今年は「プロボノ元年」?社外活動をライトに始めてみませんか?
2019年は「副業元年」と言われたが…
2019年は副業元年と言われ、副業を解禁する企業も増えていますが、まだまだ少数派です。また、解禁したと言っても許可が必要であったり、何から始めれば分からなかったりと障壁が高い環境にいる方も多いですよね。そんな中、副業禁止の会社でも取り組める社会活動として「プロボノ」が注目を集めています。
注目を集めるプロボノ
「プロボノ」とは各分野の専門家が、職業上持っている知識やスキルを無償提供して社会貢献するボランティア活動全般のことです。「ボランティア」なので「副業」が出来ない会社でも「プロボノ」なら可能という側面があります。この記事では「プロボノとは?」というところからメリット、デメリット。プロボノの始め方から、企業が自社の社員にプロボノを取り入れるメリットまでをご紹介します。
プロボノとは
プロボノはラテン語「pro bono publico」の略称で、自分の専門知識やスキルを活かし、社会貢献活動をすることです。1908年、アメリカの全米法曹協会が始めた低所得者への無償法的サービスが原点とされていて、近年日本でも注目を集めています。
プロボノが注目されるようになった背景
1908年にアメリカで発祥したプロボノですが、日本で注目されるようになったのは最近のことです。プロボノが注目されるようになったのは「人生100年時代」に充実したライフキャリアを築くことが誰にとっても避けられないテーマであると多くの人が気づき始めたからです。仕事だけではなく仕事から離れた社会や地域コミュニティでのキャリア形成が重要視されるようになってきました。そのことを裏付ける調査結果も出ています。
<調査結果:リクルートワークス研究所>
最もキャリア展望が低い 「同じ部署の同僚」にコミュニティが閉じている人
最もキャリア展望が高い 「ボランティアNPO」に携わっている人
キャリアや人生について「前向きに取り組んでいける」「自分で切り拓いていける」「明るいと思う」と答えた回答をスコア化したものから上記のような結果が出ました。「ボランティアNPO」に携わっている人ほどキャリア展望が高くなることが分かります。
プロボノがキャリア自律を助ける?
「ボランティアNPO」に携わっている人のキャリア展望が明るいのはなぜでしょうか?プロボノはどのようにキャリア形成に影響を与えるのでしょうか?メリットとデメリットを検証しながら考えてみましょう。
プロボノのメリット
- 人脈を広げることができる。 ー プロボノでは社外の人と同じ目標に向かって深く関わり合います。様々な価値観に触れたり、仕事に繋がる出会いの可能性もあります。
社外での活動実績を作ることができる。 ー プロボノで関わったプロジェクトはそのまま社外での活動実績になります。目に見える報酬は副業とは違い多くありませんが、今後のキャリアにつながる実績を作ることは目に見えない報酬と言えます。
- 人を巻き込む力を養える。 ー プロボノでは報酬がない中でチームのメンバーと協力して目標を達成していきます。色んなバックグラウンドで、プロボノへのモチベーションも様々な人と一緒に活動することで、人を巻き込んで何かを成し遂げる力が自然と養えます。
このように、プロボノを行う事で、どのような場でも必要なスキルを上げる事ができるため、プロボノはキャリア自律の助けになるのです。では、プロボノのデメリットにはどんなものがあるのでしょうか?
プロボノのデメリット
- 情報漏洩のリスク ー ボランティアよりも一歩踏み込んだ支援やプロジェクトを行うため、本業の仕事で得た情報やプロボノの活動で得た情報、双方の情報の扱いには慎重になる必要があります。
- 両立の難しさ ー 目に見える報酬が劇的に増えるわけではありません。ボランティアよりも一歩踏み込んだ活動であるが、副業のような報酬は得られないため、仕事とのバランスの取り方が難しいと言えます。
プライベートな時間に行う活動ではありますが、仕事と同じような頭を使い活動を行います。プロボノを始める前にはどういったモチベーションで行うのか。本業とどんなバランスで取り組んでいくのかを考える必要があります。
プロボノを始められるサービス
キャリア形成にプロボノが有効であることはわかりましたが、ではどのように始めたら良いのでしょうか?プロボノ元年と言われる2020年現在、プロボノや会社外での活動のきっかけになるサービスを提供している会社が増えてきました。ここでは、3つの異なるタイプのサービスを紹介します。
サンカク
個人を対象に「社会人のインターンシップ」と「スポットディスカッション」というサービスを提供しています。社会人のインターンシップでは現在の職場に在籍したまま気になる企業やテーマのインターンシップに参加できます。「スポットディスカッション」では自分の知見やアイデアを活かして、企業の事業課題にチャレンジ出来ます。直接経営者や社長とディスカッション出来るのが魅力のサービスです。
個人:サンカク https://sankak.jp/
ママボノ
ママボノでは、育休中や離職中の子育て女性たちが、仕事復帰に向けたウォーミングアップと同時に社会貢献活動を行える場を提供しています。プロボノに参加したい人向けのメニュー、プロボノの支援を受けたい人のメニューがあります。企業の中には育児休業中の女性社員をママボノに参加させたという事例が紹介されています。
サービスグラント「ママボノ」 https://www.servicegrant.or.jp/program/mamabono.php
エッセンス
エッセンスでは、企業・個人双方に向けたプロボノマッチングプログラムの提供を行っています。自社の社員にキャリア自律を促したい企業や副業解禁のためのトライアルとして参加する企業が多いのが特徴です。また、キャリア研修を行うライフワークス社と連携し、キャリア研修を受講した後にトライアルの場としてプロボノ活動を行う「座学+実践」プログラムも提供しています。
法人:エッセンス https://www.essence.ne.jp/news/20200117
「プロボノ」に興味があるけれど何から始めたら良いのかわからないという人は、このようなサイトを利用して気軽に、一歩踏み出してみましょう。
企業がプロボノ人材を取り入れるメリット
個人がプロボノを行うメリットはより良いキャリア形成のためです。では、企業が社内制度にプロボノを取り入れるメリットはどこにあるのでしょうか?それには現在、数多くの企業が取り入れている「定年退職」の年齢が上がっていることと関係があります。
以前は「55歳の役職定年後、60歳で定年し、再雇用を選ぶ」という働き方が一般的な選択肢でした。しかし、「人生100年時代」に突入し、70歳までの雇用延長が視野に入ってきています。職場の士気を上げるためにも、年齢を重ねても意欲をもって働くことができる仕組みを考えることは企業にとって急務です。
この課題解決にプロボノは非常に有効で、企業がプロボノを取り入れる最大のメリットと言えます。実際にプロボノを取り入れた事例を紹介しながらお伝えします。
自社社員にボランティアやプロボノを取り入れた事例
<日本生命保険相互会社>
日本生命保険相互会社(以下、日本生命)では、2015年から2017年までの役職員のボランティア活動率が100%でした。また、東京2020オリンピック・パラリンピックに向け、各地域で開催されるマラソン大会や障がい者スポーツ大会などでのスポーツボランティアを推奨するようになりました。2017年度には約2,800名がスポーツボランティアを行いました。
参加者からは、「地域の人との新しいつながりが増え、視野の拡大につながった」「部署内での親睦が深まった」などの声が寄せられています。ボランティア活動には、参加するだけのものから、講習や経験を必要とするものまで様々あります。多様な参加機会を設けることによって、職員それぞれが志向に合わせて自主的に活動するようになり、職員の意識醸成や成長につながっているという声があります。
企業がプロボノを行うためには、もちろん企業に体力があることが大前提ですが、社内だけでは社員の育成は不完全であるという自覚と、自社社員が社外で活動することを許容し、積極的に背中を押していく風土を創っていくことが重要になります。