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「総動員」から「個を活かす」組織へ。フリーランス白書で見えた「プロジェクト型」人材と組織の可能性

昨今、厚生労働省が推進する「働き方改革」において、テレワークや副業・兼業は“実効性のある政策手段を講じて、普及を加速させていく”とされていて、多様化していく働き方が議論される機会が増えてきました。

クラウドサービスやビデオチャットなどの普及により、時間や場所を限定されずに働ける環境も整ってきており、日本でも現在は1000 万人余りのフリーランス(副業・兼業を含む)がいると言われています。驚くことに、米国では2027 年にはフリーランス人口が全労働力人口の過半数になるという試算もされています。

厚生労働省は、今後、副業・兼業のガイドライン等の策定・改定を行い、柔軟な働き方の普及促進や環境整備を図っていくと発表しており、さらに大企業から中小企業まで副業解禁する企業が急増しているため、すきま時間を利用した「副業系フリーランス」は今後ますます増えていくと考えられます。


「フリーランス」のイメージは人それぞれで曖昧

さて、「フリーランス」と聞いて、どのようなイメージをお持ちでしょうか。分かっているつもりで曖昧な認識を持っていることが少なくありません。その理由は、日本の従来の雇用システムにあります。日本では、組織に属しながら年功序列で定年まで働くというシステムが一般的なため、フリーランスの良し悪しを議論できるほどの確かな共通認識がないのが現状です。

そんな中、多様なフリーランスの定義や類型を整理し、その実態を調査した『フリーランス白書 2018』が一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会より発表されました。

同協会は、2017 年 1 月に「誰もが自律的なキャリアを築ける世の中へ」というビジョンを掲げて設立された非営利支援団体です。


1.フリーランスを定義する

同白書内ではフリーランスを「特定の企業や団体、組織に専従しない独立した形態で、自身の専門知識やスキルを提供して対価を得る人」と定義しています。

職種は多岐にわたり、デザイナー、編集者、コピーライターなどのクリエイティブ系、エンジニアやコンサルタント、人事などのビジネス系、美容師、スポーツトレーナー、各種講師などの職人系があります。

これまでは企業や団体に属さなければ活動できなかった職種でも、独自の人脈を活かしたり、最近ではクラウドソーシングサービスを利用したりしてCtoBの契約も容易になりました。


2.フリーランスは大きく2種類

独立系フリーランスと副業系フリーランスの二種類に分けられます

・独立系フリーランス

企業や組織に属さず、業務委託契約などの下で仕事を請け負います。

法人経営者、個人事業主、すきまワーカー(開業届未提出)がこれにあたります。

・副業系フリーランス

雇用されている企業や組織での活動を主とし、その他の時間で個人の名で活動する人を指します。「雇用×起業者」、「雇用×個人事業主」、「雇用×すきまワーカーだけでなく、2社以上と雇用契約を結ぶ人もいます。

フルタイムのフリーランスを対象とした調査では、個人年収分布は300~500万円が一番多く、会社員とそれほど差はありません。高収入者は、エージェントサービスや人脈を活用して仕事を獲得している人に多いというデータもあります。


3.会社員時代との違いとは

実際にフリーランスとして働く人に会社員時代と比較した意識調査を行った結果、「年収」は増えた人と減った人が4割ずつでほぼ同数。ただ、働き方に対する「満足度」は8割以上の人が会社員時代より向上したと答えており、さらに「スキルや経験」の向上だけでなく「人脈」も増えたと答えています。

もちろん、座っていても仕事はやってこないので、多くの人が「自分を売る力」が何より必要な資質だと感じています。


会社員の4割は「副業に意欲」

現代において、「会社員」という存在が完全に保証されているとはますますいえなくなってきました。一社に自身のキャリアを委ねるリスクを感じて、自らを磨くことや転職を常に意識する若者も増えています。

その反面、組織や団体に属して働くことにもメリットはあります。チームの一員として動き、またはリーダーとしてマネジメントに関わり、大きな仕事を成し遂げることも企業で働く醍醐味です。

しかし、同調査で会社員を対象にした調査によると、「会社員」としての今の働き方を変えるため、「副業」に意欲的であるという人は41.8%にも上り、「転職」を考えている(31.2%)人の割合を上回っています。

ただ、意欲があっても副業を含めたフリーランスという働き方には「収入」や「安定性」への不安があったり、単に「漠然とした不安がある」、「始め方が分からない」など、柔軟性があるからこそ曖昧な働き方を不安視する声も多くあります。


注目される「パラレルキャリア」。そのメリットは?

さて、昨今メディアでもよく取り上げられるようになった「パラレルキャリア」という働き方を考えます。一昔前までは単にアルバイトなどで収入を増やす副業、というのが一般的な捉え方でしたが、今ではもっと多様な目的を持ったポジティブな選択肢となりつつあります。


1.ワーカーがパラレルキャリアを選ぶ理由

 パラレルキャリアを選ぶ理由を調査すると、まずは「収入」です。小遣い稼ぎや家計への補填はもちろんのこと、最近では単一の収入源に依存する怖さを感じるワーカーのリスクマネジメントという側面も持っています。

次に多い動機は「スキルアップ」、「自己のキャリアの棚卸し」、「人脈の形成や拡大」と続きます。新しい経験や知識を得、全く違った立場から自身や周りを見直すチャンスは、ひとつの組織に属している間はなかなか得られないものです。

そして「自己実現」です。メインの収入源を確保しつつ、やってみたかった仕事に比較的低リスクでチャレンジすることができます。


2.パラレルキャリアは企業にもメリットが

国が推し進め始めた「柔軟な働き方」は、企業による副業・兼業、すなわち、パラレルキャリアへの柔軟な対応を求めるものでもあります。

2016 年 8 月に厚生労働省が公表した「働き方の未来 2035:一人ひとりが輝くために 懇談会報告書」では、「2035 年の企業は、ミッションや目的が明確なプロジェクトの塊となり、多くの人はプロジェクト期間内はその企業に所属するが、プロジェクトが終了するとともに別の企業に所属する。企業組織のうちと外との垣根は曖昧になり、組織が人を抱え込む『正社員』のようなスタイルは変化を迫られる」(一部省略)と書かれています。

つまり、企業が将来に向けて求めるべき人材は、これまでのように自社の利益のために忠実に行動する「正社員」ではなく、自社の利益となるプロジェクトをもたらし、遂行できるプロフェッショナルに移行してゆくのです。


このような変化の片鱗はすでに見られており、人材不足問題や業界のスピーディな変化に対応するため、自社の社員以外のフリーランス人材の活用を検討しているかという質問に、33.5%の企業がYESと回答しています。

また、パラレルキャリアを容認する企業も増えています。

「プロジェクト型」に対応できるリーダーシップや専門性、イノベーション意識を持った自社員の育成や、フリーランス化しやすい優秀人材の流出の防止、さらには新しい経験や人脈の獲得など目的はさまざまですが、従来のような人材“囲い込み”方式では得られないメリットを見出しています。


総動員時代から個性を生かす時代へ

変化の激しい現代において、自身のキャリアを所属している組織や団体に依存してしまうことにはリスクがあります。

たとえ副業でもフリーランスとして活動し、自らの方向性や可能性に向き合うことは、「プロジェクト型」で働く自律的キャリアを獲得する近道になります。

また、人生 100 年時代と言われる今日、定年退職後のセカンドキャリアをフリーランスとして活躍できれば、これほどすばらしいことはありません。


企業においても、組織形態の変化に柔軟に対応するためにも「プロジェクト型」人材の育成が急務となっています。

スピーディな技術革新と人材不足問題に加え、オープンイノベーションを求められる現状で、個々のワーカーのスキルに応じた開放的で多様な教育・研修制度は必要不可欠となります。

是非とも、副業フリーランスへのドアを開放して、自律的キャリア意識を持ったプロフェッショナル社員を育成していただきたいです。

きっと新たなコラボレーションやイノベーションを推し進める「プロジェクト型」人材が、一企業だけでなく、これからの日本の産業を支えていくことでしょう。


※参考サイト

https://blog.freelance-jp.org/wp-content/uploads/2018/01/20180423_FreelanceSurvey2018_all.pdf 

https://blog.freelance-jp.org/survey2018/

https://www.lancers.co.jp/news/pr/14679/ (Lancers)

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000189535.html (厚生労働省)

http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/20170330001.html (経済産業省)

https://www.upwork.com/i/freelancing-in-america/2017/ (Edelman Intelligence, Freelancers Union and Upwork, Freelancing in America: 2017)

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