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第2回プロとして生きる~プロとして生きるためのブラックオーシャン戦略~

――自分は今の仕事をしていて、将来、何になれるのだろう。

――自分は、今の会社から一歩外に出たら、何ができるのだろう。

 

あなたは、このような漠然とした不安を抱いたことはないだろうか。

 

そんなあなたに、「プロとしての独立」という選択についてご紹介したい。

 

今回は、ECのコンサルティングを行う永井貴博プロをモデルに、プロフェッショナルとして独立するまでのキャリアや考え方を紹介しよう。

 

【永井貴博氏 プロフィール】

“他人の尺度”で生きてきた自分

「私は、人生の多くの時間を“他人の尺度”で生きてきたんです」

 

そう語る永井氏は、複数の企業の通販やインターネットショップを監修するECのプロである。4年ほど前に楽天を退職し、プロとして独立する道を選んでからは、ECのコンサルティングや企業の経営戦略の策定を行うかたわら、小中高生の教育事業も立ち上げている。

 

永井氏のプロフィールには輝かしい経歴が並んでおり、プロとして自立して生きる人材のモデルとしてはこれ以上ない人材かのように思われる。実際に筆者も、永井氏の年齢とプロフィールを見て、そのキラキラ(ギラギラ?)としたキャリアを、若手が目指すべき一つのモデルとして取り上げたいと感じ、取材を依頼したのである。

 

しかし、そのキャリアについて質問を投げかけると、意外な答えが返ってきた。

 

「私は、人生の多くの時間を“他人の尺度”で生きてきたんです。早稲田大学に入学したのは偏差値の高い大学のほうがいいんじゃないかと思ったからですし、JTBに入社したのは就職ランキングで上位だったからです。楽天に入社したのは、ベンチャーの中で今後伸びていく会社として世間的に有名だったからでした。今思えば、誰かが決めた偏差値やランキングで物事を決めていて、他人の軸に自分自身の位置を合わせていくような感覚でした。そして、すべて“他人の尺度”で選択を行ってきた結果、そこに待っていたのは“幸せではない自分”だったんです」(永井氏)

 

“自分は誰と付き合い、どのような仕事をし、どのような価値を社会に提供したいのか”

 

永井氏は、自分としての幸せに向き合うこととなる。

 

イイモノを持っているのに活かしきれていない企業たち

永井氏は自分自身が何に幸福感を感じるかに向き合った結果、自分の軸や尺度で行動することができる「プロ」としての独立を選んだ。独立することで、すべて自分のやりたいようにできるわけではないことはもちろん承知していたが、会社員よりも選択の幅が広がるポジションで、自分のやりたいことに向き合いたいと感じていた。

 

永井氏が楽天でECのコンサルティング営業を行う中で、“イイモノ”を持っているにも関わらずそれを活かしきれない企業を数多く担当してきた。“イイモノ”はその会社の商品やサービスに限らず、従業員や企業文化、取引先など多岐にわたる。そして、往々にして、その会社の従業員は自社の“イイモノ”に気づいていないのである。

 

それを引き出してお金に替えることができれば、独立しても生き残れるという自信があった。「楽天のMVP受賞」という称号も独立への気持ちを後押しした。

 

そんな永井氏は現在、独立し、複数の企業のコンサルティングを行いつつ(永井氏の活動についてはコチラ)、そのノウハウを人に教える“先生”としての仕事と、子供に学校の中では行えないアウトプットの場を提供する教育の仕事を行っている。

 

企業のコンサルティングにかける時間がほとんどを占めるが、いずれは子供の教育事業を柱に据えていきたいという。

 

永井氏は、着実に“自分の尺度”で生きる道を選択しているのだ。

 

ニッチを極めろ!ブラックオーシャン戦略

そんな永井氏であるが、中小企業や個人で活動する人材には“ブラックオーシャン戦略”をとることが重要であると話す。

 

「プロとして生きる上では、他のプロたちと自分を差別化していかなければいけません。このように考えた時に、一般的に多くの人はブルーオーシャンを目指すと思います。しかし、ブルーオーシャンはいずれ、レッドオーシャンになってしまいます。近年言われている“ブラックオーシャン戦略”は、深海のイメージです。暗く深い海の中でも、そこにしか存在しないニーズを拾うことができ、それに体を合わせていければ、とてもハッピーに生きていくことができる。誰も気づかないようなニッチな需要に応えることで、レッドオーシャン化しない独占市場を形成することができるのです(詳しくはコチラ)」(永井氏)

 

そう言って永井氏は、とある子供用自転車を製造する会社を例に挙げた。その会社は一般的なメーカーでは製造していないサイズと価格帯のみを販売することで利益を上げているという。大手メーカーは、採算が合わないカテゴリーの商品をつくることはしないため、大手の参入しない分野でブラックオーシャンを手に入れることに成功したのだ。

 

これを個人がプロとして活躍するための戦略に置き換えてみると、「小さく深いニーズを見つけろ」ということになる。自分の好きなことや興味のあることを突き詰め、専門性を極めていく。その専門性がニーズを深く充足できるものであればあるほど、あなたに代わる人はいなくなるのだ。

 

ただし、勘違いしてはならないのは、小さく深いニーズを見つけることは、自分勝手なマニアックさを追求することと同義ではない。

 

例に挙げた自転車メーカーも、大手メーカーが売れ筋のサイズしか作っていないことや、売れ筋以外のサイズに需要があることに気づくためには、常に自転車業界やその周辺業界を知り尽くさなければならなかった。ニッチを知ることはメジャーを知ることが必要であり、マイノリティーを知ることはマジョリティーを知ることが必要でなのである。

「普通」を知っているから「普通じゃない」を生み出せるのだ。

 

では、独立を考えているが、自分が狙うニッチな市場を見つけるに至っていない人材はどのような戦略をとるべきなのだろうか。

 

“誰にでもわかる称号”を得よう

永井氏は、プロ活動の入り口では、「誰にでもわかる称号」を手に入れることに注力すべきだと言う。

 

「当然ですが、プロとして活動するには、専門性と実績が必須で、更にそれを別の会社で再現できるということが前提です。それがない状態では、プロ活動はできません。その上で、一見すると逆説的ですが、プロ活動には自分の実績をアピールするための“誰にでもわかる称号”があると便利なのです」(永井氏)

 

永井氏も、“誰にでもわかる称号”を得るため、楽天でのMVP受賞やMBAの取得に力を入れたという。この部分においては、ある意味、“他人の尺度”に合わせることで自分の出来ることを理解してもらいやすくなるのだ。

 

「プロ活動の序盤は、“わかりやすい称号”の取得に投資しつつ、需要の多い分野で専門性を発揮していくのが良いでしょう。そうすることで、業界への知識が深まり、ニッチな需要を拾うことにつながるのです」(永井氏)

 

プロとして活動するには、戦略性も重要なのだ。

 

自分の選択を武器に

永井氏のように、「今までの人生では、大切な選択を“他人の尺度”でしてきてしまった」と悩む方もいるだろう。

 

しかし、永井氏もその選択の中で経歴や実績を積んできたことは間違いない。その経験が、そのまま彼の“誰にでもわかる称号”につながっているという見方もできる。

 

“他人の尺度”で行動することが悪いのではなく、 “他人の尺度”でした選択で得たものを自分の“称号”ととらえて戦略的に使うことで、その選択は武器にかえることができる。

 

同時に、自分の幸せはどこにあるのか、自分は誰と付き合いどのような仕事をしどのような価値を社会に提供したいのか、という“自分の尺度”ときちんと向き合い、必要な専門性を磨くうちに、ブラックオーシャンにたどり着くのである。