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ベンチャー留学を体験した若手人事のリアル~社外に出ると見えるもの~

近年、社会人のスキルアップの方法の一つとして、複(副)業・兼業やプロボノといった社外活動が注目を集めています。本業で磨いたスキルを他社や他団体で発揮することで、本業では体験し得ない経験を得たり、人脈を築いたりと、収入補てん以外のメリットがたくさんあります。

そのような中、今年の3月、エッセンス株式会社の「ナナサン」というサービスがリリースされました。このサービスは、現在の会社に勤めながら週1回程度、会社の研修として「ベンチャー留学」することのできるサービス。2017年度の日本HRチャレンジ大賞でも奨励賞を受賞しており、「いきなり、複(副)業・兼業やプロボノを始めるのは怖い!」という方にはぴったりのサービスです。

今回は、この「ナナサン」というサービスを使って、他社のプロジェクトに参加した29歳男性に「他の会社で働くって実際どうなの?」という疑問をぶつけてきました。

 

ベンチャー留学のリアル

今回、「ナナサン」でベンチャー留学を体験したのは、飲食店および一般家庭向けに酒類販売を行うK社で人事部門を担当するA氏(29歳)。人材採用についてのノウハウを学ぶため、人材ソリューションを提供するベンチャー企業S社へのベンチャー留学について聞きました。

Q:まずは、今までのキャリアと現在のお仕事について教えてください。

現在の会社(K社)には、6年前に新卒で入社しました。入社して3年間、酒類の小売りを行う店舗に配属され、4年目には店長に就任しました。店舗では、アルバイトの方の管理や商品の配送管理を行っていました。

1年ほど前に人事部に配属され、全店舗のアルバイトの採用統括や高校生を対象とした採用活動、店舗社員の研修を担当しています。

Q:今回のベンチャー留学を行うことが決まった経緯を教えてください。

最初は、ある日突然上司に「打ち合わせに参加してくれ」と言われました。打ち合わせの場に行くと、上司とエッセンスの人がおり、研修に参加するように言われました。「研修」という名前がつくので、段取りが組まれていて、ゴールも決まっていて、それで進んでいくような研修に「参加」するのだと思いました。

その後、他社での研修だという説明を受け、自分は他社に行く機会はなかなかないし、転職を考えたこともないので、いわば、「転職の疑似体験」ができるのであれば面白いかなと思いました。

Q:説明を受けて、いきなりベンチャー企業に行くんですか?

いいえ(笑)。実際にベンチャー留学に行く前には、エッセンスから面談を受けました。

ただ、研修に「参加」すると思っていたので、面談が進むにつれて、なんだか様子が違うぞ、と焦り始めました。エッセンスからの面談は今まで考えてこなかった「今、何ができるか」や「今後どうなりたいか」といったことについてとことん突き詰められました。就職活動の面接を思い出しましたね。この面接で、日々ルーティンに追われて、捌くだけだった自分の「仕事」について改めて振り返ることになり、反省しました。

また、この面談を通して伝えた内容によって、エッセンスが留学先を提案してくれました。(編集部注:実際には、人材を送り出す側の企業にもどのようなことを学んでほしいか聞き、留学先を決めるようです)

Q:ベンチャー留学ではどのようなことを行ったんですか?

今回の研修では、S社の新規サービスのプロジェクトに入りました。このサービスは、企業に代わりアルバイト求人応募者の対応をすることで企業の採用効率を上げるというものです。

この研修でのゴールの一つ目は、このサービスについて、人事というサービス利用者の視点からディスカッションに参加し、ブラッシュアップすること。二つ目は、S社が主催するセミナーで、S社の顧客向けに新規サービスの活用法についてプレゼンすることでした。このゴールについてもS社の方と話し合い、自分で提案しました。

Q:ゴールのレベルが高いと感じましたが、苦労などはありましたか?

そもそも、このゴールを決めるまでの擦り合わせはとても苦労しました。何もない状態から「自分が何をできるか」の提案を行わなければならず、そのようなことを行ったことがないので、どのようなことを提案すればいいのか悩みました。時々、エッセンスの人にアドバイスももらいながら進めました。

また、セミナーの発表内容を詰める段階では、S社の方々の中でもいろいろな意見が出て、意見を集約するのに苦労しました。最後の2回でなんとか形にはしましたが、納得できるプレゼンだったとは言えません。

どちらも、自分の会社(K社)での業務を減らさずに行わなければならず、とても大変でした。

Q:どのような部分に気を付けて研修を行いましたか?

今回の研修では自分から発信するということを強く意識しました。自社では他社から提案されたものをジャッジするという業務が多いので、お客様気分にならないよう、徹底して発信していかなければと思いました。

それに、自分が抱えている業務をストップして研修に参加しているので、成長しなければ、価値発揮しなければという気持ちも強かったです。この研修は、自分が何か出さないと何も動かないし、得られるものもない。そのかわり、自分が動いた分だけ自分の身になる。

もう一つは、S社という会社のことや、メンバーの方々の目指している方向性を深く理解しようと努力しました。自社での研修では、メンバーの目指しているものがおおよそ共有されていますが、今回は自分だけが部外者。メンバーの方々がどういったことを目指しているかというのを汲み取ることに時間をかけました。

Q:自社と他社の違いはありましたか?

今回、参加したのが、新規事業のプロジェクトだったこともあり、意思決定のスピードの速さは実感しました。自社では、どこの店舗でも同じサービスが提供できることが重要であり、それに対して仕組みを作っていくことが求められていました。S社はサービスを仕組化するのではなく、それぞれのクライアントに柔軟に対応しており、対応もとてもスピーディでした。そこに驚きはありつつも、事業が拡大して、仕組化しなければならなくなった時の方が、自分が行ってきたことが役立てるのではないかと感じ、この事業が大きくなるフェーズでも参加したかったとも思いました。

Q:今後、このベンチャー留学の経験をどのように活かしていきたいですか?

研修後、自社で新しい事業部の立ち上げメンバーに選ばれました。ここでは、立ち上げたばかりということもあり、マネジメント環境がない状態です。しかし、今回の研修で何もないところから自ら仕事を作り出す、成果を出すということを体験し自信になったので、今後も、ルーティンワークを回すのではなく、何かを作り上げるということを積極的に行いたいです。

 

最後に

このインタビューを通して、「現業を7割に圧縮して、 作り出した3割の時間で他社で成果を出す」(これが「ナナサン」のネーミングの由来とのことです)ことの難しさ、重要性について 改めて考えさせられました。

現在の業務を7割に圧縮することは、非常に大変なことです。

しかし、これからの時代、それほどの生産性がわれわれ一人一人に求められる世の中になるかもしれません。 そして、環境の変化に柔軟に対応し成果を出すという力も、より重要になってくるのではないでしょうか。

 

皆さんは、「自分はこんな価値提供ができる」と言い切れるものはありますか?

 

激変する時代に活躍できる人材を目指し 今一度、自分のキャリア・スキルと向き合うのもいいかもしれません。