人材育成の傍ら大学通学・4人育児に励む東京電力の武田さんがプロボノで得たものは「仲間との刺激的な40日間」

 近年、話題に挙がることが多くなったプロボノとは、無償で社会貢献を行う活動のひとつです。「若手層の社外イノベーション」や「シニア層のセカンドキャリア開発活動」、「ソーシャルベンチャーでのSDGsの実践体験」など、個人の能力開発から現代社会が抱える課題の解決まで、その目的は実に多角的な広がりを見せています。

 今回は、東京電力パワーグリッド株式会社に勤めながら通信大学に通い、4人の子どもを育てる武田佐和子さんにプロボノの体験談を語っていただきました。

二足の草鞋を履く4人育児ママ

 私は東京電力パワーグリッド株式会社に勤務しております、武田佐和子と申します。普段は、人材育成の計画立案や研修講師などの業務を行っています。また、4人の子を持つ母で、現在、通信大学に通う大学2年生でもあります。

 私が大事にしている、仕事における価値観は3つあります。

 「人にありがとうと言われる仕事をすること」「子どもたちに見せられる背中を意識すること」、また「上司より後輩を大切に思い、決して驕らないこと」です。

 プロボノプログラムの話をいただいた時は、こんな自分に時間が取れるか正直不安な気持ちもありましたが「何とかなるかな?」と思って、お受けさせていただきました。

 こんな私にやれるのなら「自分にもできるかもしれない。」とみなさま思っていただけたら嬉しいです。

まるで下町ロケット。大阪の金属加工企業に改革提案

 大阪府寝屋川市にある朝日熱処理工業株式会社は、まるで下町ロケットに登場する会社を彷彿とさせるような企業で、日本の大切な「最高品質」を守り続ける金属熱処理のプロ集団です。

 この企業を選んだ理由は、マッチングの際に、自分の直感で「この企業が一番困っている。」と感じ、少しでも力になりたいと思ったからです。

 異業種で構成された5名のチームである、私たちに求められた課題は「工場の働きやすい環境・職場の改革提案」です。

 活動を進めていくことで職場環境を悪くしているボトルネックを発見し、それに対する改善策のご提案について最終日に全社員に向け、大阪の工場内で直接プレゼンをさせていただきました。

悩む時間こそが成長の時間。刺激と充実感を得た40日間

 私がこのプロボノで学んだことは、さまざまな価値観や育ってきた文化、企業文化の違いがある混成チームが1つの目標に向かってどう進んでいくかということです。

 チームとしての時間の使い方、このプロボノにかける想いや熱量も個々により全く違います。その違いゆえに上手くいかない場面もあり、どうしていけばいいのかと悩むこともあったのですが、この悩んでいる時間こそが私にとっては成長の時間となりました。また悩んでいるときに助けてくれるのもチームのみんなだったし、様々な文化を持つチームが一体になるとこんなにも素晴らしいアイディアが出るのだと、本当に嬉しい瞬間もたくさんありました。

 私はこのプロボノで、自分の強みと弱みを強く痛感することができました。どうしようかな、どう進めようかなと悩む場面もありましたが、とても刺激的で充実した40日間だったと思っています。

最後は「この企業の為に」でチームが一つに

 自分次第でこのプロボノは、良い取り組みにも面倒な取り組みにもなり得ます。

 プロボノは会社とは違い、素直に自分の個性を活かせる場で、その個性を受け止めてくれる場です。「何かやろう!大きなことをやろう!」と見事な成果を収めることに息まくのではなく、「自分に何ができるか」を一生懸命に考えてください。

 皆さんにできることは絶対にあります。もしかすると、活動の中で辛くなることも時にはあるかもしれませんが、そんな時こそ自分の気持ち次第で意外と事が大きく前進するのです。この活動では、それを心から楽しんでほしいと思います。


プログラムが終わりを迎えた時に感じたことは、「このチームで良かった」この一言でした。

 私がこのチームのメンバーとここまで仲良くなれたのは、良くも悪くも言いたいことを言い合えたからだと思っています。正直、腹が立つこともありました。でも、やはっぱり最後はみんな「この企業の為に」という気持ちを持って突き進みました。

 プロボノに参加するまでは不安な気持ちがいっぱいあると思いますが、得られるものはそれ以上に大きいはずです。一度騙されたと思って、真っ新な気持ちで行ってきてください。