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自衛官が営業マンに!?異業種転職を実現する……

「ポータブルスキル」とは?

近年、40歳以上の直近1年以内の転職経験は1割以下となっており、転職エージェントの中でも「40歳を超える求職者には紹介できる案件が少ない」というのがすでに常識になっています。転職を阻害する要因として、『収入』、『年齢制限』、『スキル・能力が通用しない』の割合が高く、多くの求職者が自身のキャリアを選びにくい現実があります。

これは、中途採用における「即戦力人材」の定義が専門スキルやマネジメント力への評価に偏っており、日本企業でゼネラリストとして育ったミドル人材には不利な評価を受ける傾向にあることが一つの原因だと言われております。企業も、必要な人材について考えるとき、要件を並べてしまうことで、その要件に当てはまる人材の幅が減り、結果的に「人材採用が難しい」という声が多くなっているのが現状です。

このような状況の中、人材サービス産業協議会(JHR)によって考案されたのが、「ポータブルスキル」という考え方です。ポータブルスキルとは、経験豊富なミドル人材が持つ能力やスキルを可視化する”新たなモノサシ”として考えられたもので、転職の際に、専門的なスキルだけでなく、業種や職種が変わっても持ち運びができるポータブルなスキルや適応力、組織との相性を見える化する仕組みのことを指します。

この仕組みを使うことで、求職者にとっては、自分のスキルを新たな切り口で棚卸しすることができ、今ま で視野に入らなかった求人にも目を向けることができるようになります。企業にとっては、既存の要件では対象外であった人材も視野に入れることができることから、職歴・職域を超えた採用を行うことができ、更に、入社後の活躍ビジョンが見えた状態で採用を行うことができるという利点があります。

 

「ポータブルスキル」で自衛官から広告代理店の営業職に!?

 

ポータブルスキルリクルーティングを掲げるエッセンス株式会社。そこでは、一見関係のない業界への転職を実現する求職者が多数いるという。その第一線で活躍するリクルーティング事業部事業部長金子氏に、異業種への転職を可能にしたポータブルスキルリクルーティングについて伺った。

 

Q:企業からは「自衛官を採用したい」という要望があったのですか?

いいえ。企業からは最初、「広告業界での経験」、「若手」、「当該企業の特定顧客の製品に詳しい方」といった要望をいただきました。しかし、転職市場にはその全ての要件を満たす人材はなかなかいません。企業としても、この要件を満たす人材を長らく探していらっしゃり、様々な転職エージェントに相談をされていましたが、該当する人材の母数が少ないことから、なかなか採用できないという悩みがあり、そこで、私に相談がありました。

 

Q:企業側には厳しい採用要件があったということですが、どのようにして自衛官の方の採用に至ったのでしょうか。

まずは、企業側に対し、表面的な採用要件だけではなく、「どうしてその要件が必要なのか」、「どのような部分を解決したくてその人材を探しているのか」といった採用の背景を伺いました。すると、「開拓した顧客とスポット契約で終わってしまう」、「既存顧客との取引拡大ができない」といった課題が見えました。

現職自衛官の求職者の方は、現職で培われた専門スキル以外のスキルについて、ポータブルスキルの手法で確認し、第一に、「上下関係をきっちり守り、礼儀正しい」、「時間管理、スケジュール管理に優れている」という強みがあるとわかりました。更に深く話を聞くと、ミッションは余力を残して達成しなければならないという先輩からの教えで「8割の力で100%の成果をあげ、残り2割の力でプラスアルファの仕事を行う」というビジネススタンスをお持ちであることがわかってきました。業種柄、そのように教えられるのも理解できますよね(笑)。

上下関係をきっちり守るという点と時間管理に優れているという点は、しっかりと懐に飛び込み深い信頼関係を築くための大切な要素になります。この強みは、新規顧客の継続取引にも、既存顧客の取引拡大にもつながると思われました。また、8割の力で計画を遂行するという点に関しては、営業成績が予定通り達成できなくても、2割の余力で達成まで粘り強く活動できるという点で未経験の営業職にも対応ができる素晴らしいスタンスだと思いましたので、この2点を企業にアピールしました。

結果として、代表者の方の求めていた人物像であるということで、求職者の方をとても気に入っていただきました。彼は今、トップ営業マンとして活躍していると聞いています。 

 

Q:どうしてエッセンスはこのようなご紹介ができるのでしょうか?

それは、弊社のプロパートナーズという事業で「経営課題に対し、最適なプロ人材を紹介する」ということを自然に行ってきたからです。経営課題を解決するためにはどのような人材が必要かという考え方を常にしている我々だからこそ、専門スキルや今までの表面的な経験だけでなく、仕事の取り組み方や人間関係の形成の仕方といった切り口で今まで視野に入らなかった人材のご紹介ができるのです。今後も、ポータブルスキルリクルーティングを行うことで、表面的な紹介になりがちな人材業界を変えていきたいですね。

 

リクルートキャリアにてキャリアコンサルタントとして活躍後、エッセンス株式会社に入社。表面的な紹介を行う人材業界を変えるため、ポータブルスキルリクルーティングを推進する。