事例紹介

株式会社ニフコ×MaaS系ベンチャー企業の導入事例

「ビジネス全体を考え、自分だけでなく会社をどう変えていくか考えるようになった」(職種:設計開発、留学頻度:週1日、留学時:新卒入社6年目)
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目的
自社で体験できない活動を通じ、今までにないアイデアを発想できる人間になる
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背景
異なる業界や企業を経験できる機会を作り、リーダー人材の育成や外部との協業に関する経験・知見を得て、変革を促進する必要性があった
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効果
ビジネスモデルの理解力と、新事業開発に必要なスキルを得て、ビジネスが構築できる人材になった
他社留学を終えて元の職場に戻った「卒業生」にインタビュー。留学前、留学中、留学後の想い、そして留学後に何が変わったかについて、体験談を語っていただきます。

今回お話を伺ったのは、株式会社ニフコ。他社留学を経験したのは商品開発部 Exterior商品開発Unitの藤田さんです。留学先はMaaS系ベンチャー企業です。留学中は、ドローン事業における事業開発に携わりました。
所属 株式会社ニフコ
留学先 MaaS系ベンチャー企業
他社留学期間 週1日/6ヶ月間(2021年10月~2022年4月)
留学した人 商品開発部 Exterior商品開発Unit 藤田 大輝さん(留学時:新卒入社6年目)
送り出した人 技術本部 商品開発部 シニアプロジェクトマネージャー 根津 幹夫さん

視座を高めたいと思って始まった他社留学

――まず初めに、他社留学に参加した背景をお聞かせください。
藤田さん(以下、藤田) 今回は指名を受けて他社留学に参加することが決まりました。昨年度の公募時にも応募するか迷ったくらいだったので、指名を受けて嬉しい気持ちになりました。当初は現職での業務もある中で週1回他社のプロジェクトに参画するのは大丈夫だろうか?という思いもありましたが、上司から「期待しているよ」と声をかけてもらったこともあり、前向きな気持ちで挑戦することができました。
――他社留学にはどんなことを期待して参加したのですか?
藤田 元々モノづくりが好きなため、自動車部品の設計をして顧客に喜んでもらえる今の仕事にはやりがいを感じていました。一方で、入社から同じような仕事の繰り返しが多く、自己のスキルアップを考えた時に焦りを感じることがありました。今後のキャリアを考えると、自分の仕事を俯瞰して見ることができ、会社全体の利益についても考えられるような人材になる必要があると思いました。そこで、今回の他社留学では幅広い経験を積んで視座を高めることができたらいいなと考えていました。
(写真:藤田様)

戸惑いながらも楽しく過ごした半年間

――では、実際に他社留学に参加していかがでしたか?
藤田 半年間楽しかったですし、自分自身がバージョンアップできたという手ごたえも感じています。今回の留学では、社内で仕事しているだけでは経験できないことを色々経験させていただきました。携わった業務としては、本業の設計開発ではなく全く異なる事業開発にチャレンジしました。ニフコの前年度の留学経験者や同時期に留学した方は本業に近いプロジェクトや、本業とは異なる業務であっても何かしら“モノづくり”に関わることをしている方が多かったのですが、私はモノも作らない、全く異なる業務に携わりました。そのため、この半年間は戸惑いも多くありました。
しかし、留学先の皆さんの協力もあり、無事終えることができました。留学先担当者の方は元コンサルティング業界出身者で、普段関わることがないようなキャリアをお持ちの方でした。そのため、今まで触れたことがないような知識に触れることができ、それだけでも価値のある経験ができたと感じています。業務以外にもプライベートな話も色々でき興味深いお話もたくさん聞くことができました。本当に貴重な時間を過ごすことができたと思います。
――今回の留学では、ドローン事業における事業開発をされたとのことですが、半年間どのように進めていったのですか?
藤田 本当にドローンに関しては全く知識がない中で始めたので、最初の数ヵ月は教えてもらうことの方が多かった気がします。まずは必要な知識をインプットしながら、事業化できそうなビジネスモデルを色々調査・検討しました。すでに社内で検討済の案であっても再度検討し直して資料に纏めていきました。わからないながらも試行錯誤を続ける中で、「これならいけるかもしれない」という案が見つかり、最終的に事業計画案を出しました。その計画案については、今後留学先でアレンジして進めようと考えているとのことで、何らかの形になったら連絡するよ、というお言葉もいただきました。留学先の力になれたのではないかと思います。
――現職とは全く異なる業務に携わってみて、いかがでしたか?
藤田 最初から自分のこれまでの知識は8、9割使えないと思って臨みました。これまでのキャリアとは関係ない、素の自分の力を使いゼロから始めてどこまでいけるか、そこを見たいと思って敢えてチャレンジしたというのもあります。やってみると意外と慣れてくるもので、半年ではプロになれませんが、やろうと思えば意外とできることがわかりました。ただ、もちろんその業務の向き・不向きはあると思いますし、頑張る必要はありますが。
(写真:藤田様)
――留学先の皆さんとのコミュニケーションはどのように図られたのですか?
藤田 留学前半は直接留学先へ出向くことができず、オンライン中心の関わりが多くなり、コミュニケーションを取るのに苦労しました。後半は上司の協力もあってほぼ毎週出社することができたので、積極的に皆さんに話しかけてコミュニケーションの機会を増やしました。そうするうちにチームメンバーから自動車関連の意見を求められることも出てきて良い関係性を作ることができました。前半で直接話せなかった人たちともリアルで会うとスムーズにコミュニケーションが取れるようになったので、後半からは“お客様”にならず会社の垣根なしに入り込めた感じがします。

多くのことを学び、組織としての違いを感じた

――今回の他社留学で学んだこと、気づきはどんなことでしたか?
藤田 スキルとして学んだことは、「ビジネスモデル」と「事業開発の仕方」です。本業は設計なのでお金に絡んだことを業務としてやっていないのですが、留学先では営業戦略室にアサインされ、PLの書き方、会社のお金の動きを学びました。自分の仕事を俯瞰して見て、会社全体の利益についても考えられる人材になったように思います。
また、「人に伝える力」「伝わりやすい資料作り」を学ぶことができました。先ほど申し上げましたが、留学先の担当者の方が元コンサルタントだったこともあり、間近で素晴らしい資料作りを見ることができ勉強になりました。私も設計として構造についてお客様に説明することもあるので、業務に直結してすぐに使えることを学ぶことができました。
あとは、今回営業戦略の方と関わることで、設計と営業の意識の差や価値観の違いを感じました。当社の場合は設計と営業が明確に分けられているので、営業の仕事のことがわかっていなかったんですね。何か問題があったときに設計は「形状」や「機能」で解決しようとするのですが、営業はそれらを変えられないと思っているので、同じモノでも「どう売るか」「どうやれば利益が出るか」に着目して解決しようとします。設計でもこのような感覚は必要だと思いました。また、営業の大変さも知ることができて、自分は今まで狭いところで仕事をしていたんだなと視野の狭さを痛感しました。
――所属企業と留学先企業の違いから、どんなことを感じましたか?
藤田 まずはリソースの違いを感じました。人やモノ、資金面など、いかに恵まれている環境なのか気づかされました。ニフコはしっかりとした仕組みが出来上がっているということにも気づきましたが、仕組みがあるゆえに自分でなくても仕事ができてしまうのではないかと思ってしまい、自信がつきにくい環境にあると思いました。
また、留学先は一人一人の個が強く、全員が会社の経営に直結するような、自分が動かないと何も進まないような重要な案件を持っていて、非常に厳しい環境だと感じました。先の見えない変化の激しい時代なのでニフコ社員も危機感は持っていますが、貪欲さが違いました。それから、皆さんのフットワーク軽さやポジティブさも感じました。毎週決まった曜日のお昼の時間に、外国籍の人たちと集まってクイズをしているんですね。ほぼ全社員が英語を話せるのでグローバルな環境でした。私もクイズに参加させていいただき、ニフコとの違いをリアルに感じることができました。
(写真:藤田様)

留学後の変化と今後に向けて

――留学後、学んだことをどのように活かしていますか?
藤田 今の設計に関わる部署では、顧客の依頼書ベースに設計する仕事と基礎研究を重ねて設計開発していく仕事の2種類があるのですが、いずれもお金に関わる話をすることはありません。しかし、先ほども申し上げたとおり、設計部署であってもビジネスとしてどんな付加価値を付けられるか、そしてそれがどれくらいの利益をもたらすことができるかという営業的な観点を学んだので、設計する際に取り入れるようになりました。また、資料作りの際も学んだことを取り入れて、以前より伝わりやすい資料が作成できていると思います。
――今後に向けて考えていることはありますか?
藤田 今申し上げたことやベンチャー企業の考え方、スピード感、ベンチャー企業との繋がり方などを社内で伝えていきたいと思っています。すでに部署内では発信を行いましたが、より多くの社員にも伝えていきたいと思っています。
また、私はモノづくりが好きで今の設計業務にやりがいを感じているので、基本的には設計業務を主軸としながら留学で学んだことを活かし、小さくても新規事業開発を進めていきたいです。既存事業だけでは組織の成長は難しいと思うので、新しい事業開発が必要です。もっとみんながより多くの利益を生み出すことを意識して仕事をするようになれば会社としても成長できると思います。
社会に出ると何らかの“プロ”にならないと何もできない、してはいけないような気持ちにさせられるなと感じていました。しかしベンチャーに留学してフットワークの軽さを体感することで、もっと気軽にチームを発足して事業を始めてもいいと思うことができました。中学校の林間学校で「あなたはニンジン切る役割ね」と気軽に決めていたあの感じで、社会に出てからも同じようにやっていいんだと思えたことは大きいです。
以前から自動車業界以外の興味のある分野で樹脂を使った製品作りをしたいなと思っていたんですね。今回の留学での経験を元に、収支計画を立てて事業化するイメージがより具体的にできるようになりました。すでに同業界の会社でも異分野に参入している会社もあります。私もベンチャーのフットワークの軽さを見習って、事業開発に取り組んでいきたいです。
<留学先からのコメント>
週1回の参加という難しい条件の中で、当社の成長のため成果を出そうと努力してくださいました。半年間常にアウトプットの改善機会を伺っており、手と思考を止めずに業務にあたっておられました。最終的には、事業計画案を作成して社内発表会にてご提案いただきました。当社としては優先度が高くないものの取り掛かれていないことだったので、非常に価値が高いものを作ってもらえたと感じています。事業を始めるにあたっての必要な情報を残していただき、非常に重要なタスクを行っていただきました。半年間ありがとうございました。

会社名 株式会社ニフコ
業種  工業用プラスチック・ファスナー及びプラスチック精密成形部品の製造・販売
URL https://www.nifco.com/