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あなたの仕事のプロセスに価値はありますか?

「完成前のプロセス」が売れる時代

 プロセスエコノミーという言葉をご存知でしょうか。

 昨年、IT企業家のけんすうさんが言語化したキーワードで「完成品の販売ではなく、完成に至るまでのプロセス自体を共有することでマネタイズする」ことを意味します。

 昨今、数多くの動画の配信サービスが存在しますが、売れる前のアイドルの卵が「SHOWROOM」というアプリで毎朝配信を行い、ファンも一緒に売れることを夢見て数多くの応援が生まれています。また、「00:00STUDIO」というサービスでは漫画家などのクリエイターの制作中の姿を配信し、作品が世に出る前の工程を視聴者が一緒に体感しています。クラフトビール「よなよなエール」で有名なヤッホーブルーイングでは、ファンに企画プロセスを公開するだけではなく、パッケージデザインを投票してもらうなど「共犯」関係づくりを巧みに行っています。

 インターネットが世界を覆い、あらゆるものが簡単にコピーできるようになったことで、完成品にはさほど違いが生まれなくなりました。そこで代替不可能な作り手のこだわりや想いが現れる「プロセス」にフォーカスが当たるようになったのです。


副業が広がる背景にも「プロセス」の魅力がある

 この「プロセス」に魅力を感じるのは、副業やプロボノ(ビジネスボランティア)などの他社での活動にも当てはまるのではないでしょうか。自身が普段属していないサードプレイスにおいて、その企業やNPOのビジョンや夢を実現する一部を体感する。そこには、本業にはないやりがいが眠っています。

 エッセンスで運営するプロボノプログラム「itteki」でも、「活動先の経営者の強烈な想いに刺激を受けた」「〇〇さんの愛情がこもった野菜が本当に美味しくて、なんとか多くの人に届けたいと思った」など、活動先の経営者や農家の想いに魅力を感じたという参加者からの声をよく聞きます。プロボノ活動は、活動先の方々の「想いの実現に向けたプロセスへの相乗り」とも言えるかもしれません。

 一方で、本業ではプロセスの価値を見出せていない人も多いのではないでしょうか。本来、どこかに所属して働くことは、何かを創り出したり、実現したりするためのプロセスの一部であるはずなのですが、「企業規模が大きくて自身の業務の価値がみえづらい」「会社トップと距離があり、どこを目指しているのか分かりづらい」などの理由で、ゴールなきプロセスを歩かされていると感じている人も少なくないのではと感じています。


プロセスの価値を左右する「Why」の有無

 尾原和啓さんの著書『プロセスエコノミー』では、プロセスにおいて「Why(なぜやるのか・哲学・こだわり)」がこもっているか否かが重要だと触れられています。思えば、かつての昭和の時代のようにマイホーム・マイカーを皆が持つという共通目標を目指す時代ではなくなりました。個々人の人生においてもこの「Why」はより欠かせない要素と言えるかもしれません。

 誰かの「Why」に触れることで、自身の「Why」の輪郭も見えてくる。越境の支援を日々行う中で、そんなシーンをより多く生み出していきたいと感じている今日この頃です。

島崎由真(エッセンス株式会社 越境研修事業部)