事例紹介

株式会社ニフコ×オイシックス・ラ・大地株式会社の導入事例

「企業間連携の架け橋となり、自らも成長した留学経験」(職種:人事 留学頻度:週1日、留学時:中途入社7年目)
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目的
戦略人事の効果的な導入と定着事例から知見を得る
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背景
異なる業界や企業を経験できる機会を作り、リーダー人材を育成し、変革を促進する必要性があった
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効果
・組織の発展に寄与する多様な制度や取り組み、文化に触れることができた
・自分が特に関心を持ち、今後専門性を深めていきたい分野がより明確になった
・留学先との継続的な情報共有や連携を見据えた、良好な関係性の基盤を築くことができた
他社留学を終えた「卒業生」にインタビュー。留学前、留学中、留学後の想い、そして留学後に何が変わったかについて、体験談を語っていただきます。

今回お話を伺ったのは、株式会社ニフコ。他社留学を経験したのは、人事部の奥村さんです。留学先は、安心安全な食品のサブスクリプションサービスを提供する「Oisix」や「らでぃっしゅぼーや」等を運営する、オイシックス・ラ・大地株式会社です。留学中は、主に採用や研修関連業務に携わりました。
所属 株式会社ニフコ
留学先 オイシックス・ラ・大地株式会社
他社留学期間 週1日/7ヶ月間(2024年10月~2025年4月)
留学した人 人事部 奥村 敬子さん(留学時:中途入社7年目)
送り出した人 開発本部 エグゼクティブ・エキスパート 根津 幹夫さん

留学前の想い

——まず初めに、他社留学に参加した背景をお聞かせください。
奥村さん(以下、奥村) 社内で他社留学の公募があり、応募して参加することが決まりました。私は中途入社で複数の企業での就業経験があるため、「異文化を知りたい」といった動機があったわけではありません。今回の一番の目的は、同規模の企業の人事が実際にどのような取り組みをしているのかを知ることでした。シンプルにその点に興味がありました。
——他社留学でどのようなことを学びたいと考えていましたか?
奥村 HRM(人的資源管理)領域において戦略人事の導入に成功している企業の取り組みを学び、それを自身の知見として吸収・整理することで、所属企業の成長や自身の今後のキャリアに活かしたいと考えていました。
——奥村さんは所属企業でどのような業務を担当されているのですか?
奥村 私は2018年に株式会社ニフコに中途入社しました。入社当初は研修センターに所属しており、主に英語施策や階層別研修などを担当していました。現在はグローバル人事・人材開発の業務に携わっており、グローバル関連の報酬制度や、人材育成に関するサクセッションプランの策定などに取り組んでいます。

主体的に動き、充実した時間に

——今回の他社留学でどのような体験をしたのか教えていただけますか?
奥村 私が留学したオイシックス・ラ・大地株式会社は、安心安全な農産物やミールキットなど食のサブスクサービスの「Oisix」や「らでぃっしゅぼーや」等を運営する企業です。留学中は、人事の経験・スキルを活かして、次期執行役員の採用と、AIを活用した研修資料の内容整理、キャリア支援に関連する研修サポートを行いました。それ以外にも、積極的に自ら動いて情報交換の機会を作ったり、「ちょっとお話させてください」と声をかけて関係構築を図ったりしていました。四半期ごとに開催される社員総会のお手伝いも任されるなど、自分から積極的に業務機会を探し、さまざまなタスクに携わりました。

オイシックス・ラ・大地株式会社  https://www.oisixradaichi.co.jp

——他社留学を振り返って、いかがですか?
奥村 率直に言って、非常に楽しい時間でした。留学先の皆さんが本当に良い方ばかりで、前向きな雰囲気に溢れていて、とても刺激を受けました。日々の業務から離れて、リフレッシュできた時間でもありました。もともと留学先のサービスを利用していたこともあり、企業理念にも共感していて、ポジティブな印象を持って参加しました。実際に関わってみて、その印象は最後まで変わることなく、ポジティブな気持ちのまま終えることができたと感じています。
また、キャリアについても改めて考える機会になりました。今までは「マネジメントに進むのか」「専門職として深めていくのか」「そもそも自分にとっての専門性とは何か」など、漠然とした思いがありましたが、今回の経験を通じて少しずつ輪郭が見えてきました。
——非常に充実した7ヶ月を過ごすことができたのですね。
奥村 そうですね。留学経験自体も貴重でしたが、コミュニケーションや交流を通じて、今後も末永くお付き合いを続けていける関係まで深められたことが非常に良かったと感じています。オフィスが近いこともあって「訪問させてほしい」といった話も出ていたり、プライベートでも頻繁にやり取りをしたりしています。また、今回の留学をきっかけにキャリアコンサルタントの資格取得を目指すことにしたのですが、「キャリアコンサルタントの資格を取るなら、全力で支援するよ」と言っていただいたり、勉強会のチームに加えてもらったり、情報交換も積極的にさせていただいています。
——留学中の出来事を振り返って、何か嬉しかったことはありましたか?
奥村 状況に応じて自ら関わる業務を見出し、取り組んでいく中で、徐々に関係性ができていき、次第にこちらの意見を求めてもらえるようになったり、「いてくれて助かる」と言っていただける場面があったりしたことです。そういった言葉をいただけたのは、とても嬉しかったです。
——留学中、大変だったことはありましたか?
奥村 自社の業務との両立が求められたため、業務の調整が大変でした。週に一度、終日稼働できない日ができたことで、バランスを取るのが難しいと感じる場面も多くありました。留学日に緊急の案件が入ったときもあったのですが、「すみません、少しだけ作業させていただけますか?」とお願いすると、快く了承していただけて、本当に助かりました。社内の都合で予定変更が必要な場合でも、曜日の変更などに柔軟に対応していただき、大変ありがたかったです。
一方で、留学先での業務自体は、もちろん大変な部分はあったものの、想像していたほど負荷が大きかったわけではありませんでした。ただ、ちょうどAIなどの新しい技術を導入している過渡期だったこともあり、行くたびに新しいツールが使われていて、刺激や楽しさを感じる一方でそのキャッチアップには少し苦労しました。

有機野菜などの食品宅配専門スーパー「Oisix」  https://www.oisix.com

留学を通しての気づき・学び

——留学を通して、どのような気づき・学びがありましたか?
奥村 今回の留学では、本気で人を育てる文化と仕組みに触れるという非常に貴重な機会をいただきました。制度や施策にとどまらず、留学先の皆さんが「どうすれば人が育つか」を真剣に考え抜いている姿勢や、日々の業務においても前向きで温かみのある関わり方をされている様子からも多く学ぶことができました。
また、高い専門性を持った方々が多数活躍されていることに大きな学びを得ました。留学先も当社と同様、業務が分業化されていました。私が留学した「キャリア支援室」では、年代ごとのキャリア研修の企画・運営を行っており、社員の皆さんはキャリアコンサルタントの資格をお持ちでした。社員一人ひとりに対するキャリア面談も行っており、皆さんが実務を通して専門性を発揮していました。また、研修についても内製化されており、社内講師としてのスキルも非常に高い印象を受けました。
さらに、DEI(Diversity, Equity ,Inclusion:多様性・公平性・包括性)については、専門の担当者がいらっしゃり、その方も非常に高い専門性をお持ちで、まさに「突き抜けた」プロフェッショナルの仕事ぶりを間近で見ることができました。そのような専門性を高めながら自社に還元していく姿勢を実際に見ることができたことは、非常に貴重な経験となり、今後のキャリア形成にも大きく影響する学びとなりました。将来的には自分も何か一つ専門性を磨き、それを会社に還元するだけでなく、場合によっては社外にも価値を提供できるような存在になれたらと考えるようになりました。
——社内でも専門性を持った方は多数いらっしゃるのではないでしょうか?
奥村 当社にも専門性を持った人材は多くいます。ただ、そのスキルや知識が社内に留まっている印象があり、外部でも通用する形に高めていける余地があると考えています。留学先では、社内での実践にとどまらず、外部講師としても通用するようなレベルの高い人材が多く、市場性や専門性の点で非常に優れていると感じました。
——他にも気づき・学びはありましたか?
奥村 AIの活用について学ぶことが多くありました。実際に活用する中で得られる学びも多くありましたが、特に印象的だったのは、留学先の組織がAI導入の過渡期にありながらも、その導入スピードが非常に速かったことです。ツールが有用であると判断されれば、すぐに企業アカウントと連携して使用できるようになったり、社内向けガイドラインの整備が迅速に進められたりと、実装フェーズへの移行がとにかく速いことに驚きました。
また、「インシビリティ(Incivility)」についても、大きな学びがありました。これは、礼儀や相手への敬意を欠いた言動を指し、ハラスメントに至る前段階の“グレーゾーン”として捉えられています。こうした微細な問題に早期から気づき、適切に対応していくことが、職場環境の健全化につながると感じました。
——留学先で印象に残った制度や、取り入れたいと感じた取り組みはありますか?
奥村 色々あります。当社でも表彰制度やエンゲージメントサーベイは導入していますが、留学先の表彰制度は、週次や半期といった細かい粒度で実施されていました。評価会議やダブルミッション制度については、まだ当社では取り組めていないため、参考になりました。
その他にも、さまざまな支援が手厚く行われている点が印象的でしたが、その中でも特に印象深かったのが、休職中から復職後にかけてのフォロー体制が非常にしっかりしており、「復職式」と呼ばれる取り組みがあることです。育休・産休などから復帰する社員を集めて、社長自らが「おかえりなさい、これからも一緒に頑張っていきましょう」と声をかける場が設けられていて、本当に温かいメッセージと会社としての愛情を感じました。「ここまで丁寧に支援しているのか」と感心させられました。
キャリア支援に関しては、先ほど申し上げた通り、キャリアコンサルタントの有資格者が一人ひとりと面談を実施されていましたが、さらに社員同士の横のつながりを意図的に生み出す仕掛けとして、懇親会形式でワークを交えた交流の場が設けられていたのも素晴らしい取り組みだと感銘を受けました。
——留学先の文化で、印象に残っているものはありますか?
奥村 企業理念や行動規範に関する研修が徹底されている点が大変印象的でした。企業統合を経た同社にとって、現在の成長を支えている要因の一つは、全社員が企業理念と行動規範を深く理解し、常に意識しながら、同じ方向に向かって取り組んでいることだと感じました。その結果、驚異的なスピードで企業成長を遂げているのだと実感しました。
また、ロジカルシンキングが組織全体に深く根づいており、論理的に説明がなされていれば、役職や立場に関係なく提案が受け入れられるという文化も印象的でした。最終的にその提案が「自分たちや自社にとってどのような利益をもたらすか」「会社としてお客様にどのような価値を提供できるか」が明確に語られていれば、誰が発言するかよりも、その中身の妥当性が重視される姿勢が徹底されていると感じました。
それから、経営層からのメッセージの一例として、「障害の有無にかかわらず、活躍している人は素晴らしい」という言葉を耳にする機会がありました。このようなメッセージが、対外的にも社内的にも一貫して発信されている点が非常に印象的でした。トップメッセージがぶれることなく継続的に発信されており、それが制度設計や現場での運用にも的確に反映されていることから、強い組織的な意志と文化を再認識しました。
(奥村様:写真右から3番目)
——留学経験を通じて、改めて実感した自社の優れた点は何だと思いましたか?
奥村 業績および財務基盤が安定している点は、経営の意思決定や長期的な人材投資において大きな強みであると実感しました。また、報酬水準の決定にあたっては、市場調査に基づくベンチマーク設定が行われており、公正かつ戦略的な人事運営が実現されていると感じました。さらに、人事制度に関する詳細な説明文書や評価方法に関するE-learningなどが整備され、社内研修も体系的に整理されていることから、継続的な人材育成と制度運用の成熟度が非常に高いと認識しました。加えて、サクセッションプランや人事情報がシステム上で一元管理されている点は、データに基づいた人材マネジメントの実現において大きな優位性を持っていると感じました。他社のさまざまな制度や取り組みに直接触れたことで、改めて自社の優れた点を認識でき、社外での経験が非常に有意義であったと感じています。

留学後の変化

——留学後、どのような変化がありましたか?
奥村 今回の経験を通じて、「人事」という領域の中でも、自分が特に関心を持ち、これから専門性を高めていきたい分野がより明確になったように感じます。現在も、サクセッションプランや次世代後継者育成に関する研修に携わっていますので、留学先でご活躍されているキャリアコンサルタントの方々のお話を伺い、大きな刺激を受けました。もともとキャリアコンサルタントの資格取得に関心がありましたが、この経験を通じてその想いがより明確で、現実的なものとなったので、キャリアコンサルタント資格取得に向け準備を進めているところです。また、現在は幅広く人事の知識を得られるよう、担当したことのない業務領域の知識習得も進めています。
——留学中に学んだことで、取り入れたことはありますか?
奥村 留学先との継続的なやり取りを通じて、多くの知見を得るとともに、社外とのネットワーク構築の重要性を改めて認識しました。会社に貢献するためには、多様な視点や客観的な意見、他社の事例などに常にアンテナを張り、外部の方々と情報交換を行うことが重要であると考えています。そのため、私自身の取り組みとしては、人事に携わる者として、他社との交流や情報共有の機会を自ら積極的に創出することを心がけています。また、社内での情報共有も意識的に行い、前向きな姿勢で業務に臨むことを大切にしています。
——今後に向けて考えていることはありますか?
奥村 先ほど申し上げた社内での情報共有は、日頃から意識的に取り組んでいますが、今後は社内コミュニケーションツールを活用して、よりオープンで活発なやり取りを促進できるよう、具体的な施策を検討していく予定です。
また、今回の留学を通じて、社外でも通用するスキルを身につけたいという意識が一層強まりました。副業を将来のキャリアにおいての自己成長の機会と捉え、行動に移せるよう、今から準備を進めていきたいです。副業で得た知識や実践経験を本業においても最大限に活かし、会社への貢献につなげていきたいと考えています。留学先では兼業が認められており、本業と副業の両方で得た知見を相互に活かしている好事例を伺うことができ、大変参考になりました。私自身も、将来的にそのような形で社内外問わず価値を提供できる人材を目指したいと思います。
——留学後に事後研修にご参加いただきましたが、いかがでしたか?
奥村 事後研修では、同時期に留学を終えた他の方々と交流する機会がありました。普段はあまり接点のない方々から赤裸々なお話を伺い、現場の空気感や実体験に触れられたことは、本当に貴重な時間となりました。
——今後、どのような人に他社留学に参加してほしいと思いますか?
奥村 私は、「行きたがらない人」「社内の経験しかない人」にこそ、参加してほしいです。一度、社外のまったく異なる環境に身を置くことは、自身の視野を広げる貴重な機会になります。これまで通用していたやり方が通じなかったり、異なる価値観に触れたりする経験が、人としてもビジネスパーソンとしても大きな成長につながると思います。
<留学先からのコメント> 
~株式会社オイシックス・ラ大地 HR本部 キャリア支援室 室長 石井様より~
奥村さんの高いパフォーマンスには大変満足しており、その前向きな姿勢は当社メンバーにも良い刺激を与え、組織内に相乗効果を生んだと感じています。メンバーや関係者との積極的なコミュニケーションに加え、会議や見学の場においても丁寧な姿勢で関わっていただき、短期間ながら信頼関係を築くことができました。また、環境を理解しながら自社での応用を意識して学ぶ姿勢や、受け身にとどまらず、観察とインプットをもとに必要なアウトプットを自ら模索する姿勢が印象的でした。状況に応じて柔軟に対応し、積極的に情報を吸収しようとする姿勢からは、高い適応力もうかがえました。
今回は、当社の通常業務に参画いただく中で、役員採用をはじめ、具体的な成果を挙げていただきました。また、留学期間中には、当社の組織課題についてもフラットな視点からご意見をいただき、大変有意義な機会となりました。これらのご意見は、当社が「井の中の蛙」にならぬよう、視野を広げるための貴重なアドバイスとして受け止めております。
奥村さんの留学をきっかけに、両社の間に新たな関係性が築かれたことを、大変嬉しく思っております。このご縁を一過性のものとせず、今後も継続的な交流・連携へと発展させていければと考えております。今後ともよろしくお願いいたします。
会社名 株式会社ニフコ
業種  工業用プラスチック・ファスナー及びプラスチック精密成形部品の製造・販売
URL https://www.nifco.com/