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越境チームが教えてくれる「組織において大切なこと」

越境者を受け入れる意義

 エッセンスでは他社留学やプロボノ(ビジネスボランティア)プログラム「itteki」という越境型の研修を提供させて頂いているのですが、よく他社から越境者を受け入れる企業様からもこの取り組みは有意義だったという声を頂きます。

 それは、自社にはいない第三者がプロジェクトに関わる事によって、これまで考えたことがないような示唆や刺激をもらえたり、自社における新しい価値や可能性の発見につながったり、目指すべきビジョンの明確化につながったりするからです。


プロボノ活動者と今後10年のビジョンをつくる

 今年2月にittekiにてプロボノチームを受け入れていただいた企業では、今後10年のビジョンづくりをテーマにしたプロジェクトを実施しました。

 これまでひとり株式会社としてマーケティング支援や子ども向けの講座を行ってこられたのですが、会社の方向性をどうしていくべきか迷いを持っておられ、「第三者であるプロボノ活動者の視点でこれまでの活動や自身の価値観を深掘ってほしい」と活動テーマを設定されました。

 事業の立ち上げや施策の実行などの想定していたものとは異なるテーマに、プロボノ参加者の皆様も戸惑いながらの活動になったのですが、その経営者の「人やサービスの可能性・価値を最大限に伝えていきたいという想いや本質的な豊かさを重視する考え方」に徐々に引き込まれ、会議を重ねるごとに参加者全体の熱量も上がっていきました。


プロボノで生まれた新規事業

 そんな中、その経営者の過去のエピソードから、あらたな事業アイデアが生まれることになります。そこから一気にサービスとしてこれを事業化していこうと議論がより深まっていきました。

 この経営者はその後も6月にプロボノ活動者を受け入れ、今度は「2月メンバーと一緒に産み落とした事業案を共に育ててくれる育ての親になってほしい」と話し、サービスの具現化をテーマに受け入れプロジェクトを進められました。そして、今年12月にはサービスのリリースを控えていらっしゃいます。


第三者だからこその価値

 受け入れていただいた経営者の方はプロボノの受け入れの魅力を「第三者であること自体に価値があるから」とおっしゃります。自身で会社経営やサービスを運営しているといつの間にか視野が狭くなり、自身でつくった常識に縛られてしまうことがあるからです。

 そんなときに、バックボーンが異なる異質者が交わることで、自身の取り組みを言葉にして説明すること、そこに理由をあらためて探すこと、どうしていきたいのか意志を示すことが問われることになります。


お金以外の報酬とは?

 プロボノで参加する方たちはお金が欲しくて参加するわけではありません。お金以外のやりがいや所属企業ではできない体験を求めて参加をされるのです。そんな参加者の皆様を前にして、受け入れをされる企業様は同様に「お金以外で自身は何のためにこの事業やサービスを行っているのか」を問われることになるのです。

 これは、プロボノに限らず所属する企業での普段の業務やチームづくりにも言えると思います。会社のトップであれば、この会社をどんな風に導いていきたいのか、あるいは、何を目指したいのか、どんな風土・組織にしていきたいのか、というビジョンが当然必要になります。

 逆に、関わる社員も、なぜこの会社で働くのか、なぜこのプロジェクトに自分が関わるのかを説明できる必要があります。


企業と個人の存在理由を考える

 実際にこれまでプロボノに参加された方の中には「(異業種の)このチームで短期間で成果をあげられたのだから、元(所属企業)の組織でできないはずはない。ぜひ試してみます」と話される方もいらっしゃいました。

 他社留学では「3ヶ月~」、プロボノプログラムittekiでは「約40日間」という会社人生に比べればはるかに短い期間でのプロジェクトに取り組んでいただきます。

 その短さだからこそ、「何のためにそこにいるのかの理由」を明確にする必要があります。しかし、これは越境活動に限ったものではなく、実は普段の会社における企業と個人の存在理由にもつながる重要な考え方だと思っています。