人生100年時代の訪れ。経産省が考える未来の働き方と個人が生き抜く力とは?

人生100年時代の訪れ。経産省が考える未来の働き方と個人が生き抜く力とは?
1つの会社に長く勤め、定年退職した後は年金暮らし……。そんな「昭和の標準的な人生」は、消えつつあります。寿命100年、人生100年と呼ばれる今後の社会において、これからの働き方はどのように変わっていくのでしょうか。経済産業省主体でおこなわれた『人材力研究会』で交わされた内容をもとに、経済産業省 産業人材政策室・藤岡雅美さんに解説していただきました。
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各界の有識者を招き、未来の日本に求められる人材力を語る

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藤岡:本日は経済産業省主体で発足させていただいた『人材力研究会』の概要についてご説明させていただきます。研究会では、「人生100年時代の社会人基礎力」と「リカレント教育※1をキーワードに、これからの社会で個人がどのように活躍していくのかという点を整理していきました。

『人材力研究会』では「人材像」と「中核人材確保」という大きく2点を軸に検討しております。「人材像」は、これからの社会で個人がどうあるべきかという点について。「中核人材確保」は、人手不足に困っている中小企業が、経営の中核となるような人材をどう確保していくのかという点をテーマとしております。

「人材像」と「中核人材確保」はそれぞれ「1.働き手」「2.企業」「3.労働市場」の三象限に分けて検討を進めていきました。

※1 リカレント教育:生涯にわたって教育と就労を交互におこなうことを勧める教育システムのこと

「社会人としての共通能力=OS」を強め、絶えずスキルのアップデートをしていく

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藤岡:先ほど述べさせていただいた「働き手」に関しまして、2006年に発表した「社会人基礎力」を約10年ぶりに見直しました。見直しをおこなった中で、人生100年時代を生き抜く力として、研究会では「OS」と「アプリ」という考えがでました。

労働市場では、専門スキルをもち、活躍することが求められます。その専門スキルを発揮するためには、まさにスマートフォンの「OS」と「アプリ」のように「OS」を正しく機能させなければならない。でないと、「アプリ」をダウンロードをすることはおろか、スマートフォンを適切に使うこともできませんよね。

「働き手」に関しても同じ。人生100年時代の到来において、この「OS」部分をもう一度見直さなければならない。人生における仕事時間が長くなっているなかで、一種の職能がもつ価値の期限が相当短くなってきています。だから、「OS」の見直しが重要なんだと捉えています。

多くの「働き手」が専門スキルをもっている一方で、企業のニーズをいかに上手く引き出して自分の専門性と掛け合わせていくのか。その精度も「OS」の質によるのかなと思っています。

人生の各段階でリフレクション(振り返り)することが、キャリア開拓のポイント

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藤岡:「社会人基礎力」は約10年前の2006年に作成したのですが、今の時代でもそんなにズレていないかなという印象があります。最近でいうとEQ(こころの知能指数)や、価値判断力などいくつかスキルに関するキーワードがありますが、おおむね10年前の概念と一致するのかなと思っています。

ただ「何を学ぶのか」「どのように学ぶのか」「どう活躍するか」の3つの視点は重要で、この視点がなければ「社会人基礎力」と呼ばれる能力は発揮できません。自分のキャリアをどう歩んでいくのかを考えたときに、この3つの視点を意識しながら行動したほうがいいと考えています。

3つの視点を抑えて社会人がキャリアを進めていくうえで重要なのが「リフレクション(振り返り)」。いわゆる、「自分の強みは何か?」「今まで取り組んできたことは何か?」「これからどう進んでいきたいのか?」を内省する機会がとても重要です。

ただ、このリフレクションについて社会人にアンケートをとると、約7割ほどの社会人がやっていないとの回答でした。今後は、どのようにして個々人が内省の機会をつくっていくかがポイントだと考えています。

個人のスキルは実践で磨かれる。副業としてクラウドソーシングを推奨

藤岡:社会人基礎力を学ぶ場としては教育機関だけではありません。成長には、タフアサインメント※2やストレッチな経験、いろいろな越境体験などキーワードが出ていますが、全てにおいて言えるのは、やはり能力は実践の中で磨かれていくということです。

副業(複業)でいろいろな会社で働くことも、実はその人のスキルアップに繋がっていて、副業(複業)から別の道に繋がっていくのかなと考えています。一例ではありますが、ランサーズさんのように、仲介事業者のプラットフォーマーがまさにその役割を果たしていくのかなと思い、我々も非常に期待しています。

ただ、中小企業側の課題として、なかなかフルタイムの社員を雇えるだけの体力をもっていない点があります。そうすると、スポットで業務を切り出してのマッチングが非常に重要になってくるんです。

人を1人雇うという0か100かという発想ではなく、アウトソースの分量を調整して50%ほど働いてよ、のように。たぶん、そのあたりがフリーランスだったり、兼業・副業(複業)という働き方で解決していくのかなと。

一種の新しい労働移動とでもいいますか……フリーランス・副業(複業)が、中小企業の不安をひとつ解消するかたちになるのかなと考えています。

企業側としてスポットのアウトソースを上手に実現するためには、「いい人ください!」というざっくりした要件ではなく、ちゃんと経営戦略に優先順位をつけ、業務整理をして、求人像を明確化してどういう風に働いてほしいのか、どういう人に働いてほしいのか発信することが重要だと思っています。

※2 タフアサインメント:ビジネススキルやリーダーシップを開発することを目的として、困難な課題を割り当てること

フリーランスが円滑に仕事を進めるには、結局、企業との対話が重要

藤岡:突き詰めて言えば、企業と個人の対話をどこまでできるかという点が非常に重要であって、中小企業の採用場面をヒアリングしていても、やっぱり社長の想いをしっかり伝えているかは相当ワーカーのパフォーマンスに影響するようです。機械的なマッチングではなく、しっかりと個人と企業がコミュニケーションをとり、仕事を進められるかが重要と考えられます。

昭和の人生すごろくではないですが、現在は旧来型の世界ではなくて、働き方は柔軟になってきています。だからこそ、企業も対応していく必要がある。先ほどの中小企業にしても、柔軟な働き方をうまく受け入れていくというか、適応していくことでさらなる成長に繋がっていくのかなと思います。

今も書店に並んでいる、リンダ=グラットンさんの『LIFE SHIFT』にある「変身資産」ではないですが、まさに人生100年時代に個人が生き抜いていくために必要なのは、多様性に富んだ人的ネットワークだとか、自分についてよく知っていること。これがまさにリフレクションなのですが、新しい経験に基づいた姿勢をとっている……よい越境体験をしている、みたいな点にあると考えています。

我々もフリーランス・副業(複業)ワーカーが、どのように社会と通じて活躍していくのか、激変する社会のなかで台頭していくのか、そのあたりを引き続き、追求していかなければならないと捉えています。

<人生100年時代について こちらの記事もぜひご覧ください>

来たる「人生100年時代」に我々はどう生きるべきか?LIFE SHIFT(ライフ・シフト)
20代、40代、80代の実践者が語る、長寿時代のLife&Work

(おわり)

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