事例紹介

ピジョン株式会社×株式会社マチルダの導入事例

「やりたいことをやろう!大事なのは、まず動き出すこと」(職種:購買、留学頻度:週1日、留学時:新卒入社28年目)
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目的
・スタートアップならではのスピードや仕事に対する厳しさを体感する
・理想的なチームのあり方を学ぶ
・存在意義や想いをビジネスに落とし込む経営者スキルと情熱に触れる
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背景
外の世界を観ることで新しい視座、価値観を培う環境を創る必要があったため
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効果
熱い想いを持った経営者とオーナーシップの強い社員の皆様と接することで理想的なチームやリーダーとしての在り方を学び、部下との接し方や自身の仕事との向き合い方を見つめ直すことができた
他社留学を終えた「卒業生」にインタビュー。留学前、留学中、留学後の想い、そして留学後に何が変わったかについて、体験談を語っていただきます。
今回お話を伺ったのは、ピジョン株式会社。他社留学を経験したのは購買部の市瀬さんです。留学先は、家庭料理のテイクアウトステーション「マチルダ」の開発及び運営を行うベンチャー企業、株式会社マチルダです。留学中は、オペレーション改善プロジェクトの企画、推進に携わりました。
所属 ピジョン株式会社
留学先 株式会社マチルダ
他社留学期間 週1日/3ヶ月間(2022年7月~2022年10月)
留学した人 購買部SCM2G マネージャー 市瀬 達也さん(留学時:新卒入社28年目)
送り出した人 購買部 シニアマネージャー 庭田 平さん

様々な期待を膨らませ始まった他社留学

――まず初めに、他社留学に参加した背景をお聞かせください。
市瀬さん(以下、市瀬) 今回は社内の公募制度に応募して留学が決まりました。私は新卒からピジョンに勤務しており色々な部署も経験したので、最近は新しいことにチャレンジする機会が減っていました。そのため、仕事が順調に進んでいても、何か物足りなさを感じていたり、このままでいいのだろうかという危機感を持っていたりしました。前年度までは、社内でも比較的若手の社員が他社留学していたので若手のための制度だと思っていたのですが、今年公募制度の話を聞いたとき「これだ!」と思い応募することにしました。
――留学前はどんな気持ちでしたか?
市瀬 他社留学は全く知らない環境に飛び込むことになるので、自己成長に繋がる刺激的な経験ができると思って楽しみな気持ちでした。留学先の役に立てるのだろうか?という不安もありましたが、私は地域の活動などにも参加して知らない人とコミュニケーションを取ることは苦にならないタイプなので、これまでのキャリアも活かして何かしら貢献できるのではないかと考えていました。
――他社留学にはどんなことを期待して参加したのですか?
市瀬 自分自身のスキルがどの程度通じるのか腕試しでチャレンジしたということもありますが、スタートアップならではの意思決定のスピード感や仕事に対する厳しさを体感したい、存在意義や想いをビジネスモデル・ビジネスプロセスに落とし込む経営者スキルと情熱に触れたいという思いもありました。また、留学経験を通じて、改めて自分が何のために働くのか、何を喜びとして働くのかを見つめ直し、自部門が目指す姿を考える際の軸にしたいと思っていました。それから、スタートアップ企業と比較して自社に足りない部分を明確にして会社を変える契機にすると同時に、自社の良い所を再認識し、それを社内にフィードバックしたいと考えていました。

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これまでの経験と持ち前の調理能力を活かした3ヶ月間

――他社留学中は、オペレーション改善プロジェクトの企画、推進に携わったとのことですが、具体的にどんなことをしたのですか?
市瀬 留学中は3つの改善を行いました。1つ目は献立開発サイクルの見直し、2つ目は工数管理、3つ目はサプライヤーの選定です。現在私はピジョンで購買部の管理職として勤務していますが、購買の経験だけでなく、過去のシステム部や経理部での経験・スキルを活かしプロジェクトを進めました。
サプライヤーの選定においては、地元の人脈なども使って情報収集し、数社に見積もりを取り、一つ一つの食材についてこれまでの仕入れ先と比較して決定するところまで関わりました。ピジョンでは現場の仕事から離れているので、久々に現場の細かい仕事に携わり、調達の仕事の楽しさを再認識することができました。
またそれ以外にも社内のコミュニケーションがより円滑になるように、外部の人材だからこそできる関わりをさせていただき、貢献することができたと思います。
――他社留学の途中で変化があったと聞きました。
市瀬 そうですね、留学の半ばに変化があったのですが、社長からかけられた一言がきっかけでした。ご本人は意識して言ったことではないと思うのですが、「いつアウトプットしていただけるんですか?」という言葉をいただいたときに「これはまずい」と思って、ギアを一段上げてよりスピード感を持って積極的に行動していくよう変えました。
――留学先の皆さんとはどのように関係を構築していったのですか?
市瀬 元々私は料理が好きで調理作業にもある程度対応できると思っていましたので、初日は朝7時にキッチンに入って留学先の皆さんと一緒に手を動かしました。最初はサラダを混ぜたりする程度でしたが、徐々に包丁を握らせてもらえるようになっていきました。ガパオの味を決めるときに私も意見を言わせてもらい、結果的にそれが受け入れられたことで皆さんとの信頼関係を築く足がかりになったと思います。また、週末にはマチルダが出している献立を再現して、マチルダ社内で使っているSlackに写真をアップしたのですが、このことでマチルダの仕事に対してリスペクトしている気持ちを伝えることが出来たように思います。留学が終わってからも良い関係が続いていて、本当に貴重な財産になりました。またいつでも行けるように、キッチンに靴を置いたままにしてあります(笑)
――留学先の皆さんと良い関係性を築けたのですね。留学前と比べてより生き生きとした表情になった気がします。3ヶ月間とても充実していたのですね。
市瀬 そうですね、3ヶ月間楽しかったですし充実していました。ピジョンだと管理職なので自分で見積もりを取って交渉することはやらないのですが、留学先で久しぶりに現場に出て見積もりを取って業者とやり取りをしました。コストが下がるのが目に見えてわかるのが楽しくて、自分はこの仕事が本当に好きなことが改めてわかりました。やっぱり自分が好きでやりたい仕事していると楽しいですよね。
(市瀬さんが再現したレシピの数々)

やりたいことをやろう!大事なのは、まず動き出すこと

――他社留学を通しての一番の学びは何でしょうか?
市瀬 「やりたいことをやろう」の一言に尽きます。「やりたいこと」をやった方が楽しいですし、成果も出ます。しかし、仕事の中には「やりたいこと」だけではなく、「やらなければならないこと」も多いですよね。それをいかに効率よく終わらせて、「やりたいこと」にエネルギーを注ぎ込めるかがポイントだと思うんです。私達は、一日の1/3を仕事に費していますから、楽しく仕事をした方が人生も豊かになるし、仕事の質も上がりますし、いいことばかりです。
「やりたいこと」に取り組まないで、「やらないといけないこと」に逃げて、仕事をした気分になっている人も多いですよね。それでは仕事がつまらないです。やりたいことを実現させるのに簡単に結果が出ないこともあるかもしれませんが、自分がやりたい仕事なら頑張れますよね。
――なるほど。ただ、世の中には「やりたいこと」がわからないという人も多いと思うのですが。
市瀬 「やりたいこと」というのは、そんな立派なことや大きな夢である必要はないんです。会社やチームで仕事をしていれば、目の前のルールややり方を変えたい、ということは誰にでもあると思います。そういった小さなことでもやりたいと思ったことを素直に表に出してやればいいんじゃないか、という単純な話です。
プロジェクトを進める中で「こんなことを言っていいのかな」「みんなついてきてくれるかな」と心配する前に動いてしまえば良いということに気づきました。自分の思い通りにやってみてダメなら違う手段・やり方を考えてやればいいだけで、まず動き出すことが大事だとわかったんです。行動に移してうまくいったことも、空振りに終わったこともあったのですが、まず動いてみて結果を見て、修正して、ということを繰り返していき、徐々に自分のやりたいことを実現させていくことができました。
――「やりたいことをやろう」という感覚は元々あったのですか?
市瀬 そうですね、元々そういった感覚はあったのですが、スピード感がなかったかもしれません。留学前はMECEな現状分析→課題の抽出→打ち手の決定、といったように綺麗で緻密なストーリーを描いて仕事を進めることに拘りすぎていたような気がします。長年ピジョンで仕事をするうちに染みついた部分で、ストーリーが綺麗に流れていないと(論理的でないと)みんな納得してくれないという思い込みがありました。でも、ストーリーが整っていなくても、大事なことだけ伝えて動いてみたらみんな協力してくれたんです。自分の思い通りにやった方がいいという、とても当たり前のことに気づく経験ができました。今後は自分の欲望に対して忠実になって、やりたいことをスピード感持って取り組んでいき、生煮えでも動き出すことを大切にしていきたいです。
(市瀬様:写真左)

留学先の皆さんから多くのことを学んだ

――今回の留学では、丸山社長とご一緒することもあったと思うのですが、どのような印象を持ちましたか?
市瀬 今回の留学を通して、丸山社長がどのように仕事と向き合って日々活動していて、社員にどのように影響を与えているのかを間近で見ることができました。社長はものすごいバイタリティで、自分の事業が果たす役割を明確にしていて、想いの熱さを感じることができました。ご家庭と両立しながらバリバリ働く姿を見てすごいと思いましたし、尊敬しています。
社員に対してもマチルダという会社が社会に対してどのような影響を与えたいかを社長の口からしっかりと伝えているので、それが皆さんに響いて、一緒に実現したいと思う社員が集まり素晴らしい組織を作っていました。だから、社員はよく働くし、自律的に動くんですよね。本当に良いチームワークが出来上がっていました。知り合いの栄養士にマチルダのキッチンを見てもらった際の見解も同じだったので「私が改善できる部分なんてないじゃん!」と思って焦りました(笑)
――社員の皆さんの印象をもう少し教えていただけますか?
市瀬 マチルダの社員の皆さんはオーナーシップが強く、素直で、一生懸命仕事に向き合う素晴らしい人たちでした。私より年上の人もいらっしゃいましたが、皆さんとてもパワフルで楽しく仕事をしていました。よく「いい年だし…」と年齢を言い訳にする人もいると思うのですが、生き生きと楽しく仕事をするのに年齢は関係ないんだとわかりました。
――留学先の文化で取り入れたいと思ったことはありましたか?
市瀬 マチルダではコミュ二ケーションツールとしてSlackを使用して、オープンなコミュニケーションを図っていました。基本的にダイレクトメールを使わず、みんなと情報共有することを心がけていました。当社でいきなりSlackを使うのは難しいかもしれませんが、議論の過程が見えるようなよりオープンなコミュニケーションを進めていきたいと思いました。
また、留学先では社長と主要メンバーが毎週1on1ミーティングをやることで密なコミュニケーションを取って進捗管理をしていました。困っていることやこうした方がいいという意見があればその場で吸い上げて改善に繋げていました。私の職場ではこのような場を設けていないので、コミュニケーションのあり方については、まだまだ改善の余地があると感じました。
それから、留学先の皆さんは当事者意識が非常に強く、素晴らしいと思いました。その背景として、社長が何度も何度も最終的なゴールを社員に伝えていたというのがあります。「1日1万食を目指す」という大きな夢を社長が語り続けることで社員に熱意が伝わっていました。そういった姿を見て、私自身も何のために仕事をしているのか、もっと部下に伝えた方がいいことに気づきました。ピジョンでも中長期目標があって、今期の目標・方針がありますが、部下に仕事を与える際には個々の置かれているステージ、スキルに応じて落とし込みやすいようにしっかりと考えて意味付けをしてあげることがマネージャーとして大事なことなんだと気づいたので、取り入れたいと思いました。

留学後の変化と今伝えたいこと

――留学が終わってから数ヵ月経ちましたが、留学で学んだことをどのように活かしていますか?
市瀬 まずは仕事のスピード感が上がっていることを部下に実感してもらうために、とにかく目の前のタスクをできる限り早く処理して部下の待ち時間を減らすように心がけています。それをやる事によって、部下も私も考える時間を確保することができますので。まだまだ追いつけていないと思いますけど(笑)。
あと、これは丸山社長の言い回しの真似なんですが、進行が保留しているタスクがあった場合に「これ、ボールはいま誰のところにあるの?」という聞き方をして、仕事がどこで止まっているのかを確認するようにしています。「ボールが自分のところにある」と認識すれば仕事を早く進める動機づけになりますから。
また、毎週月曜日の朝のコミュニケーションを変えました。以前は全員がオンライン・オフライン併用で全員が集まって行う「朝礼」の形式取っていたのですが、全員への連絡事項はメールで済ませて、一人あたり数分程度の短い1 on 1ミーティングの形式に変えました。一対一で顔を見ながら話していると忘れていたTo-Doを思い出すことができる、といった効果もありますので、今のところプラスに作用していると思います。個別の仕事のテーマで打合せをした際も、時間が余っていたら「この場を使って何か話しておきたいことある?」と必ず聞くようにしています。引っかかっていることはなるべく早めに取り除いてあげることを大事にしています。コミュニケーションのスタイルについては試行錯誤の最中で、最適なやり方を見つけられればと思っています。
――本日改めて他社留学を振り返って、今ピジョンの皆さんに伝えたいことはありますか?
市瀬 そうですね、まずは先ほど申し上げた通り、年齢に関係なく、みんな元気に楽しく仕事をしようということを伝えたいです。ピジョンの社員も優秀で素直な人が多いのですが、もっと元気に楽しく仕事ができるとさらに会社としても良くなっていくと思います。そのためにも、私が楽しそうに仕事していれば周りに良い影響を与えることができると思うので、まずは私自身が楽しそうに仕事をする姿を見せるよう心がけています。
あとは、留学中にリアルなベンチャー経営の実態を見せていただいて、当社がいかに恵まれた環境で仕事ができているかを体感したので、ピジョン社員にもそれを自覚してもらいたいと思いました。丸山社長もおっしゃっていましたが、人員的に余裕がある中で利益を出せるというのはすごいことで、ありがたいことなんです。皆さん、そのありがたさを感じてますか?と問いたいですね。ピジョンでは経費削減とは言いつつも、仕事で必要なものがあったら経費を使うことができますし、休暇も取りやすい環境だと思います。これは、長い年月をかけて先人たちが築いてきた事業基盤のおかげなんですが、この状況に胡坐をかいていると、利益が出にくくなり、事業に影響を及ぼす可能性もあります。今、まだ余裕があるうちに未来のために種をまくことがいかに大事かを全社員がしっかりと胸に刻んだ上で、より良い会社にしていきたいと思います。
<留学先責任者からのコメント> ~株式会社マチルダ 代表取締役 丸山様より~
市瀬さんは、非常に強い当事者意識で何事も自分事として向き合ってくれました。他社留学開始から1ヶ月が過ぎたあたりから明確に行動に変化が見られ、まずやってみようというスタンスで出来そうなことから現場にどんどん介入いただきました。私自身も市瀬さんが信頼できる方ということがわかっていましたし、変化を要求しても大丈夫な方と感じていたの、期待以上に応えていただけたという印象です。
組織内でのコミュニケーションにおいて、皆が言い出せずにいたことをズバッと言っていただけたこともありがたかったです。問題点を「人」に見出すのではなく「課題」に焦点をあてましょう、とハッキリと言っていただき、組織のカルチャーに根付いていた問題点を皆で認識することができました。
3ヶ月という短い期間ではありましたが、市瀬さんの存在、かかわり、改善への姿勢がチームに与えた影響は大きいと思っています。3ヶ月間ありがとうございました。
会社名 ピジョン株式会社
業種  その他製造業
事業内容 育児・マタニティ・女性ケア・ホームヘルスケア・介護用品等の製造、販売および輸出入、ならびに保育事業
URL https://www.pigeon.co.jp/