事例紹介

株式会社テレビ朝日×ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社の導入事例

「集中して前のめりに吸収した3ヶ月、周りを巻き込み行動する力がついた」(職種:人事、留学頻度:週1日、留学時:新卒入社26年目)
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目的
組織開発・人材開発に関する考え方・進め方・実現方法の習得
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背景
異なる業界での経験を通じて多様な価値観や発想、知見、人脈を得るなど、これまでにない形でリーダー人材を育成する必要があった
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効果
組織の色々な違いを目の当たりにして組織開発・人材開発における新たな考え・視点・手法を学ぶことができた/自分の強みが他の企業でも活かせることが実感でき今後の成長課題が見えた
他社留学を終えて元の職場に戻った「卒業生」にインタビュー。留学中、留学後の想い、そして「留学後に何が変わったか」について、体験談を語っていただきます。
今回お話を伺ったのは、株式会社テレビ朝日。他社留学を経験したのは人事局厚生労務部の鎌田さんです。留学先はユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社。世界約190カ国にて、ラックス、ダヴ、クリア、アジフ、ドメストなどのブランドを展開し、毎日25億人以上から選ばれている世界最大級の消費財メーカーです。留学中は、人事の知見を活かし、業務の可視化/効率化および、人事制度規定の改定案策定に取り組みました。
所属 株式会社テレビ朝日
留学先 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社
他社留学期間 週1日/3ヶ月間(2022年4月~2022年6月)
留学した人 人事局厚生労務部 鎌田 睦さん(留学時:新卒入社26年目)
送り出した人 人事局厚生労務部長 関 知栄さん

3ヶ月という短い時間だからこそ集中して頑張れた

――まず初めに、今回の留学ではどのような業務を担当されたのですか?
鎌田さん(以下、鎌田) 今回は人事のキャリアを活かして、人事部の業務に携わりました。1つ目は、人事サービスチームのサービスオペレーション向上のため、業務可視化・プロセスマップ作りと社内イントラサイトの刷新、2つ目は、人事制度規定の改定や新運用における情報整理や改定案のまとめサポートを行いました。
――留学について改めて振り返ってみて、いかがですか?
鎌田 本当に今回貴重な経験をさせていただき、参加して本当に良かったです。3ヶ月は短いと思っていましたが、濃い時間で私にとっては十分でした。留学先での業務内容も所属企業での業務と近い内容だったので、スムーズに入っていくことができました。また、3ヶ月という限られた時間ということもあったので、自分の会社に持ち帰れそうなところだけに注力したというのもあります。自分の担当業務以外にも色々できそうなことはありましたが、無理をせず吸収したいところに絞って関わるようにしました。3ヶ月という短い時間だったからこそ、集中して頑張れたというのもあるかもしれません。
――充実した3ヶ月間になったのですね。
鎌田 そうですね、最初から前のめりになって関わるようにしたのが良かったのではないかと思います。短い時間なので、楽しもうと思ったのもあります。ユニリーバの皆さんは個性的で色々なバックグラウンドをお持ちで、一人一人全く異なっていました。留学前にチームメンバーの皆さんと1on1ミーティングで話す時間を取っていただけたので、色々な人から早い段階で色々な話を聞くことができ、スタートダッシュできました。
3ヶ月間、ハードではありましたが、留学の終盤は終わってしまうのが寂しかったです。最後に留学のまとめとして、ユニリーバ内で報告会の時間をいただきました。短い時間だったのですが、私の報告というよりは皆さんからのフィードバックの時間を長く取っていただきました。事前に私に関するアンケートを取って準備もしていただいたようで、すごく感激しました。所属企業では、文化としてあまりこのような機会がなかったんですよね。
(鎌田様:写真左)
――留学中は毎週のレポート提出があったと思いますが、大変でしたか?
鎌田 留学先の業務に加え所属企業の仕事もあったので、毎週作成するのは大変でした。何もしなければ書くこともないので「レポートに書ける内容を作らないと!」とモチベーションの一つになっていました(笑)。これまで日報などは手間がかかって大変だというイメージがありましたが、文字にすることで自己内省や行動するモチベーションに繋がり、良い効果を実感できました。

強みを活かし良い関係性を構築

――留学先の皆さんと良い関係性を作ることができたのですね。
鎌田 はい。留学先の方々とは必要なコミュニケーションを取りながら、信頼関係を作って業務を進めていくことができました。一緒のチームになった方とはたくさん話をすることができて良かったです。一方で、接点が少なくあまり会話ができない人もいました。ユニリーバの皆さんは色々な個性のある方だったので、今思えば躊躇せずもっと話せば良かったなと思いました。
――留学先は全くの別業界でしたが、貢献できている感覚はありましたか?
鎌田 自分が得意な分野については貢献できたと思うので、自分の強みが他の企業でも活かせることが実感できました。3ヶ月という短い時間だったので、自分の力がすごく伸びたというよりは元々持っていた能力を活かすことができたと思います。人事の業務は業界が異なっても共通することは多いですし、ツールを駆使してデータからアプローチするのは得意なので、その部分で貢献できました。逆に、私の苦手なことが得意な方がいて、そこはお任せして協力しながら進めることができました。
――周りの方を巻き込みながら進めていったのですね。
鎌田 そうですね、留学先に対しては自分のできる範囲で貢献しましたが、1ヶ月過ぎた頃から留学先で学んだことをどのように所属企業へ活かしていくかを意識するようになり、社内外問わず、周りを巻き込むように行動していきました。ユニリーバの方が社外を巻き込んだイベントを企画したときには、当社の社員も参加してもらうように動きました。
実は、そのイベントのアナウンスがあったときに、非常にビックリしたんですね。というのも、社外の方を巻き込むようなイベントの場合、すごく前から時間をかけて準備をしていると思っていたのですが、そうではなかったんです。企画内容が決まったらすぐに日付と場所を決めて「さあ、やりましょう」という速いスピードで進めていて、フットワークの軽さを感じました。そんな簡単に色々な会社の人を巻き込んで進めることができるのかと刺激を受けましたし、私自身もそのような心持ちでやらないといけない、私もやってみよう、と思った出来事でした。
――周りの方を巻き込むことに対するハードルが下がったということですね。
鎌田 フットワーク良くイベントを行う事例を実際に見て、意識が変わりました。エッセンスでも「組織の成長や変革を促すには、まず半径5mの人を巻き込んで行動していきましょう」と伝えていると思いますが、留学を通して私も半径5mにいるチームメンバーを巻き込みながら仕事をしていこうという気持ちになりました。
以前、留学を開始してすぐの頃、エッセンスの他社留学ラボに参加して、卒業生と話す機会がありました。私以外の方は皆さんすでに留学を終えられて、所属企業に戻ってからしばらく時間が経過している方々だったのですが、「留学で学んだことをすぐに所属企業に取り入れて組織全体に影響を与えるのは簡単なことではない、だからこそ社内に同じ想いを持っている仲間を見つけて活動を続けていくことが大事」という話を聞きました。私もそういう仲間を見つけるためには、大掛かりではなくても小さく発信を続けて同じ想いの仲間同士で繋がっていくことが大事だと思うようになりました。
(写真:鎌田様)

留学先でかけられた言葉に影響を受ける

――留学を通して成長したと感じたことはありましたか?
鎌田 小さな行動を起こすことに意識が向くようになり、他者に期待するのではなく自ら行動を起こしていく力が身に付いたと思います。留学先の方に「“何をどうしたい”があるのはいいけれど、その先の“何をする”までしっかりと考えたほうがいい」と言われたのが心に響いて、意識が大きく変わりました。
――留学先の方の言葉に影響を受けたのですね。
鎌田 そうですね、他にも「苦手なことを苦手だと思わなくていい」という言葉も響いた言葉の一つです。これまでは、苦手なことも全て自分でやらなければと思い込んでいた気がします。得意なことはできるのでいいのですが、あまり得意でないことがあった場合でも、何とか自分でできるように頑張っていました。そのため、自分のできないことにフォーカスする癖がついてしまったんです。
しかし、今回の留学で自分の得意なことで貢献して、得意でないことは自分以外のできる人にお任せする経験をすることで、周りと協力する素晴らしさがわかりました。少し前に「弱みが強みにはなることはない」という言葉を聞いたのですが、それが留学先の経験を通して腑に落ちました。所属企業でも、すべて自分でやろうとするのではなく、苦手なことが出てきたら得意な人に頼っていけるようになると皆が幸せに働けるようになると思いました。

留学先に飛び込んだからこそ見えてきたもの

――留学することで気づいた所属企業の優れた点はありましたか?
鎌田 ユニリーバの方にも言っていただいたことですが、当社は離職率が低く愛社精神が強いのではないか、ということです。これまでは離職率が低いことに関して、外の風を取り入れにくいのではないかとネガティブな側面にフォーカスしていました。しかし、留学を通して離職率が低いということは安心して働ける環境であり、長く働くことが当然だと思っていることが前提にあって、実はそれは価値が高いということがわかりました。中途採用が多いと採用コストがかかりますし、もっと当社の良い面に目を向けて長く働くことを強みとしていきたいです。
また、メディア企業ですので知名度があることも強みだと気づきました。社外に出ることで当社に対する色々なイメージについて話を聞くこともできました。小さな事業を始めるときも知名度があるとプラスになりますし、知名度を活かした戦略作りができたらいいですね。
――逆に、所属企業の課題だと感じたことはありましたか?
鎌田 社内外への発信力は強化が必要だと感じました。ユニリーバは社内外への発信力が強く、ブランディングも優れています。当社はメディアということもあって、会社としての取り組みを発信しなくても知名度を維持することができ、採用においても良い人材が確保しやすいのですが、これからの変化が激しい時代においては発信力が必要になると感じました。
また、当社はこれまで離職率が低いこともあり同質性が高いので、社内で言葉を尽くして説明する必要性をあまり感じてきませんでした。しかし、時代が変わり新しい世代が入ってくることで、徐々に価値観の違いによる問題が起こるようになってきました。今後は社内でもよりコミュニケーションを活発化させて、多様性を受け入れる文化を醸成していきたいです。
――留学先の文化で取り入れたいと思ったことや優れていると感じたことはありましたか?
鎌田 ユニリーバでは「フィードバック文化」があり、日常会話でも当たり前のようにフィードバックをするんですね。これがとても新鮮でした。最初の頃、1on1ミーティングをしたら、相手の方が「これからフィードバックします」と言って話してくださったことに本当に驚きました。しかし、3ヶ月間フィードバック文化に触れて、この文化の良さを体感でき、ぜひ当社にも取り入れたいと思いました。留学先以外の会社のイベントに参加したときも最後に主催者に対して参加者が「フィードバックは大事なギフトです」と言ってフィードバックをしている姿を見て、より取り入れたい気持ちが強くなりました。
当社の場合も評価面談で年に1回フィードバックする機会はありますが、日常的に行われているわけではありません。今後社内でフィードバック文化を広める場合、いきなり「1on1ミーティングをやってください」とお願いしても実施する目的や意義、やり方がきちんと伝わっていなければ単なる形だけに過ぎない手間のかかる業務になってしまいます。社内に取り入れるのであればその点を考慮して、ステップを踏みながら進めていく必要があると思います。
それから「言語化する力」の素晴らしさを感じました。ユニリーバでは、「パーパスワークショップ」という過去を振り返って自分の譲れない価値観に気づいて各自のパーパスを言語化する取り組みがあるのですが、参加させていただき、皆さんの言葉の強さを感じました。ワークショップ以外でも日常的にパーパスについて話す文化が根付いており、皆さん言葉選びのセンスが良く、一つ一つの言葉に強さが伴っていました。ユニリーバは、外資系なので当然日本語だけでなく英語も多く使うのですが、日本語に比べて文脈に頼れないので、適切な言葉を選んだり説明したりする力が磨かれるという話も聞きました。
(鎌田様:写真右)

留学後の変化と今の想い

――では、留学後は留学で学んだことをどのように活かしていますか?
鎌田 まずは、会議の見直しを行いました。ユニリーバで有効に機能していたいくつかの会議を参考に、改めて必要な定例会議を検討し、7月から新しい会議の運用を開始しています。また、今回私自身が他社留学を経験することで越境学習の場」が有効であることがわかったので、社内の意欲ある人材に対して成長機会を提供できるよう準備を進めているところです。
また、働き方改革をさらに一歩進めるための取り組みを始めました。ユニリーバではHRBPと社員が密に会話をしていたので、私も意識して色々な社員と働き方について話したんですね。そして一人一人考えていることはたくさんあるものの、一人の力ではどうしようもできないことが多くあることがわかったので、個々の声をまとまった声にすることが必要だと感じました。まだ取り組みは始まったばかりですが、まずは育児中の社員がいる職場の働き方を改革すべく社内サポーターを募り、今後本格的に進めていく予定です。
それから、女性社員に向けたキャリアを考えるワークショップの開催に向けた企画も進めています。ユニリーバでは、管理職の女性も多く、活躍している女性がたくさんいらっしゃいました。また、性別に加え、年齢も関係なく活躍している点が印象的でした。働き方改革と女性活躍推進についてはセットで考えていくことだと思いますので、仲間を集めながら進めているところです。
――留学後、周りの方から何か変わったと言われることはありましたか?
鎌田 留学後、チームメンバーに対して前向きな言葉がけをするようにしています。それを上司が見ていて、留学前と留学後の変化について周りに伝えてくれています。自分で話すよりも周りが話してくれると説得力が増します。留学して楽しかったらしい、という伝わり方では留学した意味がないので、上司が話してくれるのはありがたいことです。
――色々変化が出てきているのですね。先ほど取り入れたいとお話されていたフィードバック文化はいかがですか?
鎌田 そうですね、フィードバック文化を広めるために半径5mのチームメンバーに対してのフィードバックを行うことは留学中から実施するようにしていたのですが、留学後も継続して行っています。ただ、チームメンバーからは「急激に変わることはできない」という言葉をもらっているので、徐々に広めていけたらいいなと思っています。
やりたいことはたくさんあるのですが、チームメンバーも現状の業務が忙しく、私の想いだけでは進められません。他社留学で学んだことを活かしたい、組織をより良くしていきたいと焦る気持ちはありますが、急激に変えていくことはできないので焦らずチーム全体の状況を見た上でスムーズに進められるよう行動を続けたいです。留学の経験自体が重要ではありますが、留学後に所属企業に戻ってからが本番なので、引き続き頑張ります。
<留学先からのコメント> 
~ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社 岡田様より~
3ヶ月という短い期間ではありましたが、良い関係性を作ることができました。インプットの時期を終えてからは、当社が求めるものに対してしっかりと価値提供してくださり、積極的に動いていただきました。留学期間を通して、学びたいという意欲が非常に伝わってきました。自分の学びを自分の中に留めるだけでなく、周りに伝えようという姿勢が本当に素晴らしいと感じました。人を巻き込んで行動していく中で大変なことも出てくるかもしれませんが、諦めずにその先にある「やりたいこと」「ビジョン」に向けてリーダーシップを発揮しながら仲間と共に実現していってください。3ヶ月間、ありがとうございました。
会社名 株式会社テレビ朝日
業種  放送法による基幹放送事業および一般放送事業
URL https://company.tv-asahi.co.jp/