事例紹介

株式会社ニフコ×株式会社GADGETの導入事例

「焦りと行き詰まりの先に見つけた、新たな可能性の光」(職種:研究開発 留学頻度:週1日、留学時:中途入社8年目)
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目的
自動車業界以外の企業における業務の在り方や考え方、社員間の問題意識・課題意識の共有と解決方策、モチベーション向上の方策を学ぶ
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背景
異なる業界や企業を経験できる機会を作り、リーダー人材の育成や外部との協業に関する経験・知見を得て、変革を促進する必要性があった
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効果
・自社との様々な違いに気づくことができ、新たな知見を得ることができた
・困難な状況を経験することで、行き詰った際の打開策や考え方につながるヒントが得られた
・視野が広がり、自分で設定していた枠を外すことができ、仕事の効率も向上した
他社留学を終えた「卒業生」にインタビュー。留学前、留学中、留学後の想い、そして留学後に何が変わったかについて、体験談を語っていただきます。

今回お話を伺ったのは、株式会社ニフコ。他社留学を経験したのは、基盤技術部の花里さんです。留学先は、3D映像制作やAI音声合成のコンテンツプロデュースを手掛ける株式会社GADGETです。留学中は、ゲーム開発用ソフトに関連する研修企画および自社のプロモーションCG制作等に携わりました。
6所属 株式会社ニフコ
留学先 株式会社GADGET(ガジェット)
他社留学期間 週1日/6ヶ月間(2024年1月~2024年7月)
留学した人 開発本部 基盤技術部 花里 賢一さん(留学時:中途入社8年目)
送り出した人 開発本部 エグゼクティブ・エキスパート 根津 幹夫さん

留学前の想い

——まず初めに、他社留学に参加した背景をお聞かせください。
花里さん(以下、花里) 社内で他社留学の公募があり、応募して参加することが決まりました。他社留学に参加することで、視野を広げ、思考のバイアスから自由になりたいと考えていました。また、新たな挑戦に「ワクワク感」や「ドキドキ感」を持って臨みたいと思い、参加しました。
——留学前はどのような気持ちでしたか?
花里 楽しみな気持ちが強かったです。これまで専門性の高い仕事をしていたので、黙々と一人で仕事をすることが多く、外部に出る機会が多くありませんでした。また、専門技術をもっと身近なところに活かせないか?と思うこともあり、外の世界に出て様々な経験を積む必要があると考えていたので、チャレンジできることが楽しみでした。
——花里さんは普段どのような仕事をしているのですか?
花里 基盤技術部に所属しており、自動車の様々な騒音、振動対策全般に関わる要素技術の研究開発に従事しています。
——他社留学でどのようなことを学びたいと考えていましたか?
花里 自動車業界以外の企業における業務の在り方や考え方、社員間の問題意識・課題意識の共有と解決方策、モチベーション向上の方策を学びたいと考えていました。また、仕事や人生において行き詰った際の打開策や考え方につながるヒントを得たいと思っていました。

苦境からの脱出

——他社留学に参加して、いかがでしたか?
花里 留学当初は公私ともに多忙を極める中で、このまま他社留学を続けられるか、不安と厳しさを感じながら取り組んでいたので、どうなることかと思っていました。途中で、当初考えていた事業の実現化が難しそうだとわかって、行き詰まりを感じて、逃げ出したくなった時期がありました。しかし、そこで視点を変え、興味の赴くままに考え、行動を起こしたことがターニングポイントになりました。結果として、プロジェクト自体は実現には至りませんでしたが、予想外の方向に話が進展したことで、今後の可能性を感じる貴重な経験となりました。苦境の中にこそ思いがけないチャンスの芽があることを実感でき、参加して本当に良かったです。
——花里さんは今回どのような会社へ留学したのでしょうか?
花里 私が留学させていただいた株式会社GADGETは、3D映像制作やAI音声合成のコンテンツプロデュースを手掛ける企業です。メガネなしで立体的に見える「裸眼3D映像」を使った広告やプロモーション映像などを手がけており、デジタルサイネージやイベントなどで活用されています。音声合成事業では、日本国内最大の合成音声ライブラリ映像のナレーションやオーディオブックのナレーションを提供しています。

株式会社GADGET(ガジェット):https://gadgetinc.jp

——留学中は具体的にどのようなことをしたのでしょうか?
花里 留学当初は、ゲーム開発用ソフトに関連する研修企画に取り組んでいました。関係者からのヒアリングを重ね、事業化に向けて検討を行っていたのですが、途中で難しいことがわかってからは行き詰まり、焦りを感じました。そんな中、気分転換として、ゲーム開発用ソフトで製作されたCG作品やゲームを見て過ごし、周辺情報を調べていくうちに、自動車業界でもゲーム開発用ソフトを使って開発が行われているニュースを知りました。意外にも自動車分野などの産業界において新たなニーズがあることがわかり、自社のプロモーションCGの他、自社の設計開発支援にも応用できる可能性を見出すことができました。
——半年間、どのように進めていったのでしょうか?
花里 留学先とは、ヒアリングを重ねる中で相互理解が進み、信頼関係を深めていきました。留学中に扱うこととなったゲーム開発用エンジンについては、普段全く馴染みのないもので、一から勉強する必要があったため、自分でマニュアルや書籍を取り寄せ、開発ソフトもダウンロードし、CG制作にもチャレンジしました。当初は、全く見当もつかないものでしたが、自ら手を動かし、その有効性を実感することで、新たな提案もできるようになりました。留学中に新たな発展事項となったプロモーションCGの制作については、留学先の映像制作関係者や社内の関連部門のメンバーを巻き込み、プロジェクト化に向けた動きを進めることができました。周囲を巻き込むことに苦手意識を持っていましたが、多くの関係者と協働しながら進めたこの経験は、今後の自信につながる大きな一歩となりました。

留学を通しての気づき・学び

——留学を通して、どのような気づき・学びがありましたか?
花里 意外なところにこそ、宝があることがわかりました。元々、私は自社では音や振動の研究開発を行っていたため、音声事業で何かしら貢献できそうだと考えていました。一方で、映像制作事業に関しては、自分が貢献できるものはないだろうと思っていました。しかし、結果的には映像制作事業の方で意外と親和性があることがわかり、結果を残すことができました。
また、留学先の皆さんがやりたいけれども漠然としていて、まだ具体的に進められていないテーマがあったのですが、私自身は技術系ということもあり、具体的にどう進めていくかを明確にし、実際に進めるための具体的なステップに落とし込む部分で貢献することができました。このような経験から、私はものごとを具現化していくプロセス、または企画を具現化していくプロセスが得意であると気づきました。逆に、やりたいことを思い描き、そのためにアイデアを広げることは自分にとって馴染みのないことだったので、大きな学びとなりました。
——意外なところに宝があることを発見できたのは、なぜだと思いますか?
花里 色々と試行錯誤してもがき、様々な方向に目を向けたからこそ、新しい発見があったのかもしれません。もしスムーズに進んでいたら、他の方向に目を向けることもなかったと思います。もがいている時は、逃げ場を探したり、打開策を求めたりして外に目が行くので、自然とアンテナを広げることになります。このような経験から、従来の延長線上で考えるのではなく、全く関係のないところから考えてみることで、新しいものが生まれる可能性があることがわかりました。
——スムーズにいかなかったのが結果的に良かったということでしょうか。
花里 最初は研修企画を検討していたのですが、途中で行き詰ってしまい、辛くなってしまいました。そんな中、気分転換で自分の興味のある映像を見ていたら面白いなと思って、直観的に面白そうな方に目が向くようになりました。興味があるので夢中になって調べていたら、自動車関連のニュースに繋がって、どんどん面白くなっていきました。最初は誰かのために役立つことを考えていたのですが、気づけば自分の会社や生活に役立つことに繋がっていました。
——自分が面白いと感じることや興味のあることに目を向けることも大事だということでしょうか。
花里 そうですね。これまで会社から求められることに真面目に取り組んできましたが、自分が直観的に面白いと感じる業務や興味のある業務を行うことも大切だと気づきました。また、柔軟な姿勢やリラックスすることも必要だと感じました。そうすることで自分自身が楽しめるので、より熱心に仕事に取り組めるようになります。今回の留学が想定外にうまくいかなかったおかげで、思いがけない面白い展開が生まれました。他社留学は計画通りにいかないことがあるからこそ、面白いのかもしれません。
——他社留学を通して、自社との違いを感じたのはどんなところでしたか?
花里 留学先には、大手映画会社や銀行出身など、色々な方がいらっしゃったのですが、一番大きな違いは、「自分事」として捉える当事者意識が非常に強いと感じました。スピードが要求される環境の中で、自分や関わる人がいかに早く成果につなげるのか、自分ならどう協力するのか、を常に真剣に考えていました。無駄なことは一切せず、必要なことだけに集中し、それぞれが協力し合ってどうビジネスを成り立たせていくのか、本人と関わる人すべてが自分事として必死に考えている点が素晴らしいと感じました。

留学後の変化

——留学後、どのような変化がありましたか?
花里 無駄なことをやらなくなり、仕事の効率が上がったと思いますし、視野が広がったと感じています。留学期間中は、留学先の業務が加わったことで通常の仕事の負担が大きくなり、すべてをこなすのが難しくなりました。その結果、何が一番重要かを再評価しなければならなくなり、今まで無駄だと思わなかったことが実は必要なかったと気づけるようになりました。
——留学前と比べて、表情が明るく、生き生きとしているとしているように感じました。
花里 当初は、周りに合わせようとして無理していたところがありました。変に気を遣いすぎたり、表面的な正解を追い求めたりしていた気がします。しかし、他社留学において様々な人と交流し経験をすることで、固定観念に囚われず自由な発想を通すことで留学先も気づかなかった新しい可能性が広がることもあると思うことができました。また、直感で自分自身が面白い、好きだと思うことをやっていいと思えるようになったので、以前より肩の力が抜けたのかもしれません。
——留学中に学んだことで、取り入れたことはありますか?
花里 CGは実際には存在しないようなものを可視化できる画期的方法です。自分が所属する要素開発課では、目に見えない物理現象を多く扱いますが、実態が捉え難いからこそ本質を理解するためには現象をイメージし可視化することが重要と考えます。例えば、日常業務の中で扱う「音」も目に見えない存在ですが、音が伝わる現象を3Dで可視化する方法を取り入れることで、現象を正確に捉えることができるようになりました。今後は、この技術を応用し、新製品の開発に貢献していきます。
——今後に向けて何か考えていることはありますか?
花里 今回の留学を通して、自社で働いているだけだとわからないことがあると感じたので、自らが学んだことを社内へ伝え続ける必要があると感じています。また、技術者として、自分が楽しんで取り組めることや熱意を持ってできることがあれば、もっと頑張れると思います。今後も自分が楽しいと思えることに素直に取り組み、その結果、会社にも良い形で貢献していきたいです。
<留学先からのコメント> ~株式会社GADGET 内山様より~
常に前向きなスタンスで自ら仮説を立て、関係者から異なる意見が出ても、スピーディかつ柔軟に対応していただき、とてもスムーズに進めていただきました。実際にプロジェクトがうまくいくかどうかはわからない状態でスタートしましたが、花里さんが主体的にヒアリングを実施し、その結果、すぐに実現が難しいと判断していただけたこと自体が、非常に価値のある成果となりました。
産業用での利用については漠然としていましたが、ニフコ様とのミーティングを通じて、メーカー側の要望を直接聞くことができ、新たな知見を得ることができたことは非常にありがたく、素晴らしい成果だと感じています。第三者の視点から見ると、ニフコ様の社内では当たり前のことが、外部から見るとアピールポイントになるのではないかと感じました。そのため、さらなる可能性があると考えています。
業界が異なるため、土地勘がなかったことも影響し、思い通りに自由に発想するのに苦労されたのではないかと思いますが、今回の経験を通じて視野が広がったのではないでしょうか。今後は、肩の力を少し抜き、遊び心を持って、周りの目を気にせず自由に取り組んでも良いかもしれません。今後益々のご活躍をお祈り申し上げます。
会社名 株式会社ニフコ
業種  工業用プラスチック・ファスナー及びプラスチック精密成形部品の製造・販売
URL https://www.nifco.com/