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落ち込んだときに、どう浮上すればいい? ~フリーランスのためのメンタルヘルス~

失敗はチャレンジの証拠。だけど、落ち込むときもある

こんにちは。
心理学をバックグラウンドに、職場のメンタルヘルスを専門に活動をしている関屋裕希です。7年前からいわゆるパラレルワーカーとして、週4日の常勤先+非常勤やスポットの依頼、研究活動、教育活動、執筆活動などを行っています。つまり、自分の名前で仕事をもらっている点で、皆さんと同じフリーランスです。

ところで、仕事をしていて、落ち込むことが全然ない!という人はいないと思います。
働くのは毎日のことです。
クライアントから厳しいフィードバックが返ってきたり、期待されたようなアウトプットを出せなかったり……仕事にうまくいかないことや失敗はつきものです。
ましてや、初めて経験する仕事や、自分にとって新しい領域でチャレンジしているとき、失敗を避けるのは難しいものです。

うまくいかなかったり、失敗するのは、チャレンジしている証拠でもあるのですが、それでも落ち込むときには落ち込んでしまいます。

厄介なのは、雪だるま式に膨らむネガティブな感情

私も、とある企業のマネージャー向けの研修講師をしたとき、これまで経験したことがないくらいに後ろ向きな空気で、「もう1秒でも早く、この場から立ち去りたい」という思いをしたことがあります。
帰り道、「引き受けないほうがよかったんじゃないか」「もっと別の内容のほうがよかったんじゃないか」とすっかり落ち込んでしまいました。
落ち込んだときに厄介なのが、雪だるま式にネガティブな考えが膨らんでいくことです。

「なんでもっとよく考えなかったんだろう」
「どうしてあんなことを言ってしまったんだろう」

ネガティブな考えは、もともとの落ち込むきっかけだけでなく、別のことにも広がっていくことがあります。

「そういえば、別の仕事のときも『ちょっとイメージと違う』と言われた」
「この間も、うっかりミスをしてしまった」

過去にうまくいかなかったことや、失敗したときのことが浮かび上がってくるのです。そして、そんな時に限って、周りの「うまくやれてる」人たちのことが目に入ってくるのです。

「みんなはうまくやれてるのに、自分は全然ダメだ」
「自分はこの仕事に向いていないんじゃないか」

他の人と自分を比べて、ますます落ち込んでいきます。

ここまでくると、仕事へのやる気も出なくなってしまいます。
自信を失っていくので、次の仕事を断ったり、ネガティブモードでいい仕事ができなくなり、すっかり悪循環にはまってしまいます。
人に会うのも気が進まなくなって、せっかくの仕事を逃してしまったり。
フリーランスにとっては致命的です。

こんなとき、隣に同僚が座っている会社員ならば、「ちょっと落ち込むことがあって……」と聞いてもらったり、上司に「失敗しちゃいました。次はどうしたらいいでしょうか」と相談して切り替えることもできるのですが、フリーランスの場合は、落ち込みを誰かと共有して晴らすことも難しかったりします。

落ち込んだときは、どうすればいい?

落ち込みとうまく付き合うヒントは、前回の不安への対処法と同様に、その感情の正体を知ることから始めましょう。
落ち込みは「過去のうまくいかなかったこと×自分を責め続ける=エネルギー切れ」の状態です。
「エネルギー切れ」のとき、本当はどうするのが理にかなっていると思いますか?

答えはシンプルで、エネルギーが切れているのですから、充電するために「休む」のが正解です。
ですが、私たちは、逆のことをしてしまいます。
「なぜ」「どうして」と自分を責め続けて、むしろ、自分のエネルギーを奪い続けてしまうのです。

落ち込むようなことがあったときには、まずは休む!と覚えておきましょう。

「うまくいかないことがあってつらかったね」
「失敗すると落ち込むよね、苦しいよね」

自分にやさしい言葉をかけてあげます。
もし、自分にやさしい言葉なんてかけられない、となかなか浮かばない場合には、「友人が同じ状況にいたら」と考えてみます。
自分の大切な友人が仕事で失敗したとしたら、余計な一言を言って後悔しているとしたら、どんな風に声をかけてあげるだろう、と考えてみるのです。
そう想像すると、自然とあたたかい言葉が浮かんでくるはずです。

言葉だけでなく、実際に優しくしてあげるのもおすすめです。
ゆっくり温かいお風呂につかる、好きな香りのものに包まれる、いつもよりちょっと贅沢な美味しいものを食べる……などなど。
自分の心がほぐれることであれば、どんなことでも構いません。
ひとつひとつは小さなことでも、積み重ねていけば、心のエネルギーが回復していきます。

どうしてもネガティブモードから抜け出せないときには?

それでもネガティブな考えから離れられないときもあります。
考えても仕方がないことは、頭ではわかっているのですが、考えないようにしようとすればするほど、そのことがかえって頭に浮かんできて、ネガティブ思考のループを止められなくなるのです。

心理学の研究に「シロクマ実験」と呼ばれる実験があります。「考えないようにしよう」とすればするほど、かえってそのことを考えてしまう、ということが実証されています(実験参加者はシロクマのことを考えないように、と言われるのですが、シロクマを思い浮かべないようにしようとすればするほど、頭の中がシロクマだらけになってしまうのです。普段、シロクマのことを考えることなんてほとんどないにも関わらず、です)。

そんな時には、あえての「くよくよタイム」がおすすめです。
やめたくてもやめられないのですから、むしろ自分から積極的にくよくよしてみるのです。
たとえば、いまから15分間を「くよくよタイム」としたら、その間は徹底的にくよくよします。
「ああすればよかった……」「こうすればよかった……」「なんで別のやり方をしなかったんだろう……」というような具合です。

試してみると、「これ以上考えても仕方がないな」と、くよくよからスルッと抜け出せたりするのです。不思議ですね。

ユーモアも大事!

「くよくよタイム」にさらにひと工夫を加えるとしたら、おすすめは「語尾にプラス」です。頭に浮かんでくる「くよくよ」の語尾に「ぽよ」とつけてみるのです。

「あんなミスをして、仕事ができない人だって思われたに違いないぽよ」
「どうしてあんなこと言っちゃったんだろう。次の仕事がこないぽよ」
「絶対うまくいきっこないぽよ」

どうでしょうか。
ふっと笑えて、肩の力が抜けてきませんか。
「ぽよ」以外にも、「ぴょん」、「なり」、「ぷー」などもおすすめです。
好きな漫画やアニメのキャラクターやお笑い芸人の言い回しを取り入れるのもアリです。

エネルギーが回復してきたら次に活かす

少しずつエネルギーが回復してきたと感じたら、今回の落ち込みから学んだことは? 次に活かすにはどう対策すればいいか? と振り返ってみましょう。
冒頭でもお伝えしたように、仕事で失敗するのはチャレンジしている証拠でもあります。

大事なのは、失敗を学びにつなげられるかどうかです。
「次からはこうしよう!」と決めてしまえると、過去の出来事に終止符を打ちやすくなり、ネガティブな記憶として思い出さずに済みます。
しかも、ここで決めた対策を講じておくことで、未来の自分が落ち込むことを防ぐこともできます。
ポイントは、自分が「これなら出来る!」と思える具体的な対策にしておくこと。
これですっかり、落ち込みにさようならできるはずです。

寄稿:関屋 裕希(YUKI SEKIYA)
心理学博士、臨床心理士、公認心理師
東京大学大学院医学系研究科 精神保健学分野 客員研究員。
早稲田大学文学部心理学専攻卒業、筑波大学大学院人間総合科学研究科発達臨床心理学分野博士課程修了後、2012年より現所属にて特任研究員として勤務。2015年より現プロフィール。
専門は、産業精神保健(職場のメンタルヘルス)であり、業種や企業規模を問わず、ストレスチェック制度や復職支援制度などのメンタルヘルス対策・制度の設計、職場県境改善・組織活性化ワークショップ、経営層・管理職・従業員それぞれの層に向けたメンタルヘルスに関する講演や執筆活動を行う。これまでの講演・研修・コンサルティングの実績は10,000名以上。
近年は、心理学の知見を活かして、理念浸透や組織変革時のインナーコミュニケーションのデザイン・設計にも携わる。現場で活用しやすい提案でありながら、エビデンス(科学的根拠)に基づいたアプローチを取り入れている点が特徴。臨床心理士として、精神科クリニック、小中高の教育領域での個人カウンセリング経験があり、現在も、企業内健康管理室にて個人カウンセリングを担当する経験から、組織的視点と個別的視点の両方をもちあわせている。心理療法としては、マインドフルネスを含む認知行動療法、エモーション・フォーカスト・セラピー(感情焦点化中心療法)をオリエンテーションとする。

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