昨今、新たな社会貢献の手段として注目を浴び始めている「プロボノ」。「プロボノ」はボランティアの一種でありながら、自らがこれまで培ったスキルや人脈を活かして企業やNPOを支援することで、スキルの棚卸しや社外での腕試しに繋がり、キャリア形成の側面でも効果があると注目されている取り組みです。

今回、エッセンス株式会社が提供するプロボノプログラムを受け入れていただいた株式会社アラキ（アラキスポーツ）取締役の荒木 康さんにお話を伺いました。

荒木 康
株式会社アラキ（アラキスポーツ）　取締役

愛知県新城市生まれ。幼い頃から野球を始め、名門中京高校（現：中京大中京高校）に野球で進学。卒業後は、新城消防本部で消防官として23年間働く。2018年から父の会社である株式会社アラキ（アラキスポーツ）に転職し、現在に至る。仕事の傍ら、高校野球審判員を務めるとともに、毎日野球ブログを掲載し野球発展のため尽力している。

－まずは会社のご紹介をお願いします。

株式会社アラキ（アラキスポーツ）は創業47年、従業員5名の会社で、愛知で野球用品やユニフォーム等の販売を行っています。父が起業し、2018年から私も転職して一緒に働いています。昨今、日本の人口減少及び多様性の影響によって、野球競技人口の減少は著しくなっています。野球という素晴らしいスポーツを100年後まで繋げるために尽力しています。

－御社の強みを教えていただけますか？

当社の強みは、“野球の知識と経験が豊富にあること”です。社長は少年野球チームの監督を５０年務め、私自身も高校野球審判も務める傍ら、約５年半毎日野球ブログを更新しています。当社は、オリジナル商品の展開にも力を入れており、雨でぬかるんだ野球場や運動場に撒くだけで吸水できる魔法の砂「アクシスプロ」や素振り用ロングバット、グランド整備器具「サンダーバード」などの販売も行っています。

－今回はプロボノ参加者にどのようなテーマに取り組んでもらったのでしょうか？

２つのテーマに取り組んでいただきました。１つ目は、当社の製品である、吸水砂「アクシスプロ」の認知度を上げることです。アクシスプロは、雨でぬかるんだ野球場や運動場に撒くだけで吸水できる魔法の砂のことで、Instagram、X、facebook等の各種SNSを有効活用し、認知度を上げる方法を一緒に考えてほしいとお願いしました。2つ目は、「アクシスプロ」の全く新しい可能性の創作です。現在アクシスプロは、野球及び学校の運動会の際の水たまりグランド整備対策として市場に売り出していますが、この他の使用方法を一緒に創作してほしいとお願いしました。

－なぜ、このテーマに取り組んでもらったのでしょうか？

当社の売り上げが拡大することで、当社の想い－100年後の野球のために今できることを創作する、皆さまの大切な時間をマネジメントし「思い出」作りに貢献したい―の実現に繋がると考え、ご依頼させていただきました。

－プロボノ参加者にどのように活動してもらったのでしょうか？

5名のメンバーにご参加いただきました。業種も職種も異なる、20代から60代までの幅広い年齢層の方々でした。居住地も異なるため、オンラインで6回ほど集まって、メンバー主導でご活動いただきました。

－最終的に、どのような成果を出していただいたのでしょうか？

1つ目のテーマ「アクシスプロの認知度を上げること」に関しては、まず市場調査を行い、その上で認知度向上のためのSNS活用に関する施策を検討してくださいました。プロボノ開始当時は、既存顧客による口コミや紹介での商品購入が中心でしたが、SNSフォロワー数の獲得に繋がる施策を打つことでフォロワーを増やすことをご提案いただきました。実際にInstagramを活用して、アジャイル的に様々な施策を実行してくださいました。その結果、フォロワー数が2.5倍、リーチ数が10倍近くまで大幅に増加しました。さらに、アクシスプロ使用後のアンケートも起案したり、今後活用できるような資料を作成したりしてくださいました。

2つ目のテーマ「アクシスプロの全く新しい可能性の創出」については、当社の想いと現状を踏まえ、早期に着手可能なアイディアを出していただきました。これまでに考えたこともないような新しい案が出てきました。その案について、ツールを使って需要があることを確認し、具体策の検討や店頭POP案を作成していただきました。

－プロボノ参加者を受け入れて、いかがでしたか？

想定した以上に素晴らしい成果を出していただき、助かりました。参加者の皆さんにとって、これまで全く関わったことのない領域で、ゼロベースから始めていただきましたが、それぞれの強みを生かして取り組んでいただきました。普段私は一人で業務を行っていまして、長くスポーツ業界にいると発想が固定化されてしまっていましたが、異なる業界の皆さんが参加されていたので、色々な角度から様々なアイディアがどんどん出てきました。20年間一度も考えたことがなかったようなアイディアも出てきて、チームで協力して取り組むメリットを感じましたし、モチベーションも上がりました。

－ご自身にとって、何か学びとなるようなことはありましたか？

そうですね、自分ではスピード感がないと思っていたのですが、プロボノ参加者の皆さんにスピード感があると言っていただき、自分にとっての当たり前が強みであることにも気付きました。40日間お忙しい中、時間を割いていただいた参加メンバーの皆さんには本当に感謝しています。

－終了後、参加者からはどんなコメントをいただきましたか？

「自社と比較しスピード感のある進行だった、オンラインのみの6回の活動でここまでできると思っていなかった、アクシスプロの無限の可能性を感じることで自社の事業について無意識に可能性を狭めているという気づきがあった、モノを売る経験が初めてで楽しかった」など、皆さんから前向きな感想をいただきました。受け入れて本当に良かったです。また機会があれば、是非活用させていただければと思います。