事例紹介

京王電鉄株式会社×株式会社エイチの導入事例

「結局は“人”がすべて、自分で線を引かず、経営幹部として走り続けた3ヶ月」(職種:事務管理/新規事業、留学頻度:週3日、留学時:中途入社6年目)
京王電鉄株式会社×株式会社エイチ
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目的
ベンチャー企業の創業者の働き方やマインド、組織風土を学ぶ/新規事業の企画および推進、新しいマーケットの開拓を行うスキルや経験、ベンチャー企業とのコネクションの獲得
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背景
異なる業界や企業を経験できる機会を作り、リーダー人材の育成や外部との協業に関する経験・知見を得て、変革を促進する必要性があった
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効果
スタートアップ企業の経営幹部として経営者の側で経営を疑似経験することができ、リアルな事業開発の経験やスキルを得ることができ、大きな成長と自信を得ることができた

他社留学を終えて元の職場に戻った「卒業生」にインタビュー。留学前、留学中、留学後の想い、そして「留学後に何が変わったか」について、体験談を語っていただきます。

今回お話を伺ったのは、京王グループの株式会社京王プレリアホテル札幌(https://www.keioprelia.co.jp/sapporo/)で管理部門の責任者としてご活躍の増田裕介さんです。留学先は株式会社エイチ。コンシェルジュとAIを掛け合わせた様々な雑務を自動化できるプラットフォームサービスを提供しているベンチャー企業です。留学中は、社長から「COO」として組織全体の統括を期待され、会社単位での様々な課題解決に取り組みました。

所属 京王電鉄株式会社
留学先 株式会社エイチ
他社留学期間 週3日/3ヶ月間(2022年4月~2022年6月)
留学した人 株式会社京王プレリアホテル札幌 管理部 出向 増田 裕介さん(留学時:中途入社6年目)
送り出した人 株式会社京王プレリアホテル札幌 代表取締役社長 本田 敏人(直属の上司)
人事部 人事担当 課長補佐 諸角 晃 (人事制度の窓口)

創業者との関わりを楽しみに始まった他社留学

――まず初めに、他社留学に参加した背景をお聞かせください。
増田さん(以下、増田) 社内の公募制度に応募して留学が決定しました。前職のときからエッセンスの「他社留学サービス」を知っていて、興味深いサービスだと思っていました。応募した理由ですが、新型コロナウィルスの影響で事業環境が大きく変化し、それに柔軟に対応することはもちろん、既存事業とは別の新たな需要を創出できる新規事業を始める必要があると考えていたことがあります。
私は前職で新規事業を立ち上げ、2017年からは京王プレリアホテル札幌の新規出店メンバーとして転職し、ホテルが開業してからは事業開発の責任者として、会社の経営管理や組織のマネジメント事をメインで行う傍ら、ホテルの一室をレンタルオフィスとして売り出すなど新しい取り組みも実施しています。そういった自身の経験や強みをベンチャー企業に身を置くことで更に強化し、組織の更なる成長と収益確保に向けた新たな取り組みを推進できる人材になっていきたいと考え、他社留学制度に応募しました。
――留学先を選ぶときはどのように選んだのでしょうか?
増田 留学に際しては創業者が在籍している企業で創業者とコミュニケーションが取れるプロジェクトに関わることを必須条件に探していただきました。色々なベンチャー企業がありますが、自分で会社を立ち上げた創業者というのはやはり特別な経験をしているので、ご一緒させていただくことで創業者の働き方やマインド、その企業の組織風土を学びたいと思っていました。留学が決まってからは、楽しみで早く留学したいとワクワクする気持ちが強かったです。

(京王プレリアホテル札幌 個室レンタルオフィス https://www.keioprelia.co.jp/sapporo/rental/)

自分で線を引かず留学生の立場を大きく超えてやり切った3ヶ月

――では、実際に留学してみていかがでしたか?
増田 非常に濃い3ヶ月でした。留学先企業の伏見社長はもちろん、多くの方とコミュニケーションを取ることができ、良い経験をさせていただきました。今までの業務を継続しながら、週3回以上を社外でハードな業務をこなしている状態が続き、とにかく時間がなかったので考えながら走ることを続け、3ヶ月間手を止めずにやり切りました。最終日は組織図を作成し納品して終わったのですが、終電時間に帰りました (笑) 留学生という立場を大きく超えて組織に貢献し、自身のスキルアップに繋がる良い経験ができました。
――留学中はどんなことをしたのですか?
増田 今回は新規事業の企画・推進プロジェクトに関わるということでスタートしたのですが、実際に留学して社内全体を見ると様々な課題に気づきました。そのため、「営業戦略」「マーケティング戦略」「プロダクト戦略」「組織」など会社単位での課題解決に取り組みました。社長からは「COO」として扱われ、社員の皆さんからの協力もあり、次々に高速で責任ある仕事に取り組むことができました。当初想定していた業務内容ではなかったものの、経営者の側で経営を疑似経験することができ、よりリアルな事業開発の経験やスキルを得ることができたと思います。

「叡知AI assist」 https://eichiii.com/
コンシェルジュとAIを掛け合わせた様々な雑務を自動化できるプラットフォームサービス 

――留学先の皆さんとのコミュニケーションや関係性はいかがでしたか?
増田 留学生という立場から大きく踏み込み、会社にとって非常に重要な組織運営や業務提携、採用に関してもイニシアチブを取らせていただきました。社長をはじめ、各部門のマネージャーからも相談を受けることも多く、信頼関係を築くことができたと思います。
――留学先の伏見社長から非常に高い評価を受けて感謝とリスペクトの言葉をいただいたそうですね。
増田 そのような言葉をいただき、とても嬉しいです。伏見社長は短期間であったにも関わらず、必要な資料を全て共有してくださり、「任せるよ」と言ってくださいました。こちらこそ感謝です。

他社留学を通しての気づき・学び

――では、今回の留学を通しての一番の気づき・学びはどんなことでしたか?
増田 そうですね、一番の気づきは、会社は結局「人がすべて」ということでしょうか。事業の成長には常に「人」が課題として付きまといますし、ベンチャー企業であっても、大企業であってもそこは同じだとわかりました。ベンチャー企業は何をするにも主体的でスピード感が速く、コミュニケーションのスピードも速く円滑なコミュニケーションが取れているので人材のフォローはあまり必要ないと思っていましたが、実際そんなことはありませんでした。大企業と同じく、組織の成果を最大化するために、それぞれの人材に合わせたマネジメントをしっかり行う必要があると気づきました。
――他社留学を通して認識できた自社の優れた点はどんな点でしたか?
増田 組織として安定しているので心理的安全性が担保されていること、ブランド力があること、短期的な施策だけでなく中長期的な戦略を立てて実行することができる財務環境が整っていることなどが優れている点だと思いました。また、人に依存しない、会社としてのナレッジを数多く持っている点も素晴らしい点だと気づきました。ベンチャー企業は、ある意味で「人」次第であり、各人の責任が重大です。人を集めるには、会社のビジョンや夢に共感してもらわないといけないので、大手企業とは異なると感じました。
――では、逆に自社の課題だと感じたことはありましたか?
増田 様々なバックグランドを持ち、各人の個性を活かしているベンチャーに比べて当社は新卒一括採用と年功序列をベースにした組織体制になっているので、多様な価値観が生まれにくく、環境変化への適応や新たな取り組みへの意識が弱いのではないかと思いました。今回の留学で、ベンチャー企業は多様な背景・価値観を認め合い、そこで新しい価値を出そうという意識が強いと感じました。
また、ベンチャー企業は組織全体的にフラットな関係をベースにしており、いかに社長や上位職の指示であろうと、目的から外れている場合は意見するケースも多いです。一方で当社の場合は、規模も大きく個人より組織を優先するがゆえに上司の指示を優先してしまい、顧客視点や競合への意識が欠けてしまうことも多いのではないかと感じました。改めて「誰に向けて仕事をしているのか」「何のためにやっているのか」を社員全員が見つめ直す必要があると思いました。

組織の成長のために挑戦を続ける

――色々な気づき・学びがあったようですが、留学後はそれらをどのように活かしていますか?
増田 まずは留学で学んだことを社内でしっかりと伝えることが大事だと思い、実行しました。足元からできることとして、私は管理職なので自組織の現場のメンバーに対して留学を通して学んだことを伝えました。また、元々自主的にグループ会社や親会社(京王電鉄株式会社)の若手社員教育をしていたのですが、今回学んできたことを若手社員にも伝え始めています。
また、「自分で考え動ける人材を増やす」ための風土づくりや組織マネジメントを自組織で実践しています。伴走者との面談の中で「私がなぜ自分で動ける人材なのか」について話したときに、「目的があるから」ということに気づきました。私の場合は「会社のため」に何かをすべきというだけでなく、自分なりの目的も明確にあって、そのためにどうしたらいいのか、どうするのか、というのを自ら考えて実行しています。会社の目的と自分の目的がアラインしていれば、「だったらこう動けばいいよね」というのが自ずと見えてきます。留学日最後のプレゼンでも話したのですが、「自分が人生の主人公である」という意識も大切です。そういった意識もなく自分なりの目的もなければ、周りからの指示があるまで待って指示通りに動くしかないですよね。
――まずは自組織で自分で考え動ける人材を増やして、ゆくゆくは組織全体に広げたいということでしょうか。
増田 当社はインフラ業なので保守的な考えを持っている社員が多くいます。自分のコンフォートゾーンから出るのが怖いと感じる人も少なくないのではないかと思います。組織全体をすぐに変えていくのはハードルが高いので、まずは自組織を変えるところから取り組んでいます。自組織のマネージャー層を育てて、それからスタッフにも広げるために尽力しているところです。
――先ほど「最後のプレゼン」というお話が出ましたが、どんなものだったのでしょうか?
増田 3ヶ月の最後の纏めとして、留学先でプレゼンの時間をいただきました。前半30分は組織に対するフィードバックをみっちりプレゼンをして、後半30分は一人一人に発表してもらう時間にしました。私のプレゼンで終わることもできたのですが、自分がいなくなるので最後は皆さんにボールを戻そうと思い、このような構成にしました。
後半は私がファシリテ―ションをして、皆さんなぜエイチに入社したのか、何を実現したくてエイチにいるのか?改めて原点に戻るために一人一人発表していただきました。社長は社員がなぜ入社したかを知っていますが、社員同士はこれまで語り合う機会がなかったのでお互いの夢を知りませんでした。大手企業でかなりのポジションを捨ててきたような人もいて、そのような決断しているということは熱い想いがあって入社しているわけです。社員全員、夢があってエイチに入社しています。ただ、夢や実現したいことなど、こういった場がないと恥ずかしくて言えないような内容だったりしますよね。発表し合う機会を作ったことで「○○さんはそういうところを大事にしているんだ」ということがわかり、互いの理解が深まってコミュ二ケーションが活発になりました。「誰しも自分が人生の主人公である」という前提に立った相互理解は、皆さんにとても響いたようで良い時間になりました。
(増田さん:上段左から2番目 留学先企業の皆さんと共に)
――最後のプレゼンを留学先のことを考えて社員同士の繋がりを深める機会にしたのですね。
増田 心理的安全性を保って社員が言いたいことを言える土壌を作っていくことは組織として重要なことです。そのために、「Yes,and」で伝えることが大事だと思っています。まずは肯定する、そしてMoreを続けていく。一般的な日本の組織だといきなり指摘することも多いですよね。でも、そうすると指摘された相手は受け入れづらいんです。一度受け入れてから「もっとこうした方がより良くなるよ」と伝えた方が受け入れられやすいので、日頃から私自身も意識していますし、周りの社員にも意識してもらいたいポイントです。
――留学が終了して数ヶ月経過しているので、徐々に留学前の状態に戻ったりしていませんか?
増田 留学が終わるとコンフォートゾーンに戻るので自己成長のためのモチベーションを維持するのが難しいですよね。そのため、社外の熱量高く仕事をしている仲間とコミュニケーションを取り続けるようにしています。以前、ベンチャー企業の社長の友達とプライベートで一緒にプロジェクトを進めることがあったのですが、大企業の看板に甘えた自身の仕事のぬるさが浮き彫りになり、自分が思っている以上にもっと頑張らないといけないんだと刺激になりました。今後も仲間とコミュニケーションを続けることでモチベーションを維持し、自己成長を続け、組織の成長を牽引できるよう挑戦を続けていきます。
<留学先からのコメント> ~株式会社エイチ 代表取締役 伏見様より~
極めて稀有な実力と人格を持った素晴らしい人材、いや「大切な仲間」でした。まさに起業家といえるマインドを持った方でした。全社員がこの3ヶ月で増田さんを大好きになり、たくさんのものを残してくれました。留学初日の展示会からNo1ともいえるコミット力を行動で示すだけではなく、周囲のメンバーの心境や気持ちにも配慮し、それとないコミュニケーションから始まり、すぐに込み入った悩み相談に乗ったり、部門を跨いでコミュニケーション活性化のために飲みに誘ったりという、タスクをこなす以上に、組織に対する影響力が素晴らしかったです。
1ビジネスパーソンとしても、わからないことがあっても、ただ「教えてください」と相手に委ねるではなく、ドライブ上の過去資料など出来る限りの情報を自ら探し、読み込み、想像した上で(かつこのスピードが非常に速い)質問をしてくるので説明が要点のみで良く、進む方向がズレないという仕事の姿勢も特に素晴らしかったです。
基本的なことですが、こうしたことの積み重ねで3ヶ月という短い時間ながらに組織のCOOとしての立場を名実ともに任せられるようになりました。誰よりも当事者意識が高く、そして愛情を持って我々に接していただきました。仲間とのフラットで率直なコミュニケーションとはどういうものなのか?それによって組織のコンディションがどう変化するのかということを増田さん自身が学び、さらに社内の皆にも気づかせてくれました。
役割もセールス、マーケティング、プロダクトマネージャーと領域を拡大させ、新規事業構築というチャレンジには至りませんでしたが、事業開発という点ではアライアンス、資金調達といったベンチャーの事業拡大の非常に重要なコアなところに踏み込むご経験もなされました。
有言実行、仲間の心に配慮できる姿勢、言うべきことを率直に言える強さ、愛される人格、誰よりもコミットする、役割に壁を作らずどんどん取りに行く、こんな起業家マインド持った増田さんには自分の人生を生き切って欲しい、より良い世の中を創るために覚悟を決めて前に進んでいって欲しいとエールを送らせていただきます。3ヶ月間ありがとうございました。
会社名 京王電鉄株式会社
業種  鉄道事業、土地・建物の賃貸業・販売業など
URL https://www.keio.co.jp/