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フリーランスになるには何歳がいいの?〜データで読み解く「30代・40代・50代」の満足度や課題〜

新しい働き方の”今”が、データでわかる!

フリーランス協会では、毎年フリーランスや会社員の働き方の変化を調査するアンケートを実施し、『フリーランス白書』として発表しています。

今年6月に発表された『フリーランス白書2020』は、コロナ禍真っ最中の今年5月に実施した実態調査アンケートの結果が含まれているという意味で、昨年までのアンケート結果とは大きく違うものとなりました。

このコラム、データ小噺『はくしょのじかん』では、その大きく変化したデータをもとに、フリーランスや会社員の働き方の”今”と”これから”をわかりやすく読みとき、お伝えしようと思います。

ひとくちにフリーランスといっても、契約形態や方法、取引社数は様々であり、”フツー”という概念がありません。

主体的・自律的に自分らしくキャリアを構築できるという良さがある反面、迷ったときに参考にできるデータが少ないと感じる方も多いのではないでしょうか。

みなさん自身の現状に近い人やこれから通るであろう未来にいる人、全く違う環境にいる人がどう思っているかを知り、今後の働き方・生き方の参考にしてもらえれば嬉しいです。

まず第1回目は「フリーランスと年齢のはなし」。

人生100年時代が謳われる中、現在会社員であっても、セカンドキャリアの選択肢としてフリーランスを検討している方も増えています。そんなとき、「フリーランスになるのは何歳がいいの?」「何歳になるとフリーランスにならない方がいいの?」など、フリーランスの適齢期が知りたいと考える方も多いようです。

またすでにフリーランスとして活動している方でも、同じ年代のフリーランスが自身の働き方に対してどのように感じているのかを知りたいという気持ちもあるのではないでしょうか。

今回は30代・40代・50代の3つの年代の”今”に対する満足の度合いと、”これから”に対する期待の度合いを比べてみることで、自律的な働き方を選択したフリーランスたちが年代ごとに抱える課題を明らかにしたいと思います。

30代フリーランスは、”今”の働き方に対する満足度が高い!

まず『フリーランス白書2020~第6章 コロナ禍でのフリーランス・会社員の意識変容調査』から、「今の働き方に対する満足度」について各年代のフリーランスがどう感じているのか見てみましょう。

「今の働き方に対する満足度」について、就業環境、仕事上の人間関係、達成感・充実度など、11項目を5段階で答えていただいた結果を、30代・40代・50代の年代別に比べてみたところ、”今”の働き方に対して「5点:非常に満足」と回答した割合は、年代間で大きく違うことがわかりました。(図1)

<図1 年代別今の働き方に対する満足度>

2020_1112_図1_データ小噺年代別_凡例修正済み

答えていただいた11項目すべてで30代の「5点:非常に満足」が40代・50代を上回っており、30代の”今”の働き方に対する満足度が全体的に高いことが明らかになりました。

とくに30代と50代に着目してみると、両年代の差がもっとも大きかったのは「就業環境(働く時間/場所など)」で、その差はなんと18.6ポイントもありました。

この”今”の働き方に対する満足度の差は、どこからくるのでしょうか。

要因として考えられるのは、職種の違いです。30代・40代の職種でもっとも多いのは「クリエイティブ・Web・フォト系」(30代は25%・40代は19%)であるのに対し、50代は「コンサルティング系」(13%)がもっとも多くなっています。(参考資料5)

さらに、コロナ禍によりテレワークを活用したかどうかについて各年代を比較すると、30代のテレワーク活用率が77%だったのに対し、40代は73%、50代は67%であることがわかりました。(参考資料6)これは、職種によりテレワーク活用状況に差がある可能性を示しているのではないでしょうか。

ただ一方で、コロナ禍によりテレワーク活用の検討を始めた割合は、各年代とも4%と差はないので、今後各年代間の”今”の働き方に対する満足度の差は縮まっていくのかもしれません。

50代のフリーランスが重要視するのは「人脈」と「新しい発想」!

次に「今の働き方を続ける・成功させるうえで重要なもの」についての、各年代の回答結果を見てみましょう。

自分を売る力、専門性、人脈など15項目について、重要だと思うものをすべて答えていただいた結果を各年代で比べてみたところ、30代・40代と比べて50代が重視しているのは「人脈」と「新しい発想」であることがわかりました。(図2)

この年代間の違いについては、フリパラ歴(フリーランスやパラレルキャリアとしての活動期間)の違いが影響しているのかもしれません。

30代はフリパラ歴5年未満が約7割なのに対し、40代、50代は10年以上が多く、とくに50代はその割合が約4割に上ります。(参考資料7)

長年フリーランスとして活動してきたからこそ、成功に重要なものとして「人脈」と「新しい発想」を重視しているのではないでしょうか。

<図2 年代別今の働き方を続ける・成功させるうえで重要なもの>

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年代が違っていても、見ている未来は同じ

以上、各年代の”今”の働き方に対する満足度や重要視することについて考察してきましたが、”今”については、とくに30代と50代のフリーランスで大きな差があることがわかりました。
しかし”これから”についての質問、「アフターコロナの働き方予測」の回答結果については、各年代に大きな差がないことが分かりました。

時間・空間からの解放、兼業・副業の一般化など”これから”の働き方に対するキーワードである9項目について5段階で答えていただいた結果を各年代で比べたところ、30代と50代の「とても進むと思う」の割合がもっとも大きく違う項目(「グローカル時代の到来(ローカルといえどグローバルにつながる)」)で、その差は6ポイントでした。(図3)

<図3:年代別アフターコロナの働き方予測>

2020_1112_図3_データ小噺年代別_凡例修正済み

”これから”のために、明日からできること

これまで見てきた各年代の違いと共通点から、”これから”のために私たちが明日からできることは何でしょうか。

30・40代は、テレワークを活用し、就業環境について満足度の高い”今”の働き方を発展させながら、今後フリパラ歴を重ねる上で、10年後、20年後に良かったと思える「人脈」づくりと「新しい発想」のための自己研鑽に少しずつでも時間を使うことを意識すると良いのかもしれません。

50代は、長年培ってきた知見や人脈を、テレワークの活用などで新しい形に変容させる段階に来ているのかもしれません。そしてそれには、自分と違う年代とのフラットな交流が必要となってくるのかもしれません。

今回の年代別の読み解きを通じて、アフターコロナで訪れるであろう”これから”の世の中を乗り越えていくためには、自分と他者との違いを意識し、認め合い、お互いの強みをいかす協働体制が必要だと感じました。

つまり、もともと持っている強みをベースに、他世代のと交流し、知識を更新し続けることができれば、何歳からでも遅くはない。フリーランスになるのに適齢期はない、と言えるでしょう。

調査概要
調査期間:2020 年 4 月 22日~5 月 9 日
調査方法:インターネット調査(フリーランス協会のメルマガ、SNS を通じた呼びかけ)
有効回答数:1723名 (内 フリーランス・パラレルキャリ活動者 1611名)

■分析方法
 調査対象者1611名を、30代(368名)・40代(580名)・50代(390名)に分けて集計。※以下図表のパーセンテージはすべて小数点以下第二位四捨五入しています。

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■参考資料
 男女比は、各年代ほぼ半々となっています。
 配偶者の有無は、30代が半々、40代・50代は配偶者有が6割となっています。
 子どもの有無は、30代で子供有が3割、40代・50代では5割前後となっています。

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【寄稿】後藤 潤子(フリーランス協会 調査・白書プロジェクトリーダー)
化粧品メーカー・インターネットメディアでオフライン&オンラインのマーケティング活動に従事。新卒入社より会社員歴22年を経て起業し、現在は3足のワラジを履くパラレルキャリアとして活動しています。2019年春よりフリーランス協会事務局にて、調査業務に従事。地域の学習支援NPOの代表も務める18-3歳の5児の母。https://www.facebook.com/n1marketing2018


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