最適化を図ることが重要です。その役割を担うのがCFOです。

コストというのは、人件費や製造・営業活動に直接要する費用、開発や宣伝広告に要する費用などのことです。

経営陣(取締役)が決定した経営の方針や計画を実行するためにコストの構造をどのような形にしていくのが良いのか、そうすることでどのような結果が得られるのかについての計画を立案し、そのことを実現させるための方法や道筋を明らかにした戦略を構築し、着実に実践していくためのマネジメントを行います。

また、無駄なコストが発生しないように目を光らせ、削減可能なコストに関するコストカットも行います。

企業会計

企業には、企業活動の結果として生じた資産の変動や損益の実態、お金の出入りなどを、決められたルールにのっとって資料化する義務が課せられています。

貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書などの計算書類のことであり、税務当局や株主、金融機関などへの説明資料として使用されます。

これらの資料を正しく作成し、適正な使用と管理を行うための統括をCFOが行います。

企業財務

資金需要が生じる都度資金調達を行うことを繰り返しているだけでは、企業としての価値は高まりません。

調達した資金を社内の事業やヒト、モノなどの経営資源に投資した上で的確な運用を行うことで、利潤を最大化し、将来のキャッシュフローを最適化させるなどの財務基盤を強化していくことで、企業価値が高まっていきます。

CFOは、そのことを実現させるための計画を立案し、状況を常に把握しながら、結果を最適化するためのマネジメントを行います。

CFOになるために必要な経験・スキル

CFOには、財務に関連する知識の習得に加えて、経営のことを理解し、結果を出すためのマネジメントを行うスキルが必要とされます。

経営企画能力

組織上では、CEO(最高経営責任者)が経営に関する方針や計画を決定し、それに基づいた財務管理業務をCFOが執行するという関係性が存在しますが、CEOの指示に基づく財務管理を行うためには、CFO自身が経営のことを理解し、経営に関する方針や計画の内容についてCEOとの間でコンセンサスを形成する(合意形成)必要があります。

そのため、CFOには、CEOと一体になって経営の計画を立案し内容を精査できるレベルの能力を身に着けることが求められます。

財務や経理、税務の専門知識や経験

企業の財務管理業務には、売上や費用の会計処理や税務申告などに関する各種の法律が関係しています。

CFOは、これらの法令を遵守した上で、財務管理業務が的確に行われるように統括する役割を担っています。

そのため、CFOには、財務管理業務に関連する法律の知識を幅広く習得した上で、運用解釈についても熟知し、社外の専門家なども活用しながらその都度正しい判断を行える能力を身に着けることが求められます。

財務における戦略の立案・遂行スキル

CFOは、企業が適正な利潤を獲得するために、どのようなことに対してどのような内容の投資を行い、それに対してどのようなコスト構造を維持して、その結果どのような財務上の成果を得るのかついての計画を立案した上で、自らの責任でそのことを実践します。

その職務を円滑に執り行うために、CEOには、実践していくための方法や道筋を明らかにした戦略を構築して、現場に理解させた上で遂行する能力を身に着けることが求められます。

結果を出すためのマネジメントスキル

計画を実践していくための方法や道筋を明らかにした上で現場に理解させたとしても、全ての物事が計画通りに進むわけではありません。

実践していく過程で環境の変化が生じ、あるいは社内外との利害対立が生じることで、その後の実践の障壁となってしまう場合があるからです。

このことを放置したままでいると、計画は頓挫してしまい、企業が必要とする財務上の成果も得られなくなってしまいます。

それに関して、CFOには、計画の実践がスタートした後に、状況を的確に把握し、先々への課題が生じている場合はそのことを認識して、対処方法を明らかにした上で迅速に対応するマネジメント能力を身に着けることが求められます。

コミュニケーションスキル

財務管理に関する計画を実践することにより企業が必要とする成果を実現するためには、社内外の利害関係者の理解や協力を得る必要があります。

必要な資金を調達するためには、金融機関や投資家などから、今後の経営や財務に関する方針や計画、現在の財務状況や資金調達による効果などを理解してもらい、資金供給に対する協力を得る必要があります。

財務管理に関する戦略をスムーズに実践していくためには、現場の人間からの理解や納得を得る必要があります。

コンプライアンスを徹底するためには、正しい判断を行うための外部の専門家などからの情報収集や助言を迅速に得る必要があります。

これらのことを実現するために、CFOには、関係者との良好な関係性を構築した上で動かすことのできるコミュニケーション能力を身に着けることが求められます。

CFOへのなり方

CFOのポジションに就くためには、一般的に「社内で昇進する」「転職して就任する」「起業して就任する」という3つの方法があります。

社内で昇進する

入社後に財務に関連する仕事のキャリアや実績を積み上げて、そのことを経営陣から評価されることでCFOのポジションに就く方法があります。

キャリアや実績が認められた上での就任であるため、社内外の関係者からの信頼も得られ就任した後の業務をスムーズに遂行できるというメリットがある反面、経験を積むための一定の時間が必要になるというデメリットもあります。

CFO求人に応募し、転職する

企業が能力のあるCFOを確実に配置するために、人材会社を通じたヘッドハンティングなどの方法でCFO人材を募集することがあります。

これに対して、財務に関連する仕事のキャリアや実績をアピールし、転職する形でCFOのポジションに就く方法があります。転職する場合は公認会計士や税理士などの企業の会計や税務に関する専門能力を示す資格を持つことで、選ばれる可能性が増します。

起業し、CFOに就任する

自らが起業し会社を立ち上げ、CEOに就任するという方法もあります。立ち上げた会社を成長させていくための経営の方針や計画を決定し、それに基づいた財務管理の計画を立案した上で戦略を構築し、自らが先頭に立って実践していきます。

自らの経営に関する考え方と一体化した対応を行えるため業務をスムーズに遂行できるというメリットがある反面、企業としての活動実績が浅いことにより金融機関などからの信用を得るための一定の時間が必要になるというデメリットもあります。

まとめ

企業活動を行う上で、財務管理は最も重要な業務のひとつに位置付けられます。その業務を最適に執行しマネジメントするのがCFOなのです。

このことより、CFOが企業活動における中心的な役割を担っているといっても過言ではありません。そういう意味で、CEOは責任も大きい反面、やりがいも大きなポジションだと言えます。

CFOを目指すのであれば、財務に関連する幅広い知識を習得しつつ財務に関連する幅広い業務での経験を積み、経営の視点から「財務の最適化とは、どのような姿なのか?」について考えることのできる能力を深めていく働き方が求められます。

執筆者プロフィール:
大庭真一郎(中小企業診断士、社会保険労務士)
大庭経営労務相談所 代表 東京都出身。東京理科大学卒業後、民間企業勤務を経て、1995年4月大庭経営労務相談所を設立。「支援企業のペースで共に行動を」をモットーに、関西地区を中心として、企業に対する経営支援業務を展開。支援実績多数。

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