事例紹介

京王電鉄株式会社×株式会社スペースマーケットの導入事例

「鉄道でのキャリアをベースに社外サービスとの連携を図る貴重な機会を得ることができた」(職種:企画・管理、留学頻度:週5日、留学時:新卒入社9年目)
京王電鉄株式会社×株式会社スペースマーケット
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目的
背景
・事業環境の変化に対応するためのスキルアップ
 ⇒鉄道を取り巻く環境の激変を機に、今後の利用獲得のためのヒントを得たい
・外部経験を通じた成長機会の獲得
 ⇒鉄道アセットと外部連携の模索を通じて0→1(ゼロイチ)を構築するための素養を身に付けたい
・人脈形成
 ⇒今後のキャリアや業務推進に繋がるネットワークを形成したい
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効果
・これまでの自分のスタイルと異なる検討プロセスを体感しつつ連携施策を立案・答申することができた
・所属企業を俯瞰することで良い点が明確化しモチベーションが上がった
他社留学を終えて元の職場に戻った「卒業生」にインタビュー。留学前、留学中、留学後の想い、そして「留学後に何が変わったか」について、体験談を語っていただきます。
今回お話を伺ったのは、京王電鉄株式会社。他社留学を経験したのは、鉄道営業部 運転課の横田さんです。留学先は株式会社スペースマーケット。「スペースシェアをあたりまえに」をミッションに掲げ、あらゆるスペースを時間単位で貸し借りするプラットフォームなどを運営するベンチャー企業です。留学中は、京王電鉄のアセットとスペースマーケットのプラットフォームを連携した施策の実現を目指すプロジェクトに参画しました。
所属 京王電鉄株式会社
留学先 株式会社スペースマーケット
他社留学期間 週5日/3ヶ月間(2022年1月~2022年3月)
留学した人 鉄道営業部 運転課 横田 祐樹さん(留学時:新卒入社9年目)
送り出した人 鉄道営業部 運転課 境 幸一郎 課長(直属の上司)
人事部 人事担当 諸角 晃 課長補佐(人事制度の窓口)

新たな収益源のヒントを得るために始まった他社留学

――まず初めに、他社留学に参加した背景をお聞かせください。
横田さん(以下、横田) 今回の他社留学は、社内の公募制度に応募して決まりました。昨年度社内で公募があった時から他社留学に興味を持っていたのですが、コロナ禍で鉄道事業を取り巻く環境が一変したこともあり、この機会にチャレンジしたいという思いが強くなりました。新型コロナウィルスの感染拡大の影響で鉄道利用者が減り、“ただ乗ってもらう時代”が終わったことを感じました。これからは、わざわざ鉄道を使って行きたくなる沿線や電車、サービスの開発が必要だと思っていたので、そのためのヒントになる企業へ留学し、鉄道を活かした新たな収益源を模索したいと考えました。留学にあたっては、これまで鉄道営業部や計画管理部で様々な経験を通して培った鉄道事業に関する広範な知識がありましたので、それを活かせると考えました。
――他社留学中はどのように関わり、プロジェクトが進んでいったのでしょうか?
横田 はい、私は3ヶ月で両社のアライアンス構築を目的としたプロジェクトマネジメントに関わりました。具体的には、自らが推進役を担い、京王電鉄が保有する鉄道資産(駅構内の遊休スペースなど)にスペースマーケットのスペースシェアノウハウを掛け合わせた連携施策を検討するプロジェクトを立ち上げ、主に「プロジェクトのミッション設定」「課題認識・連携ポイントの明確化」「連携施策の立案」に取り組みました。
ベンチャー企業はとにかく検討から意思決定までのスピードが速いと聞いていたことと、実現する1案の背景には幾つもの検討案があると認識していたため、関係部署ヒアリングを通じ、活用できそうな遊休スペース候補や活用方法を携えて企業留学をスタートしました。複数案の同時並行的な検討や実際に現場に足を運び、測量や写真撮影など地道な取り組み、両社の若手社員を巻き込んだ勉強会など、「とにかくできることはやる」といった心意気で取り組みました。
今回は3ヶ月という短い期間での留学でしたが、順調に進んだ1か月目、停滞した2か月目、総括の3ヶ月目と色々なフェーズを体感することができました。それぞれの状況をどのように脱するか、自分の中でじっくりと考え、向き合うことができたのが収穫でした。今後鉄道事業と組んでいく可能性が高いシェアリングサービスを行う企業に身を置けたこと、そこでお会いした人に恵まれたことは高い満足度に繋がりました。

スペースマーケット-あらゆるスペースを貸し借りできるWebサービス・アプリ  https://www.spacemarket.com/

――留学先の方とのコミュニケーションはスムーズに取ることはできましたか?
横田 そうですね、プロジェクト開始からスタートダッシュを意識して動けたこと、また継続的にアウトプットを出すことで良い関係性を築くことが出来たと思います。停滞していた時にも、双方の課題点やメリットなどを表面的な会話ではなく、本音ベースでコミュニケーションを取ることができたのも良かったですね。

自分のスタイルとは異なる「止まって考える」という選択をした

――停滞した時期があったとのことですが、その時期のことについてお話いただけますか?
横田 連携施策提案の過程で改めて両社の連携意義を明確化することが求められ、自分の中での棚卸に時間を取りました。1ヶ月間の振り返りに加え、両社の強みの再認識など深堀していきました。両社の強みが課題解消に寄与する関係が成立して初めて「連携」と呼べるため、双方の中長期的な戦略を踏まえた課題認識がどこにあるのか、それらを解決するために発揮できる強みは何なのかを明確にしていく必要がありました。この過程に最も苦労し、自分の中で明確に言語化できるまで思案することと併せて、スペースマーケットでアライアンスを担当する方とも活発に意見交換を重ねながら粘り強く進めていきました。
これまでの私の仕事の進め方は、進み続ける中で得られる情報や人からの意見をピックアップして、まとめて発信していくスタイルでした。本来であれば3ヶ月しかないので、なるべく早く連携実現に向けてこれまでのやり方で進めたかったのですが、今回は敢えて止まるというやり方を選択して、軌道修正を行う時間を取りました。
――なぜこれまでと違うやり方で進めることにしたのですか?
横田 留学期間中に、他者評価を通じて自分自身の長所や今後の課題を棚卸しする研修がありました。これまで、私の強みは「論理立てて考える」また「それを発信する」ことと認識していましたが、他者評価では「改善の余地あり」と評価されたことから、自分の認識にギャップがあることがわかりました。要は、自分の中で咀嚼し言語化してから相手に伝わる表現をする部分が甘いということです。周りに聞いて正解に辿り着くことも必要ですが、周りに聞く前に「じゃあ、自分はどうなの?」という部分が抜けていると良い相談にならないと気づいたんですよね。他社留学中に悩みに直面したことで、今までやったことがない、止まって自分の中でとことん向き合ってから進めるスタイルを取ることにしました。
ただ、立ち止まるという選択を取り時間を割くことで、周りにアドバイスを求める機会のバランスを取ることの重要性を認識することもできました。というのも、今振り返ればベンチャーだと1on1をやっていたりもしますので、そういったものを利用して色々な人の見聞を収集しながらブラッシュアップしていけると、本来の自分のスタイルを活かしつつよりスピーディに質の高いものがアウトプットできたのではないかと思います。
(横田様:写真中央)
――反省点もあったのですね。他にも何か反省点や心残りだったことはありますか?
横田 今回は留学先の責任者の方と濃いコミュニケーションを取りながら進めたのでその点は良かったのですが、色々な立場や部署の方とコミュニケーションを取る機会をなるべく多く設けることができればさらに良かったのではないかと思いました。3ヶ月という短期間の取り組みということもあり、色々な人の見聞を得たい一方で、連携施策の実現に軸足を置くことで歯がゆい思いをしながら日々を過ごしていたことも事実です。留学先の皆さんが週1回くらいしか出社していない状況ではありましたが、オンラインを通じた1on1を活用することや聞きたいことを出社日に合わせて用意するなど、過去に戻ることができるならその時の自分にアドバイスしたいことはたくさんあります(笑)
また、今回は両社のアライアンスを検討するプロジェクトに関わったため、どっぷり留学先の業務に入り込むというよりは、留学先の反応を見ながらどう組んでいけるかという模索をしていたので、その部分は少し心残りです。留学前には、もう少し多くの人と関わって、留学先の業務を吸収することもイメージしていたので、あと3ヶ月あったらどっぷりと留学先の業務に入り込んで思い切りやってみたいです。

経験したこと全てが糧となった、所属企業へ感謝したい

――他社留学を終えた今、横田さんにとって他社留学はどんな機会になりましたか?
横田 短い3ヶ月であったものの経験したこと全てが自分の糧となる良い機会でした。10年弱の社会人経験の中で培った自分のやり方を見つめ直す機会になりました。置かれた状況によって取るアプローチの仕方は異なりますし、相手も違えばそれに応じてやり方を変える必要があります。それを体感できたことは、これまでの自分のやり方にバリエーションを持たせることのできる分岐点になりました。
――横田さんにとって非常に良い機会になったようで何よりです。
横田 そうですね、すごく充実していましたし、収穫がとても多い経験ができました。一方で、うまくいかなかったこともたくさんありました。今回自分が思っていた以上に悩んだ3ヶ月でもありましたが、周囲に助けを借りながら乗り切ることができたので、結果的に良い悩みでしたけどね。
他社留学に参加すると外を見ることで自分の会社の良さを再認識できると聞いていましたが、私もそのとおりだと思いました。社内にいると外を知らないので、自分の会社の良い部分が見えづらくなりますよね。人によっては「もっとこうなればいいのに」という改善点ばかりに目がいってしまう人もいると思いますが、外から見ると良いと感じる部分が非常に多くありました。人間関係が出来ている分、当たり前のように会話のキャッチボールができ、スムーズなコミュニケーションができること、人の良さ、マネジメント体制、保有するアセットのニーズが高いことなど、外に出たからこそ分かることが多くありました。
そもそも鉄道会社に在籍しながら3ヶ月間も社外経験ができるということ自体が当たり前ではないので、このような貴重な機会を与えてくれた所属企業にただただ感謝です。家族からも「そんな制度があるんだね、大変恵まれていると思った方がいいよ」と言われました。本当にそうだなと思います。
(横田様:写真中央)
――外へ出たからこそ会社の良さがより明確になったのですね。外へ出たからこそ気づいたご自身の強みもありましたか?
横田 はい、ありました。他社留学の応募のときに書いた内容とほぼ変わらないのですが、「合意形成に資するコミュニケーションスキル」に関しては他社でも通用するスキルだとわかりました。今回敢えて立ち止まると言う経験をしたことで、動くときにどう動けばいいのか、動く前に自分の中で最低限整理すべきところがどこなのか、という観点が加わったことでより強みに磨きをかけることができました。
立ち止まる勇気を持つことも必要ですが、一旦立ち止まった後にさらに動き出すまでの時間をなるべく短く、効率的にやっていくことも大事だと思うので、今後はその点を意識していけるとさらに強みが強化していけると思っています。

3ヶ月での学びを所属企業で活かす

――他社留学中にたくさんの学び・気づきがあったと思うのですが、留学後どのように活かしていますか?
横田 自分の中で言語化すること、そして「伝える」というよりは「相手に伝わったか」を意識することはすぐに活かすことができています。自分が伝えても相手に伝わっておらず、伝えた気になっていただけでは伝えてないのと一緒ですよね。留学後は「相手に伝わったか」までを重視してコミュニケーションを図るようにしています。また、立ち止まって考えることと周囲からの意見聴収のバランスが大事だと気づいたので、その点も意識して行動できていると思います。
今後に向けての話になりますが、外部企業とアライアンスが必要になった場合、プロジェクトリーダーとして今回の経験を活かしながら円滑にアライアンス施策を進めていきたいと思っています。このプロセスはアライアンスに留まらず、普段の仕事における課題解決にも活かせる内容です。他社留学中に体感できたことを糧に、課題解決の方向性を自ら示し業務を進めていき、その過程で関係者を巻き込んで行くことを今後も続けていきたいです。
――他社留学をどんな人に薦めたいですか?
横田 私は社内で主任というポジションですが、主任に上がる前や上がって間もない年次の方に薦めたいです。当社で言えば、一般事務員だと上司からの指示通りに行うことが期待されますが、主任になると課題を自分で見つけて解決していくことが求められます。そのため、外部経験を通じてスキルやノウハウを先取りし主任で過ごす期間のアドバンテージにできると仕事の幅も広がるのではないかと考えています。
また、外部との繋がりがあまり多くない部署にいる方が適していると思います。所属する鉄道部門は、明確な課題の解消に向けて外部企業にアプローチすることはありますが、機会としてはあまり多くありません。鉄道は人に乗ってもらうことが収益に繋がります。今後鉄道自体がなくなることはないと思いますが、鉄道資産を活かした新たな収益源を得ていく必要があります。そのためには自社で保有する資産を魅力的に捉えてもらえる外部企業と連携していくことが重要になりますので、他社留学のような外部との関係構築を促進するような制度を利用するのが良いと思います。若手社員にも同じようなマインドを持つ方が増えると会社全体の更なる外部連携促進の推進力になるのではないでしょうか。
――最後に、3ヶ月間並走してくれた伴走者に向けてお言葉をいただけますか?
横田 3ヶ月間本当にありがとうございました、の一言に尽きます。毎週のレポートに目を通していただいて、毎回的確にコメントしていただきました。さらに、停滞時期に悩み相談をさせていただいた際もこれまでの経緯を理解してくださっていたので的確な言葉をいただくことができ、とても有り難かったです。また、最後の振り返り面談の際には私自身の良い点、課題点についても適切なフィードバックをいただき、今後のキャリア形成に向けて参考となる意見をいただくことができました。これからも色々と相談させていただきたいなと思う心強い存在でした。
<留学先からのコメント> ~株式会社スペースマーケット 益戸様/檜山様より~
短期間で大企業とベンチャー企業のアライアンスを構築するというかなり難易度の高い取り組みでしたが、今あるアセットとリレーションを活用してプロジェクト推進頂けたかと思います。入社初日から「スペースマーケットとこんなことができるのではないか?」「こんなアセットが使えそうです」と事前に資料をまとめていただき、感動しました。横田さんご自身の弊社業務への取り組む姿勢、京王社内を巻き込んで進めくれた点、思い通りに進まないビジネス上の軌道修正の切り替え等、プロセス及び過程における横田さんの立ち回りは非常に素晴らしかったです。
本留学を通じてスペースマーケットと京王電鉄のアライアンスに向けた基礎部分は仕上がったと思います。ぜひ京王電鉄に戻っても別ミッションがあるかと思いますが、本取り組みを実現できるよう社内側から支援頂けると本留学は成功だったと言えるのではないかと思います。3ヶ月間、ありがとうございました。

会社名 京王電鉄株式会社
業種  鉄道事業、土地・建物の賃貸業・販売業など
URL https://www.keio.co.jp/