副業採用・専業禁止を掲げる企業にみる、複業のメリット/デメリットの解決策

副業採用・専業禁止を掲げる企業にみる、複業のメリット/デメリットの解決策
2017年5月30日に開催されたイベント、〜これからの複業・副業を考える「人生100年時代に必要な働き方とは」〜で行なわれたトークセッションの様子をお届けします。第一部では副業・兼業を認める企業側の声として、「サイボウズ株式会社」「株式会社エンファクトリー」からパネラーを迎えて、各社の取り組みが紹介されました。
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企業にとって副業・兼業はメリットがたくさん!?

3月にランサーズが発表した「フリーランス実態調査2017年」によると、副業・複業を含む公義のフリーランスは1,122万人となり、労働人口の6人に1人が雇用関係によらない働き方を実践している推計でした。

政府が働き方改革を推し進めようとしたり、テレビ東京「ガイアの夜明け」で働き方の特集が組まれるなど、社会的に注目を集めている副業・兼業。

正解のない、新しい働き方である副業・兼業(複業、パラレルワーク)について、実践している企業と個人双方から、貴重な実体験を聞けるイベントが開催されました。

本稿ではイベント前半に行なわれた「複業を許可する企業側の話」をお届けします。

パネラー・モデレーター紹介
大槻 幸夫氏:サイボウズ株式会社 コーポレートブランディング部長。大学卒業後、株式会社レスキューナウを創業。2005年にサイボウズ株式会社に転職。マーケティングに従事し、無料クラウドサービス「サイボウズLive」のプロモーションオウンドメディア「サイボウズ式」の立ち上げ、ワーキングマザーをテーマにしたムービー「大丈夫」を制作、企業文化や制度の紹介のため社長青野の執筆による「チームのことだけ、考えた。」を出版。

藤生 朋子氏:株式会社エンファクトリー en Factory LAB ユニットサービスマネジャー 兼 デザイナー。株式会社オールアバウト在籍中、Webデザインを中心に、企画まで広く携わる。2011年4月に担当事業が分社化し、専業禁止を推進する株式会社エンファクトリーに籍を移す。現在は、新しい組織体=チームを支援するプラットフォーム「Teamlancer」を担当。複業でも、複業と企業イノベーションをつなげるOpenHR事業「Weeken’」に関わる。

西村 創一朗氏:複業研究家/働き方改革コンサルタント。新卒で株式会社リクルートキャリアに入社し、法人営業、新規事業企画、採用担当を経験。本業の傍ら「二兎を追って二兎を得れる世の中をつくる」をビジョンに掲げ、株式会社HARESを創業。2016年末にリクルートキャリアを退職し独立。働き方に関するコンサルティングを行なうほか、政府とともに副業解禁を推進。2017年6月より、ランサーズにタレント社員第一号として入社。

もくじ
エンファクトリーの専業禁止は、こうやって生まれた
サイボウズの副業採用、その成果とは
サイボウズ、副業採用のデメリットを語る
エンファクトリーが実感する、専業禁止のメリット
副業採用のメリット実例
サイボウズが感じる、副業推進後の課題
副業の推進は、会社が生き残るため
エンファクトリーが実践する、副業が悪影響にならない仕組み
副業のメリットは、専門性を持ってから享受できる
副業を推進すると、退職リスクが高まる?
退職リスクは、辞めてからも繋がる仕組みで解決

なぜ副業を推進するのか

副業のメリットとデメリットevent
西村:副業に対する興味関心が高まっている一方で、企業側の意識としては、副業がどんな影響をもたらすのかなど見えていない部分が多いと思います。副業をOKあるいは、専業を禁止している2社をお迎えいたしまして、副業を推進するとどんないいところがあるのか、デメリットがあるとすれば、どんなものなのかというところも含めて、いろいろお伺いしていきたいと思います。

エンファクトリーの専業禁止は、こうやって生まれた

西村:専業禁止(※エンファクトリーが掲げる、社員の複業を推進する取り組み)という言葉を聞いたことのある方、どれぐらいいらっしゃいますか。さすが知名度高い。ちらほら手が挙りますよね。副業禁止は当たり前に思い浮かぶと思うんですが、初めて専業禁止ということを聞いたときに、社員の1人としてどう思いましたか。

藤生:最初は、何を社長は言っているんだと。その宣言がされたあと、会社内でどんな動きがあったかというと、みんな、自分の会社を持つようになったんですね。最初はやはり、副業をするという動きが一番多かった。私もそうだったんですけど。

西村:社長が専業禁止といきなり言い始めた中で、狙いみたいなものが、もちろん、あったうえで始められたと思うんですが、どんな狙いで、専業を禁止というのうたわれたんですか。

藤生:働くことへの自由度が高まっている現状で、裏を返すと、個人の責任が、すごく問われるということがあると思うんです。なので、自分の人生、自分でデザインしていくというところが必用になってくるので、会社として、社員に何か成長機会を提供できないかといった考えのもと、副業が一番ショートカットできて、社員の成長にもつながるんじゃないかというところで始まりました。

西村:副業という概念がない中で、副業をやってもいいよだと言っても、なかなかやらないから、いっそのこと専業禁止にしてやれと振り切ったということなんですね。実際、やってみて、いかがでしたか。

藤生:正直いうと、時間の使い方が、すごく大変でしたね。一人でできる副業もあれば、チーム何名かでする副業もあって、副業と言いながら、起業みたいなものもあったりするので。副業のスタイルによって、皆さん、時間の使い方だったりとか、工夫しながら、朝早く、ちょっと打ち合わせをするとか、やっていたりはしますね。

西村:ありがとうございます。のちほど、また、個人にとってのメリット以外に、会社としてというところもあると思いますので、その辺もお伺いします。

サイボウズの副業採用、その成果とは

西村:続いて大槻さんにお伺いします。今年の1月に副業採用というかたちで、サイボウズの社員が副業していいよというのでなく、サイボウズで副業として働いてみないかという提案を、世の中にしました。やってみての反響は、いろいろあったと思いますが、実際、どんな方から応募があったりとか、どんな採用につながったのかというところをお聞かせください。

大槻:まず、現時点で採用に至っているのは2名になります。Webエンジニアとコンサルタントのような、私の部署で働いている方です。

反響としては、すごく多くて、100人まではいかないですけれども、それぐらい応募があったと聞きました。中には、やっぱり、記念受験的な人もいましたが。最近は落ち着いてきて、ちゃんと、自分のスキルをこういうふうに生かせると思うのでというような応募が、増えているかなという気がしています。

うちの部に来ていただいた方は、「ガイアの夜明け」にも出ていましたが、新潟で起業されている男性の方で、職場での人間関係、コミュニケーション改善のコンサルみたいなことをされているんですね。

サイボウズ自身も、そういう研修といいますか、チームワークを生み出すような、メソッドというのが社内にあるんですけど、それを外に向けて提供してみようということを、今、チャレンジしていまして。

ただ、全然、ノウハウがない。教えるということ、インストラクター的なことが、必要だと思うんですけれども、ノウハウがないので、どうしようといったときに、ちょうど、(副業入社した)竹内さんがやられていた。リモートでも、全然、レクチャーいただけるし、出張ベースで講師に来ていただけるということだったので、ぜひということで決まりました。

具体的には、週2でサイボウズの仕事をしていただいて、残りは、NPOだったり、ご自宅が農業もやられているので、3つを兼業されているようなかたちです。

副業採用にメリットはある? デメリットもある?

西村:これから、副業採用みたいなかたちの採用方法もどんどん広がっていくんじゃないかなというふうに思っているんですが、一気に応募がきて、大変だったというのがあるにせよ、それ以外にデメリットってありましたか。

サイボウズ、副業採用のデメリットを語る

大槻:まだ始まったばかりなので、ないですね。デメリットという感じじゃないんですけれども、マネージャーには、負荷がすごくかかるなと。やっぱり、目の前にいるわけでもないですし、100%サイボウズの仕事をするわけでもないですし。

サイボウズの名前を名乗っていただいて、いろんな方々と仕事をしていただくので、どうやって仕事の進捗を確認するか。その方のモチベーション、社員として熱意をもって働いてほしいので、そのあたりですかね。マネージャーが大変みたいなところは、スキルとして、これから必用になってくる部分なので、苦労はしなきゃいけないなとは、覚悟しているんですけど。

あとは手続き的な、人事のほうでの労務管理とか残業とか、そういうところですよね。その辺は、ちょっと、僕も、まだ、あまり詳しくないんですけど、そういうあたりが、今後、解決しなきゃいけない課題かなという気もします。

エンファクトリーが実感する、専業禁止のメリット

西村:ありがとうございます。では藤生さんにお伺いしていきたいんですが、専業禁止までいくと、副業を認めるどころか、推奨みたいなイメージなんですけど、そのメリットみたいなところってどんなところにあるなと思いますか。

藤生:大きく二つありまして。ひとつつは、会社の中でミニ経営者みたいな人材が増えてたところ。人的資産の向上といったところが、やっぱり一番大きいですかね。

例えば、ショッピング事業部のほうで、カスタマーサポートをしているメンバーがいて、副業だと、犬の洋服をデザインして作って販売しているというスタッフがいるんですけれども。そういうメンバーですと、普段はCS、お客さんのお問い合わせに答えるという仕事が多いんですけども、副業をすることによって、自分自身、犬の洋服をどうやったらみんなに知ってもらって、販売しなきゃいけないのか、そういうところのプロセスが、副業で得られる。

それを事業のほうに転換して、会議の中で、そういうアイデアを出すみたいな。みんなが、自分の職種だけにこだわらなくなったというほうがわかりやすいですかね。デザイナーだからデザインするという感じではなくなったという感じはありますね。

ふたつ目が、疑似的なオープンイノベーションが生まれるような組織体になったのかなというのがありまして。普通の会社だと、社員がいて、会社の事業があって、そこで、仕事というか、事業に関わると思うんですけれども、弊社の場合は、社員の副業があって社員の事業があって、あとフェロー制度といって、辞めた社員が弊社の名刺を持って、つながりを持っているという制度があるんですけれども。

その分、掛け合わせも増えるので、ネタがすごく多く出てくるというのがあって。そこで、新規事業が生まれやすい雰囲気にはなったのかなというのはありますね。

西村:副業をやっていたからこそ、つながった集合知によって生まれたようなものって、何かあったりするんですか。

藤生:「TSUKURITTE」というサービスがありまして、物を作りたい方と、物を作れるデザイナーさんを、マッチングさせるサービスがあるんですけれども。そういうサービスは、もともと、弊社で、ショッピング事業で、マネージャーをやっていたものが退職して、退職したあとの活動の人脈によって生まれたサービスがあります。

西村:会社を辞めたらさよならではなく、これからも一緒にお仕事していたからこそ、つながりで生まれたということなんですね。ありがとうございます。

サイボウズさんのほうも、副業解禁してからかなりたっていて、副業を実践されている社員の方も、非常に多い中で、見えてきたメリット・デメリットを順にお伺いしていきたいなと思うんですが。

副業採用のメリット実例

大槻:メリットの部分は、社員が外を向くといった、すごい一般的ですけれども。自分の仕事だけだと、本当に価値を生み出しているのかなというのは、自分って、どれだけ社会に役立っているんだろうって、見えなくなっちゃうと思うんですよね。マネージャーの評価が、やっぱり、大きくなってしまうので。

それを、アフィリエイトぐらいのものから、本当に、会社に雇われてというのもあると思うんですけれども、何でもいいから、自分がダイレクトに価値を提供して、それに対して、売り上げ的なもので評価をいただくという経験というのは、すごく商売を身に染みて感じますし、すごく意識をフレッシュにさせるという意味では、いいんじゃないかな。

一番高いレベルでいうと、マイクロソフトから転職してきた中村さんという方がいまして、彼はマイクロソフトから転職して、サイボウズと、あともう1社と、ご自身で農業をやられていて、3つ掛け持ちで入られたんですね。その理由というのは、マイクロソフト時代の年収が高過ぎて。

西村:社長より高かったんですよね。

大槻:そうなんです。だから、うちでは雇えませんと。でも、中村はサイボウズで働きたいんだと。といったときに、うち、副業OKだから、どこかもう1社見つけてきて、ということがあって、サイボウズ的には、僕らの水準の中で中村さんに来てもらって、彼は、いろんな人脈を持っているし、そもそも農業をやられているので、サイボウズの「kintone」を使って、農業とITみたいな切り口を生み出してくれたんですね。

自社でイチからやろうと思っても時間かかりますが、彼が新鮮なつながりを持ってきてくれたというところで、いろんなお客様が生まれて、本当に効果が出たんですよね。新卒でサイボウズ入ってきて、ずっとサイボウズばっかりしか知らないという人には、やっぱり、商売を肌で感じるというメリットがあるでしょうし、外からスキルのある方が敷居を下げて入っていただけるような体制になるというのは、すごくメリットを感じますね。

サイボウズが感じる、副業推進後の課題

大槻:デメリットは、もう、先ほど申し上げたとおりで、先ほどもありましたけど、接点が増えるので、一人ひとりが、コミュニケーションをする相手が増えるというか、いろんな働き方を、サイボウズの社内、みんなしているので、「この人、今いるんだっけ」とか、そういうところを、ちゃんと把握していないといけないという意味では、ビジネススキル、基礎体力が高くないと、これからの時代って、コラボレーションが難しいんじゃないかなという気がしますね。

西村:副業を実践する、個人のセルフマネージメントも、やっぱり、課題になってくると思いますし、すぐそこに、目の前にいなくても、あるいは、副業でほかにやることがあったとしても、ちゃんと、ある種、本業にエネルギー量を高く持って、コミットしてもらうような、モチベーションを高めるスキルみたいなものが、マネージャーに求められますし。

大槻:確かに課題ですね。今、サイボウズで副業をやっていますけれども、最初は、サイボウズのブランドを使う副業は、NGだと。サイボウズの名前だったり、サイボウズで培ったノウハウを提供する。例えば僕だったら、「サイボウズ式」を立ち上げましたので、そのノウハウを使って、外の会社でコンサルをしますと。オウンドメディオ立ち上げのコンサルしますといったら、それは今までNGだったんですけれども、それだと全然進まないんですよね。

その人を分けることはできないので、サイボウズで得たノウハウなのか、違うのかって分けられないし、サイボウズとしては、副業をどんどんやってほしい。新卒が入ってきたときに、最初に副社長が言う言葉は、いつでも辞められる人材になれという、何かよくわからない。入社式に。

そんな会社ですので、どんどん副業をやってほしいんだと。だったら、その辺は一旦やめようと。サイボウズのノウハウであっても、やっていいよというふうに、今は変わってきています。そのときに一番大事なのは、やっているよということを、ちゃんと社内で共有してねと。透明性を上げてくださいねと。みんなに共有していれば、みんなも、あいつ何やっているんだということもないですし。

まあ、そういうところですね。本当に、何か、わびさびとか、気遣いとか、そういうところのレベルに落ちていく気がしますけれども、その辺が課題ですね。

西村:やっぱり、副業というと、まだまだ、何となく、一般的にいうと、後ろめたいイメージがあって、みんな、隠そう、隠そうとしがちなんですけど、むしろ逆で、こんなことやっているんですよという共有し合うことが信頼関係を生んで、お互い、気持ちよく仕事できるようになりますものね。そのあたりが、今後、副業を解禁していく企業さんとしては、大きなポイントになるかもしれないですね。

副業推進は、採用活動にも大きなメリットが

副業のメリットとデメリットevent
西村:ありがとうございます。今もお話をされた中で、大枠でいうと、副業を禁止している会社が解禁するときに、メリットとデメリットみたいなことを、もう、フラットに比べたときに、メリットのほうが大きいなというふうにはお感じですかね。

副業の推進は、会社が生き残るため

大槻:そうですね。もっと言うと、やらないと、生き残れないというか。まず、採用難じゃないですか。採用ができないですよね。どんどん人は減っていくし、求めるスペックというのがある中で、妥協はできないわけですから。そうすると、優秀な方に、少しでも、サイボウズのビジネスにかかわっていただくといったら、それしかないですよね。という気がしますけど。

西村 :優秀な方を採用するうえで、副業禁止なんて言っていたら、なかなか、とくにエンジニアの方とか、本当に採用難じゃないですか。とくにエンジニアの方って、副業をしやすいし、いろんな引き合いがあって、副業禁止って言われた段階で入社するという選択肢が消えますよね。

大槻:某有名IT企業に、サイボウズの制度を説明してくれと人事の方に頼まれて行ったら、エンジニアの方がたくさんいて、サイボウズってすげえってなって、その方々が、ごそっと、うちの説明会にいらっしゃるみたいな。

西村:だいぶ気まずいですね。絶対、人事に言えないみたいな。

大槻:ちょっと、顔合わせづらいんですけど。そんなこともありましたね。

西村:それぐらい、まだまだ、ほかの、IT企業ですら、副業に対して後ろ向き。だからこそ、今のうちに副業解禁したほうが、結果的に得られるメリットが、大きいようなイメージがありますね。どうせやらなきゃいけないなら、早めにやったほうがわけですね。

エンファクトリーが実践する、副業が悪影響にならない仕組み

西村:そういう意味で、副業を解禁すべきか否かという観点でいうと、藤生さんはどう思われますか。

藤生:やっぱり、社員のために、今、会社ができることといったら、社内だけでやるということではなくって。社外というところも含めて、社員が動けるような環境作りをしていったらいいのかなというふうに思っていますね。

なかなか副業解禁できないという企業さんとかも多いと思うんですけれども、弊社では半年に一度、「en Terminal」というイベントをやっておりまして、そこで、副業をやっているメンバーが、自分のやっている副業、その事業の内容で、収支も含めて報告するイベントがあるんですね。

もう、会社の2倍以上もうけている方々もいて。こんなに毎日遅くまで働いているのに、どうやってこんなに稼げるんだみたいな。

そのイベント、裏のテーマもあって。社員が、自分がやっている副業を、みんなの前で話すことによって、それも態度表明になるんですね。責任を持って、副業のほうも、きちんと自分の仕事としてやるという、そういう意識を持ってもらうことにつながります。

オープンにするのは、すごく難しいというのがあると思うんですけど、だからこそ、オープンにして、みんな応援するような雰囲気になるんですよね。あの人はこういうことをやってるから、自分の知っている人紹介できるなみたいな、そういう場にもなったりするので、そういう取り組みあるのかなというふうに思いますね。

西村:副業として取り組んでいる内容をオープンにする、透明化するという「en Terminal」みたいな、みんなで、業績も含めて、フルオープンにするって、すごくいい取り組みですよね。

藤生:なので、社員お互いが、会社の中にいる、同じ会社に所属している社員同士というわけではなくって、一人の社会人といいますか、ビジネスパーソンという感じで、たまたま、エンファクトリーという枠組みがあって所属しているという雰囲気なのかなって、最近思ったりはしますね。

副業のせいで、本業がおろそかになる?

西村:今日、ここにいらしている中で、ご自身が副業を実践していきたいという方もいれば、会社の人事関連の担当として、これから副業を解禁を進めていくべきなのかと悩まれていらっしゃる方もいるかと思います。

踏み切れない理由として、やっぱり、自社の社員には、本業に集中してほしいと。浮気してほしくないですみたいな。だから、束縛するみたいなところがある、不安があるのかなと思っているんですけど。

副業をしている人が本業に集中できなくなるみたいなことが、実際あるのか、どうなのかというところのリアルな話をお伺いしたいですね。

副業のメリットは、専門性を持ってから享受できる

大槻:今のところ、僕が知る限りでは、ないんですけれども、一個、何か、最近、面白なと思ったのは、新入社員ですね。1年目の女性が、副業をしだして。僕は古いタイプの、昭和世代なので、それを聞いたときは驚きましたけど。まだ僕の中では消化し切れていないです。

副業のメリットって、自分の中で、何か専門性ができあがったときに、外に出たときの掛け合わせで、触媒が生まれるもんだと思うんですよね。まだ何者でもない彼女の場合、スキルが何もなかったので、やったらいいなと思うんですけど、それによって学ぶものがあると思うんですけど、まずは、サイボウズで100%やったら?という気はします。

その辺とかは、人事の方とかは悩まれるんでしょうけれども、先ほど申し上げたとおり、採用面でいったら、やらざるを得ないでしょうし、専業、まあ、100%囲うというのは、もう、昔ながらの会社の発想で、そもそも法律で副業は禁止できないので。働く人の自由だし、これから人が減るということは、逆に言うと、転職しやすい、会社を選びやすくなるということは、そういう会社が選ばれるようになって、できない会社は、どうなるかというのは、わかりやすいかなと。

すごいきれいな理想かもしれないんですけど、実際、現実は、そっちに動いているみたいだな、という気はします。

西村:1年目から副業しようとも、現実を受け入れねばなと思っているところなんですね。

大槻:きっと、それで学んでくれるんだと。やっぱり、サイボウズ一本で、まずはと思ってくれるんじゃないかなと思っていますけども。そこで彼女が、何かの才能に花開く可能性も、もちろんあるわけで、そこに蓋をしてはいけないなという意味では、いいんじゃないかなという気はします。

藤生:社員同士で険悪な関係になったとかは、一切ないんですね。弊社でも新卒の説明会のときに、「私、お笑もやりたいんです。お笑いもやって、仕事もやりたいんです」という、もう、そういう応募が増えたんですね。そこは、ちょっと、私も昭和世代なので。「自分が、アクセサリーの仕事をやりたいので、二足のわらじでやらせてください」みたいな。

人事の方もすごく悩んでいて、「まずは一本、ちょっと頑張ってみよう。そこでスキルを出してから、次の道、二足のわらじしたほうがいいんじゃないの?」みたいなことは。

副業を推進すると、退職リスクが高まる?

西村:ありがとうございます。あと、別の心配事として、副業をやっちゃうと、自分の力が世の中に通用することがわかり、転職しちゃうんじゃないかみたいな。僕も副業を始めて、結果、会社を辞めているわけなので。これは、リスクなんじゃないかということは、よく、心配されるんですが、その点いかがですかね。

大槻:そこも、サイボウズは自由というか、まあ、いいんじゃないのというか。その人が成し遂げたい理想があって、それをサイボウズで実現できないなら、それはもう、あきらめるしかないと。囲んでいてもしょうがないですし。

それが何なのか、仕事内容なのか、給与なのかわからないですけれども。なので、青野は、そこら辺は、自由にやったらということは言っています。ただ、若いうちって、ありがちじゃないですか。そういう、隣の芝生が青いというか。

とくに、サイボウズしか知らない若い人が多いので、うちでやっているのは、今、「育自分休暇」。自分を育てるという制度。35歳以下の人は、サイボウズを辞めて、どこかに行っても、6年以内だったら戻ってこれるという、出戻り制度。

西村:6年ってすごいですね。最長何年のときを経て戻ってきた方いるんですか。

大槻:3年ですかね。アフリカのボツワナに、海外協力青年隊で行っていた女性がいまして、3年。今年、ちょうど帰ってきまして、無事帰ってきてくれたんですけど。

本当に、会社にとってもプレッシャーで、成長した彼女が、戻りたいという会社になっていないと、戻ってこないので、お互い緊張関係があるなという。

退職リスクは、辞めてからも繋がる仕組みで解決

藤生:副業制度をしていると、副業が軌道に乗って、辞めていく社員も、現実問題いるんですね。優秀な、そういうメンバーは辞めていくというのも、会社もわかっていて。ただ先ほどもちょっと申し上げたんですけども、辞めたから縁を絶つということはなくて、対等なビジネスパーソンとして、関係性を保つことも制度にしちゃおうと。

弊社のフェロー制度、辞めても弊社の名刺を持ってビジネスの活動ができるという、そういう制度をやっていたりもしますね。なので、むしろ辞めるぐらい副業を自分でやれみたいな、そんな感じですね。

西村:副業を始めたことで、それが軌道に乗って、結果的に、転職だったりとか、独立だったりとか、巣立っていくケースをどう捉えるかという話ですよね。

それを、流出というふうに、ネガティブに捉えるのか、人材輩出企業じゃないですけど、というふうにポジティブに捉えて、フェロー制度みたいなこととか、仕組みをうまく作って、辞めたあとも、継続的に会社に貢献してもらえるような仕組み作りとかって、うまくやりさえすれば、ポジティブに退職というのを捉えることができるんですね。

藤生:そうですね。なので、弊社で、会社を辞めて、送別会とかあるじゃないですか。もう、最近ですと、送別会があんまり盛り上がらなくなりました。

西村:どうせまた来るんだろうみたいな?

藤生:明日からまた来ますみたいな。何か、そういう状況になったりしますね。

西村:僕自身も、12月末でリクルートを退職しましたけど、その後も、週2ぐらいリクルートに行って仕事もしているので、転職詐欺じゃないかみたいな。送別会代返せみたいなこと言われますけど(笑)。

会社と個人の関係性というのが、昔は会社の持ち物だったというとこから、徐々に、会社と個人の関係性がフラットになってきている。会社の中と外の境界線、壁みたいなものが、どんどん低くなっているので、やりたいことがそこにあったらやるし、そうじゃなくなったら出るしという意味で、自由な環境に、会社が変わっていっているんじゃないかなということをすごく感じました。

副業を考える個人、企業のヒント

西村:あっという間に終了の時間となりました。最後に、これから副業を解禁すべきかどうか悩んでいる企業の方もいらっしゃる中で、ぜひ、お二人からメッセージ、ひと言お願いできればと思います。

大槻:もう言えることはあまりなくて、やるしかないという。その結果、何が起きるかというと、マネージャーが超大変です。

サイボウズでマネージャーやっていると何が大変って、人事制度とか、そういう勉強をしないと、ついていけない。サイボウズのこの働き方の制度はこうなっていて、給与の決め方ってこうなっていてというのを、全部、自分の部下に対して説明できないと、部下は離れていっちゃうわけですから。社長が打ち立てたビジョンに対して、うちの部ではこういうかたちで貢献するよということを、マネージャーがちゃんと言って、ケアをして。

うちでは週1で必ず30分、メンバーと雑談という名のミーティングをやるんですけれども。それぐらいやって初めて実現する緩さなのかなって考えると、そこですかね。そこを頑張ってほしいなと。制度だけ始めると、多分、空中分解ですね。そこだけご注意いただければと思います。

西村:そういうときに、うちのマネージャーじゃ、まだまだ、その力がないからというふうに、あきらめちゃうケースもあるんじゃないですか。そこを、やってみないとわからないからって、信じて、任せられるかでしょうか。

大槻:そうですね。そこは本当、トップの覚悟じゃないですかね。あとは、全部でやるんじゃなくて、どこかできそうな部署だけで始めて、そこで成功体験を積む。いい人材が来てくれて成果出たんだよという、いいフィードバックが出ればほかの部署でも。

やるよということだけを言っていただいて、あとは、現場、現場で、ニーズに合わせて進めていくというのが、一番現実的かなと思っています。

藤生:副業を取り入れるのは、制度を取り入れるのが、なかなか難しいですよね。やりやすい方法として、例えば、大企業は新しい風を入れたいと考えている。ベンチャーではベテランの意見がほしいみたいな、そういうニーズをうまくマッチングさせて、例えば、3カ月とか、人材をトレードするみたいなやり方なども、面白いのかなと思います。

あとは、おっしゃっていたとおり、特定の部署から、スモールスタートみたいなかたちでやっていくというのはありなのかなというふうにも思いますね。

西村:ありがとうございます。大槻さんも藤生さんも、共通していたのが、副業解禁は、もう、やるという以外の選択肢がないし、やるんだったら早くやったほうがいいと。

ただ、いきなりやるというのは大変なので、まずは部署限定とか、手挙げで募ってみるとかというかたちで、スモールスタートで始めているといいんじゃないかということですね。ありがとうございました。

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