事例紹介

株式会社ニフコ×株式会社白鳩の導入事例

「新規事業開発の鍵を学び、経営視点の重要性に気づいた半年間」(職種:商品開発 留学頻度:週1日、留学時:中途入社7年目)
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目的
他業界の問題解決法を学ぶ/プレゼンテーション能力の向上を目指す
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背景
異なる業界や企業を経験できる機会を作り、リーダー人材の育成や外部との協業に関する経験・知見を得て、変革を促進する必要性があった
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効果
・新たな業務プロセスが身についた
・積極的に人と関わる姿勢が身に付き、プレゼンテーション能力が向上した
・留学先との協業に繋がり、新規事業開発における重要な要素を学んだ
他社留学を終えた「卒業生」にインタビュー。留学前、留学中、留学後の想い、そして留学後に何が変わったかについて、体験談を語っていただきます。

今回お話を伺ったのは、株式会社ニフコ。他社留学を経験したのは、ファスナー事業部 商品技術部の山川さんです。留学先は、日本で初めて民生用マスクを開発した老舗メーカーの株式会社白鳩。留学中は、マスクを含む、白鳩の強みを活かした新商品開発に携わりました。
所属 株式会社ニフコ
留学先 株式会社白鳩
他社留学期間 週1日/6ヶ月間(2023年10月~2024年4月)
留学した人 ファスナー事業部 商品技術部 山川 夏樹さん(留学時:中途入社7年目)
送り出した人 開発本部 エグゼクティブ・エキスパート 根津 幹夫さん

留学前の想い

——まず初めに、他社留学に参加した背景をお聞かせください。
山川さん(以下、山川) 社内で他社留学の公募があり、応募して参加することが決まりました。以前から異業種の方々との交流に興味がありました。また、自動車業界は現在100年に一度の変革期を迎えており、従来のやり方では対応できなくなる危機感を感じていました。そうした理由から、視野を広げるために応募しました。留学後は、自らが学んだことを会社の仲間に発信したいと考えていました。
——山川さんは普段どのような仕事をしているのですか?
山川 私は中途で入社して7年目になります。前職でも設計の仕事をしていましたが、現在はファスナー事業部でプラスチックファスナーの設計を担当しています。ファスナー事業部では、創業時から続く小型ファスナーを製造しており、日本中の様々なメーカーと取引しています。毎回異なるお客様と仕事をするため、常に新しいチャレンジがあるのが特徴です。
——他社留学前はどんなお気持ちでしたか?
山川 不安は特にありませんでした。昨年度、留学を経験した社員と親交があり、留学中のリアルな経験談を聞いたり、アドバイスをもらったりしていました。
——他社留学にどんなことを期待していましたか?
山川 日々業務を進める中で様々な問題に直面することが多いため、他業界ではどのように問題解決しているのかを知りたいと考えていました。また、他業界から所属企業がどのように見えるかも知りたいと思っていました。さらに、プレゼンテーション能力を伸ばしたいと考えており、留学中にそのような機会を作りたいと思っていました。

大変さを感じながらも充実した半年間

——他社留学に参加して、いかがでしたか?
山川 所属企業での通常業務もあったため、繁忙期と重なって大変な時期もありましたが、最終的には留学中に携わった新規事業が当社と共創していく方向で話が進んだので、終わった今となっては参加して良かったと思っています。本当に貴重な体験が色々できたので、関係者の皆様への感謝の気持ちが大きいです。本当にありがとうございました。

株式会社白鳩:https://shirohato-net.com/

——留学先はどのような会社でしたか?
山川 私が留学させていただいた株式会社白鳩は、名古屋にある老舗マスクメーカーで、日本で初めて民生用マスクを開発した会社です。主にOEM生産を行っており、最近では縫製技術を活かして野球用ベルトも製造しています。実際にプロ野球選手700人が使用している実績があります。留学先との最初の面談では、当社との共通点が多くあり、話が盛り上がりました。まず、創業時期が近く、歴史ある伝統的な会社であること。そして、両社ともOEMメーカーであることです。さらに、日本で初めて医療用ではなく民生用のマスクを製造した点が、当社が日本で初めてプラスチックファスナーを製造した点と共通しており、非常に親近感を感じました。
——留学中は具体的にどのように新商品を開発していったのでしょうか?
山川 私が留学開始した時期にちょうど、留学先で新商品のプロジェクト立ち上げがいくつかあり、そのうちの一つのプロジェクトに携わらせていただきました。留学先としても、私としても初めての試みだった為、最初は戸惑いも多かったです。回を重ねるごとに徐々にメンバーとも打ち解けることができ、気が付けば毎週通うのが楽しみになっていました。
ある商品の企画~試作を体験させていただきましたが、思ったようには製品は出来上がらず失敗の連続でした。しかし、その失敗を分析してメンバーで話し合い、次の試作に活かして少しずつ良くなっていく様子は、モノづくりをしている設計者として心を揺さぶられるものがありました。
——留学先の皆さんとのコミュニケーションは問題なく進みましたか?
山川 コミュニケーションを取っていくうちに徐々に信頼関係が出来上がり、最終的にはプライベートの話もよくする程、仲を深めることができました。信頼関係があるからこそお話いただけたこともありましたし、そのおかげで当社が力になれることを提案することもできました。最初にしっかりと信頼関係を築いておくことは、プロジェクトを進める上で大事なことだと感じました。
——信頼関係を構築できたのは、どうしてだと思いますか?
山川 伴走者と話している時に、知らない人と繋がっていくには自己開示力」と自分のことをアウトプットする「言語化能力」が大事だと聞きました。自分では意識していませんでしたが、自然とそれらができていたのかもしれません。
(山川様:写真の右側中央 留学先での打ち合わせの様子)
——今回のプロジェクトは、所属企業での仕事と同じやり方で進めたのですか?
山川 今回は新商品の開発を担当したのですが、当社の開発プロセスとは異なる方法で進めました。当社では自動車部品という安全性が求められる製品を扱っているため、「まずはチャレンジする、動きながら考える」という進め方はできません。しかし、今回は安全性を一番に優先する必要がない商品開発だったので、「まずはチャレンジする、動きながら考える」方法で進めていきました。この経験を通じて、新たな進め方が自分の中に加わったと感じています。
——留学中、大変だったことはありましたか?
山川 私は現在名古屋事業所に勤務していますが、神奈川県にある本社に比べて他社留学を経験している同僚がまだ少ない状況です。また、留学期間中に送り出してくれた上司が異動になったため、孤独を感じることもありました。プロジェクトを進める上で、社内の関係者も巻き込みながら進めたいと思っていたのですが、他の社員からどう思われているか不安に感じたり、他社留学の趣旨や目的の理解が浅い人もいたりしたため、難しさを感じたこともありました。しかし、オンラインで仲間と話したり、伴走者と定期的に面談を行ったりすることで、この困難を乗り越えることができました。

留学を通しての気づき・学び

——留学を通して、どのようなスキルを獲得・強化できたと思いますか?
山川 今回の経験を通じて、積極的に人と関わる姿勢が強化されたように感じます。また、プレゼンテーション能力も向上しました。留学前には全く想像していませんでしたが、所属企業や商品の紹介を行う機会が多くありました。これまでプレゼンテーション経験が少なかったため、自分ができるとは思っていませんでしたが、実際に会社の代表として話す必要があったことで、回を重ねるごとにスキルが磨かれていきました。設計部門にいる時にはあまりこうした機会がなかったので、非常に良い経験ができました。
——留学を通して、どのような気づき・学びがありましたか?
山川 今回新商品の開発に携わったので、ゼロから何かを生み出して形にすることの難しさを強く実感しました。当社は、既存のお客様の困りごとを解決する提案は得意ですが、自ら新しいものを生み出すことにはあまりチャレンジしてきませんでした。新商品や新規事業を立ち上げることは、自分一人だけではできないので、人の協力が必要です。何もないところから新しいものを生み出すのは時間がかかるので、自分の会社だけで進めるよりは、他社との協業から始めるのが現実的です。そのため、これからの時代には、繋がる力が非常に大事だと気づきました。
——新規事業を立ち上げる上で、他にも大事だと感じたことはありますか?
山川 皆が様々なアイデアを共有できる、風通しの良い環境を作ることが大事だと思いました。私の所属組織でも今年から新規事業を立ち上げる目標ができました。以前は、新規事業開発は特定の社員だけの仕事という認識が強かったのですが、最近はそのような考えの人が減ってきています。新しいことを考えるよりもタスクを迅速にこなすのが得意な人もいるため、全員が新規事業に関わる必要はないと思いますが、皆で協力的に進めていける風通しの良い環境作りが大事だと思います。
——留学を通して、ご自身の成長課題だと感じたことはありましたか?
山川 経営サイドの方々とのコミュニケーションについては、難しいと感じました。今回の留学で、執行役員の方と毎週話をする機会があったのですが、私自身が経営者ではないため、言葉に詰まることがあり、経験不足を感じました。しかし、これは経験を積むことで解決できると考えています。一社員であっても、常に経営レベルの視点を持って業務に取り組むことが重要だと実感しました。
——他社留学を通して、所属企業の優れた点はどんなところだと感じましたか?
山川 所属企業の優れた点としては、挑戦を奨励する社風や文化、そして失敗を許容する寛容さがあることだと思います。また、経営基盤がしっかりしている点も魅力です。しかし、私が最も強調したいのは、ニフコの魅力は無限大のアイデアやその組み合わせが可能な点だと感じました。新規事業を始めるにあたって、無限の可能性がある会社だと思いました。

留学後の変化

——留学後、どのような変化がありましたか?
山川 留学前に比べ、積極的に様々な取り組みを行い、発信するようになったと思います。例えば、SDGsの一環として廃材を利用して様々な取り組みを行っており、実際に試作品を作ったりもしています。名古屋事業所は工場を併設しており、ゴミの問題が深刻なため、廃材をリサイクルして新たな製品に変える取り組みは、今後も継続的に行っていきたいと思います。
また、社内のメンバーとよくコミュニケーションを取ったり、社内の業務改善を積極的に行うようになったという変化もありました。現在集まっているメンバーは中途入社同士なので、自然体で率直な意見交換ができるのが楽しいです。それから、社外の人や社内の関わりがなかった人とも、積極的にコミュニケーションを取りにいけるようになりました。留学先とは留学が終わった後も関わりを継続しています。お互い業種は異なりますが、共に何か創造できたら面白いなと思っています。
——留学中に学んだことで、取り入れたことはありますか?
山川 「考えながら走る」ということでしょうか。新規事業に関わる仕事を担当しているので、失敗は付き物で、うまくいかない、計画通りいかないことの方が多いです。留学を通して、やりながら修正していく、軌道に乗せていく、という考え方を持てるようになり、現在の業務にも活かせていると思います。
——ご自身の変化によって、周りへの影響はありましたか?
山川 そうですね、今回の留学を通して今後は社内外の人々と繋がっていくことが重要だと感じたので、社内で良好な関係を築くことに加え、社外の人々と繋がることで新たな機会が生まれるということを社内で発信しています。先日、普段はあまり社外に出ようとしない後輩が、私が展示会に行きたいと上司に確認しているのを見た時に、自分も参加したいと言っている姿を見て変化を感じました。このように、徐々に周囲に良い影響が広がっていると感じているので、今後も発信を続けていきたいと思っています。
——他社留学に参加する方にメッセージをお願いします。
山川 今回の他社留学を通して様々なものを得ることができたので、参加して良かったと思っています。参加するからには、とにかく楽しむことが大事だと思います。また、留学先では所属企業の代表として意見を求められることもあるので、しっかりと準備した上で臨んでください。応援しています!
<留学先からのコメント> ~株式会社白鳩 経営企画グループ部長 米久保様より~
新商品の立ち上げに関わっていただきましたが、山川さんの全く新しい知見を得ることができ、当社としても非常に満足しています。最初はお互いが様子見し、どこまでやっていいのか戸惑いもありましたが、一緒に業務を進めるうちに積極的に活動していただきました。週1回の留学ということで難しい面もありましたが、山川さんの豊かな人間性で、同僚のように親しみやすく、相談しやすい関係性を築くことができ、大変頼もしく感じました。直接業務で関わらないメンバーとも、自ら臆することなくコミュニケーションを取っていただきました。また、当社の社長と偶然会った際も30分以上立ち話をしたということも聞いており、社外に出たからこその様々な良い経験をしていただけたのではないかと思っています。半年間ありがとうございました。
会社名 株式会社ニフコ
業種  工業用プラスチック・ファスナー及びプラスチック精密成形部品の製造・販売
URL https://www.nifco.com/