「先生は世間知らず」への挑戦。小学校の先生が3日間の企業インターンで得たお土産と宿題とは
ハタラクミライを運営するエッセンス株式会社では、自らインターン活動を志願された小学校教諭である二川佳祐さんに、3日間に渡り社会人インターンに従事していただきました。
以下は、二川さんからの学びと気づきのレポートです。
【筆者プロフィール】
二川 佳祐(ふたかわ けいすけ)
小学校教諭。公立小学校10年目。「大人が学びを楽しみ続けること」をミッションに日々活動中。DAncing Future Learner代表/Beyond Labo代表/朝志塾 代表。ブログ継続日数550日、早朝2時起きの変人。2児の父。妻と娘2人をこよなく愛する、ファミリーファースト。
昨日までの3日間(編集部注:7月30日~8月1日)、エッセンス株式会社に機会をいただきまして、先生インターンを行わせていただきました。
この3日間のことをお伝えするべく、この記事を投稿します。是非お付き合いください。
開始前のFacebookの投稿には200いいね!90シェアという二川史上前代未聞のご関心をいただき、光栄だと思うとともに、Facebookで友達の方以外にも多くのいいねやシェアをいただき、この活動の持つ意義を感じていました。
皆さん本当にありがとうございました。大変な励みになりました。
▲インターン直前の二川さんの投稿
新しい働き方をつくる企業へのインターン
エッセンス株式会社は、「新しい仕事文化をつくる」を合言葉に企業と個人の新しい関係を実現することを志す会社です。
・プロパートナーズ事業:プロフェッショナルの紹介
・リクルーティング事業:人材紹介及びヘッドハンティング
・ナナサン事業:他社留学サービス
の3事業を行なっています。
副業解禁元年の今年にふさわしい会社で、ほとんどの社員の方が副業をやられています。今回は、そういった理解あるエッセンスさんだからこそ実現できたことだと思っています。
なぜ先生インターンをしようと思ったのか
普段から、以下のような課題感を持っていました。
・先生って世間知らずと言われがち
・社会の先端を学ぶことで子供達にいいものを届けられる
・先生って未だに、「社会人を経験してから先生になる」というのが黄金ルートだと思われがち
・先生になった人がそれを経験できたっていい
・先生だからこそ与えられる社会的価値だってあるはず
今回、「先生が社会に開く」ことを実践するために、3日間でチャレンジしてきました。
3日間でやらせていただいたこと
この3日間では、主にセミナーのお手伝い、アポイントメントの同行、ミーティングでの議事録、契約書の作成等を行わせてもらいました。
そして最後に、この3日間での学びを10分間でプレゼンさせていただく機会を得ました。
5つの学び
今回の先生インターンを通して、5つのことを学びました。
①先生の副業解禁は間近。「円」ではなく「縁」を稼げ
間違いなく公務員にも副業解禁の波は来ます。既に国家公務員レベルにまで降りて来ています。
僕は副業よりも「複」業であるべきと思っているんですが、どちらにせよ、一つだけの仕事に取り組む一本ハシゴの時代はもう終わりを迎えています。それをラダーキャリアというそうです。
これからは、どこに、どれだけ進むかもその人の生き方によって決められるコンパスキャリアの時代です。複数の仕事をこなし、同時に自分自身のスキルアップをしたり、いろんな拠り所を持っていったり、同じ志の仲間を増やしていったり。そういった中でこそ自己は磨かれて行くと信じています。
だからもう散々言われていることですが、これからくる副業時代は、お金を稼ぐためのものではなく、自分を成長させるためのもの、そして自分の世の中での可能性を高めるためのもので、信用を稼ぐためのものだということがよくわかりました。
今回、当たり前ですが僕は一円たりともお金はいただいていません(念のため)。ですが、それ以上の経験や、人との繋がりの「縁」をいただきました。先生が副業時代を迎えるにあたってのマインドセットを学びました。
②副業によって見えた自分の芝生
「隣の芝生は青く見える」とはよく言ったもので、僕も今の仕事に取り組んでいて、違う仕事に目が移っていた時期もあります。なんだかビジネスマンに憧れたり、「世間知らず」と言われる先生の仕事が妙に恥ずかしくなったり。
今回の3日間のインターンで、実際の仕事の現場で企業というものを味わってみて、全く違う世界に入り込みました。まさしく、隣の芝生に飛び込んだわけです。
そこはとても素敵で、自主性に任されていて、自分が「こうしたい」っていうことも叶えられている。勤務中に他業種の人とランチはできるし、好きな働き方を選べる魅力ある企業だと思いました。今自分が勤めている職場よりも魅力的なところがいっぱい見つかりました。
でも、それと同時に、今自分が当たり前にいる環境にもいいところがあって、その恩恵に預かっていることにも気がつきました。
例えば、子ども達と過ごす時間が僕にはある。他にもたくさんのいいところが見つかりました。だから結論から言うと、「隣の芝生は青く見えた、実際に行ってみたら青かった。でも振り返って自分の芝生を見ても青いところがいっぱいあった。」ということです。
これって飛び出さないと気がつけないことで、自分の周りにある当たり前を相対化できたから見つけられたこと。
副業は「離職率が高まるんじゃないか」と懸念する声もあるけれど、むしろ逆で、違う世界と比べることで自社を見つめる機会になり、戻った時のコミットメントが高くなるという効果をもたらすと思います。それを今回の3日間で肌で感じました。
③なぜ「先生は世間知らず」なのか?への仮説
上記でも触れましたが、どうしてこうも先生は「世間知らず」と言われるのか?というのが僕の今回の命題の一つでした。昔、師匠の先生には「先生は名刺交換もできない」とか「コートを脱いで挨拶に行けない」とかそんなことを散々言われていたから、なんだか僕はここに対してやたらとアンテナが高いのです。
どうしてこうも言われるのかということを、エッセンスの皆さんと話しながら考えた仮説が二つ。
⑴学校というのは誰もが1度(児童として)ないし2度(保護者として)経験している
⑵そしてどのグレードでも、どの地域でもほぼ同じ教材で同じ形の教室で、同じような先生が授業をして、その教育を受けて来ているから、共感性が高い
というのが「世間知らず」という発信側の仮説。
もう一つは、言われる側の学校がいかに「世間知らず」なのかということを考える。そうすると、例えば昨日お話しした方のお子さんが通う学校では、これだけテクノロジーが発達して来ているのに、連絡帳は未だに手渡しだけでFAX・電話・メールはなし。むしろHPに欠席者フォームを作っちゃった方が早いんじゃないか?という意見をもらって、確かに!と思いました。
どんどん便利になって来ているこの世の中なのに、未だに旧態依然なままの学校。それを見て「ああすればいいのに」「こうすればいいのに」と思いながら変えられない・変わらない姿に、もどかしさを覚えていました。
変わり続ける現代であるのに、こういう変化があまりにも遅すぎる姿こそが「世間知らず」と言われているのではないかと現段階では思うなあ、と。これからより一層、社会のスピード感ある変化についていくことが求めらるのかもしれません。
④学校現場に持ち帰るお土産と宿題
ビジネスの現場にいて、学校現場に取り入れられるものは何か。そう考えた時に「数字」だと思った。
昨日は8月1日ということもあり、7月の締め会というものを行っており、それに参加させてもらいました。それぞれの社員さんが、自分の目標値を定め、それに対してどのような取り組みをし、その振り返りをし、そして改善し次月の目標・行動を決めていく。そういう生のPDCAを見ることができました。
他にもエッセンスさんの社員さんとお話ししていると、「KGI」とか「KPI」という言葉がよく出て来ました。よく聞く言葉ではあったけども、目の前で実践されている方たちの説明は、とてもわかりやすく、その概念・考え方がよくわかりました。PDCA,KPI/KGIどちらにしても「数字」がよく使われています。
教育現場では、数字は忌み嫌われているところがあり、数値化しない傾向にあります。もしくは使いたくても上手に使えていないということが課題感としてあります。
データを取り、そこで成長を可視化するというのは、間違いなくその子の成長を促進させるだろうし、たとえそれがプラスじゃなくても見える化を行うことは間違いなく必要です。もっと「数字」に向き合おう、そのためにもビジネス的な思考を学校現場に持ち込みたいと思いました。
⑤全てはギャップでできている
このエッセンスの仕事はギャップの解消でできているなと思いました。
「新規事業を起こしたい」のに、そういった経験がない。だからその能力に長けた人、つまりギャップを埋められる人を派遣しよう。上にも書いた目標値と、今月の実績の間にもギャップがある。それを埋めるためにはどうするかを考えている。
今回の僕のこの活動だって、「世間知らずだ」という声と「そうじゃない!」という思いのギャップを埋めることが自分のモチベーションを担っていました。
教育現場にだって、自分が知らないことがあってそれを知りたくなる、それこそギャップを埋める作業じゃないかと思うのです。
▲締め会(月次報告会)にて発表する二川さん
つまりこの世の中、僕たちの周りには色々なギャップが生じていて、それを埋めるべく仕事があり、活動があり、使命が生まれると思う。ギャップっていうメガネで見てみると色々と面白いなと思いました。
以前、DAncing Einsteinの青砥くんから、感情は全て期待値との予測差分、つまりギャップであると教わりました。快の感情は事前の期待値よりも大きく上回った時に大きくなるし(サプライズの時など)、不快感情は期待値よりも下回った時に大きくなる(上手くいくと思ってたことが失敗した)。そんなこともギャップのことを思い出しながら考えていました。
他にも、超たくさん学んだことがあり、全てはここで書き切れません。学びだらけの3日間だったなあ。動いたからこそたくさんのご縁をいただけました。やっぱり、動いたもん勝ちだ!と思いました。
感謝と決意表明
エッセンス株式会社の皆さんには月末の業務が大変お忙しい中、3日間受け入れていただき、本当に感謝しています。
また今回、行くことを許可をいただいた所属校の校長先生、教育委員会の皆様ありがとうございました。
そして3日間、家のことを何もできない中、二人の娘たちを朝から晩まで見てくれた妻。遅く帰って来ても美味しいご飯を用意してくれて一日の疲れがぶっ飛んだ。黙々と支えてくれた。ありがとう、この場を借りて。
まさにこの3日間は、
【教員】の【ベンチャー企業】での【冒険】だから、【Edventure】 だ!
そんな造語をこの活動に送り、この活動に一度ピリオド。
もしこのEdventureの活動を少しでも応援してもいいよって方がいましたらシェアをしてくれたら号泣してお礼します。お願いしますー!多くの人に届けたいー!
▲3日間を共にしたチームメンバーと二川さん(一番右)
▲二川さんのお疲れ様会。二川さん(真ん中)よりも喋る吉水部長(一番右)