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お芋の6次加工品開発で売価30%アップ。「他者を頼ってはいけない」という固定概念を壊したい 〜株式会社サーキュレーション 鈴木太陽さん

フリーランスとフリーランスを活用する企業のさらなる成長や活躍を目指し、今年も開催される「フリーランスパートナーシップアワード2022」。

本記事は、エージェント部門1次審査を通過したファイナリスト、株式会社サーキュレーションの鈴木太陽さんのマッチング事例をご紹介します。

鈴木さんが担当したのは、障がい者就労支援事業を行う、一般社団法人はーとプロジェクト。さつまいもを中心とした作物栽培に従事する障がい者の賃金向上のため、6次産業化を模索していました。

製品開発のみならず生産・流通までをサポートできるプロ人材の支援を得た結果、さつまいものキロ単価が1年間で600円から800円に上昇し、雇用している障がい者の時給も50円〜100円アップしました。

自身の過去の失敗経験を踏まえ、どのような想いでマッチングしているのか、鈴木さんに伺いました。

最後に、投票フォームもありますので、取り組みへの共感や参考になった場合は投票をお願いします。

さつまいもに付加価値を付けて、障がい者雇用の賃金を上げたい

—— 今回の事例は障がい者就労支援団体のサポートとのことでしたが、どのようなきっかけでプロジェクトがスタートしたのでしょうか?

対象のお客様は、一般社団法人はーとプロジェクトという非営利団体で、東濃信用金庫さんからのご紹介でした。

プロ人材の支援で新たに開発されたさつまいもチップス

はーとプロジェクトさんは、障がい程度区分1、2を目安とした障がい者の方々の職業訓練所として、さつまいもを中心とした野菜を自然栽培で収穫し、JAに納めたり、お祭りで大学芋として販売したりして、雇用者の賃金を確保していました。

しかし、野菜を野菜のままで売っていると得られる稼ぎにも限界があります。一般社団法人なので利益の追求をしているわけではありませんが、代表理事の大森秀樹さんは、収穫した作物を加工することで付加価値を付けて、障がい者の方の賃金アップ、そして生活の自立支援を強化したいと考えていらっしゃいました。

—— いわゆる6次産業化ですね。着手に対しどのようなハードルがあったのでしょうか?

大森さんはもともと銀行員をされていて、作物を加工して売上を立てるビジネスモデルについては把握されていました。しかし、実際の製品加工に関する知見を持った職員がおらず、どこから手を付けてよいのかわからないという課題がありました。

障がい程度区分1~2を目安とした障がい者の皆さんの作業所となっている

—— 相談を受けて、鈴木さんはどのような提案をされましたか?

私からは、大森さんの課題や要望を聞いた上で、二人の候補者を提案させていただきました。

一人目は農業のプロの方で、ご自身の家業で作られているりんごを加工し、販売することで実績を上げていました。お二人目は食品業界のプロフェッショナルで、魚を缶詰加工して販売するなど、食品加工のサポート実績もある方です。

—— プロ人材というとビジネス領域の方をイメージしがちですが、農業のプロにも出会えるんですね。

サーキュレーションにはかなり尖ったプロ人材の方が多く登録しています。一人目の方も、今回のプロジェクトと同じく自社作物を加工し販売することで成功された方なので、親和性が高いと感じていましたが、最終的には食品業界のプロである朝日輝行さんとのマッチングが成立しました。

大森さんからは「どちらも甲乙付け難い」との評価をいただきましたが、朝日さんに決まった理由としては、「地元が近く、地域特性を理解いただきやすく」「大森さんと年齢が近くコミュニケーションがしやすかった」ことがあります。

朝日さんからは、「愛知県とご縁があるメーカーや加工会社とのタイアップも可能」という話があり、このことも大きく響いたようです。

—— 社外の人材を活用されることについて、お客様の不安はありませんでしたか?

大森さんは銀行出身で、顧客に自らご提案される立場だったため、社員ではないことに対する心理的な抵抗や不安は大きくはなかったのではないかと思います。しかし、「何をやってくれるのか」「どれくらい関わってくれるのか」という部分については、当然気にされていたので、朝日さんから具体的な実施項目を明示していただきました。

また、プロジェクトを円滑に進めるためにも最初は一度対面でお会い頂いた方が良いのですが、コロナ禍で、障害者支援施設は特に感染対策に慎重で部外者の出入りが難しいということもあり、なかなか機会を作れませんでした。

そんな中、朝日さんが施設の休館日である土曜日に愛知県に出張に来られるとの話を聞きつけ、このチャンスを逃すまいと、大森さんにも休日返上をお願いして、朝日さんと顔合わせできる機会を作りました。

リアルにお会いする場を設けることにこだわったことで安心感を得ていただいたと思いますし、農場や作物の保管施設など、プロジェクトに関わる場所や設備を朝日さんに実際に見ていただけたのも良かったです。

成功実績がある製造加工会社とOEM契約、1年で販売まで漕ぎつける

農薬・肥料を一切使わない自然栽培にこだわったさつまいも

—— プロジェクトがスタートしてからは、具体的に朝日さんはどのようなお仕事をされたのでしょうか?

朝日さんがプロジェクトリーダーとなり、さつまいもの製品加工への挑戦が始まったのでが、大きく分けて3段階で進みました。1段階目はマーケティング調査で、さつまいもを使った加工製品の調査全般を実施していただきました。

2段階目が商品開発です。製造委託会社を探すところから担ってくださり、見つかった委託先と何が作れそうかを検討し、さつまいもチップスを開発することになりました。そして、大森さんと委託先との間に入って、価格やパッケージデザインも決めてもらいました。

3段階目は販売委託のコーディネートですね。実は、つないでいただいた製造委託会社が、すでに「れんこんチップス」の製造をしていたので、そのラインナップの新製品としてスムーズに販路が確保できました。

—— プロジェクト期間中は、どのような仕事の進め方をされたのでしょうか? 

契約は1年間で、月2日間の稼働というものでした。

朝日さんは愛知在住の方ではないのですが、他の仕事に合わせるなどして、稼働日はできるだけ愛知を訪れてリアルなコミュニケーションを取ったり、一日かけて販路開拓や他社の工場見学をされていました。

稼働日以外でも、適宜電話やオンラインミーティングをしたりと、フレキシブルな対応をしていただいたことも、大森さんからご評価いただけたポイントです。

—— 1年間でマーケティング調査から商品化、販路の確保までできたのは素晴らしいですね。鈴木さんはエージェントとして、どういったことを意識されて行動しましたか?

弊社は「マッチングして終わり」のビジネスモデルではありません。プロジェクト開始後のフォローも大切な役割なので、私自身はコンサルタントとして契約内容やプロジェクトを提案し契約締結を行うだけではなく、毎月プロジェクトの進捗については共有を受け、いつでもフォローできるよう気をつけていました。また、3カ月に一度くらいの頻度で実際にさつまいもチップスを試食したり、工場見学をしたり、一般消費者としての目線から商品に関する調査やフィードバックも行わせていただきましたね。

プロジェクト内での私の役割を果たすべく、情報のキャッチアップに努め、先回りの対応ができたことがお客様の安心感にもつながっていれば幸いです。

—— さつまいもチップスの商品化が実現し、当初の目標は達成できましたか?

はい、以前はさつまいものキロ売価が600円ほどだったところ、800円程度まで上げることができ、売価が30%アップしました。それに伴い、障がい者の方々の時給を50円~100円ほど上げることができました。

この成功体験から、さつまいもを使った他の商品の開発にも着手してキロ売価1000円を目指したいという目標も出てきて、2年目の契約延長が決まりました。

大森さんからは、「月2回の打合せというプロジェクトでしたが、間に時間が生まれることで思考の整理もでき、ちょうど良い頻度でご支援していただきました」という言葉をいただきました。紹介者の東濃信用金庫さんも小まめに後方支援してくださったので、限られたミーティング頻度でも、関係者がモチベーションを保ちながらプロジェクトを進行できたと思います。

プロ人材の朝日さんからも、地元愛知県への貢献ができて良かったという喜びの声をいただきました。

飲食店経営の失敗経験から、プロ人材の重要性を人一倍感じて

さつまいもはさまざまな調理法で楽しめる


—— 2年目に契約が延長されたのは、朝日さんはもちろん、鈴木さんに対する信頼もあったのでしょうね。

2年目の契約をいただいた理由のひとつでもあるのですが、大森さんは、さつまいもの加工品以外にも、ひまわりの化粧品などを作る展望を共有してくださいました。そういった多角化を目指すならと、たまたま別件で私が知り合っていた管理栄養士学科を保有する大学の関係者と大森さんをお繋ぎいたしました。

弊社のサービス提供の形にこだわらず、お客様に必要な情報を惜しまず提供するなど、とにかく目の前のプロジェクトに貢献したいと思っています。

—— 鈴木さんがこのプロジェクトにかける熱意の源は何でしょうか。

顧客第一志向でありたい、と常に思っているので、どのプロジェクトに対しても真摯に向き合っています。ただ、「食」の分野は思い入れがあるので、特に力が入っていたかもしれません。

というのも以前、脱サラしてカフェ経営に挑戦したことがあり、結果的に運営が続かず失敗してしまいました。

その時は、なんとか自力で乗り越えなければと、他人に相談することは考えもしなかったのですが、もし当時の自分がカフェ運営の知見を経験者から借りられていれば、経営を続けられていたかもしれないと思って、今の仕事についたという背景があります。

今では、わからないことを人に聞くのは恥ずかしくない、ズルしているわけでもないと心から思っていますし、お客様がプロ人材と手を組んで成果を出せるたびに、とても嬉しく感じています。

—— 最後に、このプロジェクトや鈴木さんご自身のこれからのビジョンを教えてください。

はーとプロジェクトさんとは契約2年目に入り、目標のキロ単価1,000円、障がい者の方々のさらなる時給アップを通じて、地域の盛り上げに貢献できればと思っています。

また個人的には、先ほどのカフェ経営の失敗から学んだ教訓として、日本人にありがちな「他人を頼るのはよくない」という固定観念を壊すことを目標にしています。この想いからも、日々お客様とプロ人材の方々と一緒に頑張っていきたいですね。

—— 鈴木さんご自身の体験からも、プロ人材の力を借りながら地域を盛り上げていきたいという強い想いが伝わる事例でした。本日は素敵なお話をありがとうございました。

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この取り組みへの共感や参考になった場合は、「フリーランスパートナーシップアワード2022」ファイナリストへの投票もお願いします。

フリーランスパートナーシップアワードとは

プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会主催。エントリーは、「活用企業部門」と「エージェント/コーディネーター部門(個人)」に分かれています。10月14日(金)~11月1日(火)のWeb投票期間を経て、アワード受賞者が決まります。

活用企業部門:雇用形態や勤務場所にとらわれずに多様な人材をチームの一員として招き入れることで事業成長に導いた企業

エージェント/コーディネーター部門(個人):フリーランスのチカラが最大限に活かせる環境を見出しマッチングを支援した企業と、その担当者

▽活用企業部門 ファイナリスト一覧

・Social Bridge株式会社
 https://note.com/frepara/n/n9c47cd01a460

・太美工芸株式会社
   https://note.com/frepara/n/n1bed014e19ff

・株式会社林田産業
   https://note.com/frepara/n/ne512d669c7d7

▽エージェント部門(個人) ファイナリスト一覧

・川嶌陽子さん(エッセンス株式会社) 
   https://note.com/frepara/n/nb1b54392bb49

・南部 晶洋さん(株式会社コーナー)
   https://note.com/frepara/n/nd4d586fc965b


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