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【レポート②】「週4東京、週1地方」兼業で始める、新しい地方創生

前回の記事⇒【レポート①】「週4東京、週1地方」兼業で始める、新しい地方創生

 

2017年8月7日、freee株式会社本社のセミナースペースで『「週4東京、週1地方」兼業で始める、新しい地方創生』と銘打ったイベントが開催されました。

 

こちらのイベントは、株式会社Ridilover、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会、とっとりプロフェッショナル人材戦略拠点、エッセンス株式会社の4社が集まり、「週4東京、週1地方」という新しい働き方を提案するというイベント。

 

イベントには、地方企業での兼業に興味のある方が数多く集まり、地方で兼業を行うための手段やメリット/デメリット、注意点などに耳を傾けました。

 

今回は、イベントに参加できなかった方のために、、イベント後半のパネルディスカッションの様子をお届けいたします。

 

パネラー・モデレーター紹介

島崎 由真氏:エッセンス株式会社プロパートナーズ事業部マネージャー。1987年広島県広島市生まれ。日本ベンチャー大學卒業後、(株)ザメディアジョン・エデュケーショナルに入社。2015年、エッセンス(株)入社。2017年、HR企業や企業人事を束ねる有志団体「One HR」、台東区の子育て支援団体「たいとうパパママ応援隊」を設立。今回、モデレーターを務める。

 

安部 敏樹氏:株式会社Ridilover代表取締役社長。1987年京都府生まれ。2006年東京大学入学。大学在学中の2009年に『リディラバ』を設立、2012年に法人化。KDDI∞ラボ最優秀賞など、ビジネスコンテスト受賞歴多数。現在は、東京大学で、大学1~2年生向けの「社会起業」をテーマとした講義を持つ。また、東京大学大学院博士課程(専門領域は複雑系)に所属し、研究活動にも従事している。

 

松井 太郎氏:ソフトバンク株式会社を経て2015年に株式会社コンパスを設立し、販路開拓コンサルティング、人材採用の支援を手掛ける。2017年1月、鳥取県知事から委嘱され「とっとりプロフェッショナル人材戦略マネージャー」に就任。

 

米田 瑛紀氏:エッセンス株式会社代表取締役。1996年、地元広島にて人材ビジネスの企業に入社。取締役ゼネラルマネージャーへ就任。2000年、営業アウトソーシングの専門会社の創業メンバーとして参画。2009年にエッセンス株式会社を設立。多くの成長企業を支援するべく活動中。

 

平田 麻莉氏:一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会
代表理事。慶應義塾大学在学中からスタートアップのPR会社に参加。同大学大学院経営管理研究科、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院への交換留学を経て修士号取得。同大学大学院政策・メディア研究科博士課程に進学し、同大学ビジネス・スクールの広報・国際連携の職務にも従事。出産を機に退学したのち、フリーのPRプランナーとして独立。2017年1月、「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」を設立し、共同代表理事に就任。

 

地方で活躍できる人ってどんな人?

 

島崎

では、皆さん、パネルディスカッションを始めたいと思います。今回は、「地方創生に参画する意義・意味・効果~地方で活躍する人材とは~」というテーマでお話していきたいと思います。各社プレゼンをした4名に登壇していただきます。引き続きよろしくお願いいたします。

それではさっそくですが、「地方で活躍できる人ってどんな人?」ということで、松井さんにはプレゼンでもこの内容に触れていただいたんですけど、鳥取ではどんな方が実際に活躍されていますか?

 

松井

私も東京・大阪から鳥取に来て仕事をしていますので、鳥取で活躍している自分について話をしたいと思います。まず私は、東京と大阪で働いていたときは、あんまり「しっくり」こなかったんですよね。組織の中での人間関係もそんなにうまくなかったですし、上から目線で指示命令されることがあまり得意じゃなかったんです。だからこそ地方で、と思ったわけではないのですが、誤解を恐れずいうと、都会に居場所がない人は地方でうまくいくかもしれないと思いますね。

実際に、私がそうでした。鳥取に来てすごくしっくりきたんですね。もっと突っ込んで言うと、都会だとすべてが自己責任という風潮があるじゃないですか。すべて、仕事もプライベートも自己責任なんですけど、田舎に行くと意外とそうでもなくて、周りの方が助けてくれることが多かったんです。私は1年半前に大阪から鳥取に移住しました。その時、その2週間前に知り合った鳥取の人が鳥取駅まで迎えに来てくれたんです。縁もゆかりもない、会うのは2回目の方です。その方が軽トラで迎えに来てくれて、家を探すのを手伝ってくれたり、家財道具を探すのを手伝ってくれたり、合計5日間朝から晩まで付き合ってくれました。しかも、恩着せがましいところが一切ないんです。颯爽と軽トラに乗って帰っていく姿を見てかっこいいなと思いました。

今何かしっくりこないな、もやっとしてるな、新しい展開を考えてみたいなと思う方は、鳥取じゃなくても、出張や旅行で行ったことのある場所で印象が良かったところに足を踏み入れてみると活躍できるきっかけになるんじゃないかな。

 

島崎

なるほど。次に米田さんにお聞きしたいのですが、東京の人材と地方起業をマッチングするという立場で、どのような人が活躍していますか?

 

米田

私たちが日頃マッチングしているのは、東京に家があり、週一で出張するプロの方に限ったお話なのですが、特定分野の専門性があり、更に「再現性」があるかどうかを過去の実績と事例を踏まえて説明できる方が活躍するのではないかと思います。これはプロ人材の定義としても我々が大事にしていることなんですが、素晴らしい実績があっても会社の看板があったからできたとか、本人は偶然そのプロジェクトのリーダーだっただけで実際に実行したのは部下だったとか、話をすると結構わかります。我々は、その点についてきちんと確認をして、プロとして登録してもらっていますし、そういった人材をプロ人材と言っています。また、信頼性を担保する意味で2人以上の推薦をいただいた上で登録してもらっています。さらに、専門性と再現性に加え、「支援先企業に自分のノウハウをインストールできるか」がプロ人材として重要な要素になります。ご自身の持っているものを支援先の企業の窓口になる人に落とし込んであげて、一定期間を経た後は自身の手が離れても回せるような状態までインストールすることが大切だと思っています。

地方においてのポイントですが、地方企業の方からすると「どうせ東京の人でしょ」と思っている場合があるので、いい意味で目線を合わせ、地方企業の方を尊重し、何をお困りなのか聞きながら信頼関係を築いていくことができるコミュニケーション能力が大切ですね。地方企業の方も頑張っているけれども、なかなか東京に普通にいる人材が地方にいない。そこから自分に話が来ているという目に見えない事情もきちんと汲み取ることが求められることだと思います。

 

島崎

安部さんいかがでしょう。

 

安部

地方について、一般的によく言われるのは、地域によって給与水準は変わるということです。デトロイトにいる大卒の労働者とサンフランシスコにいる高卒労働者を比べた時、どちらの方が給料が高いかというと、サンフランシスコの高卒の方が給料が高くなります。個人の努力ではなく、どこに住んでいたか、どの業界に身を置いたかの方が給料には大きい影響があります。

これは給料に限った話ではなく、自分がいる業界と地域でセグメントを作るとその人の年収はだいたい予想がつく。つまり、活躍できるかどうかだけではなく、「伸びている地域やテーマに乗っかる」ということが大事になってきます。

では、伸びている地域とはどういった地域かというと、今の現時点では伸びていないけれど、長期的に伸びていく地域を見極める指標はいくつかあると思います。まず、ロードサイドの風景がだいたい同じ感じになってしまっている郊外エリアは厳しいかもしれません。もちろん例外はありますが、カラーがないので、オリジナリティが作りにくいんです。地域に住む人が誇りをどれくらい持っているか、愛着がどれくらいがあるか、というのが大事です。

余談ですが、私昔三宅島という島にうちのツアーも含めてよく遊びに行ってたんですが、あそこなんか20年に一回噴火するのにその度に人は避難しては戻っていくんですよね。そういう地域は長期的なポテンシャルを感じます。

 

次に、地方は、ある程度の閉鎖性はあります。ですが、例えば若い女性が引っ越してきて、生活していたとする。そのときに隣の家の人が「いつもは8時には帰ってきているのに、昨晩は10時に帰ってきたらしいわよ。やーねー。」なんて噂話が出たりするような地域は行ってはいけません。人間だから多少はそういうところあると思いますが、過度にそうなってしまう地域もあるんですよね。

すでに移住者がいて、閉鎖的なコミュニティとは別にチャレンジをする風土があるコミュニティがあって、実績がある。そのコミュニティも外部から来た人で構成されている。こういう地域が、伸びるんです。地域の持っている資産は目に見えないけど、地域住民のそのコミュニティに対するロイヤリティがあるとか、変わった資産がある、街づくりの歴史があるようなところはいいでしょう。オープンなコミュニティがあると、移住してもいいかもしれない。なので、活躍できる人はどんな人かというと、みんな自分に責任を求めがちですが、どちらかという環境要因の方が大きいので、活躍できる地域を選んだほうがいいと思います。

 

島崎

非常に面白いですね。活躍できる人材になるのではなく、活躍できるフィールドを探すということですね。

 

安部

そうですね。でも、仕事の当たり前ってあるじゃないですか。それすらできないのは信頼を失うと思いますし、それはだめですよ。ただ、自分が行ったときに伸びている地域に行くというのはとても大事で、そのほうが健やかに生きられると思います。自分が健やかになれる場所を探すほうがいいと思いますよ。

 

島崎

平田さんはどう思いますか?

 

平田

私は2つあると思います。1つ目は、地域に関係なく、プロフェッショナルであることです。私たちの協会の名前も「プロフェッショナル&パラレルキャリアフリーランス協会」というんですが、何かしらの専門性やスキルをもって、それを生業にしていて、どんなクライアントでも再現できることが大事だと思います。それを発揮する上で、当事者意識を持つことが大切だと思っています。コンサルとか顧問といった形で評論家になるのは簡単です。外から見てこれは良い悪いというのは簡単ですが、地方の企業にしろ東京のベンチャー企業にしろ、本人たちは一生懸命やっているんですね。そこに対して、評論家になるのではなく同じ当事者意識をもって、インサイダーとしてどれだけ力になってあげられるかという。そういったことは地方に限ったことではなく、プロとして大切な力かなと思いますね。2つ目は、地方ならではですが、地方は都会に比べて見られているんですね。電車の中でどういう姿勢でいるかとか、モノを食べているとか、お化粧しているとか、東京だと割と誰も見ていないようなことでも地方だと見られているし、話が回りますね。イベントとか飲み会に誘われて「行けたら行くよ」と回答して、行かなかったりすると、地方では「行くって言ったならちゃんとやろうよ」とか。そういうところで都会より信頼関係が重要になりますし、すぐにわかることなので人間として当たり前の「約束を守る」や「マナーを守る」といったことがより大事になっていくるのかと思います。

 

島崎

地方ならではの見られている環境の中で、評論家ではなくどれだけ寄り添えるのかということですね。

 

地方での仕事で得られるものってなあに?

島崎

続いて、「地方での仕事で得られるものってなあに?」というテーマです。地方だからこそ、生まれるやりがいや幸福感を聞きたいと思います。

松井さん、先ほど、鳥取は「しっくりきた」というお話がありましたが、こういうところがやりがいにつながっているとか、自分が紹介した方がこういうところにやりがいを感じているといったことをお話いただきたいのですが、いかがでしょうか。

 

松井

ちょっと話がそれますが、移住・定住の話が出ましたが、移住定住っていきなりハードルが高いと思います。結婚に例えるとわかりやすいですが、いきなり出会った人に「結婚して僕のふるさとに移住しましょう」というと難しいじゃないですか、仕事でも同じで、いきなりは難しいんです。行くほうにとっても兼業・副業で週一回地方に行く方がハードルが低いですが、来てもらう企業としても受け入れやすいんです。移住してもらってフルタイムで採用したときに、もしその方と合わなかった時に「辞めてくれ」とは言いにくいんですよね。お試し期間も含めて兼業・副業で月一回来てもらったほうが、お試し期間という意味でもありがたい。企業から見た時に、年収500~600万円でフルタイムの方を採用するより、非常勤の方だと費用的にも抑えられます。

得られるについてですが、兼業・副業で働く人の立場では、自分のペースで働くことができるというのが、地方で働くと得られるものなのかなと。私は鳥取・東京・大阪を回ってますが、旅をするように仕事をしているんですね。仕事する感覚ではなく、旅行の延長線の上に仕事があるように感じています。

 

島崎

地方だからこそ、文化にいきなりなじむのはハードルが高いと思いますし、旅をしながら働くというのは面白いですね。

平田さんから見て地方でのやりがいなどありますか?

 

平田

地方では東京で得られない裁量やポジションが得やすいと思います。東京には人材がたくさんいますので、競争があります。地方では専門人材が不足していますので、何百人いる会社の中でやりたくてもできなかった仕事を競争が少なく任せてもらえる。そこで実績をつくることで、東京の仕事やキャリアに対するインパクトも出てくる。そういう意味で、キャリアアップの良い機会は得られると思います。同じキャリアアップの良い機会というと、地方の方が結果を出しずらいというのがあります。地方経済の状況であったり、リソースの制約がありますので、その難しい状況の中で結果を出せたというのは自身のキャリアに対してハクがつくと思います。誇れる実績になると思いますよ。よりチャレンジングな課題にチャレンジするのもいいかもしれません。

 

島崎

地方の方がチャレンジングだという発想はなかったですね。非常に面白いですね。実際にそこで苦労された方の事例や声はありますか?

 

平田

職種にもよると思いますが、リソースが東京に比べて少ないというのはあると思います。財務的な仕事ですと、東京だとVCも金融機関もたくさんありますが、地方だと選択肢が限られていたり、広報としてもメディアはすべて東京に集まっていたり、人事でも採用の手段が限られていたり、何の職種にしても東京に比べると限られたリソースの中で知恵を巡らせなければいけないということはあると思います。

 

島崎

なるほど。

では今度は、マッチングの立場から米田さんにお伺いしたいのですが、プロの方を紹介して地方だからこそ、得られるものはどういったことがあるんでしょうか。

 

米田

私も広島出身で、盆正月に帰省した際に学生時代の仲間と話すんですが、Facebookをやっている人間が知り合いの半分ぐらいなんですよ。ですので、こちらでは当たり前のように得られている情報が、広島では5割くらいの人しか知らない情報で、そこからその情報を知り、実際にアクションを起こしている人はより希少なんだなと思いました。これが情報格差かと思いましたね。東京では当たり前のことが、地方では当たり前ではなく、情報も耳に入らないし、入っても次のアクションにつながらない。つなげ方がわからない。私自身も広島の人材ベンチャーで役員をしておりましたが、その当時に東京の大手人材会社の優秀な人が週一でも来てくれたらなと思っていました。広島にいた時の自分の感覚では、東京は同じ国の中ですし、新幹線でも4時間くらいで行けるにも関わらず、どこか遠い存在だったんですね。そのような状況のところで、求められるところで価値貢献するとやりがいがある。社会貢献的な価値もあり、東京でやるよりやりがいがあると思うんです。

 

島崎

なるほど。安部さんはいかがですか。

 

安部

地方でのみ得られるものというのは、あるのかわからないですね(笑)

 

島崎

(笑)

 

安部

まず、時代背景をご理解いただきたいのですが、あと10年くらいで日本は1年ごとに100万人単位で人口が減っていくので、道府県が一つずつ減っていく時代が来ます。なので、あまり気軽に地方に行かないほうがいいのではないかと思いますね。地方でビジネスをやるというのはマーケットがない中でやるということで、大変です。東京の競争の激しさとどちらがいいのかというトレードオフでしかなく、それでも地方がいいというなら、地方に行くべきだと思いますが、幻想を抱くのでなくしっかりとした納得感を持つことが大事です。

基本的にこの国は分類すると、3つに分けることができます。一つは東京です。ほとんど車に乗らない社会です。もう一つが、神奈川や大阪、千葉などの首都圏近郊の半分電車・半分車社会。最後が、その他の地域。ほとんど車社会です。この3つを比べると所得水準が全然違うんです。地方に行くかと行っても2番目のグループに行きたいのか、3番目のグループに行きたいのかで、状況がまったく違うわけです。

その上で、得るものの話をすると、人間は、給与などの条件、仕事内容ややりがい、職場の人間関係などのライフスタイルという3のうち、2つが満たされれば仕事を辞めないと言われています。ただ、東京から地方へ移住するとなると、給与などの条件が上がるというのは極めて珍しい。そういう観点で見ると、やる仕事をいかに楽しめるかというのと、その地域のライフスタイルにフィットできるかという2つのうちどちらかがないと続かないと思います。「得られる」という観点だと、その二つが得られるかを見なければいけないのです。皆さんが地方に行くと、東京的な競争から、地方でマーケットをつくる競争に入っていくことになるので、どちらの競争をしたら自分にとって意味のあるキャリアになるか考えて移動するのがいいのではないかと思います。

私は、チャレンジをするのが好きなタイプなので、田舎に住んで都会のマーケットで競争するというのも楽しいしやれると思うんですけど、チャレンジ精神がないまま行くと痛い目にあうと思っていて、変に皆さんの期待値を高めてしまうのはどうかなと思うんです。ある程度冷静に見た上で、それでも行きたいのであれば、ぜひ行くべきだと思います。

 

島崎

リディラバさんはそのあたり、ツアーで地方で行くときにどのようなことに気を付けてマインドセットなど促しているんですか?

 

安部

基本的に僕らは地方に移住させたいのではないんです。日本には課題がたくさんあって、地域にもたくさん課題があります。ただ、やる気のある人はみんな東京にいるんです。地方の学校で上から10番にいた人って、まず市内にいるか東京にいるかということになると思うんです。まず東京で競争に負けて、ちょっとやる気がなくなった人が地方に帰ってくる。良くない循環ができているんです。意欲のある人がいかに課題のそばにいるかというのが未来の社会にとって一番大事なことなんです。なので、そもそもチャレンジする気のない人が地方に行くのはすごくリスクが高いと思っていて、そこはターゲットを分けています。我々は、チャレンジが好きな層に対して、チャレンジしに行きましょうよと言っています。「地域の課題解決をしに行きましょうよ」と地方に連れていくのが、ベースの考え方です。そのうえで、地方に連れて行ったときに何をするかというと、とにかく「こんな課題があるんだよ。あなたなら解決できるかもね」というところを見せるんです。次に、(課題解決のための)共通のコミュニティがあり、外から来た人がすでに解決しようと動いているというのが大切です。そういうチャレンジングなコミュニティに参加すると心が折れないんです。

なので、オープンでチャレンジングなコミュニティがあることと、チャレンジングな課題があることが大切で、そこにチャレンジがしたい人を送る。この3つの掛け算が起きた時に意味のある移住が起きると思っています。そういう意味では、のほほん田舎暮らしというのはどうなんだろうと思います。そういうのもあっていいのかもしれないけど、少なくとも僕らは課題があるところに、課題を解決する人を送ると。東京には課題を解決したい人が多すぎるので。

 

島崎

非常に面白いですね。実際にその地域に行くときにも、そこにちゃんと掛け算があるのかということですね。

 

都会の人材を受け入れる地方企業・自治体の心得とは?

島崎

では、最後の質問になりますが、東京からの人材を受け入れる上で、地方企業や自治体の心得というのを聞いていきたいと思います。

まず、フリーランスとしての観点ということで平田さんにお伺いしたいのですが、フリーランスの方たちが都会の中でもまだ受け入れられているとは言えない状況だと思います。地方企業はどういうことに気を付けてほしいなどありますか?

 

平田

そうですね、気を付けてほしいなんて上から目線で言うことは何もないんですが……。先ほど、安部さんが言っていたこととまったく同感で、地方は、同じ視点で変えていこうという、同じ船に乗ってくれる人を探すのがすごく大変だと思うんです。会社に入った時も、経営者は同じ方向を向いてくれるけど従業員は全然同じ方向を見てくれないというのは、往々にしてあることで、そういう時に、こちら側も「なぜわかってくれないんだ」と押し付けになってもいけないので、当事者意識をもって一緒に汗をかくというのが大事なんですが、受け入れ側にしても、地方を変えていくのは「よそ者・若者・バカ者」なんてよく言われますが、そういう人たちに対してオープンでいてくれることとか、新しいことを楽しんでくれる受入れの土壌があるとお互いハッピーというか、同じ方向を向いて走っていけるのかなと思いますね。

 

島崎

米田さんいかがでしょう。

 

米田

今新卒を採用すると年収300万円程度かかる世の中で、プロを使うと半年で約200万~300万かかります。地方企業の方からは「新卒の方がいいんじゃないか」とか、「東京だからそういう人がプロとして会社に入っても上手くいくんじゃないの」と言われることもあります。このように言われているというのをプロ自身が理解しなければいけないとも思いますが、地方企業のかたにもプロと一緒に仕事をしていただくならば覚悟をもって進めていただきたいとも思います。なので、我々は契約の前に、この費用があれば他にもできることがありますが、本当にいいんですかという確認をしてからやらせていただいていますし、プロとの面談は東京でやってくださいと言っています。遠くまでくる時間とコストをかけて、それでも本当にいいと思っていただいてから始めるほうが後々、プロジェクトがスムーズに進行することが多いんです。もちろん、私たちもプロを紹介して終わりではなく、目的に向かって一緒に走りますということは伝えています。

 

島崎

私も普段、プロと企業のマッチングをしていますが、その辺の期待値の調整が難しいと感じています。

自治体も含めてマッチングをされている安部さん、いかがでしょう。

 

安部

そうですね、先ほど、「よそ者・若者・バカ者」という言葉が出たと思うんですが、よそ者がポジティブな価値を出すためには相当なハードルがあるので、その環境整備は自治体とか企業がちゃんとするのは絶対必要です。自治体や企業の目的として、自治体が起業してほしいのかどうかでだいぶ変わるんですね。

起業してほしい場合は、とりあえず地方に来た後、その人のことを放っておくことが重要です。起業するためには外部からの一定の刺激が必要なんですが、そういうのは自治体の職員や企業の人が考えても上手くいかないので、起業したことのある人、事業のプレッシャーを理解できる人が出てくるまで放っておいてあげた方がいいと思います。あれこれ言わないで、話のわかりそうなやつを紹介してあげるということですね。笑

起業ではなく就職する場合は、自治体も企業もかかわり方は一緒で、理解ある人がいてあげないと、その人が続いていかないです。全員が外から来た人を受け入れてくれるわけではないので、外から来た人を受け入れてあげてディスカッションしてあげるような人がいる環境をつくる。地方は閉鎖性が強いので、閉鎖的でない人だけを集めて周りにおいてあげる。それは移住でも就職でもやってあげることが重要です。私が見ていてうまくいく事例はそういう場合が多いです。

 

島崎

混ぜるな危険を混ぜちゃダメということですね(笑)

 

安部

そうですね(笑)。最初だけでも、いい人で周りを囲んであげることは重要ですね。一人、嫌な人がいて攻撃されたら、もともとそこまでその企業に思い入れのない人材は続けられないですよ。

 

島崎

最後に松井さん、実際に都会からプロをアテンドされていると思うんですが、鳥取県の企業にお伝えしていることがあれば教えてください。

 

松井

まず、鳥取県になんらかのご縁のある人の方がうまくいきやすいです。例えば、本人が仕事で鳥取にいたことがあるだとか、鳥取の学校を出ている、家族が鳥取県出身など何らかの形で鳥取県にご縁のある方の方がカルチャーが共有されやすいと感じます。もう一つは、スキル重視だとうまくいかないなと。スキルは劣るんだけど、「この人と働いてみたいな」とか、「この人とはフィーリングが合うな」とかがすごく大切なんですね。「考えるな感じろ」ということですね。この人と馬が合うなということは、たぶん経営者とプロが同じ目線で話ができているからだと思うんですね。同じ目線で会話できることが、プロ人材が経営者に寄り添ってくれているんだなと、受け入れながら何かアイデアを出してもらえるんだなと思うと思います。スキルが劣っていてもいいんです。極端に言うと、経営者の話をだまって聞いてくれるだけでもプロとしてのスキルになるんです。同じ目線で経営者に寄り添う。これが望まれていることだと思います。

 

島崎

最後に、安部さん、いかがですか

 

安部

上手くいくのは、基本的にスキルではなく、いい人になれるかですよね。自分が見ている事例でも、いい人はなじんでいます。

 

島崎

いい人というのは重要な要素なんですね。

最後に平田さん、まとめの一言をお願いします。

 

平田

地方も東京も結局は変わらないのかなと思っていて、もちろんいい人であることも重要ですし、自分の仕事に責任をもってきちんと結果を出すとか、評論家ではなくインサイダーになるとか、地方ではなおさらインサイダーになって一緒に汗をかくと。チャレンジしたい人は、できる環境はあると思うし、やりやすい時代になっているので自分も含めて挑戦していけたらと思いますね。

 

島崎

今回のパネルディスカッションではいい意味でふり幅のある内容が聞けたかと思います。どれもリアルな声ですので、これを聞いて地方でチャレンジしたいと思った方はぜひチャレンジしてもらえればと思います。本日はありがとうございました。

 

最後に

今回は、2回に分けて『「週4東京、週1地方」兼業で始める、新しい地方創生』というイベントのレポートをお届けしました。

地方で働くことは簡単なことではないかもしれません。しかし、チャレンジする環境は確実にあります。

皆さんも、キャリアの一つとして、地方で働くことを考えてみてはいかがでしょうか。

 

前回の記事⇒【レポート①】「週4東京、週1地方」兼業で始める、新しい地方創生