ヴィジョンは「次世代につなぐ未来を創出すること」        Earth Companyのプロボノから見えた未来の形

 昨今、新たな社会貢献の手段として注目を浴び始めている「プロボノ」
「プロボノ」はボランティアの一種でありながら、自らがこれまで培ったスキルや人脈を活かして企業やNPOを支援することで、スキルの棚卸しや社外での腕試しに繋がり、キャリア形成の側面でも効果があると注目されている取り組みです。

 今回、エッセンス株式会社が提供するプロボノプログラムを受け入れていただいた一般社団法人Earth Company マーケティング・マネージャーの樋口 実沙さんにお話を伺いました。(聞き手:エッセンス株式会社 島崎 由真)

樋口 実沙(ひぐち みさ)
一般社団法人Earth Company マーケティング・マネージャー

2008年から2019年まで、ケイト・スペード ニューヨークでマーケティングを行う。西日本豪雨がきっかけで、気候変動に関して何か自分ができることがやりたいと考え始める。国際協力に関心があったこともあり、Earth Companyにジョイン。現在は、復業副業の一つとしてEarth Companyマーケティング・マネージャーを担っている。

4つの事業を通して、「次世代につなぐ未来」を創出しています

ー団体のご紹介をお願いします。

 Earth Companyは「次世代につなぐ未来を創出すること」をヴィジョンに掲げたNGOです。バリ島と日本に拠点を持っており、バリではエシカルホテルの運営もしています。メインの事業は、「インパクト・ヒーロー支援事業」です。インパクト・ヒーロー支援事業とは、年に1名途上国出身の社会起業家を選出して、3年間徹底的に支援をするという活動です。それを基幹事業として、付随する形で、研修事業、コンサルティング事業、エシカルホテル事業を行っています。これら4つの事業を通して、「次世代につなぐ未来」を創出しています。

ーインパクトヒーロー事業について詳しく教えてください。

 Earth Companyは2014年に設立しましたが、そのきっかけとなったのが2015年に選出されたインパクトヒーローでもあるBella Galhos(ベラ・ガルヨス)です。彼女は、東ティモールの環境教育を行っておりLGBTQにも取り組んでいる女性リーダーです。2015年以降毎年一人、アジア太平洋地域からSDGs に取り組み未来を大きく変えることができる傑出したチェンジメーカーを「IMPACT HERO(インパクト・ヒーロー)」として選出し、3年間とことん寄り添い、その活動のインパクトを最大化するための支援活動を行っています。これが「インパクト・ヒーロー支援事業」です。

 これまでに選出されたインパクト・ヒーローをご紹介します。

 2016年に選出したRobin Lim(ロビン・リム)という女性は、バリ島の助産師さんです。インドネシアはASEAN諸国でも妊産婦死亡率が高いので、貧しいお母さんでも安全なお産ができるようになるための活動として、24時間365日無料で産科医療を提供をしています。

 
 2017年には、Kathy Jetn̄il-KijinerKathy Jetnil Kijiner(キャシー・ジェトニル=キジナー)というマーシャル諸島の気候変動活動家を選出しました。2014年には国連気候変動サミットでスピーチを行った人物で、彼女のNGO Jo-Jikum(ジョージクム)の活動拠点となるユースセンターの設立や事業企画立案などを支援しました。

 2019年から現在も継続して支援をしているのが、Wai Wai Nu(ウェイウェイ・ヌー)というミャンマーのロヒンギャ出身の女性リーダーです。インパクト・ヒーロー支援事業では、彼女のアドボカシー活動や教育プログラムの支援をしています。この春には、クーデターに対する活動を支援するための緊急クラウドファンディングも実施しました。

 2020年は支援体制強化のためインパクト・ヒーローの選出は行いませんでしたが、その期間を経て、2021年に新たに選出したのが、Arief Rabik(アリーフ・ラビック)で、今回のプログラムでは彼が取り組む課題に関するイベントの企画を提案してもらいました。彼はインドネシアを中心に竹の植林を行う1000の「バンブービレッジ」を作ることで気候変動に対する具体的な対応策を提示し、さらに森林再生や地域創生、そして女性のエンパワメントも実現しようとしています。インドネシアはパーム椰子の問題等もあり森林破壊が深刻です。そんなインドネシアの土地を再生させながら発展させるために、CO2を多く吸収する竹を活用し、建材や竹製品を生産しとして経済成長にもつなげようとしています。

「この人を支援することでコミュニティ全体が良くなるか」 課題の領域は関係なく、支援が必要だという人を選んで支援しています

ー幅広い方を支援されているんですね。

 そうですね。インパクト・ヒーローには、課題を抱えるコミュニティーのリーダーであるだけではありません。課題の領域は関係なく、必要な支援さえあればそのインパクトが最大化できるという人を選んでいます。

課題は「どのようなイベントや接点があれば新規の寄附者が募れるのか」

ープロボノを受け入れた背景を教えてください。

 Earth Companyは他のNGOと比較しても、オンラインイベントをたくさん開催しています。インパクト・ヒーローが取り組む社会課題は多岐に渡るので、どのようなイベントや接点があれば社会課題を身近に感じることができ、寄附が増えるのか企画が難しいという課題がありました。そこで、プロボノの方に関わっていただき、新たなアイデアをいただければと思いました。

ーこれまでも他社様のプロボノ受け入れをされていたと伺っています。どれくらいの頻度で受け入れをされていたのでしょうか?

 多い時で年に1回〜2回という感じで必要に応じてプロボノに依頼してきました。御社のような、複数の企業の方が集まったプロボノプロジェクトを受け入れたこともありますし、決まった職務に対して、即戦力型のプロボノを個人に依頼することもありました。例えば、「Wai Waiのクラウドファウンティングをやるのでマーケティングで国際協力関係のスキルのある人を見つけてプロボノ活動してもらう」というような形です。

ー今回受け入れをしていただいたテーマを教えてください。

 Earth Companyの課題は、寄付を募ろうとしても、「なぜ遠い国の関係ない人たちの支援をするのか」となってしまうことです。そのため、インパクト・ヒーローのやっている事業の重要性知ってもらい、支援したいと思ってもらうためには、課題と自分をつなぐ何かの機会が必要だと考えています。今回のプロボノは、「そのきっかけになるイベントを考えてください」というテーマでした。

  これまで行ったイベントとしては、ロヒンギャ問題に関心を持ってもらうためにロヒンギャ料理教室を開催した事例があります。その事例をお伝えし、「自分の好きな事や趣味の中からでも、課題と自分のつながりを見つけるセレンディピティを生み出せるような企画を考えてください」とお願いしました。< br>

プロボノから新たな2つの企画が生まれました

ー具体的にはどのような案が出てきたのでしょうか?

 今回のプロボノを通して、二つの企画ができました。一つ目は、町田にあるサッカーチームを、竹のアイテムで応援しようという企画です。町田は竹で町おこしをしているだけでなく、インドネシアのホストタウンでもあります。そこで企画を通してインパクト・ヒーローのアリーフの取り組みを知ってもらい、バリ島や気候変動への関心を持ってもらおうというものです。コロナの影響で声援ができない今、竹を使って音を鳴らしての応援するというアイデアは、とてもユニークだと思いました。このアイデアは、ワールドカップの南アフリカ大会で話題になったブブゼラにも共通するものがありますよね。当時はブブゼラがメディアで大きく取り上げられました。今回の副題として、メディアで取り上げてもらえるということも重要視していたのでとても効果的なアイデアだと思いました。このようなアイデアの出し方は団体からはなかなか生まれない発想なので、いいインプットになりました。

 もう一つは、「Z世代」「環境に対して関係が深い大手企業や環境問題の専門家」「解決策を提示しているインドネシアのアリーフのような社会起業家」、3者が未来を語るイベントをしようというアイデアです。Earth Companyでも、Z世代をどう巻き込むかはこの数カ月間のホットトピックになっていました。ちょうどいいタイミングでアイデアを出していただき、「次世代につなぐ未来を創出する」というEarth Companyのヴィジョンとも一致している点が素晴らしいなと思いました。

ー受け入れてよかった点を教えてください。

 まさに先ほどお伝えした2つのアイデアを出していただけた点が、明確な成果としてあります。また、今回のプロボノを通して、「強い企画を作ること」自体をプレゼンの中で見せていただいたので、Earth Companyとしても私個人としても勉強になりました。また、企画から派生したアイデアが、他の事業にも活かせています。

良い結果を出していただくためにも、「受け入れ態勢を整える」必要性を感じました

ー逆に、苦労した点があれば教えてください。

 苦労したのは、私たち自身のリソースが限られている中で、きっちり時間を作る必要があったことです。また、アリーフが2021年に選出されたインパクト・ヒーローで、支援の初期段階で受け入れが始まってしまったので、タイミング的に大変だったというのがあります。この点は、受け入れ時期が違うと問題なかったかもしれません。受け入れ態勢を整えるということは、事前に検討すべきだったなと思います。

 他には、今回受け入れた6名が2社からいらっしゃっていたので、同じ企業・職業の方がいました。もし私が参加者の立場なら、できるだけ違う企業・違う年齢の方と関わりたいだろうなと思います。チーム分けするときになるべく属性が被らないように、新しいアイデアに触れるバランスを作るように心がけましたが、良い結果を出していただくためにも、皆さんの想いや状況をヒアリングしながら丁寧に調整していく必要があると感じましたね。

-今後も受け入れをされたいと思いますか?

 今回いいアイデアを出していただけたので、今後機会があればお願いしたいなと思います。ただし、こちらの受け入れ方を変えるなど、調整は必要だと思いますね。

 他の企業様がどのようにプロボノを受け入れているかというやり方も教えていただきました。それらの方法も考慮しつつ、自分たちの体制を整えた上で、どのような方が参加されているかという一覧から「こういう方ならこんなお願いをしたい」など、前回よりも事前にはっきりさせてから受け入れたいと思います。

▲プロボノプログラム終了後インタビュー時の様子

プロボノが本業の意義を振り返るいい機会になり、波及効果を生み出す

ープロボノは、今後広がってくると思いますか?

 どのような企業でも、本来社会に影響を与えない企業はないですよね。それが、自分が業務の中にずっといるとわからなくなることがあると思います。プロボノなどの形で外に出てみることは、自分の仕事の社会に対する影響や仕事の意義などを振り返るいい機会になると思います。今回の参加者の中にも、CSRを理解する機会になったとおっしゃっている方がいて、そういう意味でも「世の中で広がっていってほしい」という想いもあります。

 また、今回6名中4名の方に、継続して何かしら関わりたいと言っていただけました。その実績からも、プロボノのニーズはあるということだと思います。参加者の方がここでの経験を実務に持って帰って会社の中でいい波及効果を生み出すことができれば、プロボノを取り入れる企業もより広がると思いますし、そういう風になってもらえるように受け入れ側としても体制を整えていかないといけないなと思います。

ーありがとうございました。


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