山口の400年続く老舗酒造に「プロボノチーム」が参加。そこで見えた地方×プロボノの可能性とは?

昨今、新たな社会貢献の手段として注目を浴び始めている「プロボノ」。ボランティアの一種でありながら、自らがこれまで培ったスキルや人脈を活かして企業やNPOを支援することで、スキルの棚卸しや社外での腕試しに繋がり、キャリア形成の側面でも効果があると注目されている取り組みです。

今回、エッセンス株式会社が提供するプロボノプログラムを3回継続して受け入れていただいた山口県山口市の山城屋酒造株式会社の宮崎社長にお話を伺いました。(聞き手:エッセンス株式会社 島崎 由真)

宮﨑 朋香(みやざき ともか)
山城屋酒造株式会社 代表取締役

社長を務めていた弟が病気のため急逝したことを受け、主婦・会社員から山城屋酒造の専務取締役に就任。2020年12月からは代表取締役を務める。


山城屋酒造は約400年、江戸時代から続く歴史ある酒造です



-まず、山城屋酒造株式会社さんの会社の紹介をお願いします。

山城屋酒造株式会社は山口県山口市にあり、不動産業・卸業・酒類販売・酒造業を行っている会社です。

約400年、江戸時代から続く酒造で、昭和50年代には水質汚染の影響でお酒が造れなくなりましたが、周南の酒蔵さんに協力していただき今も酒造を続けています。現在の主要な銘柄は「杉姫」です。


-社長である宮崎さんの自己紹介をお願いします。

私は当社に来て4年目になります。

3年前に弟が大腸がんで亡くなり、二人兄弟だったので急遽専務として戻ってきまして、2020年12月に代表取締役に就任しました。それまでは、主婦をしながら他の会社で会社員をしていました。


-専務になられてからは、お酒の開発もされたと伺っています。

そうですね。「女性が飲みやすいお酒ってなんだろう」とずっと思っていたのですが、あるきっかけでやってみようということになりました。

働く女性に向けたご褒美のようなお酒ができたらいいなということで、パッケージにもこだわって作ったのが「純米大吟醸Princess」です。


軽い気持ちでプロボノをスタート。そこで感じた「本気」



-プロボノを継続して受け入れていただいています。今回3回目ですが、継続して受け入れたいと思われた理由を教えてください。

1回目の時は、「プロボノって何?」という状態でした。せっかくご紹介いただいたので軽い気持ちでやってみようかなという考えでした。

2回目のプロボノでは、都会からスキルを持っている方に来ていただきチームになって、色々な角度から「こんなことをやってみたらどうか」という提案がありました。成果として大きく伸びたというわけではありませんが、本当に山城屋酒造を想ってやってくれている本気さが伝わりました。その熱意が継続している理由かもしれませんね。

2回目に参加いただいた方が今回の3回目のチームにも再び加わってくださったことも、ありがたいと思っています。人数がどんどん増えてきて話がまとまらないと感じる部分はありますが、山城屋酒造が好きで盛り上げたいと思ってくださっている熱意が伝わるので、やってよかったなと思っています


テーマは大きく3つ。新たなテーマはプロボノの中から誕生した



-3回目のプロボノで、推進しているテーマを教えてください。

推進しているテーマは大きく3つあり、3つのチームに動いていただいています。

まずは、ストーリーチームです。

ストーリーチームでは、山城屋酒造のお客様・居酒屋のオーナーさんへのインタビューを進めていただいています。

2021年6月には、Twitterで「杉姫とPrincessどっちが好きですか?」というような、アンケート形式のプレゼント企画のキャンペーンをしようかという話をしています。

次が、ペアリングチームです。

どのお酒を主力商品として押し出そうかという話の中で、今回はPrincessでいこうという話になりました。そこで、Princessには何が合うのか、オンラインで一緒に飲みながら話をしました。

また、出てきた内容をホームページやWEBに反映していただきました。

最後はWEBチームです。

今のホームページには1ページ目で離脱してしまうという課題があったので、それを改善するためにはどうしたらいいのか構成を考えていただき、修正中です。

ストーリーを入れてみたり、ペアリングを入れてみたり、最終的には新たなホームページを完成させることを目標にしています。


-これらの3つのテーマは、どうやって決められたんですか?

始めは、SNSとWEB構築をお願いしますというのがメインでした。その中で、「山城屋酒造はこういった味ですよ」と直接紹介するのではなく、第三者が言った方が説得力があるのではないかという話の流れから、ストーリーチームができました。

さらにそこから、「お客様がどうして当社の商品を選んでくれているのか」というストーリーをインタビュー形式で紹介していこうということになりました。

このように、アイデア自体もプロボノの方たちの中から出てきた感じです。出てきたアイデアの中から、インタビューをするお客様などは私が選抜させていただきましたが、ほぼプロボノの方たちが考えてくださいました。

ペアリングチームは、最初のプロボノの会議の時に、「お酒を飲んでどういう食べ物と合うのか合わせるのが好きだ」とおっしゃっている方がいらっしゃり、「それなら実際に色々飲んで合わせてみてください」というような、そんなお話からチームができました。




「私が出る幕はない」と感じるほどのメンバーの熱量



-3回目の受け入れでしたが、参加したメンバーに対しての印象はどうでしたか?

正直、「皆さんすごいしっかりしていらっしゃるな」という印象でした。

そして自分がこれに携わりたいというのをしっかりと持っていらっしゃったので、「私が出る幕はないな、お任せします」という感じでした(笑)。

積極的というか、やる気を感じましたね。

前回は、個性的な方が集まっていて、初めは不安もありましたが最終的にはまとまっていいチームになりました。

今回は皆さんご意見を持っているので安心して任せられるという印象です。


第三者だからこその意見



-今回受け入れてよかった点を教えてください。

受け入れてよかった点は、ダメ出しや改善点を率直に言っていただけたこと、そしてアイデアを出していただけることです。私は、第三者からのご意見はとても大切だと考えています。

成果としてはまだ途中段階で具体的には挙がっていませんが、SNSで前回の酒プロジェクトを見て、お客様から「こんな飲み方や合わせ方もあるんですね」「初めて知りました」という声をいただいたことがとても新鮮でした。

プロボノを通して、お客様へのご提案の仕方を改めて考えることができたと思っています。

これから運営をお任せする形になってきますが、お客様からの反応が得られればいいなと思っています。


プロボノを受け入れたいと思う方は地方にたくさんいる



-地方の企業さんが今後プロポノを受け入れる可能性に関しては、どう考えですか?

山口は田舎なので、プロボノとは何か知らない方がたくさんいらっしゃると思います。これから、プロボノについて皆さんが分かってくると、可能性は広がってくると思います。

地方の中小企業は、大手の企業さんとお話する機会はまずありません。そういう人たちのスキルをお借りしたりご意見をいただいたりすることもまずありません。

プロボノならそういうことができるんだという情報発信をすれば、やってみたいなと思う方は地方にもたくさんいらっしゃると思います。

今は知っている社長さんに「プロボノやってます」といっても、「プロボノって何?」という感じなので、もっとプロボノ自体を知ってもらえれば、活用されるのではないかなと思います。



敷居の高さに関係なく気軽に話せるのがプロボノの魅力



-地方のプロボノ受け入れの星として、山城屋酒造さんを紹介させていただいています。今後大手ではなく、ベンチャーの方などが参加される場合、どのような方であれば一緒にやっていく価値があると感じられますか?

その方の職種が分かれば、具体的に聞きたいことも分かりやすいと思います。

山口にはベンチャー企業もないので、関わることもあまりありません。私自身今まで関わりがありませんでした。当社のような中小企業からすると、大手企業さんに対して敷居が高いイメージがあります。

プロボノでは敷居の高さに関係なく活動できる、気軽に話せるという部分が見えれば、やってみたいと思う方ももっと増えるのではないかと思います。


-大手、中小企業、ベンチャー、それらがフラットになり交わってみれば面白いということですね。今後いろんな方がマッチングしてくれば、更に面白くなってくるのではないかと思います。ありがとうございました。