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連載「プロとして生きる」第1回~あなたは何プロを目指しますか?~

――自分は今の仕事をしていて、将来、何になれるのだろう。

 

――自分の仕事は、企業という組織の大きな目標の中の、切り取られたほんの一部分で、目の前のことに一生懸命になればなるほど、自分の思い描く将来像からはかけ離れていく。

 

――自分は、今の会社から一歩外に出たら、何ができるのだろう。

 

あなたは、このような漠然とした不安を抱いたことはないだろうか。

 

特に、大手企業に勤める社会人3年目~7年目くらいの方は、このような漠然とした不安を抱くことが多いのではないだろうか。

 

連載「プロとして生きる」は、プロフェッショナルとして専門性と実績を武器に活躍する人材にスポットを当て、その方のキャリアからプロフェッショナルとして生きるために必要なことを紐解くものである。あなたが今後、キャリアにおける大きな選択を行うときにも、「プロフェッショナル」になるためにはどうすればよいかという視点をもっていただけたら嬉しい。

 

今回は、自分の得意分野に注力するために独立の道を選んだWEBマーケティングとブランディングのプロ、平野 創(ヒラノ ハジメ)さんにプロフェッショナルとして独立するまでのキャリアや考え方について伺った。

 

【平野 創(ヒラノ ハジメ)氏 プロフィール】

1968年埼玉県所沢市生まれ。株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント(現:株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント)に営業担当として入社。その後「プレイステーション2」販売に合わせてEC(オンラインショップ)事業立ち上げに参加。同社で10以上のプロジェクトを手掛け、今日のプレイステーション(PS)の礎を築く。その後、スポーツ関連事業を展開する輸出製造販売会社にてスポーツブランドのEC事業や直営店事業の立ち上げを行った後、WEBマーケティング企画構築士、ブランド戦略企画構築士として独立。現在は、プロフェッショナルとして複数社へアドバイスを行う。

 

新しいことに挑戦し続けるために磨いたもの

 

「僕は、ある程度一つのものが立ち上がりルーティーンで回せるようになると、新しいことをやりたくなるんです」

 

そう話す平野氏は現在、複数の企業のブランディングにおける課題を解決するために尽力している専門家、いわゆる「プロ」だ。彼の経歴を見ても、ブランディング担当やブランド企画室といった経歴はない。しかし、一つの商品を世の中に拡散させていく過程には「ブランディング」がつきものだ。彼は、自分の仕事の中から自分ができることを抽出し、磨くことで、自らの新しいことに挑戦し続けたいという欲求を満たせる「プロ」というポジションを得たのだ。

 

自信を持って売れる商材を求めて

 

そんな平野氏も、大学を卒業した時から何かの専門家になりたいと思っていたわけではない。新卒で入社したのはオフィスのデザインを行う老舗企業。バブル真っただ中の就職活動で、数々の大手企業からのオファーを蹴り、働く環境を提供する魅力に引かれて入社した。

 

入社後は新規開拓が中心の営業部に配属された。大手ゼネコンを担当しつつ、ビルの工事現場を見かけては新規営業をかける日々。2年目には大型案件の受注が評価され社長賞を受賞し、3年目には主任に昇格。部下もつくことになる。

一見、順風満帆に見えるが、平野氏の頭の中には転職がちらつくようになる。

 

「もっと自分が自信をもって売れる商材を扱いたい」

 

そんな時、目についたのは、新聞に掲載されていたソニー・コンピュータエンタテインメント(以下、SCE)の求人広告。ゲームに関しては全く興味がない平野だったが、友人から「プレイステーション」というスゴいゲーム機があるというのは聞いたことがあった。

 

「その当時のゲーム業界はカセット式のゲームソフトが主流で、リピート生産ができず価格高騰が起こっていました。子供の間では、ゲーム欲しさに万引きやカツアゲが頻発しており、社会問題にもなっていました。マーケットが正常に機能していない状況だったんです。そこでSCEはゲームソフトが適正価格で取引されるよう、ソフトのリピート生産を行えるようにしてマーケットを変えようとしていたんです。最終面接でその話をされ、役員から“マーケットを変えるんだ”という強い意思を感じ、入社の意思が固まりました」

 

SCEに入社後配属されたのは、大手ゲームフランチャイズ法人などを担当する営業部。ただ営業するのではなく「自分がマーケットをつくる」という気持ちで、3年間でプレイステーションの市場シェアを18%から56%まで引き上げた。

 

アマゾン、楽天に挑む新規事業に志願

 

ゲーム市場でのマーケットもある程度出来上がり、直販でのチャネルも整った頃、社内でオンラインショップ立ち上げの話が持ち上がる。これは、開発中であったプレイステーション2の販売を行うオンラインショップで、ゆくゆくはアマゾンや楽天と戦うことも視野に入れた大型の新規事業であった。平野はオンラインショップの立ち上げプロジェクトに志願した。これが後に、平野がWEBマーケティング・ブランディングのプロを名乗る原点である。

 

オンラインショップ立ち上げプロジェクトでは、販売スキームの構築やカスタマーセンターの整備など、オンラインショップのコア業務の構築を担当。プレイステーション2のオンラインショップ限定先行発売を仕掛けるなど、様々なマーケティング・プロモーション施策を仕掛けた。そして、同時にいくつかのプロジェクトに参加し、オンラインゲームのビジネスモデル構築やプレイステーション3の販売企画など、10年間で10以上のプロジェクトにかかわることになる。

 

「僕の特性として、新しいマーケットをつくるというミッションを負うのが好きなんです。これはSCEに入社して10年ほど経った36歳で気づいたことなんですけどね。この頃には、SCEで10年を過ごす中で、ある程度“やりつくした”という感覚が芽生えていました」

 

SCEは優秀な社員がたくさんおり、周りの人が経験したことを吸収しながら仕事をすることができた。当然、自らがリーダーとしてプロジェクトを推進するということはしてきたが、そろそろ“ピン”で勝負がしたい。平野氏の中で「独立」が頭をよぎった瞬間だった。しかし、その当時、WEBやECの専門家として独立するというのは前例もなく、需要も明確ではなかった。平野氏はまず、SCEとは真逆の小さな組織で勝負する道を選んだ。

 

独立を視野にベンチャーへ

 

平野氏が次のキャリアとして選んだのは、従業員数60名程度のスポーツ関連事業を展開する輸出製造販売会社であった。同社が抱えるスポーツブランドは現在、ブランド名を聞けば誰しもが一度は聞いたことがあると答えるほどの認知度を持つが、2007年当時ほとんど認知されておらず、企業文化としてもベンチャー色が強かった。平野氏は独立も見据え、ベンチャー企業でブランドを一から作り出すことを選んだ。

 

ここでの平野氏のミッションは、同社ブランドのWEBを用いたブランディングと新たな販路としてのオンラインショップの構築であった。ブランドの認知度が低い中で、0からオンラインショップを立ち上げ、8年間でアウトレット事業の運営や直営店の立ち上げにも携わった。

 

しかし、入社して8年が経過したある日、平野はまたしても、「やりつくした」感覚にとらわれる。

 

「ある程度一つのものが立ち上がりルーティーンで回せるようになると、新しいことをやりたくなるんです。ただ、転職をしている限りそのサイクルは変わらず、転職では自分の新しいことへの欲求を満たすことは難しいと思いました。独立すれば、複数社の事業の立ち上げに関わり続けることができます。こう考えた時に、独立をしようと考えました」

この頃には、WEB分野で専門性をもって独立する人も出てきており、環境は整ってきたと感じていた平野氏。その環境の中で自分の強みの分野を明確にし、一定のパフォーマンスが出せれば独立してもやっていけるという自信が湧いていた。

 

それから更に1年が経過したころ、平野氏は会社を退職し、WEBマーケティング企画構築士、ブランド戦略企画構築士として株式会社Office HIRANOを立ち上げ、今では複数社のブランディングを手掛けるプロとして活躍している。

 

プロになるために必要な視点

 

平野氏は、新しい事業の立ち上げに関わり続けるために、独立という道を選択した。では、プロフェッショナルとして独立するためにどのようなことを意識して仕事に取り組めばよいのだろうか。

 

平野氏は「自分のポジションより上の視点を持つこと」が重要だと話す。

 

「まずは、自分の上司の視点を身につけることが大切だと思います。自分が行った仕事の結果や周りの仕事にも目を向け、自分がもし、自分の上司のポジションにいたらどのような判断をするかを考えるのです。そうしているうちに、自分のポジションと一緒に段々と視点が上がっていって、最後は経営者だったら、自分が独立したら、どのように判断するかと考えることができるようになるんです。私は、転職するときはいつも、(自社の)社長だったらどういう風に考えるかという視点まで行きついて、その時の自分の考えと社長の進む道が大きく異なるときに“転職する”という決断をすることが多かったです」。

 

自分の仕事やポジションに対して不安を覚えると、まず頭に浮かぶのは「転職」であるが、何を目指すかによって転職先は慎重に選ばなければいけないのも事実。

 

平野氏のように一つ上の視点で物事を考えることで、自分の特性や得意分野を理解し、その上で、やるべきことが明確になり、自分の目指すものへの最短ルートを歩むことができるのかもしれない。

 

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