6種の「ワークライフ○○」取り揃えました。肌に合う「働く×生きるの関係」を考えてみませんか?
変化する「シゴト」の価値観
戦後日本を猛烈な勢いで復活させた高度経済成長期。家庭をかえりみる時間があるなら1円でも多く稼ぎ、一日でも早く出世しろと考える時代でした。
ハードワークに異を唱える人も少なく、日本人の生来の勤勉さも手伝って、著しい経済発展を遂げました。
しかし、バトンを受けた団塊ジュニア世代はバブル崩壊後の就職氷河期の影響により、その後の世代も巻き込んだ長いデフレの中で、親世代とは違ったサバイバル社会を生き抜いていくこととなりました。
何も考えずにがむしゃらに働いていた成長期とは違い、明日どうなるかを予想することさえ難しくなった現代社会で、どう働くか、そして何を大切に生きていくべきなのかを一人ひとりが考え始めたのです。
近年、「ワーク・ライフ・バランス」という言葉が生まれ、注目を集めています。
今回はこの「ワーク・ライフ・バランス」の本来目指すところを知ったうえで、「ワーク」の位置づけをそれぞれの人の人生にとってさらに意味あるものにするために、「ワーク・ライフ・バランス」に縛られない、次世代の「ワーク・ライフ・○○」をご紹介したいと思います。
本来の「ワーク・ライフ・バランス」の意味
多様化するライフスタイルや人生のステージにより変化するニーズに合わせて、働き方や生き方を選べる社会を実現させるべく関係閣僚、経済界・労働界・地方公共団体の代表者等で構成された「仕事と生活の調和推進官民トップ会議」において、平成19年12月(平成22年6月改定)に「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」、「仕事と生活の調和のための行動指針」が策定されました。
要約すると、「ライフ(プライベートな生活)をより充実させることで、ワーク(仕事)の効率・パフォーマンスの向上につなげ、両者を好循環させよう」という取り組みです。
このような動きの背景には、現代の日本が抱える問題点が見え隠れしています。少子高齢化が進む昨今、企業は働く人が直面する介護や出産・育児という状況変化にも柔軟に対応していかなければならない、と提唱しているのです。グローバルな競争力と技術の進歩へのスピーディな対応力を必要とされる企業において、女性リーダーが育たない、優秀な人材が逃げていく、では話にならない、というわけです。
誤解された「ワーク・ライフ・バランス」
企業は実際に変わったのでしょうか。働く現場からは、こんな声が聞こえてきます。
・規定時間以上の残業をしていないかタイムカードをチェックされるので、規則違反でも持ち帰って仕事の続きをしないと終わらない
・有給休暇消化率が低い部署やチームのリーダーは呼び出され、理由書を提出させられる
ここからは、経営者のワーク・ライフ・バランスに対するありがちな誤解が浮かび上がります。それは「ワーク・ライフ・バランス」とは仕事とプライベートの時間を分けることだ、という思いこみです。もちろん、プライベートな時間に理解を示すことは大切ですが、そもそも「ワーク」と「ライフ」を相反するものだと捉えていることが、働き手の認識とズレてしまっています。
特に、大手企業を中心に「ワーク・ライフ・バランスを心がけましょう」をまるで呪文のように唱えるようになっていますが、単なる長時間労働の解消のためのスローガンになっては意味がないのです。
自分の「ワーク・ライフ・○○」を生きる
実は、筆者はハードワーカーを自負しており、この「ワーク・ライフ・バランス」を盾に大好きな仕事時間を奪われた経験があります。長時間労働が正しいと思っているわけではありませんが、私のように寝ても覚めても働いていたい人間には「長時間労働は悪だ」と言わんばかりの企業の姿勢に疑問を感じたことがありました。
そこで、価値観が多様化する今だからこそ大切にしたい、自分の働き方「ワーク・ライフ・○○」を探してみましょう。
●ワーク・ライフ・ミックス
仕事とプライベートの垣根をなくし、介護や育児をしながら仕事をするスタイル。在宅ビジネス、大手企業が行う在宅ワーク、子連れ出勤などがこれにあたります。仕事と生活の両立は可能にはなりますが、つい夜中まで働いてしまうなどタイムマネジメントの難しさがあります。
●ワーク・ライフ・インテグレーション
「出社時間自由」や「リモートワーク可」のような条件で優秀な人材を確保する動きがITベンチャー企業を中心に加速しています。リモートでも会議や仕事は十分に可能なので、皆が同じ場所に決まった時間一緒にいる必要はもうないのかもしれません。
物理的にも時間的にも、仕事とプライベートを無理に分けることをせず、両者をインテグレーション(統合)してしまうこの方式は、従業員の自主性を重んじ、管理によるストレスを和らげることで生産性を上げています。
厚生労働省が推進する「働き方改革」、「プロジェクト型」と呼ばれる自律的キャリア構想にもフィットするのではないかと思われますが、管理することに慣れている日本の社会が適応できるかが問題です。
●ワーク・アズ・ライフ
寝ている時間以外はすべて仕事であり趣味でもあるという考え方です。仕事とプライベートを分けるのは仕事がストレスだからであり、だからこそ長時間労働が負担になるのだという考えが背景にあります。
高いモチベーションを保つことができ、お金以外の価値がある自分にとって有意義な仕事をすることで、「タイムマネジメント」ではなく「ストレスマネジメント」を実現します。絵空事のように聞こえますが、農業を生業とした我々の先祖は日のある時間は働き続けていましたし、職人と呼ばれる人々は朝起きて夜寝るまで道具を手離さないでしょう。
●ワーク・ライフ・シナジー
プライベート時間をリラックスやリフレッシュのみに費やすのではなく、仕事でのアウトプットをより良いものにするためにもプライベートで多くのインプットを意識する、という考え方です。
例えば、ただ家事として料理をするのではなく、材料の原産地や歴史を調べてみる、洋画を鑑賞するならセリフをちょっと書き留めて語学の勉強をしてみる、など。
何かの役に立つ種を日々集めることで生活がより豊かになり、仕事にも役立ち、効率が上がるかもしれません。この考え方はパラレルキャリア志向を後押しし、時間を有意義に使うヒントにもなりそうです。
●ワーク・ライフ・ハーモニー
「ワーク・ライフ・バランス」のように、労働時間の削減や有休消化でプライベート時間を増やすことだけが仕事の質を上げるわけではなく、残業したくなるようなやりがいある仕事で精神的な満足度を上げ、仕事のために生きたいと思えるような「幸せな働き方」を目指すというものです。
前述の「ワーク・アズ・ライフ」にも通じるところがありますが、長時間労働は心身をすり減らすだけではなく、達成感ややりがいを得られる仕事なら「報酬」だとする考え方です。
“生きるために働く”を脱するために
いくつか例をご紹介させていただきましたが、ぴったりのスタイルはありましたでしょうか。
ここでご紹介した「ワーク・ライフ・○○」は、決して仕事を減らして楽をするための方策ではありませんし、企業に対しての“従業員にラクをさせろ”という提言でもありません。
むしろ、これまで日本人があまり意識してこなかった、人生の中の「シゴト」の位置づけを明確にし、個人の環境や生き方に合った働き方を選択することで、その効率やパフォーマンスの向上をはかろうというものです。
そもそも内閣府の掲げる働き方改革は、自主性と生産性を共に求められる自律的キャリアの確立を目指すものですので、これらの例がすべてにおいて「ワーク・ライフ・バランス」の目的とするところと反するわけではありません。
筆者が思う「ワーク・ライフ・○○」の究極の目的は、「ワーク」も「ライフ」も臨機応変に融合させつつ、プロジェクト型のようなフットワークの軽い働き方にも対応できる優秀な人材を確保・育成する根本の土台作りです。
21世紀に入り、競争相手は世界となり、日々進化するテクノロジーの波が、古い体質から抜け出せない日本企業に大きなダメージを与えています。このような変化の中では企業による優秀人材の確保は不可欠ですが、これまでのような企業戦士ではなく、個人の個性を活かし、さらに伸ばしていく土壌づくりが必要です。
そして、働き手にとっても、食べるために働く時代の価値観を捨て、自らの人生において「ワーク」というエッセンスをどう幸せに変換していくかを意識して生きることが、自分だけではなく家族や身近な人の幸せにもつながっていくのです。
※参考サイト
https://www.gov-online.go.jp/tokusyu/201302_02/sitte/
https://www.manpowergroup.jp/column/temporary/140905_01.html
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20101119/217183/
https://govforum.jp/member/news/news-news/news-others/others-others/19716/
https://paraft.jp/r000016000237
https://jinjibu.jp/keyword/detl/267/
https://www.kaonavi.jp/dictionary/work-life-integration/
http://blog.btrax.com/jp/2018/04/24/worklife-integration/
http://changeva1ue.com/workaslife/
https://studyhacker.net/columns/work-life-balance
https://www.huffingtonpost.jp/rengo/work-life-synergy_a_23267662/
http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/oz/604/604-06.pdf
https://t.cll-j.com/work-life-harmony/